2018年8月21日火曜日

【ベルの狩猟日記】055.納涼怪談大会【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

■第55話
【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/

055.納涼怪談大会


 酒場の照明を全て落とし、長卓の真ん中に蝋燭を一本立てて、幻想的な雰囲気を店内に広げる。
 四人掛けの長卓に椅子を持ち寄って六人の男女が腰掛けた。
「そう言えばアネさんは呼ばなくて良かったの?」ウェズの顔を見てベル。
「いや……正直、あの人とは逢いたくないんだ。……解るだろ?」怯えるようにウェズ。
「……うん、解る解る」うんうんと頷くベル。
「それじゃ、第一回納涼怪談大会を始めます♪」
 ティアリィが笑顔で告げるが、蝋燭の光の陰影の関係で、やたらと怖く見える。
「では、一番手は主催者であるウェズさんからお願いします♪」
「おしっ、任せとけ! 皆を震え上がらせて、一気に寒くしてやるぜ!」
 腕捲りして、ウェズが話し始めた。


「あれは確か、森丘にいた時だったよ……こっそりと採取していた時の事だ。モンスターのいない場所で、僕は黙々と採取していたんだ……辺りにモンスターがいない事は分かっていたし、猟人もいなかった。僕一人だけだったんだ」
 じじ、と蝋燭が揺れる音が混ざる。
「ところが、妙な視線を感じる。でも、周囲を見渡しても誰もいないし、モンスターの影も無い。おかしいな、と思ったよ。だけど、何もいない。僕はちょっと不気味に感じながらも、採取を続けていたんだ……すると、」
 そこで間を置くウェズ。一同はウェズを注視したまま、固唾を呑んで続きを待っている。
「……すると?」堪えきれずにベルが促す。
「すると――何も無い所から触手が伸びてきたんだーっ!」
 くわーっ、と声を大にして叫ぶウェズに、「きゃーっ」と「にゃーっ」と言う悲鳴が同時に湧き上がった。
 ベルは「触手が伸びてきたー」と言う話には驚かず、ウェズの声の大きさにだけ驚き、然程怖がる様子は無かった。ティアリィとフォアンに至っては平時と少しも変わらない。
 ウェズは二人もの女性が怖がってくれた事に満足すると、言葉を続けた。
「触手は僕の採取した素材を掠め取って消えたよ。僕は怖くなってすぐに逃げ出したんだけど……結局、正体は分からないまま。あれは、森丘に住まう亡霊の仕業だったのかも知れないね……」
 そう締め括ると、ウェズは「どうだった? 怖かった? ねえ、怖かった?」と子供のように嬉々として尋ねてくる。
「怖かったですわ~っ、もう外には出られません~っ」顔に手を当ててコニカ。
「怖かったにゃ~っ、もう怖くて〈アイルーフェイク〉を外せにゃいにゃーっ!」〈アイルーフェイク〉に手を当ててザレア。
「いやいや、あんたは初めから外す気無いでしょ」そこはツッコミを忘れないベル。
「もしかすると、それは森丘の亡霊ではなく、古龍であるかも知れませんね」
 冷静に応じたのはティアリィだった。フォアンも頷く。
「オオナズチ、って古龍だろ? 体を周囲の風景に同化する特殊な能力を持ってる古龍の話なら、俺も聞いた事が有る」
「へ? そうなの?」驚いたようにウェズ。
「だとすると、あんたは飛竜だけじゃ飽き足らず、古龍にまで襲われたって事? ホント……あんたは幸運なのか不運なのか……」
 呆れて言葉も無い様子のベル。ウェズは「はは、ははは……」と乾いた笑みを浮かべて頭を掻き始める。
「じゃ、次は誰が怪談を聞かせてくれるのかしら?」
 自信満々に、「あたしはこの程度じゃ怖がらないわよ?」と言葉の裏に込めて尋ねるベル。その様子を見て、ザレアが挙手した。
「次はオイラの出番にゃ!」
「ザレアが? ……確かに、興味が湧くわね。話してみてよっ」
「任せるにゃ! オイラの知ってる、飛びっきり怖い話を聞かせてあげるにゃ!」
 今度はザレアが話し始めた。


