2019年2月15日金曜日

【艦娘といっしょ!】第19話 鹿島といっしょ!【艦これ二次小説】

■あらすじ
ちょっと頭のおかしい提督と艦娘達の日常生活を切り抜いた短編集です。
※注意※2016/11/14に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
艦これ 艦隊これくしょん コメディ ギャグ 鹿島


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/68881/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/series.php?id=627932
■第19話

第19話 鹿島といっしょ!


「提督さん……提督さん!」

「…………ん?」
 提督が意識を向けた先では、心配そうに自分を見つめる鹿島の姿が有った。
「え、あ、えーと……」頭が回っていないのか、咄嗟に言葉が出てこない提督。「えー……と、私に、何か用、かい?」
「あの、海上護衛隊のご相談を……と思ったんですが、お忙しそう、ですね」提督のデスクに広がっている無数の書類を見下ろして一歩下がる鹿島。「済みません、私、後で良いので、はい……」
「あぁ~、ごめんね。ちょっとやらなくちゃいけない執務が山ほど有ってさ……」ゴシゴシと目を擦りながら書類に判を捺す提督。「前回の礼号作戦の報告書がまだ仕上がらなくてねぇ……かーぴょんがカンカンなんだよ……」
 眠そうにしている提督を見て、鹿島は何か閃いたのか、「提督さん、ちょっと待っててください」と言って執務室を出て行ってしまった。
「おー……」と気の無い返事をすると、再び黙々と執務に戻る提督。
 終わりの見えないマラソンをしている気分になっていた提督だったが、幾許もしない内に鹿島が執務室に戻ってきた。
 マグカップを二つ持って。
「はい、提督さん。眠気覚ましにコーヒー、いかがですか?」と言ってデスクの上の空きスペースにマグカップを下ろす鹿島。「でも、あんまり無理しちゃいけませんよ? 提督さんはこの鎮守府にとって、とっても大事な人なんですから、時には休息も必要ですよ?」
「うわぁ、ありがちょろ~」マグカップを手に取り、少しだけ息で冷ましてから口に運ぶ提督。「あぁ~、眠気がサヨナラバイバイしていくずぇー……」見る見る表情に生気が戻ってくる。「大事な人、かぁ。あんまりそんな自覚は無いんだけどなぁ」と頬をポリポリ掻き始める。
「何を言ってるんですか! 提督さんがいて初めてこの鎮守府は成り立っているんです! 提督さんはもっと自分の事を認めてもいいと思います!」そこまで言って自分が説教をしているように感じたのだろう、鹿島は頬を赤らめて、「す、済みません、出過ぎた事を言ったかも知れません……でも、本当の事ですからね……っ?」と懸命に訴えてくる。
「そこまで言われたら流石に何も言い返せないなぁ」苦笑を浮かべて首の後ろを触る提督。「そんな大事な人だったら、ちゃんと出来る事をやっとかなくちゃね!」
 首の体操をした後、再び執務に取り掛かる提督を見つめて、「ふぁいとですっ、提督さん!」と小声で応援する鹿島。

◇◆◇◆◇

「……ムニャ? ……あ、あれ、私……」
 ソファの上で目を覚ました鹿島は、自分がうたた寝をしていた事に気づいた。
 場所は執務室。秘書艦として今日は提督の手伝いをする筈が、いつの間にか眠っていたようだ。
「提督さんごめんなさい、鹿島、ちょっぴり疲れてた……みたい……で……」
 立ち上がってデスクを見やると、提督の黒々としたアフロが見えた。
 デスクに頭を突っ伏したまま、動いていない。
「提督さんも寝ちゃったのかな……?」
 起こさないようにと思って恐る恐る近づくと、横を向いた提督の顔が、赤かった。
「……はぁ…………はぁ…………」
 苦しげに吐き出される、熱っぽい気息。その様子を確認した鹿島は「ちょっと失礼しますね!」と宣言してから提督の額に手を当てる。
 ――熱い。
「大変……! ちょっと待っててくださいね提督さん、今人を呼んできますから……!」
 パタパタと執務室を後にしてから気づく。誰を呼びに行けばいいのか、一瞬見当が付かなくなったのだ。
 艦娘の補修であれば入渠ドックに送ればいい。装備の整備なら明石や夕張を頼ればいい。
 鎮守府はあくまで艦娘のための施設であって、人間を治療する部屋は無い。医務室が無いと言う事は、軍医も、そして一般の医療従事者もいないのだ。
 彼を救える存在が、もしかしてこの鎮守府にはいない……?
「そんな……やだ……提督さん……っ!」
 思わず立ち竦んでしまいそうになる鹿島だったが、現状、自分しか彼を救える存在がいない事を改めて思い出し、キッと歯を食い縛る。
 ――そんな大事な人だったら、ちゃんと出来る事をやっとかなくちゃね!
「そうです、出来る事を……鹿島にだって、出来る事が有る筈……!」
 提督の意志は、艦娘の意志。彼は出来る事をちゃんとしていた。ならば今度は、彼の艦娘である自分が、出来る事をやる番だ。
 踵を返す。今出来る事を、為すために。

