2018年9月18日火曜日

【ベルの狩猟日記】059.ルカ姫とゲルトス【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G

【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第59話

059.ルカ姫とゲルトス


 宮殿の中は思っていたほど広くなく、庶民的な宮殿、と言う印象を懐く建物だった。
 入ってすぐに長方形の広間が在り、奥に王座が有る、“謁見の間”とでも称すべき部屋が在る。左右には円形の柱が三本突き立っている。茶色で統一された室内は、落ち着いた趣を醸し出している。白色を下地に、黄土色と青色の二重丸が描かれた旗は、恐らくパルトー王国の国旗なのだろう、王座の左右に傾けて差してある。王座へと続く青色の外枠に中心が黄色のカーペットの左右には騎士が三名ずつ、儀礼的な剣を両手で構えて佇んでいる。服装も茶色と青が主な甲冑を纏っている。温暖期で尚且つ南方に位置するパルトー王国で、この格好はキツいだろうなー、とベルは何と無く思う。
「お姉様~! お待ちしておりましたわ~っ!」
 奥から黄色い声が飛んでくる。ベルが思わず苦笑を浮かべて、騎士の間を潜るように進んで行く。
 王座に佇んでいるのは、まさに“お姫様”然とした姿の、ベルの妹・エルフィーユ――と自称している弟・エルトラン――こと、エルだ。更にそれも今では使われる事の無い名前で、現在はパルトー王国第一王女・ルカ姫と言う事になっている。
 隣には騎士長ゲルトスの姿がある。以前逢った時に見たグラビドシリーズを纏ってはおらず、部屋に立ち並ぶ騎士達同様、茶色と青色がメインの甲冑を纏い、煌びやかな長剣を腰に佩いて黙然と佇んでいる。
「……姫様。彼女は姫様の姉君ではなく、“ご親友”です。奇怪な発言はお控え下さい」
 ゲルトスがにが虫を噛み潰した顔で唸るのを見て、エル――ルカ姫は「あ、ごめんなさい。久し振りにお逢い出来たので、以前遊んでいた時の呼び名で呼んでしまいましたわ。ふふふ」と口許に袖を当てて上品に笑む。その下では、チロリと舌が出ていた。
「エル――じゃなかった。ルカ姫は相変わらずのようね」
「貴様! 何だその口の利き方は! 姫様に無礼であろう!!」
 ベルが苦笑混じりに口を開いた途端、控えていた騎士の一人が怒鳴り散らす。驚いて振り返ると、騎士の中でも若輩に当たる者なのだろう、十代後半に見える青年が噛み付かんばかりの獰猛な眼差しでベルを捉えていた。
「――良い。彼女らは姫様のご親友だ。……併しだ、ベル殿。ルカ姫も今やパルトー王国を担いし国長に座する者。貴殿と姫様の立場を弁えよ」
 ベルを見つめて、渋い顔で苦言を呈するゲルトス。彼としてもエルとベルには平時と同じように接して貰いたいのだろうが、ここは公の場だ。民に示しが付かないのだろう。
「あー、ごめん。――じゃなかった、失礼致しました。……えと、ルカ姫様。あたし――わたくしに依頼したい事が有ると聞いて――伺ったのですが、どんな――どのようなモンスターが現れたのか、えーと、お聞かせ願えますか?」
 慣れない言葉遣いにしどろもどろになりながら、ベルは何とか尋ねる。エルは思わず噴き出しそうになりながらも、袖で口許を隠して抱腹に耐え、平静を装って応じようとする。と、
「……姫様。ここは吾輩が代わりに説明致しましょう」
 エルは不満そうにゲルトスを見やったが、すぐに諦めたのか、「分かりました。お願いしますわ、ゲルトス」とどこか熱っぽい視線を向けながら告げる。
 ゲルトスは一つ咳払いをすると、一同を見渡す。
「現在、パルトー王国西側に位置する砂漠地帯に、ダイミョウザザミが出現したと言う情報が寄せられておる。奴はパルトー王国が所有する行路を行き交うキャラバンを襲撃し、現在に至るまでに数度、キャラバンを壊滅させておる。このままではパルトー王国で商売が成り立たなくなる恐れが有る。早急にダイミョウザザミを狩猟して欲しいのだ。狩猟に関しては討伐・捕獲は問わぬ。報酬は相応の額を出すと約束しよう」
 それを聞いた瞬間、ベルの瞳がお金のマークに切り替わったのは言うまでも無い。
 そんなベルに苦笑を向けながらも、フォアンが挙手した。
「? 如何為された? フォアン殿」ゲルトスが片眉を持ち上げて尋ねる。
「いや、ダイミョウザザミは確かに巨大な甲殻種だから脅威だとは思うけど、ここにいる兵士でも何とかなるんじゃないかな~、と思ったんだ」
「貴様も分を弁えろ! 騎士団長殿に何と言う口を利いておるのだ!!」
 先程怒声を張り上げた若い騎士が再びがなり立てる。フォアンは「あー、済まん。つい」と頭を掻きながら応じる。全く反省の色が無い事を見て取り、騎士は歯軋りを始める。
「良い。彼は吾輩の旧知だ。……併し、フォアン殿。今は公の場だ、立場を弁えて欲しい」苦い顔でゲルトス。
「こういう場は苦手なんだ。あと、敬語とかも。許してくれ」淡々とフォアン。
「貴様ァ!!」若い騎士が再び怒声を張り上げる。
「……いや、良い」ゲルトスが疲れたように手を挙げ、それを下げる。「――話を戻そう。確かに、我がパルトー王国騎士団の兵力が有ればダイミョウザザミ“一頭”を討伐する事は難しくないのだが……」
「一頭じゃにゃいのにゃ?」
 ザレアが〈アイルーフェイク〉を傾げて問うと、ゲルトスは重々しく頷く。
「確認されたのは二頭。念には念を入れて、此度の件は外部の者に任せると姫様はご決断為された。吾輩も異存は無い。更に貴殿らは、ティガレックスをも退ける、腕の立つ猟人だ。その腕を見込んで、此度の狩猟を一任したいと考えておる」
 また二頭もいるのか……とベルはげんなりと嘆息する。熟々モンスター二頭狩猟に縁が有る、と思わずにいられなかった。
「早急に手を打って貰いたいのだが……一人、我ら騎士団の中から兵士を引き抜いて貰っても構わないが?」
「へ? もうあた――わたくし達は四人揃っているんだけど――いるのですが……?」不思議そうに応じるベル。
「ふむ? ベル殿、フォアン殿、ザレア殿は見受けられるが、もう一人はどこにおるのだ?」小首を傾げて、こちらも不思議そうにゲルトス。
「はい? ……って、あれ? フォアン、ミャオは?」
 よく見ると、ミャオの姿が見当たらない。さっきまで隣にいた筈なのに。全く気配を感じさせない人だな、とベルは驚いた。
「お袋はこういう公式の場が頗る苦手なんだ。終わったら戻って来ると思う」淡々と応じるフォアン。
「そうなんだ……その辺はフォアンにそっくりね……」
 苦笑を呈し、ベルはゲルトスに向き直る。
「えーと、もう一人仲間がいるのですが、今は席を外していて……私達よりも腕の立つ方なので、問題無いと思います」
「そうか。では早速で悪いが――」
「――ゲルトス。来て早々に狩猟に向かわせては、遠路遥々お越し下さった彼らに失礼でしょう? 旅の疲れも有るでしょう。一晩じっくり体を休め、明日にでも狩猟をお願い致しましょう」
 エル――ルカ姫がゲルトスに視線で何かを訴える。ゲルトスはその真意を悟ったのか、「は、申し訳有りませぬ、姫様」と膝を突いて頭を垂れる。ルカ姫は満足したように目尻を下げ、再びベル達三人に視線を向ける。
「今宵は我が宮殿でお休みになって下さい。部屋にはゲルトスが案内致します」
「ありがと――じゃなかった、感謝致します、姫様。……えーと、お言葉に甘えさせて頂きます」
 お辞儀をして応じるベルに、エルは嬉しそうに笑むのだった。

