2019年5月15日水曜日

【滅びの王】84頁■神門練磨の書22『また逢いましょう』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/04/28に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第85話

84頁■神門練磨の書22『また逢いましょう』


 結局、八日は一睡もせずに起き続けたが、九日は眠くならなかった。
 それでも一応眠って、一旦現実の世界に戻り、気掛かりなので、すぐに眠った。夢の世界で目覚めると、オレは起き上がって仲間達を見渡した。
「……夢じゃない、よな?」
 ちょっと間抜けな質問だって分かっていたけれど、オレはそう尋ねていた。
 部屋に佇む皆がオレを見て、笑ったり頷いたりする。
「……夢であって欲しいか?」ちょっと意地悪な返答をする鷹定。
「ンな訳有るかよっ。……終わったんだよな。これで、全部……」
「うんっ♪ そうだよぅ、練磨♪」
 崇華が朗らかに笑った顔が眩しくて、ついつい照れてしまう。
 終わったんだ……長い旅も、これで。

◇◆◇◆◇

 あの後、王国のお偉いさんで、鷹定とも菖蒲とも幼馴染の希塚臣叡って人がやって来て、オレ達を介抱してくれた。
 どうやら、菖蒲に頼んでおいた作戦も成功したらしい。
 その作戦と言うのは…… 
「……王室関係者並びに、官僚及び王国軍上層部、延いては国王にも聞いて貰った。……まさか、【世界の終わり】に感化された者が四十名も超えるとは。知った時には、私も鳥肌が立ったものだ」
 ……実は、オレは一つの〈附石〉――〈録音〉の〈附石〉を創って、空殻を退治している間中、作動させていたのだ。もう一つの〈附石〉――〈再生〉の〈附石〉を菖蒲に渡し、リアルタイムで菖蒲達に空殻の動向を知らせていたのだ。
 オレの作戦では、王国のお偉いさんに聞かせればそれで良かったんだけど、希塚さんが考慮して、希塚さんの一存で、王国の官僚・王国軍上層部・王室関係者、そして国王様にまで聞かせたらしい。その時に空殻側の連中が何人か暴動を起こし掛けて、全員引っ捕らえられたらしい。
【世界の終わり】の根は深いらしく、王国の中に何名かまだ息を潜めているって話を聞かされたけど、きっと希塚さんがどうにかしてくれると思っている。何せ、鷹定と菖蒲の幼馴染なんだから、悪い奴の訳が無い。
 ただ残念だったの……が、 
「……ごめんな、麗子さん。【世界の終わり】の人達、全員死んじまったし……」
 麗子さんは【世界の終わり】の情報を入手するために動いていたのに、全員が《冥王》に虐殺されたのは、冥王を復活させてしまったオレの責任だ。あそこで空殻を止めていれば……と、今でも悔やみきれない。
「良いのよ♪ 王国が、序でに世界も救われた事には変わりないんだから、それ以上の利益を求めるなんて欲深いわ♪ だから、この話はここまで! 私が気にしないんだから、練磨君も気にしちゃ、駄・目・よ♪」
 ちょんっ☆と、鼻の頭を突かれ、オレもそれ以上は言及できなかった。
「……それとさ、鷹定。《贄巫女》ってこれからどうなるんだ?」
「撤廃されるだろうな。《贄巫女》の誠の意味を知った以上、王室全体で《贄巫女》の存在そのものを隠匿するだろう。そんな存在を国民に知られた時点で、王室の体裁が保てなくなるのは火を見るより明らかだからな」
 汚い世界だな、と思った。
 そんな事だから、王室の中に腐敗が広がっても誰も気づかないんだって言いたかった。……だけど、気づける人もいるんだから、無理には追求しない方が良いかも知れない。し過ぎれば、きっと国が滅んでしまうから。
 ……そんな国なんて滅びちまえば良い、って考えも捨てきれない。だって、そんな国だからこそ、《贄巫女》なんて不条理な儀式が罷り通ってしまったんだから、やっぱり国民としてはそんな国にいたいとは思わないだろう。
 この国の在り方を今、希塚さんに期待するばかりだ。
 何が『正しい』なんて、オレには分からなかったけれど、もっと『良い』国にしていって貰いたい。

