2018年9月11日火曜日

【ベルの狩猟日記】058.パルトー王国【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第58話

058.パルトー王国


 パルトー王国は確かに小国と言われても仕方が無かった。――と言うのも、国と呼ぶべきか、街と呼ぶべきか、寧ろ村と呼ぶべきか、呼称に悩む程の小規模な国土なのだ。国民が二千人にも満たないのも要因の一つだ。
“王国”と呼ばれるのは、あくまで王族の制度が生きているからであり、それが無ければ別の国と合併していてもおかしくなかった。小国が生き残るのは難しい。それでも今日に至るまでパルトー王国が健在なのは、偏に民が皆、自給自足で賄える事に有る。王族は民草に対して無理な年貢を取り立てないし、王族はあくまで国を治める立場にいるだけで、民と同じ物を食べ、同じ立場になって物事を考えるから、民からの信頼が厚い。それ故、パルトー王国は民で成り立っている国と言えた。
 平和な国であるため、徐々に兵力は衰えつつある。人同士の争いに巻き込まれる事が無かったパルトー王国は、兵士の数を減らし、その分、農夫として皆の糧を作る事に精を出す事にした。その傾向が長く続き、モンスターに襲われても外部の猟人に依頼する事が増えつつあったのが、現国王ルカ姫こと、エルが信任するまでの話だ。
 エルは純粋に国の行く末を案じ、信頼の置ける側近であるゲルトスに相談して、戦のためではなく、モンスターを迎撃するために兵力を復活させよう、と方針を打ち立てた。その矢先に起こったのが、パルトー王国近隣にある砂漠地帯でのモンスター出没である。
 本来ならば大型モンスターの狩猟を、今後パルトー王国の守備を担う事になる新兵達に任せたかったのだが、エルとゲルトス、二人の元猟人としての見解は、“まだ早過ぎる”で一致した。そこで急遽、ラウト村の猟人に狩猟を要請したのだ。
「何か、ドンドルマの街を思い出すなー」
「ドンドルマよりも活気に満ちてる気がするな」
「ドンドルマよりも暑いのにゃ!」
 パルトー王国に足を踏み入れた三人の猟人の感想だった。
 アプトノスの竜車に乗って揺られる事、十日。ようやく砂漠地帯を迂回してパルトー王国に辿り着いた三人は、アプトノスを竜舎に預け、街に繰り出した。
 聳え立つ岩山の中心を円形に刳り貫く形でパルトー王国は存在する。それ故、周囲を巨大な岩壁に阻まれ、国の中は些か暗いような印象が先立つ。聳え立つ岩山は元は巨大な岩石だったのだろう。それを刳り貫き、余った石材を使って建てられた家々は皆、頑丈そうだ。入口は東西南北に一つずつ設けられ、何れもが国の中心に向かって大通りを築き、国の中心――パルトー王国の王族が住まう宮殿へと繋がっている。
 宮殿へ向かう道すがら、三人はパルトー王国の民……言わばパルトー族の人達に奇異の目で見られた。
「この国じゃ猟人は珍しいのかな……?」居心地悪そうにベル。
「エルの話を聞くに、そうなんだろうな。直にそれも無くなるだろうけど」気にした風も無くフォアン。
「大丈夫にゃ! 皆、恥ずかしくにゃい格好をしてるのにゃ! 胸を張って行こうにゃ!」自信満々に胸の前で拳を固めるザレア。
「いや、あんたが一番恥ずかしい格好してんだけどね」そこはツッコミを忘れないベル。
「ザレアちゃんは~、いつも~、そんな軽装なの~?」
 おっとりとした口調でミャオがベルに問いかける。ベルは視線を逸らしながらも頷く。
「ザレアはあれで本気装備なんです……たぶん、あたし達の中で一番強いです」
「ベルちゃ~ん? 私に敬語は~、使わなくて良いのよ~?」
「え……でも……」
「いいじゃな~い♪ 私達は~、もう仲間なの~♪ 年上だからって敬ってくれるのは嬉しいんだけど~、折角だから敬語は無しで~、名前も~、呼び捨ててくれないかな~?」
「えーと、良いんですか? ――じゃなくて、良いの?」
「うん~♪ 私も現役の猟人だから~、仲間とは同じ目線で戦いたいんだ~♪ 上下関係って苦手なんだよね~♪ だから~、私もベルちゃん♪ って呼ぶ~♪」
「分かりました――じゃなくて、分かったよ、ミャオ♪」
 二人で笑顔を向け合っている様子を見て、フォアンはこっそりと嘆息する。それをザレアが目敏く見咎める。
「どうしたのにゃ? ――もしかして、人込みが苦手だったのかにゃ?」
「いや、違うんだ。……違うんだ」
 ふぅ、とまた溜息を吐くフォアンに、ザレアは「?」と小首を傾げてしまう。
「宮殿はこっちだよ~、皆~」
 先頭に立って声を張り上げたのは、ウェズ。パルトー王国に来た事が無い四人の猟人を案内するようベルに命じられて、已む無く一緒に就いて来たのである。
 ……已む無く、とは言ったが、命じなくとも来ただろう。彼はエルを女の子だと信じていて、逆玉の輿を狙っているのだ。エルが男だと言う事実を未だに伏せているのは、ベルのちょっとした悪意が為せる技だ。
 大通りの両側には様々な露店が開かれている。新鮮な野菜や魚介類だけでなく、遠方から届けられた工芸品、都で取り扱っている書物や雑誌類、日用雑貨などが取り揃えられ、生活には一切困らない量の品が鏤められている。
 当然、大通りには多くの人間が往来している。小さな国の一体どこに隠れていたのかと思わせる程だ。
「よっ、そこの姉ちゃん! 入荷したばかりのシモフリトマトはどうかね? 甘くて美味しいよう!」
「お嬢ちゃん! 今ならこのガウシカの首飾りが三百z! たった三百zだよ!? 今を逃したら次は無いよ!?」
「ついさっき仕入れたばかりの【狩りに生きる】最新号! 限定三十冊! 早い物勝ちだよ! さぁさぁ、買った買った!」
 両側から怒鳴るように売り文句が飛んでくる。喉を嗄らすのではないかと危惧する程の喧騒だが、不思議と耳障りには感じなかった。皆、笑顔を浮かべているためだろうか。売る方が笑顔で売り、買う方も笑顔で買う。両者共に買物を心底楽しんでいるように映る。
「情勢が落ち着いているから~、国民は安心しているんでしょ~ね~。良い傾向だわ~♪」
 のほほ~んと構えているミャオでも、そういう事は感じるらしい。ベルはそこに驚きを覚えた。
「もしかしてミャオは、そういう場面を見た事が有るの? 大勢の人が救われた場面とか……」
 何気無く尋ねると、フォアンが「ウェズ~」と小走りに駆けて行った。フォアンに視線を向けて「何か遭ったのかな?」と小首を傾げると、ミャオは「有るよ~」と柔和な笑みを浮かべたまま、おっとりと返す。
「昔~、ここよりも大きな街に~、古龍が現れたのよ~。それで~、ウチの主人が迎撃に向かったんだけどねぇ~、迎撃には成功したけど~、帰って来れなかったのよね~。街はちゃんと救われたから~、色んな人に感謝されたよ~」
 昔を思い出しているのだろうか、遠い目をして、いつも以上に間延びした口調で応じるミャオ。ベルはハッとした。
「ご、ごめん、訊いちゃ不味かったかな……?」
「ううん~、良いのよ~♪ ……ベルちゃん、それにザレアちゃんにも知っておいて欲しかったから~♪」
 ミャオの主人と言う事は、フォアンの父親は古龍迎撃戦で、猟人としての人生を全うしたらしい。
 フォアンは自分の事を自ら話す事は無かった。況してや家族の事など、話題に上った事すら無い。“言いたくないのなら無理には訊かない”――フォアンが言った事を、ベルとザレアも自然と守った。だからこそ、初めて聞く事実だった。
「あれからフォアンはね~、猟人になるって聞かなくてねぇ~……、ずっと追い掛けてるのよ~、いなくなった主人の影をね~……」
 感傷的な表情で告げていたミャオだったが、そこで顔を不満そうに切り替える。
「フォアンが猟人になるのは~、全面的に賛成だったんだけど~、狩猟笛を選ばなかったのは~、今でも残念なのよね~。フォアンってば~、お父さんが大剣使いだったからって~、私の忠告も聞かずに~、大剣使いになっちゃったのよね~。あ~あ~、狩猟笛使いだったら~、色々教えられたのになぁ~」
 人差し指を銜えて拗ね始めるミャオを見て、本当に子供っぽいな~、と思うベル。歳と仕草が完全に合っていないにも拘らず、外見で補われて全くおかしく見えない。自分も歳を取るなら、こんな風に若さを保っていたいな、と思ってしまうベルだった。

