2019年2月26日火曜日

【ベルの狩猟日記】080.開幕【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第80話

080.開幕


 オートリア地下闘技場。
 そこでは定期的にモンスターと人間が執り行うデスマッチが繰り広げられている。自然界で最強を誇るとされるモンスターを、表に出てこられなくなった猟人が密猟・捕獲し、この地下闘技場へと連れて来る。全ては、大自然で繰り広げられる大いなる戦いを直に観賞するため。
 地下闘技場そのものは、オートリアの街を運営している者が設立した物ではない。誰かが秘密裏に建設し、多くの関係者に裏金を渡して、密告しようとする者を片端から始末した結果、このように巨大な施設が地下で運営され続ける事になった。
 私生活に刺激を感じなくなった者ばかりを集め、多額の金を支払う代わりにモンスターと人間の戦いを最前列で見せる。狩猟をショーにしているのである。
 地下闘技場の最高責任者であり、コロシアムの主催者でもある男――ヒボップは肥満体を揺らしながら、葉巻を口に咥えて喜悦に浸っていた。
「さて、今宵のモンスターは何じゃ? マロは待ち草臥れたぞ」
 豪奢な服、壮麗な部屋、部屋に居並ぶ華麗なメイド達……全てがヒボップのためだけに用意された代物だ。華美な部屋の中心に置かれた金銀がふんだんにあしらわれた椅子に腰掛け、見目麗しいメイドが入れたワインを片手に下方を睥睨する。部屋の下方にはコロシアム――モンスターと人間が戦うためのフィールドが広がっている。
「ヒボップ様。今宵のモンスターは、こちらになります」
 見目麗しいメイドの一人が恭しく頭を垂れると、手に持った用紙を捧げるようにして差し出す。ヒボップは乱暴にそれを取り上げると、中身を吟味する。
「……ふむふむ、今宵のモンスターは、ババコンガと申すのか。……何とも汚らわしい名前じゃのう。マロとは豪い違いじゃ! ノホホホホ!」
「全くで御座います」
 ヒボップの言葉に会心の笑顔で応じるメイド。
「ヒ、ヒボップ様ッ!!」
(自称)上品な笑声を上げていたヒボップが振り返ると、丁度扉を開け放って、ネズミのような顔をした中年の男が転がり込んで来る所だった。
「何じゃ、騒がしいのう。マロは不快じゃ」
「も、申し訳ないネ! ――実は、ワタシの商売に気づいた輩が現れて……!」
「その話はもう報告を受けておる。その者の始末も兼ねて、此度のショーに使ってやる事にしてやったわ」
「――コロシアムに? で、でも相手は恐らく、猟人ですヨ!? 万が一始末できなかったら……!」
「無理じゃろうなぁ。マロの計らいで、此度のショーに使う武器は貧相な物ばかり。ババコンガがどのようなモンスターか知らぬが、勝てる道理が無かろう? 今宵こそマロのために屍山血河を築くのよ! ノホホホホ!」
 ヒボップが自称上品な笑声を上げていると、下方で動きが有った。闘技場の入口が二箇所、音を立てて扉が開いたのだ。一方の入口から出てきたのは、四人の男女。何れもインナーしか纏っていない、軽装にも程が過ぎる格好の者ばかり。尤も、一人だけ何故か〈アイルーフェイク〉を頭に被っていた。持っている武器はヒボップの言う通り、猟人にとっては初心者が愛用するような物ばかり。〈アイルーフェイク〉の少女の武器のレベルだけ違う事に気づかなかったが……。
 そしてもう一方から現れたのは、桃色の体毛を纏った巨大な猿だ。四つん這いになってドタドタとコロシアムに駆け込むと、聳え立つ壁面を見上げて、フンフンと鼻を動かしている。
「ノホホ! 名前通りに醜悪な奴じゃのう。その醜悪な奴に葬られる、あ奴らはもっと醜悪じゃがのう! ノホホホホ!」
 ヒボップが愉快気に笑い転げる様を見て、中年の男は苦笑を禁じ得なかった。彼の性癖には時折付いていけない事が有るのだ。
 それにしても、と中年の男は部屋を見回す。ヒボップをぐるりと囲むようにメイドが立っている姿は壮観である。観客席にも無数のメイドの姿が見える。自分も彼のように財を築き、座っているだけで金が転がり込むような生活を送りたいと熟々思う。
「さて、今宵のショーはどれ程のものかえ? 楽しみじゃのう!」
 成金男がぶくぶくに膨れ上がった顎を震わせ、歓喜の声を上げる。中年の男はそれに倣うように視線を下方に向ける。先刻、男に突っかかってきた少女がこちらを見上げて睨み据えている姿が見えて、一瞬狼狽するが、彼女からこちらに攻撃する術は無い。
 ヒボップのVIP席は丁度コロシアムの天井に据えられている。観客席よりも高く、モンスターの攻撃が絶対に届かない安全地帯で、彼は“ショー”と称するモンスターと人間の殺し合いを堪能するのだ。悪趣味としか言いようが無いが、中年の男は嫌悪感を顔に刷く事は無い。ヒボップのお零れで良い生活を送れているのだから。尤も、欲望に際限など無く、勝手に武器の強化偽装を行って小遣い稼ぎをしているのだが。
 所詮、汗水流して働くよりも楽して稼げるに越した事は無い。楽に人生を送れる方が良いに決まっているのだ。態々危険を冒してまでモンスターと対峙する人間など、男にとっては理解不能な存在にしか映らない。
 少女の挑戦的な視線に、男は軽蔑の色を乗せた視線を返す。それが、彼らの間に厳然と介在する溝だった。