◇◆◇◆◇

「……それで、皆はこれからどうするつもりなんだ?」
 王都の広場の一角を、オレ達七人が占領していた。
 皆それぞれに腰掛けたり凭れ掛かったりと楽な姿勢を取り、オレの質問を口の中で転がしているようだった。
「……俺は、菖蒲と共に王国から一旦離れようと思う。……放浪の旅、と言う奴かな」
 鷹定が苦笑を浮かべた。
「もう、俺はやるべき事をやったつもりだ。後は……気ままに過ごしてみようと思う」
「そっか……菖蒲も、それで良いのか?」菖蒲に話を振ってみる。
「菖蒲は構わないです。でも……また練磨さんと逢いたいです」オレを見据えて菖蒲。
「オレ? 何で?」ちょっと驚きつつオレ。
「練磨さんは菖蒲を助けてくれたです。そのお礼を……」
「ダメぇ――っ!」
 突然オレと菖蒲の間に割り込んでくる崇華。
 訳が分からずオレと菖蒲が目を白黒させていると、崇華は菖蒲を見据えて、
「れっ、練磨はもうお礼を充分貰ったのぅ! だからもう良いのぅ!」
「いや、お礼が貰えるなら欲しいけど……」ちょっと困惑気味のオレ。
「だ~め~な~の~ぅ!」
 崇華が駄々を捏ね始め、オレは一体どうすれば…… 
「私は一旦共和国に戻るわ。一度本部で会合を開くの。【世界の終わり】に就いて、ね♪」
 オレと崇華の様子を見て、くすくす笑いながら、ブランコから立ち上がる麗子さん。
「皆とはここでお別れね。ちょっと寂しくなっちゃうけど、また〈風の便り〉頂戴ね? 特に鷹定君と練磨君は♪」
「タカさんは麗子さんへの〈風の便り〉は禁止です」菖蒲がピシャリと告げる。
「あら~ん? 菖蒲ちゃんったら、釣れないわねぇ?」麗子さんが猫撫で声で菖蒲を見やる。
「練磨もっ、麗子さんばっかりに〈風の便り〉したらダメだからねっ」崇華まで言い出した。
「あーもー、うっさいねえあんたらは! ンな事どーでも良いだろがッ!」突っ込みを入れたのは八宵。
 菖蒲がプイッと麗子さんから顔を背け、鷹定の腕を絡ませる。……やっぱり幼いって感じが抜けないなぁ、菖蒲は。オレと同い年とは思えないぜ。
 ――と思ってたら、崇華もオレに腕を絡ませてきた。
「……崇華?」
「ち、違うよぅ! これはっ、練磨が飛んでいかないように……!」
 どんな状況だろうそれは。オレは風船かっ?
 ……そう言や、飛んだな、昨日。
「ウチもいい加減、教会に戻らなくちゃ。あまり長い間空けとくと、あいつらも寂しがるし。あんたらとは、ここでお別れだね」
 八宵がちょっと視線を逸らしながら告げたのを見て、オレも苦笑を浮かべた。
「八宵も、……元気でな」
「……何でウチだけそんな返答なのさ? もう二度と逢えないような事言うんじゃないよ! 全く……ウチだけ仲間外れだなんて、酷過ぎないかい?」
「そうだぞメンマ。シシトウの奴、寂しがってるじゃねえか。年上はもっと労わってやれ」
「ウチを年寄り扱いするんじゃねェェェェ!」
 ミャリの首を絞め始める八宵は置いといて、崇華を見やる。
「オレの力を見た訳だけど……崇華。オレをどうする?」
《滅びの王》としての力を見せた時、崇華の好きなようにすれば良いとオレは言った。今、まさにその答を聞く時だった。
 崇華は向日葵のような笑みを浮かべて、
「じゃあじゃあ……わたしのお婿さんにするっ♪」
「何故にッ!? いや、有り得ないだろ!? 展開的に!」
 どんな理論でそこに辿り着くのか、オレには理解できん!
 突っ込んでいると、崇華が可愛くはにかんで、
「練磨は世界を滅ぼさなかったんだから、それで良いのっ♪ それにわたしっ、練磨と一緒に旅がしたいなっ。……ダメ、かなぁ?」
「……良いのか? オレは別にそれで良いけど……。でも、ミャリは?」
「オレか~? オレも暇だし、お前らに付いてってみるさ。それに今回の事件が終わっても、お前が《滅びの王》には違いねえんだし」
 ミャリの一言で、全員が妙に暗そうな顔をしたので、オレは慌てて突っ込んだ。
「大丈夫だって皆! オレは世界を滅ぼさねえよっ! 心配すんなって!」
「……ま、本人もこう言ってんだ、皆、察してやれよ?」と言ったのはミャリ。
「ミャリが察してないんでしょぅ!? 皆、分かってて言わなかったのに……」ちょっと怒り気味に崇華。
 ……そっか。皆、オレを気遣って…… 
 その気持ちは嬉しいし、しんみりと心に響いて、ちょっと泣きそうになった。
「じゃあ……ここから、それぞれの道を歩み出すんだな、俺達は」
 鷹定が菖蒲の肩に手を添えて、皆を見回す。
「ああ、そうだな。……でも、『さよなら』は無しにしようぜ? オレ達は別れても仲間なんだからよっ」
「そうそう。シシトウも、泣きたいなら泣かずに怒れよ?」と続けたのは当然ミャリ。
「何でウチが泣くんだい! あんたは最後までこんなか!」突っ込みが冴え渡る八宵。
「じゃあどうするのぅ? 何も言わずに別れるのは、……何だか寂しいよぅ?」小さな声で崇華。
「そうね……。――『また逢いましょう』、で良いんじゃないかしら?」案を出したのは麗子さん。
「ほら、咲希も出て来いってっ」オレが小生意気な妖精の名を呼ぶ。
「うっさいなー、……何であたしがこんな事……」ブツブツと咲希。
「それ、良いです。菖蒲は賛成です。どうせなら皆で言うです。――せーのっ」菖蒲が音頭を取り、

