2019年2月19日火曜日

【ベルの狩猟日記】079.ザレアの爆弾クッキング【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第79話

079.ザレアの爆弾クッキング


 一方その頃――ワイゼン屋敷の客室。
「あれ、おやっさん……あの猫頭、どこ行きよったんじゃ?」
「ハァハァ……肉球ぷにぷに……ハァハァ……」蹲ったまま陶酔しきった顔のワイゼン。
「おやっさん! いい加減目ェ覚まさんかい!! いつまで萌え死んどるんじゃ!!」ガクガクとワイゼンの肩を揺さ振るギース。
「肉球ぷにぷに……――はッ。ワ、ワシは一体……」やっと我に返るワイゼン。「アイルー拳法、恐るべし……!!」
「……何でも良いけえ、――ロザから伝言じゃ。読み上げるぞ。
『二人見失いて候。てへっ、お姉さんは完璧超人だけどドジを踏むのさ! あと例の件、急に動き出したから、もしかすると関連性がある可能性アリ。作戦名“隠忍戦《インヴィジブル》”発動の許可を願えます』
 ……だそうじゃ」
 小さな書簡を折り畳むと、ギースは「どうするんじゃ?」と眉根を顰める。ワイゼンは戦々と震えていた。
「お、おやっさん?」
「かっかっかっ……ワシのベルに手を出す魯鈍がまだおったとはのう……もう少し背後を洗いたかったのじゃが、止むを得まい。――狩りを始めるぞ、ギース」
 どす黒いオーラを纏って告げるワイゼンに、ギースは表情を引き締め、「仰せのままに――ワイゼン閣下」――恭しく傅く。
 ローブをはためかせて客室を出て行くワイゼンの顔には、笑みが刻まれている。――鮮烈な黒をイメージさせる、酷薄な笑顔が――――

