2019年2月12日火曜日

【ベルの狩猟日記】078.休憩室にて【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第78話

078.休憩室にて


 意識が茫洋としていた間も、視界が捉えた情景は脳に届けられる。大通りから路地裏へと入って行き、やがて目立たない場所に用意された扉を潜り、階段を下りて地下へ――
 長い通廊の果てに辿り着いたのは、小さな部屋だ。そこに寝かされてから暫くして、ようやく体に纏わり付いていた倦怠感が抜け、「ここは……」と呟きを漏らすベル。
「――気が付いたか」
 横になっているベルの眼前にフォアンの顔が出現する。驚きのあまり「うわぁっ」とパンチを繰り出すが、フォアンは頬が減り込むのも構わず「良かった、元気になったんだな」と首肯を返す。
「フォアン……? あたし、何が……」
 ここに至るまでの経緯がよく思い出せない。ロザとフォアンの三人で買物に出掛け、ロザと別れてから暫くフォアンと二人で散策していた所までは思い出せるのだが……
「どうやら、モンスターに使われる麻酔薬の濃度を薄めた液体を吹きかけられたみたいだな」
 フォアンの言葉に、ようやく記憶が蘇る。――偽装強化の男!
「あいつはどこ!? 一発殴らせて!! 絶対に許さないんだから!!」
「ハハッ、随分とまァ気の強ェー嬢ちゃんだな! まずは落ち着いて自分の状況を見つめ直してみろって」
 突然湧いた聞き覚えの無い声に振り返ると、歳若い男が立膝を突いて笑っている姿が目に入った。
 裸に等しい二十代後半の青年だ。鍛え抜かれた筋肉だが、決してアネのように筋骨隆々と言う訳ではない。必要最低限の筋肉を、適材適所に割り振られた、小麦色に焼けた健康的且つ理想的な肉体。纏っているのは、フンドシだけ。黒髪は爆発したようなアフロヘアー。黒瞳は眼光鋭い三白眼だ。口許には無精髭が生え、どこか浮浪者然としている。
 見るからに変な奴だな、とベルは感想を浮かべたが、彼の言う通り自分の体を見下ろすと、――顔が発火しそうになった。
「なっ――、何でインナーしか着てないのあたし!?」
 驚いて何か覆う物が無いかと周囲を見回すと、見えるのは――猟人が愛用している武器が幾つかだけ。そしてフォアンに視線を転ずると、彼もインナーだけを纏った、裸も同然の格好で佇んでいる。
「安心しろ、俺もインナーだけだ」ぽん、と肩を叩いてフォアン。
「何をどう安心しろと!? ちょッ、はいぃ!? 一体何がどうなってんの!?」
 錯乱状態に陥ったベルに、フンドシ姿の青年が「まァ落ち着けって嬢ちゃん」と笑みを刷いたまま応じる。
「どう落ち着けと!? ――まさかこれって、奴隷として売り出されようとしてるの!? い、嫌よそんなの!? 絶対に認めないんだから――――ッッ!!」
「だァから落ち着けって嬢ちゃん。ここは奴隷市場じゃねェよ。俺達ゃ奴隷として売られるんじゃなく、――戦わされるってだけさ」
 フンドシの青年が剽げた態度で告げると、視線を部屋の壁面へと投げる。ベルが釣られるように視線を向けると、そこには先刻も見た、猟人が使う武器――片手剣や大剣、ランスやハンマーなど、様々な武器が吊られている。
「戦う……? まさか、人同士で殺し合いをするとか……!?」さーっと青褪めていくベル。
「いいや、違う。おめェらも猟人なんだろ? だったら、する事なんざ決まってるじゃねェか。――モンスターと、だよ」
 静かに応じる青年。ベルは青褪めた表情から少しだけ回復するが、怪訝そうに眉根を顰める。彼の言っている事が今一、髄まで伝わらなかったのだ。
「モンスター……って、ここ、街の中よね? ――モンスターを迎撃しろって事?」
「いいや。胸糞悪い事にな、捕獲したモンスターと猟人が戦う様を見たいって、街の地下に馬鹿でかい闘技場なんざ拵えた野郎がいやがるのさ。俺達ゃそのショーに登場する猟人様って訳さ」
 青年の説明を聞いても、暫く思考が回らなかったベルだったが、やがて理解に及ぶと、激情を顔に刷いた。
「――はぁ!? 何それ!? 巫山戯ないでよ、何だってそんな事してるの!? モンスターの脅威を理解してないの!?」
「その台詞、まんま主催者にぶつけてやりてェよなァ。――ともあれ、そういうこった。俺達にゃア戦う以外に術はねェ。……生きて帰りたかったら、な」
 皮肉った笑みを口唇に刻んで肩を竦める青年。ベルは青年を見て、怪訝な想いを懐く。
「……何よあんた。あんたはそれで良いの? モンスターと戦えれば良いだけの、戦闘狂なの? ――街の人間の事を考えなさいよ!! どうして街の中でモンスターと戦わなくちゃいけないのよ!?」
 俯き、唇を噛み締めるベル。ギリ、と奥歯が軋みを上げる。
「絶対に許さない……ッ! あの偽装強化の男、絶対にシメてやる……ッ!!」
 憎悪に塗れたベルを見て、青年は苦笑を滲ませる。
「おっかねえなァ、ちったァ落ち着けって。――そもそも、どうやってそいつをシメるってんだ? 俺達ゃ、ここ――隔離された休憩所と、モンスターがいる闘技場しか行き来できねェんだぜ?」
「う……そこは、考えてなかったけど……」
 悄然と項垂れるベル。そこにフォアンが肩を叩いて関心を向けさせる。
「何? フォアン……」
「困った時はこれを吹けと言われていたんだ」
 と言って、フォアンはどこから取り出したのか謎だが、小さな笛を手にしていた。インナーだけを纏った状態でどこから取り出したのか物凄く気になったが、それはこの際無視する事にした。
「何? その笛……」
「試しに吹いてみるぞ」
 すぅ、と息を吸って、小さな笛に口を当てると、
 ――にゃー。
 愛らしいアイルーの鳴き声が休憩室に響いた。
「……猫笛?」ベルが小首を傾げる。
「ザレアに渡されてたんだ。困った時はこれを吹けば、もう万事大丈夫だと」
「――ザレア、だと?」
 青年が思わず声を上げた時、ふとベルは手許に柔らかな感触がある事に気づき、視線を床に向け――床に〈アイルーフェイク〉が生えている事に気づいた。
「~~~~ッッ!?」
 驚きのあまり声を失って跳び上がるベル。それに気づいたフォアンが「ん?」と振り返った瞬間、〈アイルーフェイク〉が飛び出し、根っ子のように付いていた体が地上に晒される。
「にゃにゃにゃんっ、〈アイルー仮面〉、華麗に参上だにゃ!」
 びしっ、とポーズを決めて格好を付けるザレア。ベルは心臓をバックバックさせながら、「どこから現れてんのよ!? 参上じゃなくて惨状かと思っちゃったじゃないッ!!」と胸を押さえてツッコミを入れる。
「それにしても凄いな。吹いてからまだ一分も経ってないぜ」
 フォアンが感嘆の声を上げたのを聞き逃さず、ザレアは胸を張って応じる。
「にゃっふっふっ……その猫笛はオイラを召喚するアイテムにゃ! 昔はコンマ02秒で登場するのがデフォルトだったのにゃ」腕を組んで、うんうん、と頷くザレア。
「人間!? ザレアって人間だよね!?」ツッコミを入れざるを得ないベル。
「にゃ? 何を言ってるにゃ、当然にゃ!」ブンブン腕を回してザレア。
「そうだぜベル。ザレアはどこをどう見ても人間じゃないか」小首を傾げるフォアン。
「外見は人間だけど中身が異常過ぎないかしら!? 人間の出来る動きじゃないわよ色々!?」
 ベルがツッコミを惜しみなく入れていると、不意にザレアの視線がフンドシの青年の方へと向いた。――何故か〈アイルーフェイク〉の瞳に光が点ったような錯覚を覚えた。
「し、師匠だにゃ!?」
 ザレアの頓狂な声に反応できたのはベル以外だった。
「――それじゃ、ヴァーゼはやっぱりギルドナイツの騎士長だったのか」
「オァー、マジか! こんな所で愛弟子に逢うたァ……俺の運気絶好調じゃね?」
 フォアンが一つ頷き、フンドシの青年が目許を覆うように右手を当てる仕草をする。
 ベルはぽかーん、と大口を開けたまま沈黙していたが、やがて頭が回り始めると、目も回り始めた。
「超展開過ぎるわ……」
 パタリ、と倒れ込んでしまうベルだった。

