【神否荘の困った悪党たち】第６４話 神否荘の夏休み最後の日AM:08:00【オリジナル小説】

■あらすじ
この人、堅気の人間じゃないでしょ絶対……

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常　コメディ　ギャグ　ほのぼの　ライトノベル　現代　男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第６４話

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第６４話　神否荘の夏休み最後の日AM:08:00


「奈子様を捕捉しました」「お化け発見ニャ！」

メイちゃんとニャッツさんが同時に声を上げたけれど、俺はその前にもうその惨状を目の当たりにしていた。
ゴミ捨て場に頭から突っ込んで動かない半透明の何かを見て、通行人がひそひそと話しながら立ち去っていく姿を。
「あぁ～……これはもう最悪の事態オブ最悪の事態ですよ……」これなら男子トイレに忍んでいた方が遥かにマシだった感が有る……「どうしよう、アレを助けるのは勇気がいりますね……」
「メイが救出します」キュイ、と眼球が動くメイちゃん。「奈子様諸共爆砕します」「ヤメテヤメテ」目から大変なものが出そうになったから思わず羽交い絞めにするよ俺は！
「我輩がスマートに助けてやるニャ、全く」ふんす、と鼻息を落として、ニャッツさんがサイコキネシスを使って、奈子ちゃんをゴミ捨て場から吹き飛ばすと、ぽとっと俺の目の前に落とした。
「……」奈子ちゃんが凄まじい形相で俺を睨んでるぅ。
「お、落ち着いて話し合おうじゃないか」どうどう、と落ち着けのポージングをしてみる。
「絶対に殺してやる……」うえぇ、俺もう怖くてトイレ行けない奴だ……「……まっ、もうそれはどうでもいいわ。遂に解き放たれたのだから！　あの忌々しい場所から！！　私は自由よ！　いえーい！」幽霊とは思えないポジティヴさだ。
「見つけたけど、こいつどうするニャ？　パパっと始末するニャ？」ニャッツさんが前脚で頭をグシグシ掻きながら尋ねた。可愛い仕草でそんな恐ろしい事言わないで欲しい。
「なにこの猫。日本語喋るの？」奈子ちゃんが興味を持ってニャッツさんに近づいてきた！「やたら尊大ね。人間様に敵うと思ってるのかしら？」あぁ～どうしてそんな超ド級の地雷を自ら踏み抜いていくんじゃぁ～。
「ニャ？」ニャッツさんが顔を上げた瞬間、奈子ちゃんの体が突然全力全開で回転し始め、ドリルのように回転しながら空に上がっていき、凄まじい速度でゴミ捨て場に頭から再びボッシュートされた。
はわぁ……と声にならない声を漏らしてガタガタしてると、ニャッツさんが前脚をペロペロしながら「口を慎め下郎。……ニャ！」と最後だけ可愛くウィンクしやがる。くそう可愛いなぁ。
「待って待ってニャッツさん、奈子ちゃん死んじゃ……いや死んでたわ」俺は何を心配すればいいの？？「死んでたけど、これ以上奈子ちゃんの傷を抉らない方向で行きましょう、奈子ちゃんの精神ダメージがそろそろゲージ振り切りますよこれは」
「我輩、嘗めた口利かれるとついサイコキネシスドリル天翔稲妻落とししちゃうからニャ～」しゅごい必殺技感有るネーミングセンスだ……「次はニャいと思え？　……ニャ！」最後だけ可愛いんだからもう～ニャッツさんたら～。
「亞贄様、奈子様毎焼却しますか？」「ヤメテヤメテ」どうしてメイちゃんすぐ目から大変なモノを出そうとするの？？
取り敢えず足を引っ張って奈子ちゃんを救出してみた。
「えーんもうやだー！　何だってこんな頭おかしい連中に絡まれなくちゃならないの～！　私はただ男子生徒を脅かして愉悦に浸りたいだけなのに～！　え～ん！」
アヒル座りをして遂にガチ泣きを始めてしまった奈子ちゃんである。困った事に、悪霊である事は止めない感満々なんだなぁ。
「えーと、因みに奈子ちゃんは成仏する気は」「奈子様だろコラ」「……奈子様は、成仏する気は無いんですか？」
奈子ちゃ……奈子様がグシグシと赤くなった目元を擦り、俺を睨み上げた。
「成仏したら、地獄行きじゃん」そりゃそーだ。「だから成仏したくない」ンンッ、とんでもねー奴だなこれは。
「困りましたね……俺、霊能力者の知り合いいないんですよねぇ」
「我輩もいニャいニャ」「メイの知己にも該当者ゼロです」ニャッツさんとメイちゃんが一緒に首をフルフル振ってるのが妙に可愛かった。
