2019年5月26日日曜日

【ベルの狩猟日記】103.モスではない何か【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第103話

103.モスではない何か


「――出来たにゃーっ」
 生温かい小雨の降り頻る樹海の一角。ネコ頭の少女の喚声に、こんがり肉を頬張っていたベルは口の中身を喉に落とすと、「どれどれ……」と四つん這いになってザレアの元へ近づいて行く。
 雷を落とすための針が備え付けられた、仕組みのよく分からない装置――爆雷針。設置すると、数秒後に落雷を誘発させる装置らしいが、ベルには未だにその仕組みが理解できない。何より、魚と虫を調合した筈なのに、どうして機械チックな代物が出来上がるのか、そこが不思議でならなかった。
「てかあたし、爆雷針って初めて見たかも」マジマジと落雷誘発装置を見やるベル。
「爆弾より使う機会が少ないかもな」爆雷針の一つを手に取り、完成具合を確かめるフォアン。「それよりも凄いのは、ザレアの調合に失敗が絶無だって事だな」
「成功率、確か低いんじゃなかったかしら……?」
 生憎と手持ちに調合書が無いため、成功率がどれくらいか分からないが、それでも爆弾と同じく、調合の成功率はそう高くなかったと記憶しているベル。
 ベルの感心しきりの発言に、ザレアは「にゃっふっふっ」、と腕を組んで得意気に応じた。
「オイラは爆弾の女神に愛された、爆弾の申し子だからにゃっ! 百パーセント成功するんだにゃっ!!」
「――そうか、〈アイルーフェイク〉って〈ボマー〉のスキルが付くんだったな」ザレアの発言をスルーするフォアン。「〈ボマー〉のスキルが有れば、爆弾系統の調合の成功率が全てに於いて絶対になるんじゃなかったか?」
「そ、それは内緒にゃのにゃーぁー!」焦ってワタワタし始めるザレア。
「……ザレアのために有るようなスキルね……」納得したと、うんうん頷くベル。
「それじゃ早速樹海一杯に仕掛けてくるにゃっ!」爆雷針を胸一杯に抱えて立ち上がるザレア。
「お待ちィィィィッッ!! どうしてそう狩場を危険地帯にしたがるのあんたって娘はァァァァ!!」今にも駆け出しそうになるザレアの肩を全力で掴まえるベル。
「はっ、離してにゃーっ! オっ、オイラにはっ、この樹海を爆雷針で埋め尽くすと言う夢が有るんだにゃーっ!!」ジタバタ暴れだすザレア。
「――ザレア。樹海を爆雷針で埋め尽くしたら、後で困ってしまう事になるぞ?」
 諭すように言葉を発したのは、腕を組んで二人の少女を見やっていたフォアンである。落ち着いた所作でザレアに声を掛けたフォアンは、二人の意識が自分に向いた事を確認してから再び口を開く。
「今は雨が降ってるから爆雷針しか使えないが、もし雨が止んだら爆雷針は使い物にならなくなるぞ? その時、ザレアが一番好きなモノが使えるようになるのに、樹海一杯に爆雷針が設置されてたら……どうなる?」
 その諭し方はどうだろう……とゲンナリするベル。爆雷針にしろ、爆弾にしろ、樹海を焼け野原にしたいとしか思えないのだが……とベルは呆れ返っていた。
 そんなフォアンの諫言がザレアの心を激しく揺さ振ったのは、最早言うまでも無い。プルプルと体が震えだし、〈アイルーフェイク〉の瞳が輝きだす――ような錯覚を生じさせる雰囲気を醸し出し始めるザレア。
「オっ、オイラが間違ってたにゃーッ!! 〈アイルー仮面〉の名折れだにゃ……にゃふんっ……」〈アイルーフェイク〉の目許をゴシゴシ擦るザレア。「――爆雷針をそこらじゅうに埋める作戦は中止にゃッ!!」
 にゃー! と元気を取り戻して意気揚々と爆雷針の回収を始めたザレアを尻目に、ベルはフォアンを感心した表情で見据えた。
「フォアン……あんた、ザレアの扱い方を心得てるわね……」
「ん? 何の事かな?」
 澄まし顔で返され、ベルは「……何でもないわ」と微苦笑を浮かべて嘆息。視線を逸らして別の話題を振ろうとして――
「…………何、あれ」
 表情の凍ったベルに、二人のハンターはすぐに気づいた。彼女の視線を追うと、そこにはモスの集団が見つかった。「フゴフゴ」と愛らしくも映る、背にコケを生やした子豚であるモスは、トコトコと短い四足を動かしてキノコが生えている場所を探して歩き回っている。
 それは、キノコが在る場所なら、ここに限らずどんな場所でも見られる光景だ。このハゥエット樹海に於いても日常的に見る事が出来る。
 ベルが驚きに目を瞠ったモノはそれではなく――
「フゴフゴ。う~ん、デリシャス! フゴフゴ」
 人語を解するモス――ではなく、全身を“モスシリーズ”と呼ばれる、モスの素材から作られた防具で固めた、――人間、だった。
 モスの集団に溶け込んでいる――ようで、物凄い存在感を醸し出しているその男は、四つん這いになって腐葉土の上に顔を出しているアオキノコを食んでいる。どんな羞恥プレイかと見紛う、異常感満載の雰囲気を醸し出しながら、モス男は四つん這いでモスの集団に付き添っている。
「――モス、だな」うん、と確信した様子で呟くフォアン。
