2019年4月16日火曜日

【ベルの狩猟日記】092.その禁忌、暴くべからず〈前編〉【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第92話

092.その禁忌、暴くべからず〈前編〉


 麗らかな陽射しが照りつける昼日中。ラウト村の三人の専属ハンターは農場へと繰り出し、せっせと畑に植えていた怪力の種を収穫している。この光景を見ただけで卒倒しかねない苦労人であり行商人のウェズが近日来訪する予定なので、今の内にと収穫作業に勤しんでいる次第である。
「……ねぇ、フォアン」
 大量の赤色の種をカゴの中に入れて持って来たベルは、中腰になって収穫作業に勤しんでいた少年――フォアンへと声を掛けた。彼は麦藁帽子を取って頭を掻き掻き、同じ格好の少女に振り返る。
「どうした? 今回も大量過ぎてカゴが足りないのか?」
「そうなのよ、ぐへへへ……って、そうじゃなくて……あのさ、唐突だけど……ザレアの素顔、気にならない?」
 農場の樹木に止まっている小鳥が囀る歌声が聞こえる、麗らかな昼下がり。フォアンは照りつける陽射しの元、爽やかな微笑を湛えている。
 それに相対するベルも似たような爽やかな微笑を浮かべて、彼の顔を見つめている。
「……止めとけ、命が幾ら有っても足りないぞ」ぽん、とベルの肩を叩くフォアン。
「禁忌!? 禁忌なの!?」思わずツッコミを入れるベル。
「俺はパスしたい。ザレアだってそんな事、望んでいないと思う」
「で、でも……隠されると余計に暴きたくならない?」えへ、とベル。
「流石ベル、性格が良いな」ニッコリ笑顔でフォアン。
「そんな、褒めなくて良いわよ!」照れてフォアンの顔を殴るベル。
 ベルに殴られた頬を撫でると、フォアンは腕を組んで唸り始めた。
「まぁ、俺も気にならない訳じゃないんだけどね」
「でしょ!? あたしが思うに、ザレアって絶対に美少女だよ! 一度で良いから見てみたいじゃない♪」
「俺が思うに、ザレアの顔には深い傷が有って、それを隠しているんじゃないかって睨んでるんだけどなぁ」
 ベルがウキウキしながら告げると、フォアンも何だかんだ言いつつ自分の結論を述べる。二人は顔を見合わせると、――不意に悪巧みを表面に刷いた悪戯っ子の顔になる。
「力を合わせて、何とかザレアの素顔を見るわよ!」
「許せザレア、これも隊長の下知なんだ……」

◇◆◇◆◇

「ニャニャっ、ベルお嬢様、フォアンお坊ちゃま、ボクに何か用かニャ?」
 農場の隅に呼び出したのは、白毛アイルーのクロ。ザレアの口利きでラウト村の農場の管理、酒場にてティアリィのお手伝いを兼任するお手伝いアイルーである。
 彼はいつもの農作業の服装を身に纏い、農場の見回りをしていたのだが、急にベルに呼び出されて不思議そうな顔をしている。
「ねぇ、クロちゃん。貴方は……ザレアの素顔、見た事、ある?」
 ベルの発言に要領を得ないのか、クロは小首を傾げて、頭の上に疑問符を浮かべる。
「ニャ? ザレアお嬢様ニャら、いつも素顔じゃニャいですか」
 何を言ってるニャ? とでも言いたげな表情で返され、ベルは二の句を継げるのを躊躇った。それでも始まって早々に挫ける訳にはいかなかったので、咳払いして真実を述べる。
「ザレアの素顔はあれじゃないのよ? あれは、〈アイルーフェイク〉って言う、防具の一種なのよ」
「そ、そうだったのニャ!? ザレアお嬢様の隠された真実を目の当たりにしてしまったのニャ……!!」
「寧ろその発言に驚いてるんだけど」
 アイルーにはあれが本物の顔に見えていたのか。いや、単にクロの知能がそこまで高くないのか。と、失礼な思考が過ぎるベル。
「でさ、アイルーのクロなら、ザレアの〈アイルーフェイク〉をこそっと取れるんじゃないかって思ったんだけど……」手を擦りながらベル。
「ニャ~、ボク、メラルーじゃニャいから、手癖は悪くニャいですよ?」ポリポリと髭を掻くクロ。
「大丈夫、クロちゃんなら出来るって信じてるわ!」自身満々にベル。
「何を根拠に言ってるニャ!? それに〈アイルー仮面〉の装備を盗むニャんて、出来る訳ニャいニャっ!! ボクをアイルー族の面汚しにするつもりニャッ!!」ぴょんぴょん飛び跳ねて憤怒するクロ。
「じゃあ――マタタビで交渉しましょう」
 ベルの提案にクロは思わず喉仏をコクリ、と動かす。見るからに動揺していた。
「も、物で釣ろうとしてもダメニャ!」
「成功したらマタタビ五十個でどう?」ニコ、と営業スマイルでベル。
「ニャん……だと!? ハァハァ……マタタビ……五十個……ですと……!? ハァハァ……」
 一撃で陥落してしまうクロ。彼はもう頭の中が桃色の幻想で一杯になっているのだが、それを見つめるフォアンがベルに耳打ちする。
「そんなにマタタビの在庫、有ったか?」
「大丈夫! ウェズから怪力の種と物々交換で頂くつもりだから♪」ニッコリと微笑むベル。
「抜け目が無いなー」思わず苦笑を浮かべるフォアン。
「マタタビ五十個ハァハァ……ハッ!? ボ、ボクは今、何を考えていたのニャッ!?」
「マタタビ百個で取引に応じない?」裏に邪悪な色を潜ませた笑みを浮かべるベル。
「ニャーッ!! 応じずにはいられニャいッ!!」
 瞳がグルグル回り始め、明らかに錯乱した状態で了承するクロ。ベルはニヤリと悪どい笑みを浮かべ、ぐっ、と拳を握り締めている。フォアンは「我、関せず」とでも言いたげにそっぽを向いていた。