「また逢おうぜっ!」とオレが言って、
「また逢おう」鷹定が穏やかな笑みを浮かべ、
「また逢おうねっ」ぴょこんっと崇華が笑み、
「また逢えたら良いわねっ」咲希が恥ずかしげに、
「また逢いましょう♪」麗子さんが妖艶な感じで、
「また逢おーぜ」ミャリが最後までテキトーに、
「また逢おうな!」八宵が元気ハツラツと、
「また逢いましょうです」菖蒲がペコリと頭を下げ、

 オレ達は、――歩み出した。
 また、出逢える事を願って…… 

【後書】
 無事に終息しつつある物語です。次回は遂に最終回! 練磨君の選ぶ未来とは! 次回もぜひぜひお楽しみに~♪
 ところでこの「また会いましょう」って台詞はアレです、当時流行っていた「シーモ」さんだったかな? のMusicのタイトルから拝借しておりますw そのMusicもとっても素敵なのでね、もし機会が有りましたらご一聴して頂けると幸いです…! ではでは!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    『また逢いましょう』

    素敵な解散になりましたね!
    彼らの行先に幸多からんことを祈らずにはいられません。
    ただ…ここ2~3話やらかしてない練磨君が若干心配ですw

    さぁいよいよ最終回!楽しみですv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      「また逢いましょう」

      素敵な解散と言って頂けてわたくしほっこりです♪
      今までがあまりにも過酷な旅でしたからね、新たな旅立ちぐらい、幸多からん事をお祈りして頂けると、とっても嬉しいです…!
      ほんとそれww練磨君は寧ろ何かやらかしてないと落ち着きませんよね!ww(笑)

      いよいよ最終回! ぜひぜひお見逃しなくっ!

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回、最終回も! ぜひぜひお楽しみに~♪

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