「紛れもにゃいモスにゃ!」何の疑問も無く断言するザレア。
「二人ともメガネを買いなさいッ!! アレをどう見たらモスになるのよッッ!!」怒号を張り上げるベル。「違和感モリモリでしょ!?」
「ん?」片眉を持ち上げるフォアン。それから注視するように両目を眇める。「……う~ん、確かに言われてみれば、モスじゃない……のか?」
「あんたはどんな目をしてるの!? てかさっきのあいつの台詞聞いた!? “デリシャス”って言ったのよ?!」ガチで大丈夫!? とフォアンの頭の心配を始めるベル。
「人語を解するアイルーがいるんにゃから、人語を解するモスがいたって不思議じゃにゃいにゃ!!」ベルの疑問を完全否定して両手を胸の前でぎゅっと固めるザレア。
「ぐッ、それを言われると反論し難い……けど、まだ人の姿に近いアイルーが喋るなら未だしも、モスは完全に豚よ……?」何とか反論したいベル。
「フゴフゴ……ん? ぉお、もしかして君達はハンターかね?」
 四つん這いになってモスを追っていたモス男がこちらに気づき、「よっこらしょと」と掛け声を上げて二足歩行の状態になる。
「! ベル見てみろ! モスが二足歩行している!」子供のように嬉しげな声を上げるフォアン。
「カッコいいのにゃ! 名づけてスーパーモスだにゃーっ!!」フォアンの隣で黄色い声を上げるザレア。
「二人の心がピュア過ぎて、あたしゃ自分の心の黒さに嫌気が差しそうだわ……」ゲンナリと項垂れるベル。
「お悩みのようだねマドモアゼル。私で良ければ相談に乗るよ?」
 落ち着き払った男声が間近で聞こえ、思わず振り返ったベルは、眼前に七頭身のモスが立っている事に気づいた。
「うわぁああッッ!?」思わず頓狂な声が飛び出すベル。「近い近いッ!?」
「おや、これは失礼をしたね」モスの顔の被り物――〈モスフェイク〉を被った男は、柔らかな声で一歩後退し、す――と綺麗なお辞儀をする。「初めましてマドモアゼル。私の名はバンギ。見ての通り、モスだよ」
 意外にも礼儀正しい反応を返され、ベルはどう返せば良いか分からず、「え、えーと、あたしはベルフィーユ。ハンターよ」と自己紹介してから、「――って、モスじゃなくてあんたもハンターよね!?」思い出したようにツッコミを入れる。
「マドモアゼル・ベルフィーユだね」〈モスフェイク〉で表情が窺えないが、人当たりの良さそうな笑顔を浮かべているのが容易に想像できる語調のモス男――バンギ。「良い名前だね。私の古い知己の弟子にも、同じ名前のマドモアゼルがいた事を思い出したよ」
「え」嫌な予感が徐々に形を取り始めるベル。「も、もしかして……ワイゼンって人? その旧友が……バンギ、さん?」
 ベルの戦々恐々とした質問に、バンギは驚きを体現するように両腕を広げた。
「ぉお、これはこれは……マドモアゼルがムッシュー・ワイゼンの秘蔵っ子かね。いやはや……これは奇縁だね」
 そう告げてから、バンギは〈モスフェイク〉を取り外した。モス頭の下から出てきたのは、髭の無いスッキリとした口許、ふっくらとした体型に見える“モスシリーズ”とは真逆の痩せ型の顔立ち、温和そうに映る糸のように細く弧を描いたニコニコした目許、紫色の髪は後ろで纏めた“マスラオ”と呼ばれる髪型になっている。
「い、意外と若々しい……」かなり失礼な感想を述べるベル。
「それでは改めて自己紹介をさせて貰おうかな。私の名はバンギ。ムッシュー・ワイゼンとは古くからの知己でね、昔はよく二人でハンティングしたものさ」
「俺はフォアン。ベルの狩友で、ラウト村の専属ハンターを務めてる」ベルの隣に立って小さく顎を引くフォアン。
「オイラはザレアにゃっ! ベルさんとフォアン君の狩友でっ、同じくラウト村の専属ハンターだにゃーっ!」元気良く飛び跳ねながら自己紹介するザレア。
「ムッシュー・フォアンに、マドモアゼル・ザレアだね」噛み締めるように呟くバンギ。「みんな良い名をしているね」穏やかな笑顔で頷くバンギ。「さて、詰まる所、君達はムッシュー・ワイゼンに出した依頼を代行するためにこんな僻地に赴いてくれたのかな?」
「あ、うん、そうよ」慌てて頷くベル。「って、え? 師匠に依頼を出したの?」
 聞いていた話と違う、と気づいたベルは、そこでようやくワイゼンが面倒臭がって依頼を押し付けたのではないかという予想に辿り着いた。
「あのエロジジイ……いつか遺産を全て横取りしてやる……ッ!!」ギリギリと奥歯を軋らせるベル。
「でも、“ハンターであれば簡単なお手伝い”なんだろ? ワイゼン翁に依頼出さなくても良かったんじゃないか?」右手の平を差し出すようにしてフォアン。
「――ふむ?」不思議そうに片眉を持ち上げるバンギ。「……ふむ。どうやら依頼内容が間違って伝わっているようだね」と、一つ得心したように頷く。「“ハンターであれば”ではなく、“凄腕ハンターであれば”、と言ったつもりだが……」
 間。
「……よし、取り敢えず師匠の頭を搗ち割る作業に戻るわよ皆!!」
 額に青筋が走る鮮烈な笑顔で拳を突き上げるベルなのだった。

