2019年2月5日火曜日

【ベルの狩猟日記】077.事件発生【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第77話

077.事件発生


 場所は戻り、オートリアの市場。
 空は橙色に移ろい、街の喧騒が徐々に夜に移行していく。街の入口からは狩猟を終えた猟人のグループが纏まって帰途に就き、あちこちで姿を見る事が出来る。今頃、大衆酒場は賑わいのピークを迎えている頃だろう。
 ロザ、ベル、フォアンの三人は芋を洗っているかのようにごった返す市場を、付かず離れずの距離を保って移動していた。
「相変わらずの人込みね~。それで、ロザ姉。今日の夕飯は何にするつもりなのー?」
 聞こえないかもと思い、ベルの声は自然と大きくなる。その声に気づいて振り返ると、ロザは快活な笑みで八重歯を覗かせる。
「最近、ちょっと涼しくなって来た事だし、ホクホク鍋にするつもりだよ~♪ お姉さんは料理も得意なのさ!」
「やったーっ! ロザ姉のホクホク鍋は大好きなんだよね~♪」
「そうか。それなら俺も楽しみだぜ」
 歓喜するベルを見て、フォアンも満足そうに頷く。
 二人の反応を見て、ロザは「そーだっ」と手を打つ。
「二人には買物を命令します! これはお姉さん命令だから、逆らうと重罰なのさ!」
「じゅ、重罰……?」「了解です」思わず苦笑するベルと、律儀に敬礼を返すフォアン。
「メモを渡すから、メモ通りの品を買ってくるんだよ~! ロザさんの使いって言えば、きっと負けて貰えるから~♪ お姉さんはどこの店でもお得意様なのさ!」
 人込みなど全く意に介さずにすいすいと近づいて来ると、ベルにメモを渡すロザ。メモを渡すと二人にウィンクを寄越し、「それじゃ、お姉さんはちょっと用事を済ませてくるよ~♪」と言って去ってしまった。
 残された二人は、顔を見合わせ、苦笑を浮かべる。
「よし、それじゃ張り切って買物を終わらせちゃおうか、フォアン!」
「了解です、隊長」
 はにかみ笑いを浮かべて先導するベルと、追従するように就いて行くフォアン。
 ベルの頬には朱が差していたが、それは黄昏が作り出す幻想か、或いは――――

