2019年4月2日火曜日

【ベルの狩猟日記】088.ヒロユキ【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第88話

088.ヒロユキ


「あ、あんな奴に敵う訳ねえっ!!」「幾らなんでも、でか過ぎる!!」「どう戦えってんだ!?」
 エリア1――砦の出っ張りである射場からラオシャンロンへと射撃を加えたガンナーの部隊が帰還し、更にエリア2にその巨像が視認できた頃から、あちこちでハンターの弱音とも取れる喚声が上がり始めた。
 そう――ラオシャンロンと言うモンスターは、巨大過ぎた。ハンター達が全力を賭して狩猟してきた大型モンスターとは確実に一線を画す規模――飛竜が人間の五倍ならば、ラオシャンロンは飛竜の五倍有るだろう。“老山龍”と呼ぶに相応しい、まるで山脈が徘徊しているかのように圧倒的な存在感。
 熟練のハンターですら尻込みし、達人級のハンターですら戦線離脱を余儀無くされるモンスター――古龍種。ラオシャンロンの厖大なる巨体を見据えただけで、その片鱗を垣間見たような気分だ。
 恐怖を口に出す者、恐怖を内に溜め込んで青褪める者、恐怖で言葉が出ない者……程度の差は有れど、皆一様に聳える巨像に慄いていた。“勝てる訳が無い”――そう、本能が絶叫しているのだ。
 その中に、胸を張って迎え撃つ“モノ”がいた。
「――あんな龍、何て事ァねぇ」
 熟練のハンターですら怯える様相を呈している中、微塵も動じずに巨龍を迎え撃つその“モノ”は――対巨龍爆弾。……ハンターではなかった。
「――って、ヒロユキが言ってる気がするにゃ!」
 ――加えて言えば、対巨龍爆弾の名前が“ヒロユキ”で、「――あんな龍、何て事ァねぇ」はザレアの吹き替えである。
 それを至近距離で聞いたイルムは、暫く乾いた微苦笑を浮かべていた。

◇◆◇◆◇

 ――時間は少し遡る。
 ガンナー隊がエリア2に戻って来て、ラオシャンロンの動向を伝えると同時に、その圧倒的な存在感に呑まれてしまってハンター達は醜態を晒した。その時、砦の中からガラゴロと荷車が走る音が響いてきた。
 そちらに皆が視線を向けると、一人、〈アイルーフェイク〉の瞳がハート型になったような錯覚を生じさせる程に感極まるハンターがいた。
「爆弾だにゃっ!!」
 ――勿論、ザレアである。彼女の宣言通り、砦の中から運ばれて来たのは爆弾――それも普段使っている大タル爆弾Gとは若干違う造りの爆弾。運んで来たのはアイルーとメラルーのペアだ。
 ――アイルーとメラルー。共に獣人族と呼ばれる種族のモンスターで、二本足で屹立するネコと言えばイメージが掴み易い。基本的にアイルーは白毛、メラルーは黒毛。共に人語を解する程の知能を有し、またその愛らしい姿から一般人に人気が高いモンスターだ。けれどハンターの中には、狩場で道具を掠め取るメラルーや、爆弾を投げつけてくるアイルーに手を焼く者は多く、場所が違えば問答無用で斬り捨ててしまう位だ。
 二対の白黒獣人族は、共に額の汗を拭う仕草をすると、普段とはどこか違う爆弾を地上に下ろす。
 そこにザレアが飛び込んで来る。
「こここっ、これは何て言う爆弾だにゃっ!?」二匹の獣人族に飛びつくザレア。
「ニャニャっ、ニャんだお前!? いきニャり飛び込んで来ニャいで欲しいニャ!! ヒロユキが爆発したらどうしてくれるニャッ!?」胸を押さえてたじろぐメラルー。
「そうニャそうニャっ! こんニャ所でヒロユキを爆破されたら、爆弾作って八十年のご主人様に合わす顔が無くニャるトコだったじゃニャいか!!」憤慨するように地団駄を踏むアイルー。