「おい、そこの兄ちゃんとメイド。こんな朝早くから騒ぎ起こしてんじゃねーぞ」
不意に聞き慣れない声を掛けられて振り返ると、警察官と思しきお兄さんが俺を睨んでた。
「あっ、おまわりさん。もしかして煩かったですか？」「煩いなんてもんじゃねーよ！　さっきからゴミ捨て場がどうなってると思う！？　惨状だよ惨状！！　こんな所で暴れるなら公園行け公園！！　ここはテメエらの遊技場じゃねえんだ！！」ウヒョァー、カンカンだ！
「貴様の方が声量でかいぞポリ公」ニャッツさんの声が大きい～！
「ちょっ、ニャッツさん！？　流石におまわりさんにそれは……！」「ァア！？　ニャッツコラ、テメエの仕業だろ！？　豚箱に叩きつけられたくなかったら俺のルールに従えクソ猫の分際で！！」……んん？　このおまわりさん……
「ねぇ、メイちゃん」こそこそとメイちゃんに耳打ちするよ！「あのおまわりさんって、ニャッツさんの知り合いなの？」
「肯定。犬野堀公(イヌノ ホリキミ)巡査はニャッツ様の知己に該当します」
「犬野さんって言うのかぁ」犬のおまわりさん、って呼んだら怒られるかなぁ。
「おいそこの兄ちゃん！」犬野さんが凄まじい形相で詰め寄ってきた！「このクソ猫をちゃんと躾けとけよ……？　病市(ヤマイシ)のルールを守らねえ奴は皆殺しにしてやるからな、覚悟しとけよ……？」何で血走った目で俺を観るんですか？？？
「は、はひ……以後気を付けましゅ……」この人警察官じゃなくて本職やくざなんじゃないかと疑うレヴェルなんですけお……「と、ところでおまわりさん」
「あん？　何だコラ」煙草を銜えてイライラした様子の犬野さんである。
「もしかして、神否荘の住人と顔見知りだったりします？」
「当然だろ、病市の問題児っつったら神否荘の連中しかいねえからな」紫煙を吐き出してちょこっとだけ落ち着いた風情の犬野さん。「そういう兄ちゃんはアレだろ、最近神否荘の管理人になったっつー」
「あっ、そうですそうです。二糸亞贄って言います」ペコリと会釈しておく。
「俺は犬野堀公。そこの交番の駐在さんだよ」「通称ポリ公ニャ」「黙れ殺すぞクソ猫」ニャッツさんの頬を摘まんでグイグイしてる！　凄いおまわりさんだ……
「で、そこの姉ちゃんは何だ。半透明だが」犬野さんが奈子ちゃんを指差してる。
「あっ、それがですね、神否荘のトイレに封印されてたとかそんな感じのアレでして」説明が訳の分からない感じになってるのは許して欲しい。
「…………つまり、“現”悪人か……？」犬野さんの目がヤバい。
「……えーと、」チラッとメイちゃんに目配せする。
「堀公様は悪人に容赦はしません」無表情でヤバい事を言われた。
「……えーと、アレです、ちょっと昔は悪さしてたっぽいんですけど、今は、えーと、たぶん大丈夫的なアレです、はい」冷や汗がヤバい。
「ほーう……」奈子ちゃんに近づいて凄まじい目力を発揮する犬野さん。「ほんとなんだろうな姉ちゃんよ……？」
「は、はい……」奈子ちゃんの目がクロールしてる！「あっ、その、悪い事はっ、しま、せーん……」
「……良いか、二度は言わねえぞ兄ちゃん、姉ちゃん」俺の肩を右手で、奈子ちゃんの肩を左手で叩く犬野さん。「もし俺の見える範囲で悪さをしてみろ、地の果てまで追い詰めて、必ずぶち殺してやるからな……？」
「「は、はひ……」」俺と奈子ちゃんの喉から泣きそうな声が漏れ出た。
……この人、堅気の人間じゃないでしょ絶対……

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【後書】
と言う訳で新キャラは犬のポリ公さん！　もとい、犬野堀公さんです！　ずぅーっと前から登場する機会を窺っていたのですが、やっとこ登場できました！
こう、わたくしの物語に出てくる警察官と言うと、大体惨たらしい目に遭ってフェードアウトするのが常なので、この「神否荘の困った悪党たち」では絶対にそんなフェードアウトは出来ないような強靭且つ屈強な警察官を登場させようと、そう思って考えたキャラクターになります。最強系巡査です。脇役にするのが勿体無い位の高性能っぷりなので、今後の活躍にもご期待ください！(笑)
ところで今回の記事で遂に「逆断の牢」1000記事目になります！　ヒュ～ッ！　一周年で1000記事達成したかったですけど、ちょこーっとだけ足りませんでしたね！ｗ
そんなこったで次回もにゃんと新キャラ登場です！　お楽しみに～♪