2019年3月5日火曜日

【ベルの狩猟日記】081.牙獣の逆襲【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
■第81話

081.牙獣の逆襲


 ――ババコンガ。
 主に密林や沼地に生息する。地味な背景に目立つ桃色の体毛が特徴の牙獣種・コンガの親玉だ。コンガが巨大化し、更に額にはセットしたかのようなトサカのように見える毛が生えているのが特徴である。
 常に食欲旺盛で、狩場に点在するキノコ類に目が無く、猟人との戦闘中にも拘らず無心に食べ始める程である。
 更に、食べたキノコ類によって吐き出すブレスを変える。ニトロダケを食べると炎のブレスを噴き、毒テングダケを食べると毒のブレスを吐き、マヒダケを食べると麻痺毒のブレスを吐き……と言った具合に、摂取した物の特性を活かしたブレスを吐くのだ。
 そのためババコンガは空腹にならないように常にキノコを常備している。尻尾に巻きつけ、どこでも食す事が出来るようにしている姿が一般的なのだが――闘技場を不審そうに見上げては鼻をスンスン動かしている奴の尻尾には、キノコの姿が無い。
「……皆、解ってるわよね? こっちは一撃でも喰らったらアウトよ。ヒットアンドウェイを心掛けてね」
 闘技場に出て間も無く、ベルが三人に声を掛ける。と言っても実質勧告したのはフォアンに対してだけ。ザレアはいつもインナーだけで戦っているし、ヴァーゼは彼女の師匠なのだから彼女と同等、或いはそれ以上の実力を有していると見るべきだ。ベル自身はガンナーであるため、モンスターの攻撃を受けずに狩猟を終える事が基本である。常に大剣を振り回して前線で戦うフォアンは、本来であれば重装備で挑まなければならないのだ。
「一撃離脱は無理だな。――安心してくれ、死にはしないさ」
 大剣使いはどうしてもその武器の重量が枷となり、機敏な動きが封じられる。抜刀斬りだけで戦うにしろ、避ける方向を間違えれば即アウト――ババコンガの有するパワーを甘く見ても、防具がインナーだけでは大怪我は避けられまい。
 ベルが不安そうな表情をしたためだろう、フォアンは口唇を緩めて微笑を滲ませると、ぽん、と彼女の頭に手を置く。ベルはそれでも不安そうに彼を見つめていたが、やがて逡巡を断ち切るように首を振ると、――真剣な表情で頷いた。
「頼りにしてるわよ、――フォアン」
「拝命仕ります、隊長」
 ビシッと敬礼を返すフォアンに、ベルは苦笑を刷き――表情を引き締める。
「にゃーんっ、オイラも頼って欲しいのにゃーっ!」
「ヘイヘイ! 俺も頼ってくれて良いんだぜ!? 嬢ちゃん!」
 ――束の間、緊張が音を立てて砕けるような感覚に見舞われるベル。
「ザ、ザレアが二人いるみたいだわ……」
「所で――作戦はさっきの奴で良いんだな?」フォアンがヴァーゼに視線を転じる。
「おおよ。まずは奴を伸しちまおう。作戦はそっからだ」
 言いながら、ヴァーゼが駆け出していく。彼は太刀――鉄刀【禊】を抜き放ち、澱み無い足取りでババコンガへ肉薄していく。
「ムホ?」
 ババコンガは自身に向かって駆けて来る矮小な存在を視野に捉え、――即座に敵と判断したのか、前脚を持ち上げて立ち上がると、お尻をブルブル震わせながら「ブホホォォォ!」と鳴き声を上げた。
 ――戦闘開始だ。ベルは自身が持つ弓に矢を番える。
 弓――ハンターボウⅡを改めて確認すると、ベルは嘆息した。以前使っていたカジキ弓【粗】とほぼ同等の性能を持つ弓だ。これなら問題無さそうだが……自分が使っている武器がここに有る物と同レベルなのだと考えると、少しだけ憂鬱になる。
「ヘイヘイ! ブルってんのかババコンガァ!!」
 逸早くババコンガの許まで辿り着いたヴァーゼは、そのまま斬り込むのかと思えば、奴の眼前で、あろう事か挑発を始めた。鉄刀【禊】を鼻面に突きつけ、挑戦的な声でババコンガに挑みかかる。ババコンガはヴァーゼの行為が理解不能だったのだろう、眼前で吠え立てる人間に向かって煩わしそうに右手を振り下ろす。
 ブゥンッ、と業風を巻き起こして振るわれる筋肉の塊。更にその先端には鋭利な爪が生え、空間ごと根刮ぎ刈り取らんと言わんばかりに宙を薙ぐ。
「――温いぜ!!」
 ヴァーゼは振り下ろされた右腕を紙一重で躱すと、透かさず鉄刀【禊】をババコンガの胴体に突き込む。重心を移動させるように鉄刀【禊】を繰り、突き込みから斬り上げ、斬り上げから斬り下がりと、一連の動きを流れるように熟し、再びババコンガと距離を取る。それがたった一刹那の出来事である。
 吠え立てるだけの矮小な存在と見下していた相手からの猛攻撃に、ババコンガは面食らったように怯むが、それも一瞬だ。ヴァーゼに向かって左手を薙ぐように振るう。
