2018年10月16日火曜日

【ベルの狩猟日記】063.砂に潜む巨大蟹!【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第63話

063.砂に潜む巨大蟹!


 ダイミョウザザミの動きは単調な事が多く、ダイミョウザザミの幼体と見られているヤオザミがしてくる、大きな爪を使って前に小突く攻撃、爪をフックのようにして転ばせる攻撃、そして両爪を横に広げ、抱きつくようにしてくる攻撃が、主な攻撃手段だ。何れも至近距離でしか威力を発揮しないものばかりだが、その一撃一撃は大型モンスターだけあって、重い。
「うぐッ」
 ひたすら節足を攻撃していたフォアンが躓く。ダイミョウザザミの巨大な爪によって小突かれたのだ。ヤオザミのそれと比べると、段違いの重さだが――正味の話、剣士にはそこまで脅威と呼べる威力ではない。それ故、剣士は何度攻撃されても立ち向かって行くのだが――そこに罠が仕掛けてある。
「! フォアン! 一度下がって回復!」
 遠距離からひたすら拡散弓を放っていたベルが怒声を張り上げる。その意味に気づいたフォアンは、それ以上ダイミョウザザミに攻撃を加えず、フルミナントブレイドを背負い直す。その隙にザレアが打ち上げタル爆弾を設置し、ミャオが気を惹きつけるようにダイミョウザザミの背負う一角竜の甲殻目掛けてシャミセン【狼】を叩きつける。
 ダイミョウザザミから距離を取ったフォアンは、その場に膝を突いた。肩で息をしている事を、ようやく自覚した。
 ――ダイミョウザザミの一撃は、重いようで軽く、そして軽いようで重い。防御力を強化した防具を纏っている剣士には、一撃を喰らってもまだ大丈夫と言う意識が働き、回復を疎かにしがちになる。それが罠とも知らず。
 何度と無く小突き回されると、体力が低下している事にも気づかずに攻撃を続け――やがて致命的な一撃を喰らって昇天――その時になって自分が回復を忘れていた事に気づくのだ。相手を格下のモンスターと侮っている訳ではない。一撃が軽過ぎると軽視している訳でもない。まだ回復しなくても大丈夫だろうという、自分への過信が仇となるのだ。
「済まん、助かった!」
 手を挙げて感謝の意を伝えるフォアンに、ベルは笑って応じる。遠距離から全体を見渡せるだけに、仲間の状態も見えてくる。今回も、何度と無くダイミョウザザミの攻撃を受けていたフォアンの動きが徐々に鈍っている事に気づき、声を掛けたのだ。
「そーれーっ、そーれーっ♪」
 その点、ミャオの戦い方はまるで遊んでいるかのように楽しげだ。シャミセン【狼】を右に左にと、何度と無く振り回してダイミョウザザミの殻に叩きつけている。直接ダイミョウザザミの体に傷を付けている訳ではないが、叩きつけた衝撃が振動となってダイミョウザザミを苦しめていた。
 狩猟とは本来、モンスターの強大なる力と、人間の知恵と技術の結晶の衝突だと、ベルは感じている。それがミャオを見ていると、ぶつかり合いそのものを楽しんでいるように思えるのだ。
 全力を出さずとも勝てる相手と認識したが故の余裕なのか。それとも、あれが彼女なりの本気なのか。判然としなかったが、ベルはそれも“ミャオらしさ”だと感じ、つい口許に笑みが浮かぶ。
「うにゃーっ! 次は打ち上げタル爆弾Gにゃっ!」
 一方、相変わらず爆弾をこよなく愛し、爆弾でしか狩猟を行なわない猫娘はと言えば、打ち上げタル爆弾を全て使いきったのか、新たに取り出したのは、似たような形状のタル爆弾。それを地面に設置し、ダイミョウザザミへ向けて、次々と飛ばしている。
 一撃一撃は然程重くないだろう。だが、流石にこれだけの量の爆撃をマトモに受ければダイミョウザザミとて……
「ギシャァァァァッッ!!」
 口角から大量の泡を噴き出して激昂するダイミョウザザミ。いつまで経っても自分から離れず、且つ鬱陶しく纏わり付いて攻撃してくる人間達に怒り心頭なのだろう、先刻よりも機敏な動きで走り、無防備なザレアに向けて直進してくる。
「ザレア! 狙われてるわよ!!」
 弓の射程ギリギリの距離から狙撃していたベルがザレアへ向けて注意を投げる。ザレアは打ち上げタル爆弾Gをセットしながら、顔を持ち上げて急に近づいてきたダイミョウザザミを捉える。
 ダイミョウザザミは果たして、ザレアの許までは辿り着かず、高速で動かしていた節足を途中で止めた。正面にザレアを見据える形で、急停止したダイミョウザザミ。ベルは自分の狙撃で注意を逸らせたのではない事に気づいていた。