◇◆◇◆◇

「…………んぁ」
 混濁した意識の中、提督は瞼を開けた。視界には普段と違う天井。執務室ではなく、提督の自室でもない。
 艦娘に宛がわれた部屋の一つだと、提督はぼんやりと思い出す。
「あ、気が付きましたか?」
 鹿島の声に、億劫そうに頭を傾ける提督。すると額に乗っていたタオルがぺとりと顔の横に落ちた。
 腕まくりをした鹿島が、座って提督の顔を覗き込んでいた。
「……あー、済まん、もしかして私倒れた感じ……?」
 ぼんやりと思い出せるのは、執務の途中で意識が薄れて行った事。あんな眠るように意識を失ったのは初めての経験で、提督自身驚きを隠せなかった。
「はい……熱が有りましたので、冷やしたタオルを当てておきました」提督が落としたタオルを拾い、洗面器の中で再び湿らせると、提督の額に戻す鹿島。「提督さん、食欲は有りますか?」
「うーん……あんまり無いかなぁ……」虚ろな声で応じる提督。
「そう思って、お粥を作っておきました!」お盆の上に載っていた茶碗を提督に見せる鹿島。「お口に合うか分かりませんが、少しでも栄養を摂らないとと思って……」
「おー、まじかー」嬉しそうに瞳を細める提督。「じゃあ頂こうかなぁ」
 そう言って起き上がろうとする提督の額に人差し指を添え、鹿島は小さく首を否と振った。
「ご無理をなさらないでください、提督さん。今、食べさせてあげますから」
「ま、まじか……」驚きで表情が固まる提督。
「はい、あーん」
「あ、あー……」口の中に運ばれた蓮華をしゃぶり、もごもごと咀嚼する提督。「ん……うみゃい……」
「良かった……!」ぱぁ、と顔を華やがせる鹿島。「ちょっとずつ、食べられる分だけでいいので、もう無理だと思ったら言ってくださいね? はい、あーん」
「お、おう……あ、あー……」
 その後、提督はモリモリとお粥を食べ続け、鹿島が作った分の半分ほどを食すと「も、もういい……です……」とギヴアップを告げた。
「暫く安静にしててくださいね? 私、食器を洗ってきますから」
 立ち上がって部屋を立ち去る鹿島を見送ると、提督は微睡みの世界で夢を見た。
 誰もいない部屋で、誰にも看取られる事無く、緩やかに、そして静かに肉体が朽ちていく、そんな夢を。
 そこはとても静かな空間で、誰の干渉も無い世界で、暗くて寂しく、冷たい領域だった。
(艦娘が轟沈したら……こんな所に辿り着くのかな……)
 胸が苦しくなる光景を、提督は眺めている事しか出来ない。誰も助けられないし、誰も助けてくれない。落ちたら二度と浮上できない、底無しの闇。
 そんな場所に家族を連れ込まれないように、自分が出来る事を、務めを、果たさねば。

◇◆◇◆◇

「Hey! 提督ぅー!?」執務室に飛び込んできた金剛が提督に抱き着く。「心配したヨー!? 風邪で倒れたって聞いて、飛んで帰ってきたんだからネー!?」
「よその鎮守府で演習をしてる最中に連絡が有ったからよ、金剛の奴、演習ほっぽり出して帰るって聞かなかったんだぜ?」呆れた様子で執務室に入ってくる摩耶。「後で向こうの提督に謝っとけよ? かなりご立腹だったからな、覚悟しといた方がいいぜ?」
「演習に出ていた艦娘が皆心配してたのです。今日は鹿島さんが付いててくれたから良かったですけど、無理はしちゃダメって言ってたのに……プンプンです」提督の額に人差し指をぺとっとくっつける電。「……でも、元気になったみたいで安心したのです。これからは気を付けるですよ?」
「皆の言う通りだよ~? 提督に倒れられたら困るのは私達なんだからさぁ~、もっと体を労わってよね~」のんびりとソファで寛ぎ始める北上。「適当にやろうよ適当にさ~」
「いや~、悪いね! 最近サボタージュし過ぎて執務が完全に滞っててさ、ちょっとやる気出して始めたらこれだよ!」苦笑を浮かべて後ろ頭を掻く提督。「まぁ、流石に懲りたから、今後はのんびりやるよ、のんびりのんびり」
「提督の“のんびり”ほど当てにならないWordは無いデース!」ビシィッと提督を指差す金剛。「これはまたやらかすFlagに違いないデース! マーシー! ちゃんと見張っておいてくださいネー!?」
「わ、私!?」突然金剛に指名されて驚く鹿島。「わ、分かりました! 金剛さんに言われたからには、しっかり見張らせて頂きますね、提督さん!」
「やめたげてよぉ!」
 手を振りながらも微笑んでいる提督に、病魔の影は見えなかった。
 にも拘らず不安げな視線を送る五隻の艦娘に、提督はばつが悪そうに首の後ろを掻くと、観念したように向き直る。
「まぁ、あれだ。君達に心配されるようじゃダメだからね、しっかり休んで、程々に頑張るよ」
「……約束ですよ?」上目遣いに見つめてくる鹿島。
「おう、約束だ」グッと親指を立てて笑む提督。
「……絶対ですよ?」視線を逸らさずジッと見つめたままの鹿島。
「おう、絶対だ」グッと拳を固めて頷く提督。
「……必ずですよ?」提督に穴が開くほど見つめ続ける鹿島。
「おう、必ずだ。ってどんだけ信用無いの私!? お願い信じて!? そこまで全力で疑われると悲しくなってくるから!!」
 全力で訴えかけてくる提督を見て、鹿島はやっと「良かった、いつもの提督さんです……」と安心した表情を見せるのだった。

【後書】
 今回のお話から先は表紙が素敵なテイストのテキストになります! これはこれで良いよね!
 と言う訳で鹿島ちゃんの回だった訳ですが、ほんとも~この娘にはだいぶやられました…当時はずぅーっと演習の度に連れ回してましたからね、すっかり弊鎮守府の高練度艦に(´▽`*) ほんと好きでしてなーw
 今では対潜も対空も熟せる練度になりましたからね! イベントでも大活躍! だと思った!? 残念! お留守番組です!!! 可愛いからええんや…( ˘ω˘ )

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