「……ヒロユキ?」
 展開に置いて行かれたように、どこか遠い眼差しで呟くイルム。その呟きを耳聡く聞き取った二匹の獣人族は、「「そうニャ!!」」と綺麗なハーモニーを響かせた。
「これぞ名匠、“爆造のロージョ”の自信作、対巨龍爆弾こと“ヒロユキ”ニャ!!」
「古龍の中でもシェンガオレン、ラオシャンロンの時にしか製造しニャい、特注品の中の特注品ニャ!!」
「今回もハンターズギルド直々の発注を受けて、ボク達二人でここまで運んで来たのニャっ!!」
 メラルーとアイルーは、それぞれ“ヒロユキ”――対巨龍爆弾の左右に立って自信たっぷりに腕を広げて紹介する。周囲のハンターの様子と言えば、「ふぅん……」「そうなのか……」程度の冷え切った反応だが……
「にゃ……にゃん……だと……!? まさか“爆造のロージョ”の自信作に巡り合えるにゃんて……っ、か、感激にゃ!!」
 一人だけ、体を震わせて感動を体現するハンターがいた。思わずヒロユキにしがみつき、〈アイルーフェイク〉で頬擦りを始める程に、対巨龍爆弾に愛を注ぐ猟人。――勿論、ザレアである。
 その様子を見ていた二匹の獣人族は、互いに顔を見合わせ、それからザレアに声を掛ける。
「あんた、見る目が有るニャ! 併も名匠“爆造のロージョ”を知ってるとは……あんた何者ニャ!?」カッと、ネコ目を見開いて怒号を張り上げるメラルー。
「只者でニャい事は確かニャ……ニャニャニャ? 〈アイルーフェイク〉に、インニャー姿のハンマー使い……もしや貴様、噂に聞く〈アイルー仮面〉かニャ!?」クワッと両眼を掻っ開いて迫るアイルー。
「〈アイルー仮面〉……?」今度はザレアに遠い眼差しを向けるイルム。
「如何にも! オイラが〈アイルー仮面〉にゃ! オイラを知ってる方がいるにゃんて、初めて知ったのにゃ!!」感激したように飛び跳ねるザレア。
「勿論知ってるニャ! ボク達獣人族の期待のホープとして有名ニャんだからニャ!! 〈アイルー仮面〉に憧れるアイルーメラルーニャんて、そこら中にいるニャ!!」
「う、嬉し過ぎるにゃ~っ!! 感激だにゃ~っ!!」
 二匹と一人(いや、もう三匹と言った方が良いのか)は、ラオシャンロンが進撃しつつある戦場で和気藹々と談笑に花を咲かせている。イルムは遠いお花畑で見えないランゴスタとキャッキャウフフと戯れていた。
「〈アイルー仮面〉にニャら、こいつ――ヒロユキを任せておけるってもんニャ!」ぽん、とヒロユキに触れるメラルー。
「ボク達には、ヒロユキの最期を見届けて、その生き様をご主人様に克明に伝える任務が有るのニャ! 一緒に狩猟を手伝う事は出来ニャいけれど……大丈夫ニャ! 〈アイルー仮面〉は皆のヒーローだからニャ!!」ぐっ、と肉球の拳を固めて掲げるアイルー。
「二人とも……っ!!」ぐしぐしっ、と〈アイルーフェイク〉の目許を乱暴に腕で擦ると、ザレアは意気揚々と拳を固めた。「やってみせるにゃ! ヒロユキに危にゃい橋にゃんて渡らせにゃい……ラオシャンロンにゃんて、オイラが取っちめてくれるにゃ!」
 最後にザレアが胸を張って告げると、二匹の獣人族は「頼んだニャ!」「任せたニャ!」と前足を振り、ぴょんぴょんっ、と四足歩行で砦の中へと戻って行った。
「……あ、話、終わったのか?」
 頭の中で「にゃーにゃー」と獣人族の鳴き声が木霊しているが、何とか幻聴を振り払ってイルムが尋ねる。ザレアは興奮しているのか、「うにゃっ! 頑張るにゃよっ、イルム君!」と鼻息荒く応じて、腰に下げたデッドリボルバーを掲げるのだった。

