2018年10月2日火曜日

【ベルの狩猟日記】061.幻想夜【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第61話

061.幻想夜


「――声を掛けちゃダメよ~、フォアン~」
 夕暮れに満ちた、村の中を通る畦道。夏の虫達が辺りを飛び回り、蝉の喧騒が耳朶を打つ。母と手を繋いで歩く道すがら、フォアンは人影を見つけて、何と無く手を伸ばそうとして、母――ミャオから間延びした注意を投げられた。
 キョトンとした顔で見上げると、優しい顔をしたミャオが、フォアンと同じ目線になるように屈み込み、フォアンが視えている、他の人には見えないモノを視て、続きを告げる。
「あれはね~、この世のモノではないの~」
「でも、服着てる」
 フォアンは薄っすらと浮かんでいる人影を見て、ポツリと言を零す。
 人影は、暮れ沈もうとしている太陽の光で透け、朧気な姿を漂わせている。頼り無い姿は、まるで次の瞬間には泡沫のように消えて無くなってしまいそうな儚さが同居していた。
「どんな格好をしていても~、この世のモノではないモノを認めてはならないのよ~」
「どうして?」
 フォアンは再び母の顔を覗き込む。母はおっとりとした表情のまま、フォアンに微笑みかける。そして、再びこの世ならざるモノへと視線を向ける。
「この世を旅立った者はね~、あの世から私達を見守ってるのよ~。でもね~、安心できない者も~、やっぱりいるのよ~」
「どうして安心できないの?」
「例えば~、フォアンが今、この世を旅立ったとして~、フォアンは何か不安になる事って~、有るかしら~?」
「母さんと父さんが心配だ」
 悩む時間など必要無かった。その時のフォアンには、二人の安否以外に心配すべきモノは無かった。
 自分を愛してくれている母と父だ、自分の存在が消える事で、きっと凄く落ち込む。自分がいなくなれば、母と父を慰める事が出来ない。それだけが、気掛かりだった。
 ミャオは優しく微笑み、フォアンの頭を柔らかく撫でる。
「私も~、私がいなくなったら~、お父さんとフォアンの事が心配になるわ~。そういう時、いなくなった人はね~、出来る限り近くで見守ってあげたい~、って思うようになるのよ~」
 自分がいなくなった事で、家族や友人、恋人はどうなるのか、いなくなった者は不安になる。だから、家族や友人、恋人が、自分が近くで見守らなくとも大丈夫だと思えるまで、この世に留まって見守るのだと言う。
「でも、どうして声を掛けちゃいけないの?」
「それは~、やっぱり恥ずかしいじゃない~。こっそり見守ってるのに~、声を掛けられたら~、……ね?」
「よく分かんない」
「そうね~、フォアンはまだ知らなくても良いわ~。でも~、きっといつか~、分かる日が来ると思うわ~」
 微笑んだまま母は立ち上がり、再びフォアンと手を繋いで夕暮れに沈む畦道を歩いて行く。
 蝉の鳴き声が雨のように降り頻る畦道を、ゆっくり、ゆっくりと――――


