2019年2月6日水曜日

【滅びの王】67頁■神門練磨の書17『力の使い道』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/04/07に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第68話

67頁■神門練磨の書17『力の使い道』


「……そうだ。麗子さんにも伝えとこう!」
 走平虎の湖太郎に跨った状態で、オレは不意にそんな言葉を漏らした。
 振り返った崇華が、小首を傾げてオレを見据える。
「何を、かな?」
「オレが生きてた事だよ! 知らないの、麗子さんだけだろ? そんなの、何か仲間外れにしてるみたいで、オレ嫌だし」
「めんでー事するの好きだよな、メンマは」
「……お前は絶対しなさそうだよな、〈風の便り〉とか」
「めんでーもん」
「……」
 まあ良いけど。人の事をあれこれ言うのは好きじゃないしな。
 麗子さんに頭の中で構築した〈風の便り〉を送信して、それから前を向く。
 たたたっ、たたたっ、と小気味良い走行音を立てて、湖太郎は疾走している。景色に変化はあまり無いけれど、それでも風を切る感覚や全身に伝わる振動、地面の流れ具合から、相当速度が出ているのが分かる。
 乗り心地も良くて、ついつい湖太郎の背中を撫でてしまう。
「……八宵さん、大丈夫かな……?」
 崇華が不意に振り返って、オレを通り越して背後に視線を投じた。
 オレも釣られて振り返るが、そこにはどこまでも続いていそうな荒野が広がっているだけで、人の姿は確認できない。
 八宵は結局、徒歩の道を選んで、今頃フルマラソンしている筈だ。始めの頃はまだ見える範囲を走っていたけれど、……もうその姿は完全に視界から消えていた。
「大丈夫だろ? 八宵の奴、体力は有るみたいだったし」
「存外テキトーだなー、メンマ」
「テメエにだけは言われたくねえよ!」
 ――と、〈風の便り〉が返ってきたので、開いて聞いてみる。
『こんにちは、練磨君。君から〈風の便り〉が来た事に、今凄く驚いてるわ。……やっぱり、君は《滅びの王》だったようね。……残念だわ。私は、練磨君が《滅びの王》であって欲しくなかった。……なんて、今更かしら? それでも私に〈風の便り〉をくれた事、凄く嬉しく思ってる。有り難う』
 ……何か、妙に照れてしまう内容だな、って思った。
 次の言葉を聞くまでは。
『一つ、聞きたい事が有るの。……何も無かったなら、それに越した事は無いんだけれど……私にとっては重要な事なの、よく聞いて。……虚無僧の人達に、出逢わなかった?』
 ――一瞬、背筋がぞわっとして、まるで冷たい手で撫でられたような錯覚を感じた。
『君を一度襲った、あの虚無僧達よ。……逢わなかったのなら、今からでも良いわ、警戒して。今そこに鷹定君と玲穏君、崇華ちゃんがいるんでしょ? 彼らから離れないで。君は常に狙われている存在なんだから。……出来ればまた逢いたいわ。場所と日時は君に任せるから。早く逢える事を祈ってる。返信、楽しみに待ってるわ』
 最後に投げキッスの音が聞こえて――、〈風の便り〉は切れていた。
 ……数瞬の間、オレは放心したままだった。
 虚無僧の出現を何故、麗子さんは予測していたんだろう? ……それはやっぱり、崇華と同じで、虚無僧の連中が【世界の終わり】だと知っていたから……なのだろうか?
 分からないけれど、聞いてみるだけの価値は有りそうだった。
 頭の中で適当に言葉を繋げて、送信。
 すると、間も無く返信が来た。
『……【世界の終わり】を知っているのなら、話は早いわ。一応、極秘事項だから他言無用って事を念頭に置いて貰えると助かるんだけど……私が追ってる組織が、それなの。……連中は表の世界には殆ど姿を現さないから、手掛かりはゼロに等しかったのよ。……ちょっと端折るけど、【世界の終わり】は何らかの形で、君――《滅びの王》に接触してくると、私は睨んでいたの。実際、案の定だったんだけどね♪ ……あの後、彼らを追おうとも考えたんだけど、そう簡単にはいかなかった。今は手掛かりを探してる状態なんだけれど……。一つ、気になる事が有るんだけど。練磨君は、鷹定君の《滅びの王》の力の使い道を、聞かされたのかしら? 聞かされていないのなら、……その時は、また連絡するわ。返信、待ってるわ』
 そこで〈風の便り〉は切れていた。
 ……そう言えば、鷹定が《滅びの王》の力を欲していたのは知ってたけど、結局その使い道は、最後の最後まで聞かされなかったんだ。
 聞こうと思えば、今すぐにでも〈風の便り〉を使えば聞けるだろう。……でも、鷹定が敢えて口に出そうとしなかった事を無理に訊き出すのも、何だか嫌な感じだ。
 ただオレは、鷹定が世界を敵に回そうとしている事、国を動かすと言っていた事を含めた内容を紡ぎ、送信した。
『……今ので確認が取れたわ。鷹定君は恐らく……私の推測によれば、だけれど……王国と敵対するつもりよ』
 王国と敵対する?
 王国は帝国と言う大きな国を滅ぼす位の強大さを誇る国じゃないか。そんな国と敵対するって……尋常な話じゃない。
 国と言う巨大過ぎる組織に個人で敵対するなんて……想像を絶する話だ。
『これも推測に過ぎないんだけれど……鷹定君は、《贄巫女(にえみこ)》の儀式を止めようとしてるんだと思うの。……練磨君は知らないだろうけど、王国の一部では有名な行事なのよ。王国の官僚……お偉方しか参加できない行事で、世間一般には知られていない、或る種の呪い……儀式が有るの。それが――《贄巫女》の儀式』
 ……思うに、名前からして不吉な感じだ。
 でも、それが何だって言うんだろう? それを止めると、王国と敵対する事になるのか?
『《贄巫女》の儀式の発祥は私も知らないの。でも、大戦争以前には無かったのよ。帝国を攻め滅ぼしてから、或る種の密教……表には出せないような忌事に近い儀式を行い始めた。行い始めた理由……それは、鷹定君に聞けば分かると思うから端折らせて貰うわ。……とにかく、鷹定君の狙いは恐らく、それよ。儀式を止めて、王国と敵対するつもりだわ』
 話が見えない。
 麗子さんの言ってる事は、難しいながらも何とか理解できる。……けれど、その話が正しいとして、鷹定の目的が未だに混沌に包まれたままだ。オレの《滅びの王》としての力を使えば《贄巫女》の儀式とやらは止められるだろう。そのまま王国と敵対関係を楽々と結べるのも分かる。ただ、何故、鷹定はそんな事をする必要が有るんだ?
 オレには分からないだけで、鷹定には王国を憎んだり恨んだりする気持ちが有るのかも知れない。それは結局オレには理解できないもので、聞かされてもきっと理解には至らないと思う。……でも、納得させるだけの動機くらいは、オレだって知りたい。
 何の説明も無いまま、鷹定に王国と争って貰いたくない。それだけは、確かなオレの気持ちだ。
『話は続くけど、その《贄巫女》の儀式を探ってみたの。……本当は私の管轄外なんだけど、鷹定君の狙いがもしそれなら、私なりにちょっと罪滅ぼしをしたかった程度の事だったんだけれど……不思議な事に、ここにも不穏な影を感じたのよ』
「?」
『――【世界の終わり】が、一枚噛んでたみたい。詳しい話は、逢ってからしたいわ。……いつ逢えそうかしら?』
 丁度〈風の便り〉が切れた時、オレは二人を見て尋ねた。
「どれ位したら、王都に着けそうだ?」
「ん~。早くて明日かな。このまま走り続ければの話だけど~」
「……湖太郎君に無理させ過ぎだよぅ」
 考えてみると湖太郎は何日も走りっ放しなんだ。崇華とミャリを教会まで連れて来た時だって、碌に寝てないに違いない。御者と違って、乗り物である湖太郎は走りながら眠るなんて出来ない。それに自分の背中に乗って眠っているであろう崇華を気遣って走れば、自然と緊張状態が継続されるに違いない。
 ……オレとしても、これ以上湖太郎には無理をさせたくない。……でも、今はとにかく時間が惜しい。
「ごめん、湖太郎。明日には王都に着きたいんだ。……出来るか?」
 背中の毛を撫でながら問い掛けると、湖太郎は不意に足を緩やかに減速させ、
「がう!」
 と一声鳴くと、大きく足を踏み込ませ、力強く駆け出した!
「……ありがとな、湖太郎っ」
 毛をくしゃくしゃにするように背中を掻き撫で回すと、オレは妙に嬉しい気持ちになれた。
 湖太郎も、麗子さんも、皆……我儘なオレに付き合ってくれる。……それって褒められるような事じゃないけど、逆にオレも皆を信頼してる。オレが《滅びの王》だから付き合ってる、って部分もきっと有るだろうけど、それでも素直に嬉しい。
 ……今はとにかく、鷹定を止めなければ! それだけを念頭に置いて…… オレは、湖太郎に身を任せた。

