2019年1月6日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】番外編03話 お正月リハーサル【オリジナル小説】

■あらすじ
これ年末に来ないといけないの?? やだなぁ……

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■番外編03話

番外編03話 お正月リハーサル


「お正月のリハーサル?」

 廊下の縁でのんびりアイスをはむはむしながらメイちゃんがお洗濯してる様子をぼーーーっと見てると、シンさんが素足をぺたぺた鳴らしながら近づいてきた。
「そそ、お正月のリハーサル」手には鏡餅を携えているシンさんである。「やー、やっぱりにー君が来てから初めて正月を迎える訳だからさー、ほら、心構えとか必要だと思ってさ」
「えええ、今八月ですよ??」困惑しまくりなんですけお。はむはむ。「流石に気が早過ぎませんか??」
「あたしがやるって言ったらやるんだ。あんまりごねると……分かるよね?」鏡餅がぺしゃんこになったぞい。
「ひえぇ……」アイスの味がしなくなってきたぞ~う。「分かりましたやりますよう……」
 渋々従う事になったので、味のしないアイスを詰め込んで、ぺしゃんこになった鏡餅を見下ろす。
「……これ、どうするんですか?」凄い圧縮された鏡餅はカロリーがヤバそうだ。
「んー、ニャーさんにあげよう。きっと喜ぶぞう」ほんとかよぉ……。
「で、正月のリハーサルって、俺は何をしたらいいんです?」門松の準備とかかな?
「まずはほら、年末番組見るでしょにー君? ほら、レッドホワイトソングバトルとかさ」
「そんな斬新な番組聞いた事無いですけお」
「後はほら、笑ったら嬲り殺される二十四時とか」恐ろし過ぎるんじゃぁ……
「もうヤバみしか伝わらないですけど、俺年末って基本ネトゲで過ごしてますよ。フレンドはナモしかいないんで、ナモと二人で“いえーい、あけおめー”、“いえーい、ことよろー”ってチャット打ち合ったりする奴です」
「風情! にー君には風情が足りないな! 全く足りない! 猛省しろ!!」これもしかして俺キレても良い案件ですか??「そこでそんな冗長もへったくれも欠片も感じられないにー君には素敵なティケットをあげよう」張り倒したい奴だ。
「ティケット?」ヘロヘロの紙片を手渡されたぞい。「何ですこれ?」
「除夜の鐘を叩きまくれる券だ。近所に寺が在ってね、そこの寺の鐘を自由に掻き鳴らせる素晴らしい券だ。一枚五百円」訳が分からな過ぎる……
「これで俺は……鐘を鳴らしに行けばいいんですか??」八月の終わりに??
「リハーサルだからね! そりゃもうバリバリ鳴らしてくると良い! ほら、煩悩を根絶やしにするって噂だろ? にー君は煩悩の申し子だからさ、一発ぶちまけたらきっと楽になるって!」語彙を何とかして欲しい奴だ。
「言い方にもやっとしまくりですが、まぁそういう事なら……」鐘を突くなんて滅多に無い機会だし。
「案内はー、暇そうな奴いないかなぁ……」目の前にいるんじゃがー。「おっ、愛火くーん、良いとこにいるじゃーないか」ラヴファイヤー君が捕まった!
「ん? なんすかなんすか?」仕事帰りのラヴファイヤー君がトテトテと可愛らしい足音でやってきた。「新しい遊びっすか?」
「にー君をさ、遍在寺(ヘンザイジ)に連れてってあげてよ」ぽんぽん、と肩を叩かれる俺である。「お正月のリハーサルにさ、鐘を突かせてあげたい訳よお姉さんは」
「なるほどっす! じゃあ孫君行くっすか! 僕も久し振りに鐘を鳴らしたかったんすよ~!」そんな気軽にガンガン鳴らして良いモノなの……??
「と言う訳で行ってらっしゃ~い。あたしは深夜にえっちぃ動画見るために今からお休みしまーす。サラバじゃ」
 パタン、とシンさんが部屋に帰ったのを見送って、俺はラヴファイヤー君を見上げた。
「やっぱり行かないとダメな奴?」
「えっ、行かないんすか!?」ガーン、と涙目になるラヴファイヤー君には魔王としての威厳もへったくれも無かった。「僕もう行く気満々だったすよう! 行こうっす行こうっすうう!」
「ううん、シンさんに当て逃げされた感満載だけど、行こっか~」とほほである。