 ダイミョウザザミは停止した直後、巨大な爪を口角に添え、何かを溜め込むように僅かに仰け反り――
「ザレア! 泡ブレスよ!!」
 直前に気づいたベルの忠告だったが、ザレアは既に察していたのだろう。ダイミョウザザミが狙いを定めて噴射した泡ブレスを、軽やかに飛び跳ねて躱した。相変わらず、獣染みた運動神経で回避行動を取る娘だと、ベルは安堵と共に感じた。
 防具を付けていない分、運動能力が最大まで発揮されるのだろう。野生児染みた動きで飛び跳ね、駆け抜け、転がり避ける。猟人全員に要求される動きを最大限にまで高めたような動きで狩場を駆け抜ける姿は、人間より自然の姿に近い。
「どぅるりゃーっ!」
 ダイミョウザザミが泡ブレスを放っている間に肉薄していたフォアンが、フルミナントブレイドをダイミョウザザミの巨大な爪に叩き下ろす。ガギンッ、と硬質な音が響いた。擦り傷程度のダメージしか与えられていないようで、フォアンもそれにすぐに気づいたのだろう、ダイミョウザザミが攻勢に出る前に前転し、再びダイミョウザザミの死角――節足と節足の間に体を割り込ませ、フルミナントブレイドを振り抜く。
 フォアンが死角からフルミナントブレイドを何度も叩きつけている間に、ミャオも接近――再び「そーれーっ♪」の掛け声と共にダイミョウザザミの背負う一角竜の頭殻に向けてシャミセン【狼】をこれでもかと叩きつける。
 そんな時だった。
 バギンッと、爪を叩いた時よりも硬質な破砕音が鳴り響いたのは。
「シギャァァァァアアアアッッ!?」
 突然ダイミョウザザミが驚いたように前へ向かって跳び上がり、倒れ込むように砂の大地をのた打ち回る。よく見ると、背負っている一角竜の頭殻に皹が入っている。何度と無くシャミセン【狼】の強打に晒され、遂に限界を迎えたのだろうか。隙間からはダイミョウザザミの弱点である、丸みを帯びた隠れた体の部分が覗いている。
「いえ~い~♪ ちょっとだけ破壊したよ~♪」
 言いながらミャオはダイミョウザザミから距離を取っていく。何をするのだろう――と思った瞬間、すぐに回答が頭の中に生まれる。演奏を再開する気だ。
 ――ベベベンっ、ベベンっ、ベベベンっ!
 物悲しい旋律ではあるものの、シャミセンの演奏を聞いた事が無かったベルは、初めて感じる音楽の耳触りの良さに、狩猟中だという事を忘れそうだった。それだけミャオの演奏は無駄が無く、聞き心地の良い音楽だった。
 彼女が演奏して間も無く、体の内側から再び力が湧き上がってくるのを感じた。猟人が用いる武器の一つである狩猟笛には、笛だけでなく、様々な種類の楽器が存在する。シャミセンだったり、ギターだったり、フルートだったり、ホイッスルだったり、リコーダーだったり、法螺貝なども有ると聞いた事が有る。その種類によって演奏で得られる効果が違っていて、ミャオのように力を湧き上がらせたり、防具の硬度を上げたり、回復薬のように猟人を癒したり、暑さや寒さを感じさせなくしたり、モンスターの咆哮を無効化してくれたりする。
 様々な効果を期待して狩猟笛使いに演奏して貰う事は勿論だが、狩猟笛使いは楽器のような武器を鈍器の如く振り回し、時に大剣や片手剣では壊せないようなモンスターの部位を破壊する事も出来るから、使い方さえ学べば援護も攻撃も熟せるのだ。
 ただ、演奏している間は無防備そのものだから、そこは仲間がモンスターの気を惹きつけておく必要が有る。――尤も、今更そんな事を説明しなくとも、皆分かっているようだったが。
「どぅるりゃァァァァっ!」
「うにゃにゃにゃにゃーっ!」
 フルミナントブレイドが節足を傷つけ、打ち上げタル爆弾Gが顔を直撃して行く。更に遠距離からはベルの狙撃のオマケ付きだ。演奏中で無防備を晒すミャオを見ても、ダイミョウザザミは彼女に構っていられる状態ではなかった。
 ダイミョウザザミは三方向からの斬撃・爆撃・狙撃に、あたふたとその場を行ったり来たりを繰り返し、誰にも的を絞れない醜態を晒していた。更にミャオが演奏を完了し、再び前線へ戻って来たのを見て、ベルは勝利を確信し――
 ずずんっ、と重たい衝撃が砂の大地全体に鳴動し、聳え立つ巨塔のような真紅の角が灼熱の大地に生えた。
「――まさか!?」
 大地を揺るがしながら出現したモンスターは、目前で傷ついている巨大な蟹と瓜二つの姿をしていた。