【後書】
 少しずつ核心に迫って参りました! 鷹定君の狙いが何か、何故狙うのかなどなど、少しずつ少しずつ明らかになって参りますので、ぜひぜひ楽しみにお読み頂けたら幸いです!
 そしてにゃんと! 次回は突然別の書に入ります! 今一番ホットな鷹s…あの方の書です! お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    今まで起こってきた色々な事が段々繋がりだした感じかな?
    それにしても、鷹定くんが成そうとしている事の大きさがかなり心配。
    字面がすでに禍々しい《贄巫女》の儀式。どうして止めたいんだろう?
    って書いてたら【後書】に「少しずつ少しずつ明らかになって…」
    おぉ~親切設計!!

    八宵ちゃんがんばって~vv

    次回からは今一番ホットなT定…あの方ですか!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      ですです! 段々と繋がり始めている所ですね!
      だいぶどでかい事をやろうとしている訳ですからね。鷹定くんは要注意!
      新設設計!(*´▽`*)わーい! そうなんです! 疑問に思った所は少しずつ明らかになっていきますゆえ、ぜひぜひ楽しみに読み進めて頂けたらと思います!

      八宵ちゃん全力疾走で頑張りますよう!ww

      T定wwwwこの表記にめちゃめちゃ笑ったwwwwww

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!