【後書】
 パルトー王国の設定に関してはザックリザックリとしか考えておりませんでして、当時の情報を漁っても雑としか言いようが無いアレでして…w 今回再投稿するに当たって少しだけ記述を編集しております。流石に人口二百人はアカンと思いまして…(苦笑)
 さてさてフォアンのお父さんに関する情報が出てきましたが、この物語は比較的巻数を重ねた作品ですので、ちらほら主人公三人組の過去にも触れる機会が多かったんですねぇ。大まかな設定だけは考えておりましたが、フォアンの過去設定と言いますか、最終話に向けての根幹はこの段階でだいぶ固まっておりました。後は綴るだけ~って奴ですね!
 次回は宮殿にてあの子達のお話です! お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    サルベージ大丈夫そうで何よりですw

    さてさて、今回のように狩猟が始まる前のお話が大好きなのです。
    パルトー王国の様子がわかったり、フォアんくんの今まで語られなかった
    生い立ちが少しだけ見えたりw情報てんこ盛り!
    そしてなにより「こんな風に若さを保っていたいな、」と
    思うベルちゃんに「うんうんw」と頷いてしまうのでしたw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      何とかサルベージ間に合っておします!wε-(´∀`*)ホッ

      狩猟が始まる前のお話が大好きだなんて嬉しいです~!。゚(゚^ω^゚)゚。
      あちこち情報を出してはいるのですけれど、綴りながら「これいるかなぁ??」と思っているシーンがちらほら有るので、そう言って頂けるのが本当に、本当に嬉しくてですね…!
      ベルちゃんにも共感して頂けているようで嬉しみMAXです! 有り難う御座います…!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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