2019年1月5日土曜日

【バッドガール&フールボーイ】8.Return of Bad Girl and Fool Boy【モンハン二次小説】

■あらすじ
不運を呼び寄せる女が、頭の足りない少年と出会う時、最後の狩猟が始まる――。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】、【風雅の戯賊領】の四ヶ所で多重投稿されております。
※注意※過去に配信していた文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書とサブタイトルを追加しております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター 二次小説 二次創作 MHF


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/77086/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/1043940
■第7話

8.Return of Bad Girl and Fool Boy


 ドンドルマの街の大衆酒場は今日も盛況に賑わっていた。どれだけの年月を経てもこの賑わいが冷める事はあるまい、――そう物思いに耽りながら麦酒を小さく呷る。
 今日も酒場の隅に陣取り、一人晩酌をしていたテスに、久しく見ていなかった給仕が声を掛けてきた。
「こんばんはっ、テスさん! お久し振りですねっ!」
 ジョッキを下ろして振り返ると、一月振りに見る給仕――セァラが快活な笑顔を浮かべて、いつも通りお盆を両手に持って立っていた。
「うん、久し振り。てっきり別の酒場に転属になったのかと思ってたよ」
 軽く笑いかけて話題を持ちかけると、セァラは「旅行に行ってたんですよ~♪」と気前の良い笑顔で応じた。
「――旅行かぁ。あ、それじゃあお土産はっ?」意地悪く尋ねるテス。
「そんな事よりテスさんっ!? こないだの彼、ハンターじゃなかったんですかっ!?」
 巧く話をはぐらかされたようだが、テスは構わずセァラの話題に食いついた。「彼って?」
「惚けないでくださいよっ! あのハンマー使いの彼ですよ!! えぇと、トルクさんでしたっけ? 彼、どうしてあんな小さな村で工房開いてるんですかっ!? ハンターじゃなかったんですかっ!?」
 ――その瞬間、テスの中に淡い感情が湧き起こった。それを表情に出すまいとしていたのだが、セァラは目聡く感知してしまったようだ。ジト目でテスを見据え、頑として説明を待っている。
 止むを得なかったので、テスは彼の事情を掻い摘んで説明した。

◇◆◇◆◇

 ――そう、リオレウスの狩猟からもう一月が経とうとしていた。トルクは最後の狩猟と銘打っていただけあって、暫くドンドルマで療養した後、荷物を纏めてドンドルマの街を発ってしまった。ドンドルマを後にする最後の晩、テスはこの酒場でトルクと晩餐を開き、それはそれは楽しい時間を共有できたと自負している。結局彼はそのまま村に戻り――ハンターを辞め、家業を受け継いだのだろう。
 セァラは残念そうな、難しい表情を浮かべて「そうだったんですか……」としんみり感想を零した。
「でも、私は満足してるんだっ」セァラを元気付けようと明るく振る舞うテス。「最後にちゃんと成功の達成感を分かってくれた筈だし、ハンターって辛い時も有るけど、楽しい職業なんだって、きっと伝わったと思うんだ」
 セァラは眩しいモノでも見るように瞳を眇め、テスを見やった。「私が言うのも何ですけど、テスさんってハンターの鑑ですよねっ! 酸いも甘いも知り尽くしてるような貫禄が有りますし!」
「そうかな?」そんなつもりはないんだけどな、と胸の内で零すテス。「今度その工房が在る村、教えてよ。遊びに行くから」
「良いですよ~♪」とはにかみ笑いを浮かべて立ち去ろうとしたセァラの視界に、おかしなモノが映り込んだ。「……あれ?」
「どうしたの?」セァラの視線を追って視界を巡らせると――ドカッ、と音を立てて隣に男が座り込んだ。
 見覚えの有るイーオスシリーズを纏った男はテーブルに突っ伏し、「うぐぐ……うぐぐ……」と聞き覚えの有る呻き声を発し始めた。
 テスはセァラと顔を合わせ、それからイーオスシリーズの男の肩を叩いた。「あの、大丈夫?」
「大丈夫だぁっ!!」ガバッと起き上がった彼は、まさしく――トルク、その人だった。「久し振りだぁ、テス!」そうして柔和な笑顔をテスに向けた。
「う、うん、久し振り」戸惑いながら応じるテス。「でも、どうしてここに……? 工房はどうしたの……?」
 トルクはテーブルに向き直って盛大に嘆息を零した。「それがなぁ……オラァ、もう必要ねえって言われて……追い出されちまっただぁ……」
「ぇえ!?」驚いたのはセァラだった。「トルクさん、工房でバリバリ働いてたじゃないですかっ!! あんなに頑張って働いてるのに必要無いって……そんなのおかしいですよ!!」憤然とテーブルを叩きつける。
「ん? オラァ、工房に立った事すらねえだよ?」キョトンとセァラを見据えるトルク。
「それ嘘ですよ!! 絶対にアレはトルクさんでした!! 間違い有りません!!」頑として譲らないセァラ。
「……えと、それじゃあ工房は今、誰が働いてるの……?」話を整理するように尋ねるテス。
「あぁ、工房を受け継いだのは弟だぁ」テスに振り返り頷くトルク。「オラよりも確りしてるからって、弟に工房を任せたんだそうだぁ」
「「あぁ……」」テスとセァラが同時に得心した意の吐息を漏らした。「「なるほど……」」
 暫しの間が有った。
「――それじゃあトルクさん、またハンターをやり直すんですかっ!?」セァラが意気揚々と尋ねる。
「そうしようかと思って、また戻ってきちまっただぁ……」照れるように頭を掻くトルク。「それで、またテスと一緒にクエスト行きたくなっちまってなぁ、ここに来ちまっただぁ。――また一緒に、クエスト受けてくれねえだか?」
 二人の視線が、テスを射抜いた。テスはまだ戸惑いが消えていないものの、その顔には嬉しさが既に食み出していた。涙が出そうになる目許を擦り、はにかみ笑いを浮かべて応じる。
「――良いよっ、また一緒に行こう!」
 もうそこに不幸の兆しを見つける事など出来なかった。幸福に満ち溢れた明日は、これから始まるのだから。

――終わり

【後書】
 年を跨ぎましたが、ここに無事完結です!
 実のところ、この物語って「何も解決していない」物語なんですよね。不運も、狩猟下手も。けれど、解決しなくても、解決できなくても、こうして無事に過ごせるのです。失敗が多くたって、全然上手く行かなくたって、それでも進んでいけるのです!
 …そんな高尚な事を綴っている当時のわたくしが考えていたか謎に尽きますが!w 改めて読み返したわたくしは、一読者としてそんな感想を懐いた訳なんですな~(後書に作者の感想を載せる作者(笑))。
 来週からはこの枠では「嘘つきの英雄」を再投稿して参りますので、そちらの方も良かったらお付き合い頂けますと幸いです…!
 それでは! ここまでご愛読頂きまして、誠にありがとうございました!!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    何も解決してなくても十分じゃないですかっ!
    みんな幸せそうだし、これからもきっと…

    そう感じさせてくれたエンディングでした。
    よかったです!!

    次回からのもいぶし銀だぞ!もうたまらんvv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      何も解決してなくても充分ですよねっ!
      「みんな幸せそう」これが大事なのです! 彼らならきっと…!

      (*´σー`)エヘヘ! そう言って頂けると綴った甲斐が有りました!
      よかったと感想を頂けてわたくしもほっこりです!!

      次回からのもぜひぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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