【後書】
 前回の話に頂いた感想で「これはバギィの睡眠液では?」と有りましたが、当時ドライもP3も発売されておりませんでして、モンスターを捕獲する時の麻酔薬をコネコネした、と言う設定で綴っていたみたいです(全然記憶に無かったマン)。
 その辺の記述を弄ろうかとも思いましたが、時代の移ろいを残すのも良いよね! と思って当時の記述のままになっております。たぶん今後またそういうシーンが出てきたらその時はバギィの睡眠液を使わせて頂く予感です!(笑)
 と言う訳でザレアの師匠であるヴァーゼの登場です! このキャラはほんともうロマンを詰め込みました!w ザレアも大概ですが、その師匠ですからね!w 今後のぶっ飛んだ展開をお楽しみに!w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    さらなる登場人物その名はヴァーゼ!
    あのザレアちゃんの師匠!!推して知るべし!!!
    それにしても猫笛すごいなぁ、わたしもほしいw

    地下闘技場で行われる秘密狩猟ショー!
    はたして4人の運命はッ!!(どっちかって言うと偽装強化の男の方が心配w)
    伝説が今生まれる!!!ロマンだなぁ~vv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ほんそれwww推して知るべし!ww
      この猫笛めっちゃ欲しいですよね!w 用も無くザレアちゃんを呼びだしたい!ww

      偽装強化の男は…ねww この後…ね!www(ネタバレゆえに何も言えないマン)
      ロマン感じて頂けたようで嬉しいですわふ~!ヾ(*ΦωΦ)ノ

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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