2019年4月3日水曜日

【滅びの王】75頁■獅倉八宵の書2『欠けた合流』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/04/15に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

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■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

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■第76話

75頁■獅倉八宵の書2『欠けた合流』


 図書館と言う場所に来たのは初めてだった。
 その屋上……やけに暖かな陽射しを浴びつつ、練磨関係者が一堂に集まった。
「……それで、大事な大事な王様がいない、と」
 やけに艶めかしい姿の女がそう言って、悩ましげに溜め息を吐く。
「って、あんた誰だい? 練磨の仲間なのかい?」とウチが訊くと、
「初めまして♪ 私は鈴懸麗子。練磨君の味方よ♪ 麗子、って呼び捨てで良いわ♪」
「ウチは獅倉八宵。ウチも、八宵で構わないよ」
「練磨君ったら、どんどん新しい女に手を付けてくのね。……困ったちゃんだわ」
 何の話だッ!?
 思いつつ、崇華がむくれているのが見えて、それ以上は追及しない事にする。
「……駄目だ。〈風の便り〉を送っても何の反応も返ってこない」
 鷹定が呟いて、懐からタバチョコを取り出し、口に咥える。……大の大人がチョコを咥えてる姿は、妙に奇怪だ。寧ろ本物の煙草にしてほしい。……まあ、遠目には煙草にしか見えないから、それだけが救いだけど。
 練磨に〈風の便り〉を送ってみても、誰にも反応が返ってこない。そんな状況だった。
「練磨、どうしちゃったんだろぅ……? もっ、もしかして死ん……っ?」
「だったら〈風の便り〉が届く筈だろう? 最悪の形で、だが」
 崇華の不安を、鷹定が一蹴する。
「……まあ、メンマの事だから〈風の便り〉に気づいてねえだけかもだろ~? あいつ、そういう所、抜けてそうじゃん」
 玲穏の言う事にも一理有る。
 だが……この現状では、それは最悪の状態だ。せめてどこにいるかくらい突き止めねば、練磨を独り歩きさせておくなど危険過ぎる。《滅びの王》とはそれだけの存在だ。
「……或いは、〈風の便り〉が届かない場所だとすれば」
「え?」
 鷹定の不意の一言に、全員が視線を集中する。
 そして麗子が何か閃いたのか、ポンと手を打つ。
「――《清錬場(せいれんじょう)》の事? でもどうして? あそこは《贄巫女》しか――」
 言って、何かに気づいたのか、麗子が黙り込む。
 話が見えないのはウチだけじゃなく、崇華も同じだったらしい。
「《清錬場》って何? そこに練磨がいるのっ?」
「……確証は無い。……ただ、あいつが《贄巫女》の儀式を知り、独自に何かをやらかすつもりなら……考えられなくも無い」とは鷹定の弁。
「だけど、あそこは王室内部でも禁制区域よ。練磨くんが一人で入れるなんて事……」とは麗子の弁。
「何の話してんのか分かんねーけどよー、結局どこなんだ、そこ?」
 玲穏の一言に、二人が黙り込む。
 そこでウチが話を促そうとした時、鷹定が顔を上げた。
「――《贄巫女》が身を清める場所だ。……とは言っても、実情は牢獄と大差無い。《贄巫女》を逃がさず、且つ完全に《贄巫女》として機能するように、或る種の催眠を掛ける場所だ」
「何で、ンな所にメンマが……?」
「……あそこだけが、王国で唯一、〈風の便り〉が届かない場所だからよ」
 応えたのは麗子だった。
 鷹定が麗子に視線を移すと、麗子は深刻そうな顔で続きを話し出した。
「……《贄巫女》の身を清める……つまり雑念を完全に取り払うためには、外界と《贄巫女》を切り離す必要が有るのよ。だから〈風の便り〉は邪魔なの。どこの誰とでも話が出来るし、外界の情報を取り入れる事になるし、以ての外なの。それを断つには、〈風の便り〉を使用不能にすれば良い。そういう理念の基に造られたのが、《清錬場》よ」
「……そんな場所が」
 ウチが人知れず呟くと、崇華がキョトンとした顔で小首を傾げた。
「でも、何で練磨がそんな所にいるの? さっきまで一緒にいたのに?」
「だから、あくまで確証は無い。……だが、あそこならば練磨を捕囚しておくのに、これ以上無い打ってつけの場所だ。何せ、《清錬場》自体、王室が定めた禁制区域……王室内部の者でさえ、入るのに何重もの許可の申請が必要だからな」
「あのバカ、捕まえられちまったのかよ~」
 疲れたように屋上に寝そべる玲穏。……メチャクチャ目立つから止めろ、と言うべきだろうか。本人のためにも。
「確証は無いがな。……ただ、そうだと仮定すると、俺達に出来る事は少ないぞ」
「葛生さんには何か手立てが有るんですか?」
 崇華の純真無垢な質問を受けた鷹定は、小さく頷いた。
「……時間が無いからだが、無茶な手しか考え付かなかった……攻め入るしか、あるまい」
「王国と全面戦争押っ始めるつもりかよ~。流石は《侍》、やる事がちげーなー」
 二人とも本気で言ってるのか分からなかった。
 ……尤も、本気でやらなきゃ話は進まない、と言う事だけは分かった。
 そして、これでもう後戻りは絶対に出来なくなる、――と。
「真正面から突っ込むのか? 幾らなんでも、それは無理じゃないかい?」とはウチの弁。
「裏口から入れってか? どこだよ裏口って」突っ込む玲穏。
「でもでも、急がないと明日には《贄巫女》が始まっちゃうよぅ?」慌てて崇華。
「鷹定君に妙案、無い? 私、ちょっと期待してるよっ?」茶化す麗子。
「……」沈黙の鷹定。
 暫く何の案も浮かばないまま、時間が過ぎ去った。
「―――ん?」
 不意に鷹定が、疑問符の付いた声を発して、四人の注目を集めた。
 その後暫く鷹定は無言だったが、――その表情が変わった。
「……どうしたんだい?」ウチが訊いてみる。
 鷹定は驚いたままの顔を引き締め直し、暫く沈思してから、……徐に口を開いた。
「……《贄巫女》が、《清錬場》から脱出したらしい」
 瞬間、その場にいる全員が驚きに顔を彩られた。

【後書】
 この辺りから怒涛の展開が始まる…予感ですw
 いよいよ待ったが利かない所まで来てしまいましたのでね、どんどん展開を加速して参りますよう! さてさて次回はそんな脱獄囚のお話…かな? お楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    怒涛の3連発!

    いよいよメンバーも揃ってこれからって時に肝心の王がいないなんてw
    さすが練磨君抜群の安定感ww

    菖蒲ちゃんに感じていた違和感が少しわかってきました。
    と同時になんてひどい事してるんだーって激おこですねw
    そんなことまでして行われる《贄巫女》の儀式の本当の目的とは…
    ここからはほんと目を離せそうもありませんね。

    脱獄…どうやって……

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      怒涛の3連発有り難う御座いますっっ!!┗(^ω^)┛

      ほんそれなんですなww肝心の王が囚われって!ww
      抜群の安定感wwこんな所で発揮しなくても!ww

      ですですw 徐々に明らかになって参りましたが、惨たらしい事実がね、どんどん明るみに出てきますよね…!w
      《贄巫女》の儀式の本当の目的もね、この辺はしっかり明かされて参りますのでね、その時を楽しみにお待ち頂けたらと思います…!

      この脱獄も、一体どうやって為せたのか! ぜひぜひ楽しみに読み進めてくだされ…!

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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