「その日は暑い日だったにゃ……とある村に置いていた大量の大タル爆弾Gが、熱によって自然発火寸前ににゃったのにゃ……でもオイラは気にせずに放置しておいたのにゃ……それは今も放置されたままにゃ……」
 ザレアが締め括ると、酒場の中は物凄く静かになった。
「……え、ちょっと待って。その村って、どこの村かしら?」
「それは言えにゃいのにゃ」
「ちょっと!? え、何それ!? マジで怖いんだけど!? ラウト村じゃないよね!? 突然村が地図上から消えたりしないよね!?」
「落ち着けってベル。幾らザレアでも、それは有り得るだろ?」
「うん……うん!? 何か今、自然と頷きそうになったけどダメだよね!? ラウト村終了のお知らせなの!? あたし嫌よ!? 何で猟人が村の中で併も爆弾で死ななきゃならないの!?」
「まだ死ぬと決まった訳じゃにゃいにゃ! 希望を捨てちゃダメにゃ!」
「誰のせいで死にそうになってんだァァァァ―――――ッッ!!」
 ザレアの肩を掴んでガックガック揺さ振るベル。
「さて……それじゃ僕はこの辺で失礼しようかな……」こっそり立ち上がるウェズ。
「あら? ウェズ。まさかここで逃げる訳じゃないわよね……? まさかウェズともあろう男が、逃げる訳無いわよねぇ……?」ジト目でウェズを見やるベル。
「に、逃げる訳無いだろっ!? ちょっと雉を撃ちに……」そろ~りと酒場の入口に近づくウェズ。
「ザレア。案内してあげて」ぱきっ、と指を鳴らすベル。
「任せるにゃ! 雉がいそうにゃ所には大量の大タル爆弾Gが有るのにゃ~。皆、格好良いから大丈夫にゃ!」自信満々に立ち上がるザレア。
「い、いや、やっぱいい。遠慮しとく」透かさず自席に戻るウェズ。
「あにゃ? 残念だにゃ~」ザレアも已む無く席に戻る。
 深、と静まり返る室内。
「……な、何か、一気に寒くなりませんでした?」腕を摩りながらコニカ。
「体感温度が十度ほど下がった気がするわね……今まで聞いた話の中で最上級の恐怖を感じたわ……いや、現在進行形で感じてるんだけど……」
「こりゃ、ザレアが優勝で決定だな」うんうんと頷くフォアン。
「いいえ、まだよ。――フォアン、あんたの怖い話を聞かせなさいよ」
「うん? 俺か? 先にベルがすればいいんじゃないか?」
「あたしは怖い話なんか知らないわよ。強いて挙げるなら……」
 結局話し出すベル。


「あれは晴れた日の事だったわ……工房に出掛けたの。店で武器と防具を新調して、あたしは上機嫌だったわ。でも……その時気づいたの。あれ、おかしい、って」
 そこで間を溜めるベルだが、なんとなーく、皆、先が読めているようだった。
「財布からお金が消えていたのよ!!」
「自然現象だろそれは!?」透かさずツッコミを入れたのはウェズ。
「自然じゃないわよ!! あんな大金が工房に一回行っただけで消える訳ないじゃない!! あれは絶対に詐欺られたのよ……絶対にそうよ!!」
「別に怖い話でも何でも無いじゃないか……」
「何ですって!?」
 ウェズの首を限界まで絞り上げていくベルを横目に、ザレアがフォアンに向き直る。
「オイラも、フォアン君の怖い話を聞いてみたいにゃ!」
「怖い話って言われてもなぁ」
 ぽりぽりと頬を掻いた後、フォアンは皆を見渡して尋ねる。
「皆が怖いって思う存在って言ったらモンスターじゃないのか?」
「まぁ、普通はそうよね。……でも、やっぱり怪談と言えば――」
「幽霊とかお化けみたいな超常現象だよな! モンスターは実際に皆に害を為すから、怖いと言うより危険だけど、幽霊は次元が違うもんなー。猟人にゃどうしようもない存在だしな!」
 意気揚々と告げるウェズに、コニカとザレアが抱き合って「怖いですーっ」「怖いにゃーっ」と震え上がっている。
 ベルは呆れた表情で応じる。
「確かに、幽霊が実在したら猟人じゃ手が出せないけど……そんなの見た事無いし、あたしは信じてないなー」
「えー? ベルは可愛くないなぁ。そこはもっとほら、怖がって『きゃーっ』とか言った方が可愛いんじゃないか?」
「そんなに殴り殺されたいとは思わなかったわウェズ。まずはそこに正座しなさい。軽く三百発ほど殴ってみるから」
「幽霊って、そんな怖い存在でも無いぞ」
 ウェズの悲鳴が上がる前に、フォアンがポツリと口にした言葉で、酒場は再び静まり返った。
「俺、幽霊が視える体質なんだ」

【後書】
 ザレアちゃんの怪談は確か当時ネタも無く気まま~に綴った筈なのですけれど、怪談としては一番良い出来に仕上がったと言う(笑)。
 と言う訳で怪談回でした。こういう、その世界観独自の設定を活かした、キャラクターが語る物語と言うのはときめきを感じずにいられないと言いますか、考えるのがとっても愉しいのですよねぇw
 そして最後のフォアン君の爆弾発言で締め括られましたが、今回はつまりそういうお話と言う事です。次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    遅くなってしまいましたm(__)m

    ザレアちゃん優勝!!
    実際現場に居合わせたらウェズ君も真っ青なスピードで逃げますw
    それにしてもウェズ君は毎回たいへんだなぁw

    そして最後の爆弾発言!ただの天然ではなかったのです!!
    どんな展開が待っているのか+(0゚・∀・) + ワクテカ +ですv

    サルベージうまくいってるのかしら?

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      いえいえ~!w どうかお気になさらずですよう!┗(^ω^)┛

      ザレアちゃん優勝ですよねこれ!w
      逃げたらザレアちゃんにいざなわれる奴ですよそれ!ww
      ウェズ君は不憫枠に完全固定されちゃって当時綴りながら毎度笑ってた気がします(笑)ww

      ですです! ただの天然ではなかったのです!!
      ぜひぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います~!ヾ(*ΦωΦ)ノ

      サルベージね、うん、ちょっとマズいですね…w(えっ)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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