2018年12月5日水曜日

【滅びの王】59頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/03/17に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
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■第60話

59頁■神門練磨の書15『滅びの王の力』


「あんた、――やっぱり《滅びの王》に間違いないわ」
「――――」
 一瞬、言ってる意味が理解できなくて、頭が白紙に戻された。
 白紙に戻った脳味噌に文字が書き込まれる。『あんた、――やっぱり《滅びの王》に間違いないわ』。
《滅びの王》? オレが? やっぱり?
「《滅びの王》としての力は、地味だけど、超絶無比には違いないわ」
「えっ? えっ? オレの力が、《滅びの王》としての力が、分かっちまったのか?」
「今、確認してみるわ。――ちょうど良い塩梅に〈器石〉が落ちてるわね。拾って」
「コレか?」
 指差された石――蟹頃のネックレスに付いていた石を拾い上げると、咲希の指示を待った。
「念じなさい。あんたが欲しい力を」
「念じるだけで良いのか?」
「多分」
「多分って……」
「良いからやりなさいよ! じれったいわね! あんたも男なら言われた通りやりなさいよ!」
 男は関係ねえだろ……と突っ込み掛けたけれど、咲希の殺意さえ感じられる眼光を向けられ、黙って念じる事にした。
 オレが欲しい力……それはやっぱり、あの大鬼をぶっ飛ばせるだけの力。何の小細工も要らない、ただ、〈ぶっ飛ばせる〉だけで良い……!
 オレは、あの大鬼を〈ぶっ飛ばす〉力が欲しい……!
「――……後は、その石を握り締めて、使いたい力を使えば良いわ」
「マジかよ……そんな簡単に使えて良いもんなのか、これ?」
「い・い・か・ら・使ってこいィィィィ!」
「はいィィィィ!」
 その時、八宵の槍が弾かれた瞬間に遭遇した! 棍棒を使って、突き出されたばかりの槍を下から搗ち上げ、そのまま隙だらけの八宵に棍棒の魔手が伸びると――八宵の体を大きく吹き飛ばした!
「ガハぅっ」
 遺跡の一部を破壊して、八宵は瓦礫の中に倒れ込んだ。
 瞬間、オレの頭の中のスイッチが入った。
 思考はクリアになり、「あのバカをぶっ飛ばす」と言う単純な目的だけが念頭に置かれ、他の雑念は全て抹消された。
 蟹頃が振り向く直前――オレは眼前で立ち止まり、こちらに向くまで待ってやった。そして完全に振り向いた瞬間、オレは顔面に石を握り締めた拳を叩き込んでやった!
「ぶっ飛べクソヤロォォォォオオオオ!」
「ぶげらァァァァ!」
 蟹頃は遺跡を破壊しながらぶっ飛ばされていき、八宵と同じく、瓦礫に埋もれて止まった。
 オレが全力で殴ったにしては威力がおかしい事に気づいて、手に握り込まれた〈器石〉を凝視する。
 ――果たして、オレの手に握り込まれていたのは、〈器石〉ではなく、〈ぶっ飛ばし〉の刻印が刻まれた〈附石〉だった。
「……中々、重てぇ拳を持ってんじゃねえか……!」
「い……!?」
 蟹頃が瓦礫から起き上がり、血走った瞳でオレを睨み据えた!
 オレは思わず〈附石〉を握り締めると、体が勝手にファイティングポーズを取る。あいつ、ダメージは受けてるけど……何か、まだまだ無事そうだぞ!?
 思いつつ、蟹頃の顔面を観察する。頬は腫れていたが、特に損傷は無いようだった。……ただ、ダメージは期待できるみたいで、足が少し覚束無い。
「このオレ様を誰だと思ってやがる……? 大鬼の蟹頃黄一郎様だぞ!? それを……人間のガキの分際でェェェェ!」
 ――動きを止める程じゃなかったか!
 瞬時に距離を縮めて来た蟹頃に向かって、オレは本能的に拳を突き出し、――それが偶然にも蟹頃の突き出した右ストレートとぶつかり合う!
 ――壮絶な暴力が衝撃波を伴って弾け合い、オレは右腕が壊れそうな錯覚を感じて、思いっきり顔を顰め、足だけは威力を殺しきれずに地面を滑っていく……! が、地面から足が離れる事は無く、お陰で倒れる事は無かったけど、地面にはオレの足が滑った軌跡が刻まれていた。その長さが、蟹頃の素の一撃がどれ程のものかを物語ってた。
 オレが正面を見据え直すと、……蟹頃も吹き飛ばされてて、同じく右腕を押さえて呻いていた。オレの右腕と同じ状態で、痺れているように小刻みに震えて、上手く動かないようだった。
「ざッけんな! 何でテメエとオレ様の力が同等なんだよッ!? 有り得ねえだろ!? オレは大鬼――」
「うっせえな! ンなこた百も承知だ! ……分かったなら、もう止めてくれよ? お前が悪さをしないって約束してくれたら、こんな事、する必要なんて……」
「まだ、ンな戯言をォ……ッ! ……そうだな。テメエは、認めてやる。このオレ様が認めてやるんだ、光栄に思え。だからテメエは、ここで完膚なきまでに、――ぶっ殺す」
 凄絶な笑みを浮かべて、蟹頃は宣言した。
 おいおい……マジであいつとやり合わなくちゃならねえのかよ……シャレになってねえよ……!
 オレは〈附石〉を握り直すと、……呼吸を整える。
