2018年12月4日火曜日

【ベルの狩猟日記】070.ベルの師匠【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第70話

070.ベルの師匠


「オートリアの街って、初めて行くのにゃ~」
 アプトノスが牽く竜車の中で、〈アイルーフェイク〉を被った少女、ザレアが呟いた。
 ティアリィと雑談に興じていたベルは、何故か酒場の前で屯していた一同を迎え入れ、これから街へ出掛ける旨を伝えると、その日の昼にはラウト村を発っていた。フォアンとザレアは勿論の事ながら、コニカも街へ出掛ける事に賛成し、手を振って見送ってくれた。
 因みに、村に一人も猟人がいないのはどうだろうと言う、ベルが再三疑問に感じていた質問に対し、コニカは笑顔で応じた。
「アネさんがいますから♪」
 その一言で、その場に居合わせた全員が納得できた。彼女――否、彼になら村を任せられる、と。
 今回、竜車を繰っているのはティアリィだ。いつもの給仕服ではなく、外見に合う可憐な私服に身を包み、手綱を握っている。
 客車の中でのんびりと風景を眺めていたベルが車内へ視線を向け直すと、ザレアが〈アイルーフェイク〉の目を輝かせて自分を見つめている姿が視野に入った。
 ザレアが言うように、今回ティアリィの用事が有る街の名前は、オートリアだ。
「そうねぇ、ドンドルマに比べたら規模は小さいけど、割と大きな街ね。――そうそう、あたしの師匠がいる街よ」
「ベルさんのお師匠様がいるのかにゃ! 是非逢ってみたいのにゃ!」
 興味津々で話に食いつくザレアに、ベルは思わず苦笑を呈する。手をヒラヒラと振って、「逢わない方が良いって」と告げる。
「何でだ? ベルの狩猟の基礎は、師匠から教わったものなんだろ? 俺も一度、逢ってみたいな」
「あぁ、フォアンなら大丈夫だと思うわ」
 フォアンが小首を傾げて問うと、何故かベルは首肯する。ザレアが思わず「がーんっ」と衝撃を受けたようにたじろぐ。
「オ、オイラはダメで、フォアン君は良いのにゃ……っ? オ、オイラも逢いたいのにゃ! どうしてオイラだけ仲間外れにするのにゃーっ!」
 大声で喚き散らすザレアを見て、ベルが慌てて慰めるように説明を付け加える。
「違うのよザレアっ。その……前に話したと思うんだけど、あたしの師匠って……超が付く程のエロジジイなのよ。ザレアに魔の手が伸びるなんて、考えたくも無いわ」
 本気で憂鬱そうに嘆息するベルを見て、よっぽどなのだろうと推測する二人の猟人。
「例えばどんなセクハラ行為をするんだ?」
「……あんた、それをあたしの口から言えと? それも歴としたセクハラ行為だと思うんだけど?」
「あぁ、そう言えばそうだ。済まん、今の話は忘れてくれ」
 平謝りするフォアンを見て、ベルは複雑そうな表情で嘆息。
「……まぁ、皆が想像できるような行為を四六時中やってんのよ、あの色情魔は」
「でも、そんなセクハラ行為ばかりしてて、よく捕まらないな。ギルドナイツは流石に動かないまでも、街を守るガーディアンとは一悶着有って良さそうなもんだけど」
 フォアンが腕を組んで難しい顔になる。ベルの発言が正しいのなら、そんな人間がいたら猟人と言えど女性限定で誰も近づこうとしなくなるだろう。それでも街に居を構えているのだから、不思議な気がする。
 フォアンが言いたい事を何と無く察したベルは、苦笑を滲ませて応じる。
「セクハラをするって言っても、身内のお手伝いさんにしかしないわよ。……あと、馴染みの酒場の給仕さんとか?」
「お手伝いさんがいるのかにゃ? もしかして、ベルさんのお師匠様って、お金持ちだったりするのかにゃ?」
 ザレアが小首を傾げて問うと、ベルはコクリと頷いた。
「あたしは知らないんだけど、割と有名な猟人だったらしいわよ。でもまぁ、二人に比べたらきっと霞んじゃう程だと思うけど」
 ベルは苦笑を浮かべて謙遜する。フォアンの父親は命を賭して古龍を迎撃した英雄、ザレアの師匠はギルドナイツの騎士長だ。二人ほど有名な猟人はいないだろうと、ベルは高を括っていた。
「それで? ベルの師匠って何て名前なんだ? もしかしたら俺達が知ってる程の有名な猟人かも知れないし」
「そうにゃそうにゃ! ベルさんだけ教えてくれにゃいにゃんて狡いのにゃ!」
「そ、そう? あたしの師匠はワイゼンって名前の弓使いでね、地元では“ワイゼン翁”の愛称で呼ばれてたわ」
 竜車の揺れ動く、ゴトゴトと言う音以外が絶えた客車。
 ベルが「ほら、やっぱり知らないでしょ?」と苦笑を浮かべた、その時。二人の猟人が驚きの声を上げる。
「――【猟賢】ワイゼン翁かにゃ!?」
「ワイゼン翁って言ったら、超が付く程の有名人だぞ」
 ザレアが素っ頓狂な声を上げ、フォアンが驚きに眉を持ち上げて呟く。
 二人の予想外の反応にベルは不思議な表情を浮かべた。
「え? 【猟賢】ワイゼン翁? ……って、何の事?」
「――ベルは渾名って知ってるよな?」
「あ、うん、それは知ってるわ。ハンターズギルドが認める実力を誇る猟人の事よね? 認められるには相当数のモンスターを狩猟しないといけないとか……」
「そうそう。で、ワイゼン翁は、還暦を迎えても現役猟人として活躍している事と、その豊満な知識をハンターズギルドと共有して貢献している事から、【猟賢】の渾名を付けられたらしい。黒子の弓使いで名を馳せた、実力も確かな猟人だって聞いてるぜ」
「豊富にゃ知識は、狩猟に関する事、モンスターに関する事だけじゃにゃくて、地域や武具、気候や古代の文献に関するあらゆる事柄が含まれる、博覧強記だって話だにゃ! 彼に解らにゃい事にゃど無いと言わしめる程の猟人が、ベルさんのお師匠様だったにゃんて! か、感激だにゃーっ!」
 二人して興奮気味に詰め寄ってくるので、ベルはたじたじだった。
「ちょっ、ちょっと落ち着いて! あたしに少し考える時間を頂戴!」
 二人の猟人が興奮冷めやらぬままに視線を浴びせてくる中、ベルは深呼吸して悩ましげな表情で呟く。
「……一つ訊きたいんだけど、二人してあたしを騙そうとか……」
「ワイゼン翁の話を聞かせてくれ。頼む。何でもいい」
「にゃーっ、早くワイゼン翁に逢いたいのにゃーっ」
「……じゃないのね……。えーっ、絶対に有り得ないわよ! きっと人違いよ! 同名の人違いに違いないわ!」
 自分の中に有るイメージと、二人が語る人物のイメージが全く噛み合わないのだから、ベルにとっては別人の話をしているとしか考えられなかった。
「ベルさんが師事していた方って、ワイゼン翁だったのですか~」
 そんな時、ふと客車の外から声が聞こえてきた。アプトノスの手綱を繰っているティアリィだ。
 そんな彼女の方へ向けて、ベルは苦笑と共に声を投げる。
「ティアリィまで止めてよ~。絶対に違うって!」
「そうでしょうか~。ベルさんの弓の腕をこの目で見た事が無いのにこんな事を言うのはおかしいのですが、武具を見る限りでは確りとした腕前を持っているのですよね? 女の身で、それもそんな歳で武具を揃えられるのですから、相応の鍛練は必須。ワイゼン翁を師事していたと考えれば、その話にも信憑性が湧きますよ~」
 尤もらしい事を言うティアリィに、ベルは何とか言い返そうとするが、返す言葉が思いつかなかった。
 自分の素質が良かった、と驕るつもりは無いが、どうしても自分の知るワイゼンと、彼らの語るワイゼンが合致しない。
「……まぁ、そうね。逢ってみたら解ると思うわ。確実に幻滅すると思うから、覚悟しといてね?」
 念を押すベルに対し、二人の猟人は早くも浮かれている。ベルは嘆息を零し、まだ遠めにも見えない街にいる師匠に想いを馳せる。
 ……有り得ない……。
 それ以外の感想が浮かばないベルだった。