◇◆◇◆◇

 そして時間は元に戻る。
「くーっ、格好良いなヒロユキ! だが俺ならこう言うぜ……『勝てねェと思ったら逃げな。こっからは、強者同士の戦いだ……!!』……ってな!」
 ヒロユキの発言(ザレア吹き替え)を受けて、ヴァーゼが身悶えしたかと思うと、いきなり臭い台詞を吐き出して自分に酔い始めた。もうどうしようもない位に人として終わっている気がして仕方ないイルム。
 そんな頭逝っちゃってる青年の発言に、その愛弟子は「うにゃ~っ、師匠の台詞も格好良いのにゃ~っ!」と飛び跳ねている。イルムはそのテンションに欠片も付いていけない。周囲を見ると、呆れているか憫笑しているかの二択しかない反応が待っていた。
「お、おれっちは違うぞ!? おれっちはマトモだからな!? マトモだからーっ!!」
 ――言わずもがなだが、自分を“マトモだ”、“普通だ”と言う人間に限って、マトモや普通とは程遠い事が多い。
「違うんだーっ!!」イルムの絶叫がエリア2に響き渡る。
「所でザレア。いつもの爆弾祭りはどうした?」
 イルムの心底からの絶叫など欠片も意に介さず、ヴァーゼはザレアの周囲を見て腕を組んでいる。その一言でイルムの絶叫が鳴り止んだ。
「おめェ、いつも山ほど爆弾持って来るだろ? ギルドの規定を無視する事ァ流石にねェけど」
「……なぁ、ヴァーゼ。ザレアってその……爆弾狂なのか……?」
 我慢できなくなって遂に問いを発してしまうイルム。先刻の対巨龍爆弾の反応と言い、今のヴァーゼの発言と言い……爆弾に取り憑かれているとしか思えない溺愛振りだ。
 ハンターの中には爆弾を愛用する者が少なからずいる。大型モンスターの体力を大きく削り取る爆弾。特にソロで活躍しているハンターは、一人の力で強大なモンスターを相手にするため、攻撃力が不足する事が多々有る。それを補うのが爆弾や罠などの道具類である。
 ただ、爆弾はその性質上、好んで使いたがるハンターはいない。信管が無く、起爆するには衝撃を与えねばならないのだが、その衝撃と言うのがほんの些細な力――単に蹴飛ばしたり、拳を打ちつけたりするだけで爆発するのだ。単に街から狩場へと赴くだけでも、走行中の竜車が石ころを踏みつけただけで竜車諸共爆発――そのままハンターも御者も帰らぬ人となる事例も報告されている。
 狩場でもその危険性は同じだ。荷車で運ぶにしても、ランポスの飛びかかり、ランゴスタの突っつき、或いは荷車の転倒だけで、ハンターの命は紙屑のように消し飛んでしまうのだ。命を危険に晒す状態を絶え間無く続けて、精神がどうにかならない方が土台無理なのだ。
「ん? あァ。ザレアに爆弾を教えたのは他でもねェ俺でな。以来、爆弾が傍にねェと落ち着かねェ奴になっちまった。ヒハハハハ!!」
「笑い事じゃないだろ!? 何その異常者!? 爆弾が傍に有ったら普通怖いだろ!? ねぇ、怖いよね!? おれっちだけじゃないよね!?」
「にゃにゃっ!? 聞き捨てにゃらにゃいのにゃっ! 爆弾は心のオアシス……爆弾は平和の象徴にゃ!!」
「百八十度違うよ!! 爆弾が平和の象徴の世界なんて混沌以外の何物でもないよ!!」
 ぎゃーぎゃー喚き合う三人のハンター。その三人の半径二十メートルに空白の円陣が作り出されている事に気づく者はいなかった……
「で、爆弾はどうしたんだ? まさか……胃袋の中から出すつもりじゃねェだろうな!?」ギラリと片目が煌くヴァーゼ。
「人間!? ザレアって人間だよな!?」絶叫するイルム。
「今回は胃袋じゃにゃいのにゃ! この砦のそこら中に埋め立てといたのにゃ!」
 ――刹那、まるで陽気な音楽が鳴り始めたかのように、ハンター達が軽快な動きで踊りだす!
 ……ように見えるだけで、地面に埋まった爆弾に怯えて飛び跳ねているだけだったりする。
「にゃにゃっ!? 皆、楽しそうだにゃっ、オイラも混ぜてにゃーっ!!」ザレアも調子に乗って飛び跳ね始める。
「ちょちょちょ―――――ッッ!? 爆弾を埋め立てたって、地雷!? 地雷原と化してるのこの砦ッ!?」発狂寸前のイルム。
「なるほど……そいつァヒートアップせずにはいられねェなァベイビィィィィイイイイ!!」
 何故か全力疾走で砦の外周の一部であるエリア2を駆け回り始めるヴァーゼ。そして時折緊急回避――何も無い所に向かって飛び込んでは立ち上がり、走り込んでは飛び込むを反復し始める。
「落ち着いて!? おれっちも大概落ち着いてないけど、ヴァーゼはもっと落ち着いて!?」
「にゃーっ、師匠待ってにゃーっ! オイラもするにゃーっ!!」
 そしてザレアがヴァーゼに続くように飛び込み始め――狩場は混沌を極めた。
 別の意味で狩場は熱くなっていった。

【後書】
 ラオシャンロンが目の前にいてもこれである!ww(笑)
 と言う訳でヒロユキが登場です! この風格…流石は限定した場所にしか置けないだけはあります!ww
 あと、ラオシャンロン戦でやりませんでしたか?? 走り回ってヘッドスライディングを決めまくる奴。ここって確か常に敵視が向いてる状態と言いますか、全力疾走になるのでダッシュ回避で飛び込めるんですよ! 無駄に突っ込みまくるのがね、中々面白かったりします(笑)。
 相変わらず狩猟シーンが始まるまでが長い話に定評が有るわたくしです、次で始まったら…イイネ!w お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    ヒロユキ?何者??
    まさかの対巨龍爆弾wやっぱちがうぜvv

    アイルー、メラルーとザレアちゃんのやり取りをほっこり眺めつつ
    お花畑のイルム君をすこし心配に思う今日このごろ皆様はいかがお過ごしか。
    そして今回も始まらないラオ戦wわかってましたともw
    この始まりそうで始まらないちょっと焦らされてる感じがたまらないのさっ!(←ダメかも…

    ヘッドスライディングは定番ですねw楽しいですw

    始まるの…かっ…?

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      まさかの対巨龍爆弾と言うね!ww 流石ザレアちゃんとしか言いようが無い奴です!(笑)

      にゃーにゃーなやり取りはほっこりしますよね!( ´∀`)b
      イルム君はもうドンマイとしか…!ww
      そして、はい!w やっぱり始まりませんでしたね!www
      ひえぇwwまさかこんな所で焦らしPlayをしてるとは思いませんでしたね!ww これはもっとやらねば…!(えっ!?)

      ですですww定番ですよね!wwここだと危険性も無く延々と出来るのがね、もうね、楽しいんですよね!ww

      こここ今度こそ始まりますって!w た、たぶんw

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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