2019年5月11日土曜日

【ベルの狩猟日記】099.ワイゼンの依頼【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第99話

099.ワイゼンの依頼


 二人のハンターが黒き疾風と対峙する時間から遡ること三日。
「ほぇ? あたし達に依頼?」
 ラウト村にある小ぢんまりとした酒場にて、後に樹海を走り回る羽目になる少女――ベルは遅めの朝食を摂っていた。ラウト村のすぐ傍に在る狩場――“森丘”で採れる栄養たっぷりのハチミツを、ウォーミル麦を使った食パンをこんがりトーストにしたモノに塗って、口に銜えながら、ベルはカウンターの奥にいるメイドに視線を投げた。
 酒場の主であるメイド服の女――ティアリィは小さく顎を引くと、依頼書だろうか、色褪せた羊皮紙を広げてカウンターに敷く。
「所用でオートリアに出掛けていたのですが、ギルドを介さずに依頼したいと、他ならぬワイゼン翁から連絡を受けまして」
「――なるほどな。ワイゼン翁からの依頼って言うなら頷けるぜ」
 狩人Tシャツにジーンズと言うラフな格好の少年――フォアンもベルと同じく、口にトーストを銜えながらカウンターへと歩み寄る。トーストの上には長寿ジャムがふんだんに塗りたくられている。
「師匠からの依頼ぃ?」露骨に嫌そうな顔をするベル。
「ベルさん、師匠からの依頼でウキウキしちゃってるのにゃ?」
 頭に〈アイルーフェイク〉を被っただけで、服がインナーだけの少女――ザレアがトーストをストローで吸い込みながらカウンターに敷かれた羊皮紙を覗き込む。因みにこの時トーストは「ズゴゴゴゴッ」と凄まじい音を立てて拉げつつあった。
「ウキウキする訳ないでしょ!? この明らかに嫌そうな顔が見えない!?」銜えていたトーストを噴出しそうになるベル。「絶対に碌な依頼じゃないわよ~……」
「ワイゼン翁からって事は、よほどハードな依頼なんじゃないかと思うんだが……どうやら違うみたいだな」
 羊皮紙を覗き込んでいたフォアンの意外な発言に、ベルは「あれ? そうなの?」とようやく重い腰を持ち上げてカウンターへと歩み寄る。
「ワイゼン翁からの依頼の内容はですね、彼の旧友のお手伝いをして欲しいとの事です。ワイゼン翁の旧友が仰るには、ハンターであれば簡単なお手伝い、だそうです♪」ニッコリ笑顔でティアリィ。
「……“ハンターであれば”簡単なお手伝いぃ……? やけに引っかかるわね、その内容。メチャクチャ怪しくない……?」二人の仲間を振り返るベル。
「ハンターであれば簡単にゃお手伝い……これはズバリっ、大タル爆弾Gを運ぶお手伝いだにゃっ!!」
「ハンターでも簡単じゃないわよそれ!? 常に死の恐怖と戦い続けるお手伝いがどうして簡単なのよ!?」思わず絶叫するベル。
「にゃっ、それだと簡単じゃにゃいにゃね……嬉しくて楽しくて、簡単どころじゃにゃいにゃっ!!」嬉しくて悶え始めるザレア。
「危なくて恐ろしくて簡単どころじゃないわよ!!」しっかりツッコミを入れておくベル。
「――おいベル。ここを見てくれ」突然真剣な声を出すフォアン。
「ん? どうしたの……」フォアンの指の先――報酬額の項目を見て、ベルの両眼がポロッと落ちそうになる。「ほ、報酬十万z……ッ!?」
「これ、簡単なクエストの報酬額じゃないぜ。やっぱり止めとくか……ってベル?」
 何の反応も返ってこない事に気づいたフォアンがベルを振り返ると、彼女は涎をダラッダラ垂らしながら、瞳をお金の形にしてポケーっとしていた。
「……ベル?」ベルの眼前で手をヒラヒラと振ってみるフォアン。
「じゅ、十万z……十万……えへ、えへへ……」完全に別の世界に旅立っているベル。
「フォアン君。ベルさんが遠い世界に逝っちゃったにゃ」ベルの頬をプニプニと突付きながらザレア。
「みたいだな」ふむ、と腰に手を当てて小さく嘆息するフォアン。「おーい、ベルー。ウェズがベルの事を『腐れ守銭奴がァ!!』って言ってるぞー」ベルの耳元で大きな声を張り上げる。
「何だとグルァ!?」フォアンを吹き飛ばすほどの咆哮を上げるベル。犬歯を剥き出しにして、「ウェズ、あんた覚えときなさいよ……? 怪力の種の市場をメチャクチャにしてあげるからね……ッ!!」背後から『ゴゴゴゴ』と恐ろしい何かが出現しそうな勢いである。
「ベル、落ち着け。ウェズはどこにもいないぞ」冷静にベルの肩を叩くフォアン。