 ヴァーゼはバックステップを踏んでこれを躱し――眼前で今度は右手を振り薙ぐババコンガの挙動を見て、右腕と地面の間を抜けるように前転――ババコンガの横合いへと抜ける。
 直後、ババコンガはもう一度左手を振り薙ぐと、反動で倒れ込む。先刻ヴァーゼがいた場所に寝転がるババコンガ。もしあの時、ヴァーゼが再びバックステップを踏んでいたら、筋肉の塊に下敷きにされていた事だろう。
 標的を仕留めた感触を感じなかった事に疑問を覚え、ババコンガが立ち上がろうとする間に、フォアンも距離を詰めていた。武器――丸みを帯びた独特の形状の大剣・ディフェンダーを振り被り、「ぜぇやッ!」――掛け声と共にババコンガの腹に叩きつける。
 フォアンが大剣を叩きつけている間にも、ヴァーゼの剣舞は続く。踏み込みながら斬りかかり、流れるように突きへと重心を移動、斬り上げへと全身の筋肉を余す事無く活用し、剣先に全力を注ぎ込んでババコンガを滅多切りにしていく。
 だが悲しいかな、ババコンガは先刻のように怯む事無く、体を起こして群がるハエを見定める。グッと前脚に力を蓄え、――次の瞬間にはその巨体が宙を舞っていた。
「グォオオ―――――ンッ!!」
 人間の三倍以上は有るかと言う巨体が、人間の倍以上の跳躍力で宙を舞う様は、或る種見蕩れてしまう華麗さが有った。――が、飛翔するそれは人間より凶悪且つ強靭なモンスターである。決して見蕩れている場合ではない。
 フォアンは頭上に舞ったババコンガから逃げるために前転を繰り返す。納剣する余裕が無かったための行為だが、それではババコンガの射程内から抜け出す事は叶わない。
 フォアンの突然の危機にベルは連射して矢を射るが、何れもババコンガの巨体に突き立つが決定的なダメージにはならない。
 このままではフォアンが下敷きにされてしまう――そうベルが青褪めた瞬間、遊撃するため迂回するように接近していたザレアが動いた。手に持つハンマーは、一同が持つ仮初の武器ではなく、彼女が誇る最高級のハンマーだ。そのグレートノヴァが、唸りを上げる!
「フォアン君は、潰させにゃいのにゃァァァァ!!」
 それはラージャンの殴打と呼べる程の、轟然たる暴力の強襲だった。グレートノヴァを脇に抱えて、溜め込んだ力を解き放つと同時に、降って来たババコンガの脳天へ向けて下から搗ち上げる。その威力たるや、落下して来るババコンガの軌道を空中で変化させる程だった。
「ブゴォ!?」頭を潰され、仰け反って落下するババコンガ。鼻っ面を押さえて悶え苦しむ程に、ザレアの一撃は強烈だったようだ。
「ナイス、ザレア!」
 ベルが親指を立てて歓声を上げると、ザレアが振り返って「にゃーっ!」とグレートノヴァを突き上げて返した。フォアンが「助かったぜ」と微笑を返すと、一連の動きを見ていたヴァーゼが「――ヒュウ! あれからまた腕を上げたみてェだな、ザレア!」と嬉しげに吼えた。
 ザレアはただの爆弾馬鹿ではなく、ハンマーの腕が超一流だ。だが、その奇抜過ぎる格好と爆弾に傾倒し過ぎる狩猟法から、一般の猟人からは敬遠される、難儀な猟人なのだ。もし彼女がもう少しマトモな良識を備えていたら、既にその若さで渾名持ちになっていてもおかしくないのだが……
「ふっ!」
 ザレアが身を呈してまで作り上げたチャンスを逃さず、フォアンはディフェンダーを横薙ぎに振るう。仰け反って顔を押さえて悶えるババコンガに再び重い斬撃を加えるが、その一撃で前転――一旦間合いを開ける。
 ババコンガは突如として生じた絶大な暴力に見舞われ、驚いて戸惑っているようだった。相手は自分の上背にも満たない、矮小で脆弱な存在の筈。にも拘らず先刻の一撃は明らかにその埒内を超越している。賢そうではない外見に似合わず、本能的にザレアに対して危機感を募らせるババコンガ。
 視線をザレアに向けていたババコンガの背中に、連続して矢が突き立つ。然したるダメージにはなっていないが、狼狽しているババコンガは敏感にその一撃を感じ取り、体の向きを変える。瞳の先にはインナーだけを纏ったベルの姿が。
 注意を惹きつけ、前線の仲間が集中して攻撃を浴びないようにする。本来ならばそれに加えて、ビンに入れた毒類――体力を消耗させる毒に、神経系に異常を来たして麻痺させる毒、一時的に睡眠状態へと導入させる睡眠毒を使って、モンスターに状態異常を引き起こして助力する所だが、今回は生憎とそういった消耗品は一切支給されていない。故にベルはこうやってひたすら矢を当て続けて注意を惹きつけ、少量ずつとは言え攻撃を加える以外に助勢する手立てが無かった。
「ブロロロロ!!」
