2019年3月19日火曜日

【ベルの狩猟日記】084.オートリアの朝【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第84話

084.オートリアの朝


「……なるほどのう。ギルドナイツも一枚噛んでおったか。ほっほっほっ、巧く事が運んで何よりじゃわい」
 闘技場のVIP席へと繋がる通廊の前で、黒子の姿をした老爺が口唇に笑みの皺を刻む。
 隣には執事服に討伐隊正式銃槍と呼ばれるガンランスを構えたギース、メイド服にホーリーセーバーと呼ばれる双剣を手にしたロザが控えている。
 三人の視線の先では、無数のメイドがニンジャソード片手に観客の誘導を行っている。ここからでは見難いが、闘技場の中央には見覚えの有る猟人の姿も見える。
「何かしらアクションは有るかと思いましたが、まさかメイド部隊を展開なさるとは思いませんでしたよ~」
 無人の通廊には現在、ワイゼン、ギース、ロザの他にもう一人、メイド服を着た女の姿が有った。
「お陰で観客の身柄は全て確保できそうですし、主催者の首根っ子も捕まえられました。……こんな大規模な作戦を行うのなら、一言ギルドナイツに打診して頂けたら宜しかったのに~」
「ほっほっほっ、この街はワシの街じゃ。誰かに勝手に弄くられるのは気が進まんでの。そっちこそ、ワシに連絡くらい寄越さんかい。ワシを誰だと思っとるんじゃ? ――リボン」
 メイド姿の女は苦笑を滲ませる。
「で~す~か~ら~、その名前では呼ばないで下さいってあれほど~……」
「やーじゃよー」舌を出してワイゼン。「ヌシがどんな名前になろうとも、リボンである事には変わり無いのじゃ。……それとも、今の名で呼ばれたいのかの? ――“ティアリィ”」
 女――ティアリィは澄ました微笑を浮かべ、担いでいたピンクフリルパラソルに触れる。
「全く……何でもかんでもお見通しでは、立つ瀬が無いじゃないですか~」
「ほっほっほっ、まぁ良いではないか♪ ……ヒボップ共は全員、そっちに身柄を渡した方が賢そうじゃの。本当なら、これから彼奴には生きながらにして地獄を堪能して貰おうと思っておったんじゃがな」
「人間として再起不能にされては、彼らの背後を洗う事が出来なくなりますよ~♪ ……彼らには逢えましたか?」
 穏やかな微笑のままティアリィが問うと、ワイゼンは「ふむ」と顎鬚を撫でる。
「面白い取り合わせなのは確かじゃな。偶然にしては出来過ぎじゃ。ここまで揃えば必然と称されても止むを得まい。――次の時代は、もうすぐそこまで来ておるようじゃのう」
「そろそろ隠居されたらどうです? ワイゼン様」くすり、と笑むティアリィ。
「そうしたいのは山々なんじゃがなぁ……もう暫くは現状維持じゃの。あ奴らを見ておると、血が疼きだすんじゃよ♪」力瘤を作るワイゼン。
「――年寄りの冷や水と言う言葉、ご存知ですか?」
「うわーんっ、リボンまでワシを苛めるーっ!」
 即座に反転し、ロザの胸の中に飛び込むワイゼン。
 ロザは「よしよし、お姉さんが慰めると思ったら大間違いだぞ☆」とワイゼンの両耳を引き千切らんばかりに引っ張る。
「ぎょえーっ!」とワイゼンは目に涙を溜めて暴れだす。
「リボン……いや、今はティアリィじゃったか。オンドレも仕事が終わったら戻ってこいよ。ワシャ昔みたいに、皆でワイワイ暮らしたいんじゃけえのう」
 どこか視線を泳がせつつ告げるギースに、ティアリィは微笑を浮かべる。
「お心遣いだけは有り難く受け取っておきますよ、ギースさん♪」
「お、おうっ」腕を組んでそっぽを向くギース。
「それにしても……あ奴は相変わらずじゃのう。――今も好いとるのか?」
 耳を押さえて涙目になりつつも、ワイゼンがニヤニヤと笑むのを見て、ティアリィは苦笑を滲ませる。
「久方振りに見ましたが、騎士長は相変わらず無謀な作戦が大好きなようです♪ 今回も単独で潜伏すると言って聞かなかったそうですし……と言うかですね、ワイゼン様。私は彼の事を気に掛けてはいますが、好きとは――」
「良い良い、ワシとロザの目は誤魔化せんよ。……ベルは絶対にやらんがのう」
 くっくっくっ、と暗鬱な笑みを浮かべて遠くを見つめだすワイゼン。ティアリィは苦笑を呈するしかなかった。
「さてとっ、ティアリィちゃんはこれからお仕事だよねっ? お姉さん達も手伝っちゃうよ!」
 腕捲りするロザに、ティアリィは小さく顎を引く。
「では、後始末を始めましょうか♪」