◇◆◇◆◇

 作戦その1:問答無用! ザレアの〈アイルーフェイク〉を奪い取れ!

「じゃあ、クロちゃん。向こうで農作業に励んでいるザレアの頭をもぎ取って来て頂戴」
「せめて〈アイルーフェイク〉って言ってくれないか? 果実をもぐみたいに頭をもがれたら恐怖なんだが」咳払いするフォアン。
「解ったのニャ……ハァハァ……何だかボク、とっても悪い事をしてるようニャ……」フラフラした足取りでクロ。
「マタタビ百二十個」ぼそ、と呟くベル。
「ニャハーッ!! 行って来るニャ!!」
 狂喜乱舞しながらザレアへと突撃して行くクロ。ザレアは後ろ姿を見せたまま、怪力の種の収穫作業を続けている。彼女の背後へと迫ったクロは飛びつくように〈アイルーフェイク〉へと手を伸ばし――
「――キラリ☆ 秘技・アイルースマッシュ!!」
 と、突然叫びながら振り返ったザレアのアッパーを喰らって天高く舞うクロ。十秒近く滞空した後、ぺたり、と畝の只中に落下し、動かなくなった。
「にゃふぅー……はっ! いつもの癖で、背後の生物を吹き飛ばしちゃったのにゃ!! クロちゃ~ん、ごめんにゃ~っ!!」
 慌ててクロへと駆け寄って抱き起こすザレア。クロは燃え尽きたように真っ白な顔(元々だが)で、カタカタ震える手を伸ばし、虚ろな眼差しでザレアを捉える。
「お……俺の背後に立つニャ……ですね、わかりま……ガクリ」意識を失うクロ。
「クロちゃ――――んっ!!」
 ザレアの絶叫が朗々と農場に響き渡った。

 作戦その1:失敗!

「ニャルゴ13かッ!! 何あれ!? 背後に立つとオートで吹き飛ばしちゃうの!?」
「恐ろしいスキルだな……これからは俺達も気を付けないとな……」
 木陰からザレアとクロの様子を覗っていた二人は、ガタガタ震えながら惨憺たる結果に恐怖していた。
「むぅ~! 中々手強いじゃない、ザレア! でも、何としてでも化けの皮を剥いでみせるわよ!!」
「寧ろ猫の皮だな」
「そんなツッコミは良いから! ……さて、次の作戦は――――」

◇◆◇◆◇

 作戦その2:美味しくて食べ難い物を食べさせたら、外さずにはいられない!

