2019年4月14日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第65話 神否荘の夏休み最後の日AM:09:00【オリジナル小説】

■あらすじ
ヤメテ?

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第65話

第65話 神否荘の夏休み最後の日AM:09:00


「で、その姉ちゃんは何だ。幽霊のようだが」

 平然と「幽霊のようだが」って尋ねてくるおまわりさんに凄まじい感慨を懐かざるを得ないマンだ。
「えーと、アレです、悪さをしない幽霊です」これ以上の説明は難しい奴だった。「ところでおまわりさん。この近所に、その、お化けを成仏させてくれる的な霊能者っぽい人っていませんかね……?」
「霊能力者、ねぇ……」煙草を美味しそうに吸い上げると、手のひらで揉み消して携帯灰皿に吸い殻を落とし、「心当たりって程でもねえが、そいつのトコまで案内してやんよ。付いて来い」と、猫背でのそのそと勝手に歩いて行ってしまった。
「ほら、奈子ちゃ……奈子様行こう?」ツンツンと奈子ちゃんを突いてみる。
「えー? あたし成仏するつもりないんだけどー?」不貞腐れてる奈子ちゃんである。
「これもうアレだよ、成仏する流れで行かないと、あのおまわりさんに何されるか分からないよ」ひそひそと幽霊に耳打ちする経験を得られるなんて、俺の人生まだまだ始まってるな。「とにかく話だけでも聞いてみようよ、もしかしたら罪状軽くなって天国に逝けるかも知れないし」
「えー? しょうがないなぁもうー」何で俺がワガママ言ってる形になってるの??
「師匠、こいつ始末しちゃうニャ?」「亞贄様、奈子様を爆破しますか?」
 ニャッツさんとメイちゃんがすんごい普通の顔で訊いてくるのが怖過ぎるんですけど。
 取り敢えず俺は深呼吸して、言ってあげた。
「ヤメテ?」

◇◆◇◆◇

「おーう、古穂(フルホ)いるか~、古穂~」
 おまわりさんが案内してくれたのは、どうやら古書店のようだった。
 小さな店舗で、中には古めかしい本が本棚一杯に並んでる。そしてとてもかび臭い。
 動く度に埃が舞って、俺はケホケホ咳き込みながら店の奥に入っていく。
 奥まった場所にレジスターと一緒に、魔法使いのようなとんがり帽子を被ったお姉さんが、牛乳瓶の蓋のような、グルグルした眼鏡を掛けて読書に耽っている姿が目に飛び込んできた。
 三十代くらいだろうか。お姉さんはおまわりさんを見上げると、「やぁワンコちゃん、今日こそわっちのペットになりに来たのかい?」と朗らかな笑みを浮かべた。
「ほざけ殺すぞクソ魔女」吐き捨てると、おまわりさんが俺達を示した。「こいつ、神否荘の新しい管理人の坊主」
「どうも、二糸亞贄って言います」ペコペコと会釈するよ。
「あらあら、ようこそいらっしゃい」嬉しそうに微笑む姿がすんごい愛らしいお姉さんだ。「おや、よく見たら猫君と自動人形ちゃんまで一緒じゃないか。久し振りだねぇ」
「あれ、このお姉さんとも知り合いなんです?」ニャッツさんに視線を送ってみる。
「こいつは魔女ニャ。そこのポリ公と同じで年齢不詳のお年寄りニャ」ペロペロと前脚を舐めながらのニャッツさんである。
「魔女」改めてお姉さんに視線を向ける。「ん? おまわりさんも年齢不詳なんです?」
「彼もわっちも不老不死でね。長い事この浮世を漂っている漂流者さ」お姉さんが得意気に腕を広げたので、埃がまた舞った。「おっと紹介が遅れたね。わっちは古穂流雲(フルホ ルウン)。俗に言われる魔女って奴だね」
「何か神否荘の近所ってしゅごい人ばかりが集まってるんですね」魔法少女のお爺さんとか。「おまわりさんも不老不死なんです?」
「そうだよ。昔っから体質でな、殺されても死なねえからこんな所に配属されるんだ。クソみてえな話だ」おまわりさんが喋るだけでびくびくするんだなぁ……
「何かその、お疲れ様です……」それ以上言葉が出てこない。
「さてさて、そんな事よりだよ管理人君。そこの浮遊物体は何だい? わっちに実験材料を提供してくれるって話かい?」古穂さんが瞳を輝かせて奈子ちゃんを指差してる。
「えーと、何かその、」うっ、考えてみたらおまわりさんが一緒にいると上手く説明できないぞ!「何かアレです、神否荘に封印されてた的な幽霊さんなんですけど、何とか天国に成仏できないかな~って霊能力者さんを探していた所でして」
「ふむ。この世を去りたい訳だねそこの浮遊物体は」顎に拳を添えて浮遊物体を見つめる古穂さん。
「えー、別にこの世を去りたいって思ってないけど……」ブツブツ言い始めたぞこの浮遊物体!
「奈子ちゃ……奈子様、ヤバいですって。ここは天国に召されましょうよ、あのおまわりさんに何されるか分かりませんよ」ひそひそと必死で奈子ちゃんに囁きかけるよ俺は。
「何であのポリ公の顔色窺わなきゃならないのよ!! あたしは!! 男子トイレで!! 男の子の恐怖に歪んだ顔が見たいのよー!!」あぁ~全てを台無しにしよるぅ~。
「……ほう」
 ポン、と奈子ちゃんの肩におまわりさんの手が掛かった。
 奈子ちゃんはメンチを切って振り返るも、おまわりさんの顔を見た瞬間真っ青になった。分かる。俺もその顔を見てチビりそうだったから。
「話は、署で聞こうか?」
 ……斯くして、俺の努力空しく、奈子ちゃんはおまわりさんに連行された挙句、男子トイレ風独房に叩き込まれたとかそんな話を後々聞かされるんだけど、それはまた別の話……

【後書】
 と言う訳で新キャラの魔女っ子お姉さんです! 名前のネーミングセンスはアレです、「古本を売る」と「ルーン」って単語を入れたくて悶々した結果生まれた奴ですw その割には古風&和風然とした仕上がりになったのでだいぶ満足度高い名前です…!(私見)
 さて、遂に我慢が弾けて豚箱にぶち込まれてしまった奈子ちゃ…奈子様ですが、にゃんと! この後真面目に出番が有りません(笑)。何だったんだこの子は…そのうち面会に行くからその時まで待っててね奈子様!
 と言う訳で次回で夏休み編はおしまいです! じゃあ次々回から何が始まるの!? と言うのはアレです、遂に始まるんです…秋編が…!(!?) そんなこったで次回もお楽しみに~!w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    魔女っ子お姉さん素敵なお名前です。でも漂流者w

    さぁ!いよいよ!!ってところで奈子様退場のようですw
    可愛らしくて結構気に入ってたんだけど残念!面会楽しみにしてます。
    夏も終わりか…感傷に浸る間もなく秋なのねwいやむしろ秋だから感傷に浸れよってことか(イミフ

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      素敵な名前…!w めちゃんこ嬉しいです…!w そう、漂流者なんですな!w

      そうにゃんですww奈子様まさかの退場になりましたw
      可愛らしいですよね奈子様w 退場は残念ですが、面会シーンをぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!w
      夏、あっと言う間に過ぎ去ってしまいましたからね…w 秋ですからね、感傷に浸れる系の物語も、ちらちら出てくるかも知れませぬ! お楽しみに~♪

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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