◇◆◇◆◇

 場所は戻り、――オートリア地下闘技場・休憩室。
「……えーと……それで? あんたって、ギルドナイツの騎士長で、ザレアの師匠なの?」
 インナー姿のベルが怪訝の面持ちで、フンドシ姿のアフロ青年に声を掛ける。
「ま、そうなるな」
 無精髭を撫でつつ剽げた様子で応じる青年――ヴァーゼ。
「……ウチの師匠も有り得ないけど、あんたがギルドナイツ騎士長だって事も、とてもじゃないけど信じ難いわね……」
 はぁー、と疲れたようにとても残念そうな嘆息を落とすベル。頭を掻きながらザレアに視線を転ずると、彼女は師匠であるヴァーゼに擦り寄りながら「師匠だにゃ~♪」と空気に華を咲かせている。
「あァ、フォアンから聞いたぜ? 嬢ちゃんの師匠ってワイゼン翁なんだってな」
「……え? フォアン、もしかしてそいつと知り合いなの?」キョトンとベル。
「まあな。親父の親友だったみたいで、よく家に遊びに来てた」コクリと頷くフォアン。
「それにしても面白ェ巡り合わせだよなァ、お前ら。俺もそろそろ次世代って奴に任せる歳だって事か」
 ハハハハ、と楽しげに笑声を発するヴァーゼ。よく解らずに小首を傾げてしまうベル。
「――っとと、こっから先は仕事の話をさせて貰うぜ?」不意に真剣な表情に戻るヴァーゼ。「これから俺達は闘技場へ放り込まれて、モンスターと戦わされる事になる。どんなモンスターか、それは俺も知らねェ。だが、ここに有る貧弱な武装じゃどんなモンスターにしても苦戦を強いられるだろうな」
 ヴァーゼの視線を追って、休憩室の壁に吊られている武器の数々に視線を転ずる。初心者の猟人が使うような、ともすれば武具屋に製品として販売されているような物ばかりだ。猟人として中流に座するベルにとっては、慣れ親しんだ武器でもあるが、現在使用している武具に比べて性能の面で確然たる差が付いている。
「それに、今回はザレアも爆弾が無いのよね……ガチで頑張るしかない、か……」
 丸腰で現れたザレアを見て、悩ましげに嘆息するベル。武器が頼り無い以上、爆弾などの狩猟で活かされる道具が有れば力強いのだが……無い物ねだりをしても始まらない。
「にゃ? 爆弾は有るにゃよ?」
 キョトン、と小首を傾げるザレア。ベルが再びザレアに視線を転じるが、それらしき影は全く見えない。
「……まさか、もう既に闘技場に埋め立ててあるとか……?」若干怯え気味にベル。
「今初めてここに来たのに、そんにゃ事出来にゃいにゃ!」プンスカと手を振るザレア。
「――まさか、空から無数の爆弾を降下して、ここら一帯を絨毯爆撃とか……?」青褪めるベル。
「ベルしゃん!? オイラをにゃんだと思ってるにゃ!? そんにゃ事出来る訳にゃいにゃ!!」喚き散らすザレア。「……一度やってみたいけどにゃ」と小声で付け足す。
「やってみたいんだ!?」そこはツッコミを忘れないベル。「いやいや、自然界が大変な事になるからダメよ!?」
「だとしたら、一体どこに爆弾が有るんだ? 影も形も見えない爆弾――つまり、無色透明な爆弾とか?」人差し指を立ててフォアン。
「そんにゃ爆弾有る訳にゃいにゃ! で、でも見つけたら言って欲しいにゃ!」何故か〈アイルーフェイク〉の目が輝き始めるザレア。「んにゃーんっ、皆してオイラを馬鹿にしにゃいで欲しいにゃっ! オイラだって普通の猟人にゃ! そんにゃ奇天烈な真似、出来っこにゃいにゃ!」
 既に存在そのものが奇天烈なんだけどなぁ……とツッコミを入れようと思ったが、敢えて口にはしないベル。
「爆弾はここににゃいけど、オイラは既に手を打ってあるのにゃ!」と言って、ザレアはポーチからゴソゴソと何かを取り出し始めた。
 出てきたのは、ツタの葉、爆薬、カクサンデメキン、そして竜骨【中】。爆薬は大タル爆弾を調合する時に、カクサンデメキン大タル爆弾Gを調合する時に使えるが、肝心の大タルの姿が無い。――そもそも、大タルのような巨大な道具が有れば、ザレアが出現した時に気づく筈だ。
「ツタの葉に、爆薬に、竜骨、それとカクサンデメキン……これで何をするのよ?」腕を組んで小首を傾げるベル。
「これをうにゃうにゃすると――」ツタの葉と竜骨【中】を手にして、うにゃうにゃすると、そこには大タルの姿が。「出来たにゃ! 大タルにゃ!」
「――は!? ちょちょッ、ちょっと待って!? 何か今、過程が理解できなかったんだけど!? も、もっかいお願い!」人差し指を立てて「ワンモア! ワンモア!」と喚き散らすベル。
「これをうにゃうにゃすると――」再びツタの葉と竜骨【中】を手にして、うにゃうにゃすると、そこには大タルの姿が。「出来たにゃ! 大タルにゃ!」
「うにゃうにゃって何!? ごめん、やっぱり理解できなかった!! 一体何をしたの!? 魔法!? 魔法なの!?」
「――錬金術、……だな?」
 錯乱するベルに代わり、冷静な声を上げたのはフォアンだ。次々とその手で大タルを生み出していくザレアを見て、確信を持って呟く。
「れ、錬金術……?」まだ驚きが消えないまま振り向くベル。
「ほう、流石はフェイローの愛息、よく知ってるじゃねェか。――そうとも、ザレアのそれは錬金術。調合を極めた者しか会得出来ぬ、奇跡の調合さ。つっても三年前の知識しか与えてねェかんな、三年経った今のザレアの調合レシピがどんなモンになってっかは、俺の与り知る所じゃねェ」
 ヴァーゼが得意気に頷く姿を見て、ベルは苦笑を禁じ得なかった。
「って事は、あんたの調合レシピも凄い事になってるって事?」
「まァーな。いにしえの秘薬に、王家のマカ古ツボ、生肉の生成法まで何でもござれだ」
 へへんっ、と鼻高々に自慢するヴァーゼ。どれも中流に位置するベルですら知らない秘法ばかりだ。流石はギルドナイツ騎士長と言うだけはある、とベルはしみじみと感じた。
「――にゃにゃっ、大タル爆弾G完成だにゃ!」
 ヴァーゼの猟人としての知識量に感嘆していると、背後で無数の大タル爆弾Gを生成し終えたザレアが歓喜の声を上げたのが聞こえた。そこまで広くない休憩室に所狭しと置かれた大タル爆弾Gを見て、背筋が冷えていくベル。
「――ってここで作ってどうすんのよ!? 闘技場で作りなさいよ!? ここで爆発したらあんた、モンスターと逢う前に全滅よ!?」
「いや待てベル。よく考えろ。ここで爆発が起これば……その隙に乗じて逃げられるかも知れないぞ」顎に手を添えて名案だ、とばかりにフォアン。
「さも完璧だって言わんばかりだけど、逃げる間も無く死ぬから!! 見てよこの大タル爆弾Gの数!! 狩猟に持って行く数は精々で一人二個でしょ!? 何個置いてあると思ってんの!?」
「正確には十個だにゃ」にゃー、と反応するザレア。
「大タル爆弾Gが十個も有れば、休憩室なんて跡形も無く吹っ飛んじゃうわよ!!」
「そうか……つまりその爆風を利用して……」ブツブツと呟き始めるフォアン。
「利用できるかッ!! 全員纏めてあの世まで吹っ飛ぶだけよッ!!」
 ベルが一生懸命ツッコミを入れていると、何の予兆も無く休憩室の扉が開け放たれた。驚いて全員がそちらへ視線を転じても、人影は見当たらない。自動で開く仕掛けでも施してあるのだろうか。
「――さて、こうなったら一蓮托生だ。判ってると思うが――俺ァモンスターを狩猟するだけで終わらせるつもりはねェ。諸悪の根源を絶つための作戦を始める。……手前らは、どうする?」
 重たい腰を持ち上げ、壁に吊られた一振の太刀――黒鞘に納められた人間ほどの長さを誇る太刀・鉄刀【禊】を手に取るヴァーゼ。その表情は剽げたものだが、瞳は真剣そのものだ。
 眼力に威圧されるでもなく、ヴァーゼを見返すと、ベルは立ち上がった。
「……ギルドナイツに盾突くつもりは無いけど、あたしはあたしで主催者にムカついてるのよね。――諸悪の根源をぶっ飛ばすって言うなら、乗ってやっても良いわ」
「――クハハハッ! ギルドナイツ騎士長と知ってもその態度! 流石はザレアが見込んだ猟人だぜ! ――良いぜ、ここにゃア最高の猟人が四人も揃ってやがる。作戦なんざ朝飯前に終わるだろうよ」
 会心の笑みで応じるヴァーゼに、ベルも挑戦的な笑みを返す。フォアンが「よし、やるか」と膝を叩き、ザレアも「頑張るのにゃーっ!」と張り切って跳び上がる。
 四人は誰とも無く歩き出し、扉の外――モンスターが待つ、コロシアムへと足を踏み入れる――――

