2019年5月5日日曜日

【滅びの王】81頁■神門練磨の書21『《冥王》』【オリジナル小説】

■あらすじ
《滅びの王》である神門練磨は、夢の世界で遂に幼馴染である間儀崇華と再会を果たしたが、彼女は《悪滅罪罰》と言う、咎人を抹殺する一族の末裔だった。《滅びの王》、神門練磨の旅はどうなってしまうのか?《滅びの王》の力とは一体?そして葛生鷹定が為そうとしていた事とは?《滅びの王》完結編をお送り致します。
※注意※2008/04/25に掲載された文章の再掲です。本文は修正して、新規で後書を追加しております。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【小説家になろう】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
異世界 冒険 ファンタジー 魔王 コメディ 中学生 ライトノベル 男主人公

カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054885698569
小説家になろう■https://ncode.syosetu.com/n9426b/
■第82話

81頁■神門練磨の書21『《冥王》』


《和冥の門》に落ちた瞬間、オレは咄嗟に隠し持っていた〈附石〉を取り出した。
隠し持っていた、って言うか、咲希の奴が忘れたんだよな。あいつ、大鬼を倒した時に盗んだ〈器石〉をまだ持ってやがって。それを《贄巫女》の儀式が始まる前にズボンのポケットに隠したんだ。道具袋は取られちまったままだったからな。
「飛べ!……飛ぶんだ!……飛んでください!……飛ぼうよ!……飛んじゃおうよ!」
色々念じて、――〈飛び〉の〈附石〉に変えて、一気に地上に戻ってやろうと思ったんだけど…… 
「練磨ぁぁぁぁ!」
「崇華ッ!?」
が落ちてきてビックリして、慌てて抱き抱えると、崇華がいつの間にか瞑っていた瞼を開け、オレと目を合わせる。
「……あれ? 練磨だ」抱き抱えてるのに、オレを指差す崇華。
「おう、練磨だぞ?」自分がおかしい事を言ってると半分自覚してるオレ。
「……あれあれ? 練磨、落ちなかった?」人差し指でオレの鼻の頭を突く崇華。
「確かに落ちたぞ」鼻の頭を突かれつつオレ。
「……あれれれ? じゃあ、ここどこ?」段々と怖くなってきたのか、辺りを見渡し始める崇華。
「地獄かもな」ちょっと意地悪なオレ。
崇華は数瞬の間を置いて、
「……ううん、天国だよぅ。だってだって、練磨がいるんだもんっ♪」
「……恥ずかしいから止めろって……」
真面目に気恥ずかしくて、ちょっと顔が火照ったオレだった。
その後、〈附石〉の力を頼りに浮かび上がって、――地上へ戻ってきた!
「馬鹿な……! 貴様、一体どんな〈魔法〉を……?」
空殻が露骨に驚いているのが、オレには少し笑えた。
着地を決めるとオレは崇華を離し、空殻を睨み据えた。
「これで、《贄巫女》の儀式は失敗だな、空殻!」
言って、妙にスッキリするオレ。こんな馬鹿げた事を阻止できたんだ、スッキリもするだろうさ。
満足気に空殻を見据えると、空殻の奴は驚いていた顔を無表情に戻し、冷淡な目つきでオレを見返した。
「……貴様は何処まで私の邪魔立てをすれば気が済むのだ? ……思えば、出逢った時からそうであったな、貴様は……!」
怒りを隠しきれない空殻の声音に、オレは威圧の空気を受けて怯み掛けた。
……だけど、怯まない。こんな奴に屈した時点で、オレの負けなんだ!
「テメエが罪を悔い改めるまでは、いつまでだって邪魔立てしてやるさ、空殻! ……さぁ、これで終わりだろ? 観念して自首してくれ」
「……自首、だと? 私に勧告する余裕さえ懐いたか、小僧。……巫山戯るな。私の命は《冥王》と共に在る!」
――言った瞬間、空殻の首筋に刀の刃が添えられた。
きっと刃を首に喰い込ませようとしているのだろう、鷹定が持っている刀は、カタカタと小刻みに揺れていた。
「鷹定!」
「……空殻とやら。お前はやはりここで死ぬべきだな。……俺が引導を渡してやる……!」
明らかにエキサイトしてる鷹定に、麗子さんが〈附石〉の杖を構えて歩み寄った。
「殺すのは、まだ早いわ、鷹定君。……空殻、あなたには【世界の終わり】に就いて、洗い浚い話して貰わなきゃ♪」