「ザレア~、これ、あたしの奢り!」
 農作業を終え、農場から酒場へと戻ってきた三人(クロは心労が祟って小屋で休憩中)。ベルは早速次なる作戦を実行に移すため、ティアリィに頼んで、東方から伝わってきたとされる“ラーメン”なる食べ物をザレアにご馳走した。
「にゃわーっ! ベルさんの奢りにゃんて、明日は爆弾かにゃ!?」
「色々ツッコミ所満載だけど敢えて聞かせて。天候が爆弾じゃないわよね!?」
 ベルのツッコミなど意にも介さず、ザレアは丼一杯に盛られたホカホカの麺を見て、〈アイルーフェイク〉の目許を輝かせている。
「それじゃ、いっただっきにゃーす!!」
 来る! と二人の視線を一挙に受ける少女は、するりとどこからともなく一本のストローを取り出した。そしてそれを使って――麺を一本一本吸い上げ始めた!
「ぢゅるっ、ぢゅるぢゅるぢゅぅぅぅぅ!! にゃーっ、美味しいのにゃーっ! ぢゅぢゅぢゅぢゅぅぅぅぅうううう!!」
 酒場は、ザレアが奏でる、麺をストローで吸い上げる酷い音によって蹂躙された。
 あまりの音声に、ティアリィのいつもの営業スマイルはどこか曇っているし、相席していたコニカは表情を真っ白にして動きが硬直している。フォアンは何と無く予想できていたのか、うんうんと納得したように頷き、ベルはあまりの音声に顔を顰めていた。
「……ザ、ザレア……?」
「ぢゅぢゅー、ぢゅっ、ぢゅぢゅっ!! にゃ? どうしたのにゃ? ベルさん」ストローを置いて顔を上げるザレア。
「ラーメンはね、その……ストローで吸い上げるものじゃないのよ……?」酷く疲れた表情でベル。
「!! そ、そうだったのかにゃ……驚愕の真実を、オイラは知ってしまったのにゃ……!」若干震えているザレア。
「その反応にこっちが驚愕だわ!!」|頓狂な声を張り上げるベル。
「じゃあ、どうやって食べるのにゃ?」キョトン、と小首を傾げるザレア。
「……えっとね、こう……箸って言う木の棒で掴んで、ずるずるーっ、と啜って食べると、とっても美味しいのよ」実践しながら教えるベル。
「にゃるほど! じゃあ試してみるにゃ!」
 ザレアが箸を掴み、麺を摘む。その行為に、今度こそ〈アイルーフェイク〉を脱ぐシーンを連想するベル。食べ難い……いや、〈アイルーフェイク〉を付けたまま食べられる筈が無い! ならばもう外すしか――――
 ザレアが麺を摘んだ箸を〈アイルーフェイク〉の口許へ宛がうと、「ずるずるーっ」と麺が〈アイルーフェイク〉の口許に吸収されていった。
「にゃにゃっ! 本当だにゃっ! とっても美味しいのにゃ!」
 感激したのか再び麺を掴み上げ、〈アイルーフェイク〉の口許から啜り上げていくザレア。
 その光景を見ていたベルの顔は死んでいた。フォアンに、「戻ってこーい、ベルー」と声を掛けられてやっと復帰する。
「ふぁい!? どどどどうなってんの!? 〈アイルーフェイク〉って被り物だよね!? 穴なんて空いてないよね!?」がたーっ、と椅子を蹴倒してベル。
「にゃにゃっ! 被り物にゃんて酷い事、言わにゃいで欲しいにゃ! これはオイラの顔にゃ!」ぷんぷんと腕を振り回すザレア。
「くぅ……作戦、失敗だわ……!!」小声で負け戦の宣言をするベル。

 作戦その2:失敗!

 夕暮れに沈んだラウト村。今日ものんびりとした時間が過ぎ去り、明日の準備を始めるために、空は静かに暮れていく。遠くの山々に掛かる日輪が、柔らかな橙色の陽光をラウト村に射込んでいる。
 ザレアに農場の見回りを頼んだ後、ベルはフォアンと恐らく最後となる筈の作戦会議を開いていた。
「フォアン……あたしは今日、禁じ手を使おうと思うの……」深刻そうな表情でベル。
「……ベル。俺は――止めないぜ。俺はベルを信じる」ベルと同じ表情でフォアン。
 黄昏に満ちた酒場の中で、ベルは氷樹リンゴのジュースを呷り、――告げる。
「寝込みを襲撃するわ……!」
「つまり、――夜這い、だな?」ふ、と澄まし顔でフォアン。
「違うわよ!! 寝てる間に〈アイルーフェイク〉を外すだけよ!! 何を盛大に間違えてんのあんた!? 態とよね!?」テーブルを盛大に叩いてベル。
「生きて、帰って来いよ……?」苦しげな表情で視線を逸らすフォアン。
「そんな死地に向かわせるような台詞、吐かないでくれる!? 死亡フラグじゃないそれ!?」
 ぎゃーぎゃー喚きながらも、世界は眠りの刻限へと迫りつつある。
 その禁忌、暴くべからず……後編へ続く。

【後書】
 と言う訳で難攻不落のザレアの顔覗きミッション、まさかの前後編です(笑)。
 この話もめちゃんこ愉しんで綴ってた記憶が有りますよ!w こういう、原作世界でも有り得ないようなギャグコメディはね、大好物なのですw 読むのも綴るのもね!w そんなこったで、次回、いよいよその尊顔拝顔奉る…! か?w お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    たしかに気になるザレアちゃんの素顔。
    いやでももうもしかしたらアイルーフェイクが素顔なのか?
    ないないwでも彼の弟子だぞ?理屈は通じないでしょ…

    なんて思考がグルグルしてます♪

    先生のノリノリの執筆具合が心地よいです!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      気になりますよね!w ザレアちゃんの素顔!
      そんな気がしてくるのがこの子ですからね!ww
      理屈が通じないのほんとそれですwww

      グルグルしちゃう程にヤバい人ですからねザレアちゃん…!ww

      やったぜ!┗(^ω^)┛ そう言って頂けるとめちゃんこ嬉しいです!!!w┗(^ω^)┛┗(^ω^)┛┗(^ω^)┛

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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