【後書】
 錬金術まで活用して活動してるハンターさんなんて見た事無いです! でも仕様として存在しますからね、ザレアみたいなハンターさんがいれば、爆弾生成しまくって…にしてもそんなハンターおるかな…(半疑)
 ともあれこの「うにゃうにゃする」と言うワードは今でも使うくらいには好きな台詞ですw 困ったらうにゃうにゃしておけばいいです(笑)。
 さてさて、前置きがめちゃんこ長くなりましたが、遂に次回から狩猟…? 戦闘シーンが見られ…??(見られるとは言ってないw) そんなこったで次回もお楽しみに~♪
■蛇足■ところでヴァーゼさん、こんな所からFlag立ててた事に今更気づきました。ワシよくこのFlagを最終回まで覚えてたなと…w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    調合もそうだけど、錬金術は謎だw
    先生の「うにゃうにゃする」がこれほど嵌まる術式はないですw

    次回から戦闘シーンなのです?なんかヴァーゼさんが熱くてすでに戦闘状態ww
    そのヴァーゼさんの立てたFlagってなんだろう?最終回まで楽しみにしよう。

    ワイゼン翁…

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      謎ですよねぇww
      「うにゃうにゃする」めちゃんこ良いですよねこれ!w 時折口ずさみたくなるレヴェルで好きですww

      たたた確か次からだったと思うのですがもしかしたらまた戦闘シーンではない可能性…??(うろ覚え
      ヴァーゼさんのFlagに関してはアレです、最後までお読み頂ければ「これの事だったのか!w」ってなると思いますので!w ぜひぜひ最後までお見逃しなく!w

      肉球…(えっw)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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