【後書】
  わたくし自身はオンライン上では割かし敬語と言いますか、丁寧語を使うように心掛けているのですけれど、正直付け焼き刃の語彙力なので、大体変な言葉遣いになってしまうのですなーw
 それはそれとして、わたくしの物語の登場人物って殆どが「敬語&丁寧語が使えない!」って子ばかりで、これ現代社会だったら大惨事だぞ…w と思わずにいられないマンです(笑)。
 言葉遣いが乱れてても社会に溶け込める子は溶け込めるでしょうし、フォアン君やザレアちゃんにしても、何だかんだ溶け込みそうな気がしてならない訳ですが!w うーん羨ましいw
 さてさて、次回はエルちゃんとお話しをする回です。「あれ~? そう言えば~、行商人の~、ウェズ君はどうしたの~?」…お楽しみに!w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    エルちゃんの板についたお姫様っぷり!!
    なれない敬語にしどろもどろなベルちゃん!!
    そしてゲルトスさん…まぁ、たいへんですなwお大事に!!(えっw

    たしかにフォアン君やザレアちゃんはうまく溶け込めそうですねw
    本人は溶け込むとかの自覚はなさそうですが、イケそうですw

    ミャオさんも心配してるウェズ君、いやほんとどうした?!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      エルちゃん、ちゃんとお姫様できてたでしょうか…! (*´σー`)エヘヘ
      ベルちゃんは普段そういう所が抜けてる感が出せていれば大勝利です!(笑)
      ゲルトスさんの扱いwwまぁ、大変でしたね!w これからも心労が絶えそうにありませんな!ww

      ですよね!w フォアン君もザレアちゃんもすぐに溶け込みそうで、且つそういう事に頓着しなさそうな辺りがこう、ずっこいぞ君達!w

      ウェズ君の処遇ですが、次回最後に明らかになりますので、ぜひぜひお楽しみに!(笑)

      今回もお楽しみ頂けましたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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