「……小娘。貴様は若しや【夜影(やえい)】の者か?」
麗子さんは妖艶な笑みを浮かべるだけで、応えるつもりは無いように見えた。
空殻は眼前に立ち尽くす鷹定を見て、――鼻で笑いやがった。
「《蒼刃》よ。私に霊剣が通じぬと未だに解せぬか?」
「……ああ、やってみるまで分からんものさ」
「愚かな……貴様もあの小僧に毒されたか、《蒼刃》?」
ムカッとキたけど、今はそれどころじゃないって分かってる。
崇華もハラハラして見てるようだけど、……あの空殻の力は未だに解明できていない。
威力を殺すのは分かる。どんな力も、あいつに触れた瞬間、霧散されるし、刃も拳も皮膚に当たるだけでそれ以上の力は加えられない。
彼は《魔法使い》なんだろうか? 
「――〈放てよ斬衝〉」空殻が唱えつつ、鷹定の胸に手を添える。
「――ッ」ばしッ、と鷹定の胸が裂ける音が走る――ッ。
「鷹定ッ!」
胸から鮮血を滴らせながら、鷹定が二・三歩下がって、――跪いた。
オレが駆け寄ろうとすると、鷹定は手を挙げて制止した。
「大丈夫……だ。死ぬ程じゃ、ない……」
「鷹定……」
「其奴の心配が出来る程に余裕か、小僧?」
ふと視線を向けると、空殻が淀みない歩調でオレに歩み寄って来ていた。
「空殻、てめぇ……!」
「案ずるな。ここに居合わせた者、皆が《贄巫女》となる。……小僧も、《蒼刃》も、【夜影】の小娘も、間儀家の者も、だ」
無表情のまま歩を進めて来る男に、オレは恐怖を覚えていた。
どうすれば良い? このままじゃ、鷹定みたいにオレも……!
「……ゅう、だ……」
「え?」
突然聞こえてきた微かな声に、オレは視界を巡らし、――倒れている男へと行き着いた。
よく見れば、空殻と一緒にいた男……室崎と呼ばれていた男だった。
「お前……?」
「聞け……《滅びの王》、よ……。空殻、は……〈吸収〉の、〈附石〉……持ってるのだ……」
「〈吸収〉の〈附石〉?」
「――黙れ」
ガリッ、と嫌な音がして、室崎の頭が踏まれたッ。
空殻が草履で室崎の頭を踏みつけつつ、室崎を見下して続ける。
「未だ逝ってなかったのか、室崎? 余計な事を口添えしおって……故に貴様は昇進できぬのだよ」
「黙れ空殻……! 祖国を裏切りおった貴様こそ、万死に値するわ……! ……王よ、貴様なら敵う筈だ……私の最後の望みは、此奴の死、のみ……!」
「――戯けが」
がぢゅッ、と頭が踏み潰され、……室崎はそれ以上口が利けなくなってしまった。
室崎だった物を地面に擦り付けると、空殻はオレを見据えて冷淡な瞳に殺意と言う名の炎を点した。
「小僧、貴様も此奴の後を追わせてやる。……《滅びの王》は此処で自らを破滅させるのだよ」
「てめぇ……! そいつは仲間だったんだろ? 何で殺した!」
仲間を容易く殺しちまうような奴は、クソ喰らえだ! そんな奴、人じゃない! 人の皮を被った鬼に違いない!
怒りで興奮しているオレを無視して、空殻は鼻であしらいやがった。
「仲間、だと? 此奴がか? ……笑わせるな。此奴は利用してやっただけだ。……それさえ満足に出来ぬような愚図ではあったがな」
「てめぇ……ッ! どこまで腐ってやがる、空殻ッ!」
思わず飛び掛かって拳を叩き込む!――が、空殻はやはり痛みも感じないし、オレの拳も皮膚に触れるだけで、それ以上進まなかった。
空殻が「やれやれ」と大仰に溜め息を零した。
「学習せぬ奴らばかりだ、少しは足りない頭を使って貰いたいものだな。――〈放てよ斬衝〉」
「――――ッッ」
唱えた瞬間、オレは咄嗟にバックステップを踏んで、空殻の手から逃れた。――が、
ざしッ、「ッ――!」と、ガードに回していた腕に裂傷が走るッ。
空殻は然程驚きもせず、ただ冷淡な瞳でオレを見据えると、ゆっくりと歩み寄って来た。
「楽に死ねると思うなよ、小僧? 貴様は私の逆鱗に触れたのだ……痛みを以て、死で償って貰わねばなるまい」
「ちッ、ふざけてんじゃねえぞ、おい? テメエこそここでぶっ飛ばされろ!」
考えろ、考えるんだオレ! このままじゃあの見えない斬撃で、オレの体がバラバラにされちまう。それだけじゃねえ! オレだけじゃなくて、崇華も、鷹定も、麗子さんも皆、殺されちまう!
皆、オレを助けに来てくれたんだ、ここで死なせる訳にいかないんだよ!
だから、考えるんだオレ! 何か、あのクソッタレをぶっ飛ばす方法は……!
「――そうか」