◇◆◇◆◇

「あー……朝陽が目に染みるわ……」
 ――厩の前でオートリアの街に差し込む朝陽を拝みつつ、ベルはぼんやりと呟きを漏らした。
 結局あの後、気づくと糞塗れの二人の男をボッコボコにしていた。何故かワイゼン屋敷の元メイド達に激しく止められ、そのまま闘技場を後にした。ザレアは渋ったがそこでヴァーゼとは別れた。ギルドナイツの事情聴取を受け、解放される頃には世界は黎明を迎えていた。因みにベル自身は、男二人を相手に大暴れしたため糞塗れになってしまったので、解放されてすぐに湯浴みをし、着替えを済ませていた。
「あのババコンガ、遠方の密林に放されるらしいぞ」
 ベルの背後に立ち、ぽん、と頭に手を載せるフォアン。振り返ったベルは、彼の姿を捉えて微笑を滲ませた。
「良かった……でも、手放しで喜んじゃいけないわよね。あのババコンガ、絶対にあたし達に対して怒ってると思う。今度こそ、人間を襲うかも知れないわ」
 悄然と俯くベルに、フォアンは優しくその髪を撫でた。
 ベルはそこでふと、亡くなる前の父親を思い出した。泣きそうになる自分をあやすように撫でてくれた父親の手の感触。それを思わず想起する。
「その時は、俺達の出番――だろ? ババコンガだって、きっとベルの気持ちを汲み取ってくれるさ。もう、人間には係わらない方が良いって思ってるよ」
 それは優しい嘘。そんな事は有り得ないと解っていても、ベルにはそれに反論する事が出来なかった。フォアンを見つめ、何と無く目許が緩んでしまう。
「……あーぁ、フォアンってやっぱり卑怯よ」
「ん? 何がだ?」
 キョトン、と小首を傾げるフォアンに、ベルは微笑みかける。
「何でも無いわっ。……そうだ、フォアン。ちょっと目を瞑ってよ」
「ん? どうしてだ?」
「あんたの覚悟と責任を試すテストよ。あたしが良いって言うまで、目を瞑りなさい」
「――了解です」
 敬礼し、瞑目するフォアンを見て、ベルは赤面しつつも、そっと顔を近づける。
 朝陽に照らされた厩で、二人の影が一つになる。
 やがて一方が離れると、一方は目を閉じたまま、微笑を滲ませる。
「……テストは合格、か?」
「むぅ……ちょっとは動揺しなさいよっ!! 何であたしばっかりこんな緊張しなくちゃいけないのよっ!!」
「はっはっはっ、――で、いつまで目を瞑っていれば良いんだ?」
 いちゃついている二人の話を、路地の隙間から聞いている人間の姿が有った。
「ぐぬぬ……!! ザレアちゃん、どうしてもそこを退かぬと言うか……!?」
「お嬢!! お嬢が攫われてしまうッ!! 頼む猫頭!! そこを通してくれェェェェ!!」
「ザレアちゃん! これはお姉さん命令だよっ! そこを通しなさい!!」
 三人の言葉を一身に浴びても動じないザレアは、再び構えを取る。
「にゃっふっふっ……ベルさんとフォアン君の幸せは邪魔させにゃいのにゃ! 喰らえ☆ アイルー拳法――――ッ!!」
 路地裏からアイルーの鳴き声と三人分の嬌声が響いたのは、最早言わずもがなと言う奴だ。

◇◆◇◆◇

「お待たせしました~」
 ベルとフォアンの所にザレアが戻ってきた頃、ティアリィがのんびりと近づいてくる姿が見えた。
「里帰りはどうでしたか?」
 ニコニコと邪気の無い笑みで問いかけるティアリィに、ベルは「どうでしたも何も……」と疲労の浮かぶ笑みを返して、事情を掻い摘んで説明する。
「それは大変でしたね~♪」笑顔のままティアリィ。
「……ねぇ、心にも無い事言ってない? ティアリィ……」
「そんな事は有りませんよ♪ さ、それでは帰りましょうか♪ 愛しのラウト村へ♪」
「そうね……って、あぁ! ロザ姉のホクホク鍋……」
 ワイゼン屋敷で作る筈だったホクホク鍋を思い出したのだろう、ガッカリとその場に四つん這いになって落ち込むベル。そんな傷心の彼女の肩に、フォアンの手が載る。
「また、来れば良いじゃないか」
 微笑を浮かべて告げる彼を見て、ベルは「……そうね、それもそうよ。別にもう二度と来られない訳じゃないんだし!」と元気を取り戻し、竜車へと入って行く。
 やがて四人を乗せた竜車はオートリアを出発し、一路ラウト村へと向かう。
 彼らの長い一日は、こうして幕を閉じるのであった…………

【後書】
 無事今回のエピソードも終わ…ってないんですねこれ! もう一話、まだ今回のエピソードで解決してない問題に触れて、終幕と相成ります!
 ところで今回の話ではアレです、ベルちゃんとフォアン君が…モニョモニョしますが、これアレなんですね、二人はその辺意識した訳ではないんですが、その場の近くに潜伏していたザレアちゃん達に対する配慮的なアレで、何をした~と言う台詞は何も出してないんですね! 何をしたんだ! 言え!! って寸法です!!(やりきった顔)
 と言う訳でもう一話、惨たらしい目に遭う彼のお話、お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    何をしたんだ! 言え!!

    今回のエピソード堪能したなーw
    ワイゼン翁の「偶然にしては出来過ぎじゃ。」がとてもしっくりきますねw
    過去から続く不思議な縁…たしかに必然なのかもしれませんね。

    惨たらしい目に遭う彼のお話…彼か?彼なのかっ!?

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      何をしたんだ! 言え!!ww

      堪能して頂けてわたくしもほっこりです!w┗(^ω^)┛
      ですですw 過去を知れば、今の環境が如何に出来過ぎてるか、否応にも知れると言うものですw
      そう、これこそが「次世代」と言う奴なのでしょう…!

      彼です!ww 惨たらしい目に遭う彼と言えば、彼しかありません!ww(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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