◇◆◇◆◇

 神否荘を出て、十分ほど歩いた先に、そのお寺は有った。
 偏在寺、と言うお寺では、ご住職と思しきお坊さんが、軒下でパタパタと七輪を焼いていた。
「こんにちはー」ひょっこり声を掛けてみる。
「んひっ」お坊さんが既にキマってる顔をしてこちらに白目を向けてきた。「よよよおおおおこそそそそこそそこそ」呂律が回ってないどころの騒ぎじゃない恐ろしさである。
「ラヴファイヤー君、あのご住職さん、もしかして大変恐ろしいお薬を嗅いでおられるのでは……?」こそこそと耳打ちするよ俺は。
「あのお坊さんはいつもああっすよ!」ニッコリと大変恐ろしい事実を吐き出すラヴファイヤー君なのだ。
「きえぇぇぇっっい!」ドタバタ跳ね回りながら駆け寄ってくる姿はまさにモンスターだった。「ナニナニナニナニ!? 鐘!? 鐘鳴らしに来たのぼくぅぅくぅううくくくくううう!?」
「ひえーっ!」腰が抜けそうな恐ろしさだ!「ラヴファイヤー君、俺やっぱり帰るよ帰る! これはもう俺帰ってこれなくなる奴だよ!!」足が小鹿フィーバーだ!
「お坊さん、僕らは今日鐘を鳴らしに来たっす!」ビシッと敬礼を返すラヴファイヤー君、最高に決まってる。「はい、これ! 鐘鳴らし券!」
 よく見るとさっきシンさんから貰った券だ。いつの間にラヴファイヤー君に渡したんだったか。
 お坊さんは首が洗濯籠のようにグルグルと回転して既に俺はチビる寸前だったんだけれど、鐘鳴らし券を認知した瞬間、キリっとした表情に戻って、「ははぁ、鐘を鳴らしに来たのですか。どうぞどうぞ、あまりお構いも出来ませんが」と逆立ちで境内に入って行った。
「帰りたい……」本音が漏れまくり男だった。
「大丈夫っすよ~、あのお坊さん、普段はちょっとお茶目っ気有るっすけど、やる時はこう、ヤバいっすから」あれ以上ヤバくなるってもう俺正気を保てられる気がしないよう……
 ともあれラヴファイヤー君に無理矢理押し込められる形で境内に入ると、確かに大きな鐘撞台が見えた。
 その手前には逆立ちしてやっぱり三百六十度グルグル回り続ける首のお坊さんがいた。クリーチャーだよあれ……どう考えても魔の付く恐ろしい生物だよ……
「どうぞ、好きなだけ煩悩を爆裂していってください」ニコッと微笑まれても、回転し続ける頭を俺は正視できないんだぜ。「拙僧は所用が有りますので、これにて……」
 遂には頭の回転だけで去って行くお坊さんに恐怖を感じながら、鐘撞台に上がる。これ年末に来ないといけないの?? やだなぁ……
「ええーと、これで良いのかな」巨大な鐘撞棒を支える縄を掴んで、思いっきり引っ張る。「ていっ!」
>>ごぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん<<
 俺の鼓膜が死んだ。

◇◆◇◆◇

「いひゃひゃひゃひゃ! いやー、良い音だったよにー君! 素晴らしい鐘の音だ! ニャーさんが大慌てで跳ね転ぶ姿は最高に笑ったよ! ひひゃひゃひゃひゃ!」
 鐘を鳴らした後の記憶は無く、いつの間にか自室で寝かされてて、挙句シンさんが爆笑してるとか言う訳の分からない状態だった。
「えー……と、これでお正月のリハーサルって終わりなんですか?」もう勘弁して欲しい。
「まぁ今日の所はこれで勘弁しておいてあげよう! うんうん!」シンさんが立ち上がった。「ご住職さんにはこれからもお世話になるから、今度逢った時はちゃんと挨拶するんだぞう? さもないと頭からバリバリ……」冗談になってないぞい。
「ひえぇ……俺の命も今年で終わりの予感ですね……」
「大丈夫っすよ! 孫君が死ぬような事になったら……じゅるり、美味しそうな部位はしっかり頂くっすから!」
「……」
 俺ひょっとしてもう何か人生詰んでない??
 その日俺はニャッツさんの部屋で寝たよね。ニャッツさんまじ最高に癒しだよ……

【後書】
 突然綴りたくなったので書初めに神否荘のお正月スペシャルです!!
 尤も時期が未だに八月なのは、まぁ、話が進んでないからですね!(笑)
 と言う訳で今回はスペシャル! なのでカウントせず、来週も神否荘の更新が有る筈です! ワシが臥してなければな!!w
 福笑い…と言うには禍々しさが半端ない奴ですが、フフッとでも笑って頂ければ幸いです! ではでは今年もどうぞ宜しくお願い致します~!(*- -)(*_ _)ペコリ

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    御住職様ヤバすぎ問題wさらにやる時にはもっとヤバいとか…
    今回無無事に帰れただけでもよしとせねばなるまいてw
    でも、神否荘ならねっ(*^-^)ニコッ

    禍々しさが半端ないけど、大笑いさせていただきましたw
    今年も楽しそうだv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      御住職様はひたすらヤバく仕上げたらほんとこれ魔の付く何かにしか見えない奴に!ww(笑)
      ですですww無事に帰れただけで良しですよこれは!ww
      まだその更に一歩前に行く…!w 神否荘ならねっ!ww

      やったぁ!w 大笑いして頂けたのなら最高の出来です!w ひゃっほい!w
      今年もぜひぜひ楽しんでいってくだされ~♪

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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