 突然仁王立ちになって腰を震わせ放屁するババコンガ。茶色い顔が突如として鮮烈な赤に染まる。――怒り状態に移行したのだ。
 モンスターは一定のダメージを受ける、或いは特定の条件を満たされると、“怒り状態”と呼ばれる状態に陥る。怒り状態になると動きのキレが増して機敏に動けるだけでなく、その一撃一撃の重量が増す。簡単に言えば手が付けられなくなる程に暴れ出すのだ。強靭なモンスターが真に自分の生命に危機が迫った事を察知し、生存本能に衝き動かされるがままに動く、生物としては当然とも言える行為だ。
 ババコンガは再び四つん這いになると、先刻よりも高速でベルに向かって駆け出す。加速したその動きにベルは一瞬虚を衝かれるが、そこで動きが止まるほど空気に呑まれてはいなかった。
 咄嗟にハンターボウⅡを折り畳み、横合いに抜けるように駆け出す。若干距離が開いていたため避けるには充分――と思っていたが、急速接近するババコンガは想像を上回る速度で肉薄する。相手の突撃する延長線上から抜けるには若干時間が足りない。
 筋肉の塊が弾丸のように走って来る姿を見て、ベルは全力で横合いに抜けるように駆ける。相手はそれを見越して、追跡するように僅かばかり軌道修正しながら駆けて来る。普段ならば前だけを見て突撃する、ドスファンゴのような行為しかしないにも拘らず、眼前のババコンガはその辺は賢いらしい。
「しししし死ぬ――――ッッ!?」
 今現在、ベルの防具はインナーだけ。せめていつも纏っているフルフルDシリーズが有れば少しはダメージを軽減できるのだが、このままでは大怪我くらいでは済まないかも知れない――そう、自分でも言ったように、即死も有り得るのだ。
 距離が殺され、大型の竜車に突撃されるかのような圧迫感がベルを押し潰す。
「えーいっ、ままよーッ!!」
 笑い泣きの表情で前方へ向けて飛び込む。ずざーっ、と全身を地面に擦らせて痛かったが、幸いにもそれを超越する衝撃を感じる事は無かった。
 だが、振り返らずとも解る。ババコンガが四本足で方向転換し、こちらに再び向き直った事が。立ち上がるには些か時間が掛かる。このままでは今度こそ本当に押し潰される――――
「イェアイェアイェアイェアイェア――――――ッッ!!」
 その時だ。顔を持ち上げたベルの視界に一人の青年が映り込む。――ヴァーゼが両手両足を千切れんばかりに振り切って、全速力でこちらに向かって駆けて来る。その速度はババコンガと同等――否、それ以上かも知れない。
 やがて青年は振り返ったババコンガへと辿り着き、相手が挙動を開始する前に背に負った鉄刀【禊】を回転させるように抜き様に斬りつける。鮮やかな一閃がババコンガの顔面に叩きつけられ、モンスターは慌てて顔を拭うように手を振り乱し、「ブモウ!」――咄嗟に前足を持ち上げて直立、腹を風船のように膨らませて威嚇する。
「温いぜ!!」
 本来ならば自分を相手よりでかく見せて相手に躊躇を懐かせる行為だが、ヴァーゼにとっては腹を膨らませて立ち尽くすだけの格好の的にしか映らない。膨らませた腹は肉質が硬質になっている事が判っている彼は、素早く回り込み、柔らかい毛皮に覆われた背中を斬りつける。鮮血が舞い、毛皮越しに筋肉の塊をズタズタに引き裂く。
「あ、ありがとっ!」
 自分の隙を補うようにして立ち回るヴァーゼに、ベルは感謝の言葉を投げる。彼は「イェア! 楽しく行こうぜベイビー!」と嬉々とした声を返すだけで猛攻を止めない。
 テンション高いなー、とベルが苦笑を滲ませていると、ザレアとフォアンが駆け寄って来た。
「相変わらずだな~、ヴァーゼは」
 一人でガンガン攻めているヴァーゼを見て一言投じるフォアンに、ベルは呆れ気味に声を掛ける。
「相変わらずって……昔からあんな感じなの……?」
「にゃ! 師匠は狩猟……大型モンスターを相手にすると、テンションが爆超ににゃっちゃうのにゃ! 極限状態に追い込まれたり、強大にゃモンスターを相手にしたりすると、血が滾らずにはいられにゃい、根っからの熱血猟人にゃ!」興奮気味に説明するザレア。
「それって熱血って言うのかなぁ……」苦笑を禁じ得ないベル。
「狩猟してるって言うよりは、喧嘩に近いな」うんうんと一人で頷くフォアン。
「ヘイヘイ! 動きが温いぜババコンガァ!! 手前の力はこんなもんじゃねェだろが!! もっと熱くなれよ、もっともっとォォ!! アァァァァン!?」
 あろう事か鉄刀【禊】を鞘に戻し、蹴りを叩き込むヴァーゼ。怒号を張り上げ、吼えるように檄を飛ばす。
「あんたは熱くなり過ぎよ!? ちょっと落ち着きなさいよ!?」それを見て思わずツッコミを入れるベル。
 ――闘技場は更に加熱していく。

