2019年2月25日月曜日

【神否荘の困った悪党たち】第58話 ひえぇ、神否荘の闇を見た【オリジナル小説】

■あらすじ
かかか、帰っていいかな?

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第58話

第58話 ひえぇ、神否荘の闇を見た


「せんぱーい! 先輩起きてくださいせんぱーい!!」

 耳元で砂月ちゃんの爆音が弾け、無事俺の鼓膜は天寿を全うしたお。
 意識を取り戻して即意識が遠のきかけたけど、「あっ、先輩の鼓膜粉々にしちゃった……コネコネ。直った!」と言う砂月ちゃんと思しき惨たらしい声が聞こえて、俺の意識は改めて戻ってきた。
「あれ……俺寝ちゃってたのか」耳から血が出てる気がするけど痛みは無いし声は聞こえるから、きっとうん、あれだ。やばみ。「あれ? ここは……」
 見た事無い場所だった。取り敢えず神否荘ではない事は確かで、何だか狭い。
 訳も分からず自分の体を見下ろすと、普段着じゃなくて“桃太郎・イン・ザ・桃太郎”って刺繍の入ったTシャツを着ている事が判明した。これは流石に外を出歩けない奴だぞ。
「ここは病二園ですよ! 劇をする幼稚園ですよ! その体育館倉庫です!」よく見たら砂月ちゃんの格好も普段と違う。“私は監督です”って刺繍の入ったTシャツを着ている。外で見たら指差さざるを得ない奴だ。「もう間も無く開演ですよ先輩! しっかりしてください!」
「えええ、うせやろ……心の準備が全然だお」突然の宣言に動悸と眩暈がヤバいお。
「師匠が焦ってるニャ! どうしたニャ? 怖い夢でも見たニャ?」ニャッツさんがトコトコやってきた!「我輩が悪夢が霞むレヴェルの地獄を見せてやろうかニャ?」トコトコ恐ろしい事を言い始めたぞ!
「ってニャッツさん、こんな所で喋っても大丈夫なんですか? 民間人に悟られたら不味いのでは??」と言ったはいいものの、そう言えばニャッツさんの声って他の人に聞こえるのか、ふと疑問に感じましたね?
「ニャ? 我輩の声を民間人に聞かれたら不味いのニャ?」すんすんとニャッツさんが顔を上げた先には、式子さんが飛んでいた。
「その時は私が記憶改竄術でペペっと記憶操作して事無きを得ますから問題ありませんよ!」グッと紙の手を持ち上げる式子さんが可愛い。
「ひえぇ、神否荘の闇を見た」これもう俺の記憶もガバガバな気がしてきたなー。「えっ、で、もう劇始まるの? 俺もう台本何も憶えてないレヴェルだよ?」
「じゃあ始めてきますね!」何で俺の話を聞いてくれないの砂月ちゃーん。
 砂月ちゃんが体育館倉庫の扉を開け放って出て行くと、ハウリングしたマイクの音が倉庫にも飛んできた。
「お待たせしましたー! 現代アレンジ版桃太郎、開演でーす!」砂月ちゃんの活き活きした声が聞こえる。
「うえぇ、まじで始まっちゃったけど、俺大丈夫かなぁ」もう心拍数がうなぎ上りで倒れそう。
「安心するニャ」ぽむり、と肉球が俺の足を叩いた。「我輩も台本は何も憶えてニャいニャ!」
「そうですよ亞贄さん」ふわりと式子さんが目の前を舞った。「私も何も憶えてないです!」
「……そ、そっかぁ……」
 …………もうこれ劇が大惨事になるルートしか残されてねえな。
「昔々、と言う情報を修正。恐らく現代に近い環境下に於ける人界、山有り谷有り里有り、老婆、河川で血液を洗い流しているけり」ああもうメイちゃんの語り方がグチャグチャだぁ。
「ニャッツさん、出番ですよ!」式子さんがひそひそとニャッツさんに声を掛けている。
「任せるニャ! トコトコーって流れるんだったニャ!?」訳が分からない事しか分からない。
 扉を開け放って出て行くニャッツさんを見送ると、俺は不安のあまりトコトコと扉の傍まで行って、劇が行われているであろう壇上を見つめた。
 即席の……とは思えないリアル過ぎる川が流れている所を、ニャッツさんがトコトコーっと流れている。な、何を言ってるか分からねーと思うが、俺も何を言ってるか分からねー。
「あら、美味しそうな桃ねぇ。お家に持って帰ったらお爺さん喜ぶかしらぁ」お婆さん役のマナさんが、板についた演技でニャッツさんを掬い上げる。
「なお、老婆は既に老爺を殺害した後です」語り部さんが大変な事実を述べ始めて俺はもう目を逸らしたくて仕方ない。「老婆は帰途に着くと、流れ着いた猫を両断しようと実験器具を用意しました」語り部さんの語り方惨くない???
「オ、オエーッ!」ニャッツさんが式子さんを吐き出した!!
「あ、あれ? 式子さんここにいるよね?」振り返るとやっぱり式子さんはここにいる。「アレは式子さんじゃないの?」
「私、分裂できるって言いませんでしたっけ?」あっ、そう言えばナモの護衛に飛ばした瞬間を思い出した。式子さんも自由だな~。
「まぁ、この汚物、桃の匂いが香るわ! そう! 桃=太郎と名付けましょう!」パンっと手を合わせて喜ぶマナさんを見てるだけで正気度が削られていく。
「さっ、亞贄さんの出番ですよ!」へしへしと俺の背中を叩く式子さん。「頑張ってきてくださいね!」
「ひえぇ……仕方ない。ここまでカオスならもうどうにでもなれーだ」と一つ頷いて、壇上に上がってみる。
 凄まじい灯りで目が眩んだ後、俺は絶句した。
 倉庫から見た檀上がそんなに広くなさそうだったから、てっきり小さな幼稚園だと思ってたけど、壇上から見下ろした体育館の規模は、そう、アレだ。武道館だ。
 何万人規模の園児が、仏顔で俺を見上げていた。
 かかか、帰っていいかな?

【後書】
 やっぱり大惨事にするなら、とことん大惨事にしなければ! 精神で、園児は固より亞贄君のメンタルもブレイクする作戦です。武道館でこの劇を演じると言う地獄絵図! 最高ですね!ww
 と言う訳で桃太郎編クライマックス! こんな展開でありながらにゃんと次回で桃太郎編完結です!w どんな風に締め括るのか、最後までお見逃しなくっ! それでは次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    始まってしまったのね…
    しかも武道館規模wヤバみ。夢オチであることを願わずにはいられません。

    神否荘の闇…日常的に行われる記憶の消去と改竄……
    オリジナルの記憶を持った者は存在するのか?
    そもそもそこにゴーストは宿っているのか?……
    ネットの海は広大だ…(話ちがう。)

    えぇぇ、次回完結できるです?見逃せねぇなvv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      始まってしまいました…!ww
      ですですww武道館規模なんですww夢落ち展開、一縷の望みに賭けたいですね…!(笑)

      まさかのネッ広の元ネタが出てくると思わずワシビックリです!w
      オリジナルの記憶を持った者の存在と言いますか、もう皆ガバガバになってる予感です(笑)。

      次回にゃんと完結するみたいです!w お見逃しなくっ!

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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