【後書】
 と言う訳で遂に色々明かされて参りましたが、あの過去は実は…! ネタが大好きっ子のわたくし、やっとここまで来た~感で一杯です!(笑)
 実はこの辺りを綴ってた当時、【小説家になろう】に投稿していたのですけれどね、ちょこちょこ感想を頂く機会が増えまして、色んなモンハン二次作家さんと交流する機会に恵まれまして。わたくしも気紛れによその作品を読み漁っていたのですが、二つ名かっこええなー! と思ったりしたのですよ!
 こういう、何と言うんですか、その人物を表す短い語録って中二病がざわめく奴でして…! んでまー漢字を組み合わせるのが大好きマンですからね、こういう妄想を働かせて日々(・∀・)ニヤニヤして過ごしてる訳ですよ!w
 あとこれは更なる蛇足なのですが、集落の名前を考えるのが苦手マンでして、毎度直感で閃いた単語をパッと使ってる奴です。オートリア。クルマの事でも考えていたのかも知れません(笑)。
 そんなこったで次回もお楽しみに~♪w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ちょっといそg(以下同文

    「アネさんがいますから♪」たしかにそうだわww

    因縁渦巻くオートリア!彼らの運命は!?
    みたいな感じの展開を期待してしまいがちな今日このごろ
    皆様いかがお過ごしでしょうか?
    それにしてもセクハラ師匠とラウト村ハンターズ+1の対面が楽しみ!

    わたしも二つ名ほしいなw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv


    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      いえいえ~!w いつでもいいんですのよ!w

      それな!www この安心感よ!ww(笑)

      分かり味が深い…! 素敵な妄想を膨らませて頂けると、作者冥利に尽きるって奴です…!┗(^ω^)┛
      セクハラ師匠はほんともー、初めてこんなキャラ綴った感で一杯です!(笑)

      にゃん…だと…!? とみちゃんの二つ名…!「狩衣人(かりいと)」とかどうでせう…!(すぐ考えちゃうマン)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!