「ウェズゥゥゥ……ん? あれ? ホントだ。あれ? じゃあさっきのは何?」キョトン、とした後に小首を傾げるベル。「幻聴?」
「ベルは本当に可愛いな」真顔でうんうん頷くフォアン。「まぁそれはさておき、――受けるのか? その依頼」
「師匠からの依頼ってのと、“ハンターだったら簡単”ってのがメチャクチャ引っかかるけど……受けざるを得ないでしょ!!」相変わらず瞳がお金のマークになったまんまのベル。
「了解です隊長」ビシッと敬礼するフォアン。「頑張るにゃーっ!」意気揚々とザレア。
(流石ワイゼン翁、どうすれば依頼を受けて貰えるか把握済みですか)
 ニッコリ笑顔のまま、彼方でベルの帰りを待ち侘びている老爺に想いを馳せるティアリィ。
 そして老爺の意図通りに釣られていると知っている筈の少年はおくびにも出さず、ベルの意思を尊重している。ワイゼンの事を知っているからか、それとも……
「それでっ? その依頼人はどこにいるのよ? 師匠の旧友って事は、相当歳がいっちゃってるんじゃないの?」
 ワイゼンの年齢を知っている訳ではないが、相当年季が入っている事は外見からして明らかだ。実際、ワイゼンは今なお現役ハンターだと謳っているが、その実、今では狩場に赴く事も少なくなり、専らメイドさんのお尻を追いかけているとかいないとか。ハンターとして活躍していた頃に稼いだ銭で、今ではすっかり隠居暮らしを堪能している、道楽爺なのである。
 そんな彼の旧友となると、やはりハンターだろうか、とベルは思案する。真っ先に思い浮かぶ人物と言えば、彼に勝るとも劣らないエロジジイぐらいのものだが……先日の一件でワイゼンが凄腕ハンターだと判明してしまい、もしかすると旧友と言うのも伝説級のハンターなのでは……と勘繰ってしまう。
「依頼人は既に狩場にいるそうなので、自力で探して欲しい、だそうです」
 そんな中、ティアリィの穏やかな語調による説明で、ベルは目を点にしてしまう。
「か、狩場にもういるの? 併も自力で探さないといけないっ!?」どんな人なの!? と思わず頓狂な声を上げてしまうベル。
「オイラの師匠みたいにゃ人にゃ! もっ、もしかして……オイラの師匠が依頼人かにゃっ!?」何故か〈アイルーフェイク〉の瞳が輝き始めたような気がするザレア。
「いや、そしたら初めからヴァーゼから依頼が来るんじゃない……?」ワイゼンを通して依頼する意味が分からないとベル。
「ほらっ、オイラの師匠って、ちょっとシャイにゃところが有るから……」にゃっ? と小首を傾げて同意を求めてくるザレア。
「シャイとは無縁じゃなかった? あんたの師匠……」どう思い出しても“シャイ”と言う単語が出てこないベル。
「狩場を散策していれば自然と見つかると思いますよ。恐らく、凄い存在感を放っていますから♪」
 ティアリィの発言に、ベルは今から嫌な予感がして仕方なかった。

【後書】
 嫌な予感しかしないどころか冒頭で既にヤバい事になってましたね!(笑)
 と言う訳でワイゼン翁からの依頼、併も不穏塗れと言うのが今回のエピソードです。ワイゼン翁の旧友…? と言うだけでね、マトモなハンターさんじゃない事が分かると言う(笑)。
 ただアレです、マトモじゃないと言う事は、その分ハンターとしてヤバい実績が有ると言う反証でも有るのがこの【ベルの狩猟日記】なのです。そんなこったで次回もお楽しみに!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    相当ヤバいですよね、「ズゴゴゴゴッ」ですよ「ズゴゴゴゴッ」!
    トーストを食べてる音では無いですよねぇw
    えっ?ここじゃないの!?

    やっぱ安心というかホッとしますねベル日w

    すべてお見通しのワイゼン翁の真の目的とは!?寝て待て!!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      そこwwwwww確かに相当ヤバいんですけどね!www

      安心すると言って頂けてわたくしがホッとしておりますw 他の作品群がね、中々ハードですからね今…!w

      寝て待て!ww ワイゼン翁にお任せっ☆

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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