◇◆◇◆◇

「いらっしゃいネ! 今ならどんな武具の強化でも二千z! 二千zだヨ!」
 オートリアの市場の一角。二人の少年少女が買物の任務を遂行するために散策していると、ふとそんな掛け声が聞こえてきた。人込みで溢れ返っている通りの隅に視線を転ずると、そこには糸目と出っ歯が特徴的な、小柄で小太りな中年の男が露店を開いている姿が見えた。
「二千z? そんな破格の値段でやってけるのかよ?」
 猟人然とした青年が中年の男の掛け声に気づき、そう問いかける姿が見受けられた。
「心配無いネ! ワタシに鍛冶の腕は無いけど、昔ドンドルマで工房を営んでいた同業者がいるのヨ! そいつの腕は確かネ! これが証拠ネ!」
 ネズミのような顔をした男は露店に並んでいる片手剣を見せる。色んな片手剣が並んでいるが、どれにしても一端の猟人では相応の狩猟を納めねば手に入れる事が叶わない代物ばかりだ。
 猟人の青年は「こいつァリオレイアの素材で出来た毒属性の片手剣・プリンセスレイピア。こっちは幻獣キリンの雷属性の片手剣・紫電改じゃねえか!」
 驚きに目を瞠って、「スゲェなァ……」と思わず見蕩れ始める猟人の青年に、中年の男は「今なら二千zヨ! 今なら二千zで強化するアルヨ!」と言を募らせる。
 その様子を遠目に窺っていたベルの脳裏に、いつぞやの情景が蘇る。
「――あーっ!! 思い出した!!」
 隣で突然咆哮を上げたベルに、フォアンが直立不動のまま跳び上がる。
「どうした?」とベルを振り返って尋ねるフォアン。
「あいつ、あたしの武器を偽装強化した職人よ!!」
 ずびしッ、と中年の男を指差し吼えるベル。その怒声で周囲の人間の注目を浴びる中年の男。
「な、何言ってるネ!? 言いがかりは止めてヨ!!」
「あんただけは許さないって思ってたのよ……あの時の二千z、きっかり耳を揃えて返して貰おうかしら!?」
「そこなのか」思わずツッコミを入れるフォアン。
 騒然とするオートリアの商店街。中年の男は「付き合ってられないネ!」と半ば逃げるように走り出す。ベルはその後ろ姿を「待ちなさいよ、この――詐欺師ッ!!」と喚き散らしながら追って行く。フォアンも追従するようにベルを追いかける。
「あいつが犯人で間違い無いのか?」
 駆け寄りながら問いかけるフォアンに、ベルは走りながら何度も頷く。
「金が動く取引をした相手の顔は絶対に忘れないもの! 間違い無いわ!!」
「――了解した。それじゃ、捕縛するぞ」
「捕縛? ――ってフォアン!?」
 逃げ足がやたらと速い中年の男に、更に加速して追いついたフォアンは、先刻ワイゼン屋敷で見せて貰った華麗なドロップキックを放った。ドロップキックは中年の男の背中に突き刺さり、対象を吹き飛ばして制止させる。
「――決まったな」
 自画自賛して「うんうん」と頷くフォアンに、ベルは半分呆れ顔で「市井でそんな動き出来る人間なんて、あんたとロザ姉ぐらいよ……」とツッコミを入れる。
 中年の男へと駆け寄り、胸倉を掴み上げるベル。中年の男は「ひぎぃっ」と豚のような鳴き声を上げ、引き攣った表情でベルから逃れようとする。
「それじゃ、ちょっとガーディアンの屯所まで来て貰おうかしら……?」
「ちょっと待ってヨ! ワタシ、あんたの事、知らないヨ! 人違いネ!」
「まだしらばっくれるつもり? 何でもいいから屯所に――」
 かしゅっ、と香水を掛けるように、ベルの眼前に霧状の液体が吹きかけられる。その瞬間、ベルは「ふぁ……」と抗えない眠気に襲われ、そのまま倒れ込んでしまう。
「――ベル!」
 咄嗟にフォアンが駆け寄ろうとした――その時だ。周囲に複数の若者が群がり、自分とベル、中年の男を囲んでいる事に気づいたのは。
「動かないでネ、坊っちゃん。このお嬢ちゃんが酷い目に遭わされたくなかったら……大人しく付いて来るヨ」
「……その娘に危害を加えようと思うなよ? 危害を加えたら――俺が生きたまま地獄を味わわせてやる」
 ゾッとする程に凍えた声。周囲に十人近い若者が囲んでいるにも拘らず、フォアンの瞳は死んでいない。寧ろ周囲に群がる若者の方が気圧されていた。
「き、危害を加えない事は約束するヨ。……黙って付いて来るヨ!」
 ベルを担いで歩き出す若者を見て、フォアンは言われた通り、無言のまま一団に連れ立って歩いて行く。
 やがて夜の帳が下りる頃――商店街から二人の猟人の姿が消えた。

【後書】
 不穏な展開且つ、過去の話の伏線回収となりました。
 偽装強化、有ると思うんですよこの世界。見た目の変化があんまり無い武器とか、どうやって強化されたのか確認できるのか、その辺のモヤモヤを文に起こしてみた奴ですね! 実際イベント系の武器って殆ど変化無くない…? 気づけるものなの…??
 と言う訳でやっと物語が動き始めました! 物語の三分の二が日常シーンと言っても過言ではない今回のエピソード、まだまだ新キャラが出てきます!w お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    不穏な展開ですが、相手はベルちゃんですよw
    しかも二千z!!ただで済むとは思えません。

    偽装強化…ありそうですよね。
    逆襲クエストでコツコツ貯めたお金すべて注ぎ込んで強化したら、
    睡眠属性値が40上がっただけだったとか、やられましたわw
    ちょっと気づかないよねぇw

    動き出す物語、分の二が日常シーンそしてさらなる登場人物…
    まちきれないぞっっっ!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      確かにww 相手がベルちゃんと言うだけでこの安心感www(笑)
      ただで済むとは思えないwwwwwベルちゃんを襲った相手の心配をするレヴェルwwwww(笑)
      もうこの二行だけで腹筋が大変な事になったのですが!www

      偽装強化、有りそうですよね!
      ってまさかのwwwwそれは本当に強化されてる奴ですよ!www
      でも気持ちは分かる、分かります!ww 武器によってはそんな差分しか増えない強化も有りますよね!www
      って偽装強化ってそういう意味じゃないからぁ!wwwwww(笑)

      どんどん加速して参りますのでね! ぜひぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思いますっっっ!

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪
      もー今回めちゃんこ笑わせて頂きましたわいwww

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