【後書】
 と言う訳で謎のモス紳士、バンギさんの登場です!w
 いやー、このキャラクターはアレです、ヴァーゼさんを登場させた辺りから実装を考えていたキャラクターになりますw つまりまァ、ヤバみ溢れるキャラクターと言う事ですね…!(笑)
 MHX辺りに実装されたスキルで「キノコ大好き」でしたっけ? そんなスキルが実装されたのですけれど、これってアオキノコをそのまま食して、体力回復できるスキルでして、バンギさん時代を先取りしてましたね…!ww
 さてさて未だに始まらない狩猟ですが、もうじき始まりますたぶんw 次回もぜひぜひお楽しみに~♪w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    とりあえず樹海の平和は保たれたようですw

    これまた凄そうな方がでてきたなぁw
    ワイゼン翁の旧友ってだけでも十分ヤバいのにモスシリーズ!
    溢れるヤバみに押しつぶされそうw

    さぁ!いよいよか?まぁ、あれだゆっくりしてけw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      ですですww 樹海は辛うじて原形を留める事に成功しました…!(笑)

      凄そうな方wwワイゼン翁の旧友ってだけでもうヤバさが伝わるのに、挙句モスシリーズですからね!ww そりゃあヤバいですよ!www(笑)
      溢れるヤバみに押しつぶされそうwwwヤバ過ぎるぅ!ww

      ですな!w ゆっくり参りましょうゆっくり!w

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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