「…………」
 気づくと、瞼が開いていた。高い天井を支える梁を見つめたまま、フォアンはぼんやりと起き上がる。隣では〈アイルーフェイク〉を被ったままのザレアが酷い寝相で布団を跳ね飛ばして眠っている。その反対側では小さく丸まって眠るベルの姿。ベルは以前、起きた時にザレアの〈アイルーフェイク〉が至近距離に有った事で驚きのあまりそのまま意識が飛んだ事が有り、それ以来ザレアと隣同士で寝る事は無くなり、こういう場では必ずフォアンを間に挟むようにしていた。
 広い部屋の一角には、テラスへ続くガラス戸が有る。そこは今、半分だけ開いており、夜気の混ざった涼しげな風が入り込んできている。フォアンはインナーに素足の格好で、テラスへと出る。
「あら~? 起こしちゃったかしら~?」
 テラスでは、月光を浴びていつも以上に幻想的に映るミャオが佇んでいた。
 フォアンは小さく首を否と振り、ミャオの隣に立つ。柵に背を預け、頭上を見上げる。
 満天の空には宝石箱をぶち撒けたような星屑が鏤められている。何故か、現実感が希薄な世界だな、とフォアンは感じた。
「……母さん」
 小さく漏れた言葉は、彼が今では使わなくなった、昔はよく使っていた単語。ミャオは「ん~?」と柵に腕を預けたまま、振り向かずに声だけを返す。
「逢いに行けなくて、ごめん」
「うふふ~♪ 良いのよ~、別に~。フォアンが元気にやってるって証だもの~♪ これで早々に帰ってきてたら~、怒っちゃうところだよ~」
 ――猟人になるために、街に行く。
 当時もミャオは現役の猟人だったが、フォアンは一人で街へ出た。母は反対などせず、笑って送り出してくれた。フォアンが自分の足で自立した事が嬉しかったのか、両親共にやっていた猟人稼業を継いでくれた事が嬉しかったのか。それは結局、今でも分からない。
 街へ出た事に、後悔は無い。ミャオとて、強かに生きてきた猟人だと分かっていたため、フォアンがいなくなった程度で生活が苦しくなる事は無い。何ヶ月に一度は手紙を書き、双方共に元気だと話し合っていた。
 だから、フォアンは、
「……これで、猟人を引退するんだろ?」
 ここにミャオが現れた意味を、正確に理解していた。
 ミャオはいつもの、日向ぼっこをしている猫のように脱力しきった表情で、顎を腕の上に載せ、パタパタと尻尾を振るように足を動かす。
「うん~、そうね~。これが~、私の~、現役最後の狩猟になるわね~。もう、肉体的にも限界を感じてるし~」
 最後くらい~、息子と一緒に狩りがしたいじゃな~い~、と笑いかけるミャオ。フォアンも、それには微笑を浮かべた。
「だな。俺も一度、お袋と一緒に狩りに出掛けたいと思ってたんだ」
「うふふ~♪ だから~、明日は宜しくね~♪ フォアン♪」
 二人は視線を交わし、微笑を浮かべ合う。
 幻想的な夜は、二人を優しく包み込んだ。

【後書】
 拙作【霊夏】でもこういう雰囲気のシーンが有ったかと思いますが、わたくしはこういう、“何だか普段と異なる雰囲気の夜”と言うのが、すんごい好きでしてな…たぶん幼少期にサモンナイト2を触れた影響です。夜会話…アレは良いモノだ…(懐古)。
 さてさて今回からBlog【逆断の牢】では断さんの表紙が付く事になりました~! 最高にカッコいいラウト村ハンターズの三人組です! Twitterでの宣伝ツイートが初出しになってしまいましたが、今後は断さんの表紙共々宜しくお願い致しますです(*- -)(*_ _)ペコリ
 さて、次回の更新なんですが、予定ではいつも通り火曜日に更新したいと思っております、が! サルベージが全然なのでもしかしたら突然延期されるかも…なので、更新が途絶したら「あっ、日逆さんのサルベージ作業が上手く行ってないんだな!」と思って頂けたらと思いますw そんなこったで次回もお楽しみに! 頑張ってサルベージするよう!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    “何だか普段と異なる雰囲気の夜”よぉ~くわかりますw

    それよりもあれですよ先生!!表紙、表紙!!!
    Twitterの告知みてぶったまげぇ~v
    すっっっっごくよいです!!!
    アイルーフェイクのつぶらな瞳、トゲトゲしてるレックスシリーズ、
    ピンクがかわいいフルフルD。
    かんぺきじゃないですかっっ!
    表紙だけでご飯3杯行けそうですvv
    断さんありがとう!!

    ととととりあえずサルベージがんばってくださいv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      分かって頂けますか!w (*´σー`)エヘヘw

      ですです! 最高な表紙を頂きましたよ!!
      そんなとみちゃんのコメントに対する断さんの反応を書き記しておきまする!

      ※ここから断さんの返信

      とみちゃんに褒めて頂けて光栄の極みです! 恐縮です! 私の方こそとみちゃんのコメントだけでご飯3杯行けます! 本当にありがとうございました!

      ※ここまで断さんの返信

      私の方からも改めて有り難う御座いました! とみちゃんの感想だけでご飯3杯余裕ですよ!(笑顔)

      ととととりあえずサルベージ頑張ってきまっす!w( ´∀`)bグッ!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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