2018年8月30日木曜日

【FGO百合SS】03話「貴女と友達になりたくて#3」【エレモー】

■あらすじ
モードレッドとお出掛けするエレシュキガルのお話の続き。

■キーワード
FGO Fate/Grand Order コメディ ギャグ エレシュキガル モードレッド 百合

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■第3話

03話「貴女と友達になりたくて#3」


「第六特異点に見所なんて特にねーんだよなー。んー、暗殺教団の里かファラ男のピラミッド、どっち見たい?」

「天然喧嘩売り機みたいなサーヴァントなのだわ……」
王城キャメロットを後にして聖都を気ままに闊歩しながら呟くモードレッドに、エレシュキガルは一抹の恐怖を感じずにいられなかった。
暗殺教団――ハサンの事だろう。そしてファラ男……チャラ男みたいに言われてるそれはファラオの事であり、オジマンディアスの事でも有るのだが、聞かれていようものなら「不敬!」と言われて瞬斬されても不思議ではない。
オジマンディアスも脅威だが、暗殺教団の祖とも言える山の翁の存在も恐ろしい。観光名所のように遊びに行ったらいつの間にか首を刎ねられていそうでドキドキである。
「ハサンの里って、確か山間に在る……んだったかしら?」
「そうそう。忌々しいよな」
「山間に在るだけで忌々しいなんて言葉が出てくる事に今名状し難い想いを覚えてるのだけれど……」ジト目でモードレッドを見やるエレシュキガル。「山間……貴女、登山はした事、有るかしら?」
「ん? そりゃーしょっちゅう駆け回ってたぜ山なんざ」ケタケタ笑うモードレッド。「それが何だ?」
「じゃ、じゃあ――――一緒に登山、しない……かしら?」

◇◆◇◆◇

――――七時間後。
「ふぅ――――ハイキングに丁度良い高低差ね、この山!」
気持ちの良い汗を掻いて微笑むエレシュキガルに、モードレッドは疲れ果てた表情を覗かせ、隣に並ぶ。
「……まさかこの山を人並みの速度で歩いて登山するなんざ……サーヴァントの無駄遣いっつーかなんつーか……時間の無駄も甚だしいだろ、これ……」
「あら、ゆっくり時間を積み重ねて尾根まで上り詰めた時の解放感は素晴らしいものよ?」にんまりと微笑むエレシュキガル。「ほら、もう日が落ちる所じゃない。素敵な景観が広がっているわ」
「別に風景なんざ見飽きてるんだがな――」
尾根に立ち、第六特異点の果てに沈みゆく紅玉を見つめても、モードレッドには大した感慨も浮かばない。
落陽は見飽きた――否、好きではない、と言い換えても良い。
それはキャメロットの落日を――円卓が喪われたあの日を、思い出すから。
「やがて夜が来るわ。冥界との境界が薄れる、闇の世界が」
斜陽に照らされたエレシュキガルの顔には、嬉しそうな色が混ざり込んでいるものの、どこか儚げで、虚ろな印象をモードレッドに齎した。
エレシュキガルの住まう世界、冥界。朝も夜も無い、深々と魂魄が降り積もる、寂寞の世界。
彼女にとって、閉ざされたその世界は忌むものなのか、それとも……
「……なんつーかよ、こんなしんみりする気分になるために登山すんのか、お前?」頭をガリガリ掻きながら呆れ果てた声を上げるモードレッド。
「え? しんみり??」不思議そうにモードレッドを振り返るエレシュキガル。「しんみりしてるのかしら? 貴女。それとも私?」
「自覚ねーのかよ」乾いた溜め息を吐き出すモードレッド。「もっとこう、遊ぶっつったら、ワーッ、とか、ギャーッ、とか、気持ちが爆発するもんなんじゃねえのか?」
陽光が薄れつつある黄昏の世界で、エレシュキガルは不思議そうに、――心底不思議そうに、モードレッドをまじまじと見つめる。
「……私、今、とっても楽しいけれど?」
「まじか」
「だって、友達と一緒に山を登るなんて経験、今まで無かったのだもの」嬉しそうにはにかむエレシュキガル。「有り難う、モードレッド。私と友達になってくれて」
「……なんつーかよぉ……」やり難そうにそっぽを向くモードレッド。「やっぱ、お前と俺、相性最悪なんじゃねーか、おい」
「えええ!? ど、どうしてなのだわ!? わ、私何か失礼な事言った!?」突然半べそを掻き始めるエレシュキガル。「ご、ごめんなさい、私、もしかして浮かれちゃってたのだわ……??」
「あぁいや……」言い難そうに顔を逸らすモードレッド。「お前みてえな女とこんな風に話すのが初めてだからよ、戸惑ってんだよ……何て返せばいいのかも分からねえし……つか面倒臭ェ! 何なんだお前! 根暗なだけじゃねーのかよ!!」
「突然キレないで欲しいのだわ!?」
唾を飛ばして激昂するモードレッドに対してびくびくと怯えた様子で縮こまるエレシュキガルだったが、その顔に不意に悠然とした余裕が浮かんできた。
「……ふ、ふぅん……貴女でも、その、意識してくれるのね……?」
「あ? 何をだよ」
「えっ、あっ、その……気を遣ってくれる、みたいな……?」
「は? 殺すぞ」
「突然話が通じなくなったのだわ……」
「おら、帰るぞ帰るぞ。早くカルデアでエミヤのご飯食って寝ようぜ」
トコトコのんびりした速度で山を下っていくモードレッドに、エレシュキガルはとととっ、と早歩きで彼女に駆け寄ると、嬉しそうに顔を覗き込んだ。
「……何だよ?」
「……ううん、なーんでも」ふいっと視線を逸らして微笑むエレシュキガル。「ちゃんと、歩いて帰ってくれるんだなって」
「……」
ボンッ、と魔力放出でモードレッドが宙高く跳び上がり、そのまま見えなくなってしまった。
突然夜の山中に取り残されたエレシュキガルは、暫く呆然と宵の空を見上げていたが、やがて焦燥に駆られた表情を浮かべて、
「ちょちょちょちょ――――ッッ!? 置いて行かないで欲しいのだわ~!?!?!」
悲鳴が木霊した後、十分ほど経ってからモードレッドが恥ずかしそうに戻って来たのだが、それはまた別の話……

【後書】
こう、どちらも初心な一面が有るのが初々しいんじゃないかなーって思いながら(・∀・)ニヤニヤ綴っておりました(笑)。
と言う訳でこの話…デート編とでも言うべき話は、一旦ここで終結です。わたくしとしてはここまでの一連の流れを綴りたかっただけですので、特段続けるつもりは無かった奴でして…w
ただ、友達に好評だったのと、他に綴りたい百合エピソードがちらほら浮かんでしまったので、また折を見て筆を執る予定です。つ、次はきよモーかなぁ…! そんなこったでご愛読ありがとうございました! 日逆先生の次回作にご期待ください!

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