 視線を右腕に下ろすと、蟹頃の一撃で既に瀕死の重傷を負っているのが分かった。……蟹頃の右腕と同じで、麻痺したように小刻みに震え、指先が思うように動かせない状態になっている。……それでも、オレは握り拳を作って、蟹頃を見据え直す。
 ……ごめん、オレの右腕。お前には、――犠牲になって貰うぞ。
 右腕が、オレの意志に呼応するように微動する。……幾らオレの体だからって、傷つくのは嫌だ。何より痛いし、傷ついた体を誰かに見られたいとも思わない。……でも、あの蟹頃を倒すには、それ位の犠牲は必要なんだ……!
 人が犠牲になるのは嫌なのに、自分が犠牲になるのは何とも思わないオレは、やっぱり変な奴なのかも知れないな。
「……逝く覚悟は出来たか、クソガキ? オレ様は心が広いんだ、何なら祈るまで待ってやっても良いぜ?」
「……もう止められないんだろ? なら、――来いよ。オレも、全力で相手してやる」
 オレは蟹頃を睨み据え、両手を持ち上げて、ファイティングポーズを取る。
「クソガキ……ッ!」
 蟹頃は完全に我を忘れ、――尋常ならざる速度を以てして接近した!
 だけど、当初のそれじゃない! 少なからずオレの二回の打撃が効いてるんだろう、走り寄る速度は落ちていたし、気迫も先程の比じゃない!
 オレは右手をまたも突き出し、――今度は蟹頃の右手の点に合わせるように、拳を砕かんと突き刺す!
「死ねェェェェ!」
「――――ッッ」
 蟹頃の拳と、オレの拳が激突し、―――― 
 ――オレの拳が弾かれたッ!
 その現象を、蟹頃は異常な眼で見据えていた。……それもそうだろう。何故なら、オレの右手には力なんて込められていなかった。もっと言うなら、〈附石〉が握られていなかった。
「――テメエがぶっ飛べェェェェッッ!」
 右手をぶっ壊してでも、オレは決めなければならなかったんだ。この――左手に握り直した〈ぶっ飛ばし〉の〈附石〉で!
「クソガキの分際でェェェェ――――――――――ッッ!」
 ――左手は蟹頃の顔面に吸い込まれるように突っ込み、――次の瞬間には、完全に顔面を打ち砕いていた!
 鈍い破砕音が響いて、オレは拳を振り切り、蟹頃が瓦礫に突っ込む瞬間、オレもぶっ倒れてた。
 その後、遺跡に音が聞こえなくなって、……オレはようやく起き上がって、終わった事を悟った。
 終わったんだ……オレが、終わらせたんだ…… 
「れん、ま……」
 瓦礫の中から八宵の呻き声が聞こえて、オレは我に返って走り出した。
 瓦礫の中に埋もれていた八宵を引っ張り出すと、ようやくそこで安堵できた。
「その分じゃ、大丈夫そうだな?」
「まあね……骨にも異常は無いみたいだし。――それより、大鬼は?」
「ああ。オレがぶっ飛ばした」
「……」
 信じられない、と言った顔をしていたが、その顔にはどこか分かっていると暗黙の内に言ってるような空気を孕ませていた。
「見てたよ……あんた、あの力は一体……」
「……」
《滅びの王》の力。
 それは、今の所、咲希の言う通りだとしたら……奇抜な力じゃない。寧ろ地味な部類に入るだろう。地味に強い。そして、単純なだけに、色んな効果が見込める。
 オレはやっぱり、認めたくないけれど、……《滅びの王》なんだな。
「……ウチには、話せないのかい?」
「……」
「……そっか。残念だよ、練磨」
 八宵が背中に手を回すのが分かった。そこに在るのは、彼女がいつもぶら提げている武器―― 
 ――小太刀が、オレに向かって振り抜かれた。

【後書】
 と言う訳で、遂に判明…した? と思しき、《滅びの王》の力!
 今回の話を綴るまでに、実はあちこちに伏線が張り巡らされておりましたが、ここでやっと結実した訳ですね! あちこちって言うほど伏線無いですけども!(笑)
 ともあれこの《滅びの王》の力に関してはその後、続報みたいなものも有りますので、まだまだ妄想を膨らませる余地有りまくりです! その辺も込々でぜひぜひお楽しみ頂ければと思います!w
 そんなこったで次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ついに練磨くんの力が判明したわけですが、
    チートっぽくないです?wひょっとして最強?w
    いずれにしても使い方をあやまらないよう見守りましょう。
    妄想は膨らみまくってます!

    最後のシーンが何か((((;゚Д゚))))ガクガクブルブルなんですが…

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      チート感有りますね!w やはり《滅びの王》ゆえに最強…!?w
      ですです!w 温かく見守って頂ければ幸いです!w
      その妄想をぜひぜひ素敵な感想に育てあげてくださいませ~!ヾ(*ΦωΦ)ノ

      最後のシーンは実に意味深ですが、果たして…!w 次回を乞うご期待!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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