【後書】
 ダイミョウザザミと戦っている時にいつの間にか体力が減っているうんたんのくだりはアレです、わたくしの当時のプレイスタイルだとそうなっていたと言う実体験と言いますか、体験談的なお話ですw 軽ぅい攻撃を受け続けていつの間にか瀕死になってるマンだったのも有りますが、仲間がしょっちゅう死にかけているシーンを垣間見ていたので、実際の狩猟でも傷だらけになりながらも興奮状態で気づかない感じなのかなーとかそんな妄想ですw
 あと遂にサルベージ作業が終わりを迎えたので、エピソード5は無事に完結まで更新できそうです!ε-(´∀`*)ホッ その後のエピソードはサルベージ済みなので、来年までのんび~り再投稿して参りますぞう! そんなこったで次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    まずはサルベージお疲れ様でした!これで一安心ですv

    いつの間にか体力減ってるのは怖いですよね。
    ザザミもそうなんだけど、ヤオザミも怖いですw
    とくに一人で火事場弓で狩猟してるときに囲まれたりしたら、
    「あぁ…」ってなっちゃいますw

    それにしてもミャオさんかっこいいなぁvv
    ベルちゃん、ミャオさんの演奏が聞き心地良いのはね
    仲間のことを想って演奏するからなんだよ。

    安定の2頭合流!みんな頑張ってvv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      労いのお言葉、有り難う御座います~!! わたくしもやっと人心地つきました…w

      ザザミってコツコツダメージが蓄積してる感じなんですよね…あれ、いつの間にこんなに減ってるんだ体力! って感じでw
      火事場弓でヤオザミは脅威以外の何物でもないですな!w 特にあの素早い横走りで回り込まれた時の絶望感たるや…w

      ミャオさんカッコいいヤッター!┗(^ω^)┛
      仲間のことを想って演奏するから聞き心地が良い…! ほんとそれですな! きっとあの「ベベベン!」にはミャオさんの色んな想いが込められているんでしょう。そう考えると、狩猟笛が段々と尊く思えてきますね…!

      安定の2頭合流!w 2頭クエなら定番の展開ですよね!(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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