◇◆◇◆◇

「……どうした? ベル。金貨でも降ってきそうか?」
 頭上を見上げて瞳を鋭く尖らせたベルに気づき、フォアンが剽げた態度で問いかける。
 ベルは暫し無言を貫いたが、やがて首を否と振って気を引き締める。
「金貨の雨なら狂喜乱舞ってトコだけど、今は――血の雨を降らしたい気分ね」
「にゃー、フォアン君。ベルさん、大激怒かにゃ?」
「だな。死にたくなかったら今はベルの顰蹙を買うのは止めといた方が良いな」
「……そこのお嬢ちゃんは一体何なんだ? 怒るとラージャンにでもなるのか?」
 声を潜めて囁き合う二人の猟人を見て、ヴァーゼが砕けた調子で片眉を持ち上げる。
 二人は顔を見合わせ、深刻そうな顔でヴァーゼに向き直る。
「ラージャンが可愛く思える瞬間を見たいか?」
「多分大タル爆弾Gでも止められにゃいにゃ!」
「……なァ、あいつは本当に人間なのか? 人間の規定で測るべき存在なのかそれ?」
 ヴァーゼが苦笑を返すと、――鐘の音が聞こえてきた。刹那、闘技場に設けられた観客席から喚声が湧き起こる。――開幕の鐘か、と四人は即座に理解する。
 視界には一頭の牙獣種の姿が有る。彼が今宵のショーに宛がわれた主賓なのだろう。
「さて、お手並み拝見と行くかァ!」
 ヴァーゼの声に三人はそれぞれ武器を構え――狩猟を模した殺し合いが開幕を迎えた。

【後書】
 てっきり今回から戦闘開始かと思っておりましたが! 次回からでしたね!w
 今回のエピソードで登場する明らかな悪役…と言いますか、明らかな小物臭漂う方々は、割とわたくしの作品では珍しい部類に入ります。悪役を描写するならそりゃーもう外道の極地みたいな、地獄絵図を創造するような方を出したいマンですからね、見るからに狩られる側みたいな悪役はね、あんまりって感じなんです。
 ただ、この物語の根底に有るのは「ギャグコメディ」ですから、こういうキャラクターの方が任せられるってもんです。勧善懲悪展開に相応しい悪役、って奴ですね! 問答無用で叩きのめせる快感よ!(笑)
 さてさて、流石に次回から戦闘が始まると思うのですが、もしかしてまだ引っ張る? 引っ張ります?? どんだけ戦闘シーン先延ばしにしたいんだワシ!ww と言う訳で次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    えーっと、次回からですかねw

    なんと言っても二千zですからね、ラージャンなんて可愛いもんですw
    そしてヒボップ様!先程読んできた勇者様に出てきたシュンさんとは
    全く違うタイプの小物感あふれる悪役w
    これはやられちゃうよなぁ~どんなやられ方するんだろ?ってすでにやられる前提wがんばってください!

    次回は来ますよね?!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ですねww たたたたぶん次回からです!w

      そこかー!www ラージャンなんて可愛いもんですwwwヤバ過ぎるぅ!ww
      そうなんですよ!w 勇者様のシュンはも~アレです、絶対的なまでの強さを有する悪役と言いますか、恐ろしさや悍ましさを湧き立たせる悪役なのですが、ヒボップ様はね!w 小物感溢れ過ぎですね!www
      そうそうww もう登場して即やられる前提で話が進むレヴェルの小物なんですww わたくしの作品では中々見られないレアキャラですよ!(笑)

      た、たぶん!ww きっと次回こそ!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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