【後書】
 と言う訳で今回のエピソード、にゃんと14話にしてやっと狩猟シーンです!w ………狩猟…?? 戦闘シーン…かな!w
 ヴァーゼさんの人格と言いますか、戦法に関しては、これすんごい前から設定だけは有ったんです。わたくしアレなんですよ、戦闘描写が出てくる物語にはほぼほぼ戦闘狂系のキャラクターを登場させる位には戦闘狂大好きっ子でして! うーん、いや、戦闘狂と言いますか、何と言いますか、アレです、バランスブレイカーが大好きなんですw
 こんな怪物みたいな奴をどうやって打倒するんだ?? ってバランスブレイカーを敵役として登場させて、如何に味方サイドを追い詰めるか~策略を練るか~攻略法を見出すか~ってのが大好きなんですな~! 今回、その役がまさか味方にいると言う不思議な巡り合わせですが(笑)。いやだってハンターは人間に手を出したらアカンですよね…(ブツブツ)
 なのでまぁ、ヴァーゼさんは「ベルの狩猟日記」の中ではザレアちゃんレヴェルで好きなキャラクターだったりしますw こんなテンションでハンティングしてくれるハンターさんがいたら楽しいよ絶対!w
 と言う訳で次回も引き続きヴァーゼさん回です! お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    始まりましたねw
    ヴァーゼさんの流れるような立ち回りの描写が( ´∀`)bグッ!
    太刀はこうでなくっちゃv
    なんて思ってたら鞘に戻しちゃうのねぇw

    たしかにハイテンションなハンティング楽しいです!
    素材を求めて連戦もいいけど、やっぱり楽しく遊びたいです。(ガチのエンジョイ勢w)

    次回もヴァーゼさん!ますます熱い!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      始まりましたよう!w
      やったぜ!w やっぱり太刀ってこうですよね!w 立ち回りの描写を褒められるのはこう、嬉しさが爆発しますなぁ~!ww
      そうそうww鞘に戻しちゃうんですよこの人ww 蹴り始めますし!ww

      楽しいですよねっ!! こんなハイテンションでハンティングするのも良い…!(語彙力)
      ガチのエンジョイ勢ww 素材を求めての連戦もね~、楽しいのですけれど、時には大笑いするようなハンティングもね、挟みたいですよね!w

      次回もヴァーゼさん!w ガンガンに加熱して参りますよう!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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