ふと思い至った考えを、自分の中で何度も確認する。本当にいけるのか? どこかに破綻してる箇所は無いか? 有り放題だよチクショウ、試してみるまで分かんねえしな、でもやるしかねえ!
「――おい、空殻!」
眼前へと赴いて来る男に大声で叫ぶ。
空殻は無表情のまま、応えずに歩み寄って来る。
「三発だ! 三発で、てめえを伸す!」
宣言して、オレは拳を握り締めた。
空殻が無表情から陰鬱な笑みへと表情を変貌させる。
「貴様には最後の最後まで驚かされてばかりだった、小僧。心配せずとも皆、同じ道を歩ませてやる、冥府でも寂しくないようにな」
コレがこいつの本性か……って、あんまり変わんねえな、こいつ…… 
「練磨……? 何を、する気だ……?」
鷹定が呻きながらも必死に体を動かそうとするのが見えて、オレは何も言わずに、立てた親指を見せた。
麗子さんも、恐らくオレが何かしようとしているのを察したんだろう、杖を構えたまま動こうとしなかった。……きっと、二人とも何も言わなくても分かってるんだ。だから、オレがいざって時にトチっても、フォローに入ってくれる筈だ。
いるだけで安心できる人って、やっぱり大事だな、とか思ってみたりする。
――空殻が眼前まで歩み寄り、手を持ち上げて、攻撃の態勢に入ろうとする――!
「〈放てよ斬衝〉」
「――ッ」
少し動きが鈍いのは、見て分かっていた。
空殻は〈魔法〉のような技と守りに頼り過ぎて、動きが全体的に緩慢なんだ。オレでも避けられる程の速度で攻撃を放つのだから、よっぽどこの〈魔法〉(?)に頼ってるんだろう。
手から飛び出すであろう斬撃を避けつつ、――その胸に拳を叩きつけるッ!
……が、やはり衝撃も何も無く、ただ力無く触れるだけだった。
「退け、――〈穿てよ貫衝(かんしょう)〉」
ご――ッ、と目に見えない衝撃が腹に走って、――吐き気を催しながらも、足を滑らせたけど、何とか踏み止まって空殻を睨み据える。
「まず、一発目……っ」
吐きそうで、腹が壊れそうな軋みが走ったけど、それでも平気そうな顔をして何とか言ってやった。
それが、オレに出来る抵抗の限界だった。
空殻はオレを見て忌々しそうに表情を歪ませると、徐々にその頭角を表してきた。
「貴様のような下衆を見ていると、吐き気がするのだよ、小僧……!」
「へっ、そりゃ良かったぜっ。テメエみたいな奴に、好かれてぇとは思わねえしな!」
実際吐き掛けたけど、喉に無理矢理に留めて、次の一撃に全身全霊を掛けておく。
これで、決まる筈だ。……いや、分かる筈だ、ってところか。
オレは拳を開いて、ちゃんと握り締めていた〈附石〉を、ギュッと握り直し、再び空殻を見据えた。
「……空殻。今一度訊くぜ? 自首してくれねえか?」
「断る。……よもや、此処で私が折れるとでも思ったか? ……下らぬ。貴様の首から上に付いてる物は飾りか?」
「なら仕方ねえな。――テメエを、ここで、――――ぶっ飛ばす!!」

【後書】
絶賛最終決戦真っ只中です! 練磨君の策は通じるのか否か!
因みにこの練磨君の策は、練磨君しか出来ない~って訳ではないのですけれど、この土壇場のタイミングでそれが出来るのは、練磨君だけ、みたいな流れになっておりますw 次回、いよいよ決着が…!? お見逃しなくっっ!!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    練磨君!かっこいい!!涙でちゃうvv
    でも、やらかさないでね♪

    次回いよいよ決着か?どんな結末が待っているのか妄想楽しみます。
    なのでここまで!w

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ヤッター!┗(^ω^)┛ 練磨君褒められてるぞ君ぃ!!
      ほんとそれwww最後の最後なんだからね、絶対にやらかさないでね練磨君!ww

      次回いよいよ決着…か? 物語も間も無くクライマックスですからね、ぜひぜひどんな結末で締め括られるのか、楽しみに妄想して頂けると幸いです!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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