2019年5月28日火曜日

【ベルの狩猟日記】104.出でる漆黒【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第104話

104.出でる漆黒


「――人探し?」
 バンギから依頼内容の修正を受けた三人だったが、三人が立ち去るとバンギ一人でその依頼を熟さねばならなくなると聞き、且つワイゼンの旧友バンギのハンターとしての実力も気になる三人は、彼の依頼を受ける事にしたのである。
「この広大なハゥエット樹海のどこかに、フゴフゴ、幼い迷子がいるとモス伝に聞きましてな。フゴフゴ。何とか見つけて救い出したいと考えているのだ。スンスン」
 狩場である樹海を散策しながら、そう話してくれるバンギだが、相変わらず四つん這いになって、モスのように鼻をひくつかせ、時折草やキノコを食みながら、スーパースローモーに進んでいる。
「……それで、何でバンギさんはモスに成り切ろうとしてるの……?」
 年上で且つ、最近まで知らなかったが、ワイゼンと言う超有名なハンターの古くからの知己と言うイメージで、何と無く敬語を使ってしまうベル。
「モグモグ……」腐葉土から顔を覗かせているアオキノコに四つん這いのまま顔を突っ込むバンギ。「モグモグ――デリシャス! ん? ぁあ、確かに初めて私を見た人は皆驚くのだが……もう何十年も前に俗世から逃れ、それからずっと隠者として生活しているのだよ」そう言って立ち上がる。「だから今はこうしてモスとして生きているのだ」
「……え、えー……っとぉ……」
 ボケているとしか思えないのだが、根が真面目そうな人が真面目な口調で語ると、何となくツッコミを入れ難いベル。明らかに何かおかしいのだが、ツッコミを入れるのも何だか……と言う妙な雰囲気なのだ。
「……え、それじゃあ何? もう何十年も狩場で生活してるって事!?」遅れてツッコミを入れるベル。
「そうだね」コクリとモス頭が顎を引く。「君達みたいな人間に逢うのは、もう何ヶ月振りかな……」
「……何て言うか……ヴァーゼとは違う意味で異常な人間ね……」ゲッソリとベル。
「おや? ムッシュー・ヴァーゼの知り合いかね?」微かな驚きのこもったバンギの声。
「ぇえ!? バンギさんって、ヴァーゼとも知り合いなの!?」思わず頓狂な声が出るベル。
「知り合いと言うか、私の一番弟子なのだよ、ムッシュー・ヴァーゼは」穏やかな声調で語るバンギ。「その様子だと、ムッシュー・ヴァーゼは今も健勝そうだね」
「にゃにゃーんっ!? つっ、つまりバンギさんは……オイラの師匠の師匠かにゃっ!?」
 ザレアが嬉しそうに飛び跳ねたのを見て、フォアンは「確かにそうなるな」と確りと首肯を返した。
「おや。マドモアゼル・ザレアはムッシュー・ヴァーゼの愛弟子かね? これはまた……奇縁だね」落ち着き払った声のバンギ。「これは……ムッシュー・フォアンにも期待せざるを得ないね」
「――それじゃあ、【王剣】は知ってるよな? 俺はその息子さ」
 軽い口調で応じたフォアンに、バンギは言葉を失っているようだった。
「……なる、ほど」重たい口を何とか動かすバンギ。「ここまで奇縁が重なると、誰かが意図したのではないかと疑ってしまうね。そうか……なるほど、もう次の時代が来ていたのか……私も歳を取ったと言う事か……」ブツブツと呟きを落としていく。
「え? 何ですって?」後半が聞き取れず、聞き返すベル。
「いや、こちらの話だよ」顔を上げて小さく首を横に振るバンギ。「……ムッシュー・ワイゼンが君達に依頼を頼んだのも、今なら頷けるね」と再び小さな声で呟き、「――そうだね、ムッシュー・フォアン。私の頼み事を聞いてくれるかい?」
「ベルならやらんぞ」腕を組み断固とした口調でフォアン。
「どうしてそんな話にッ!? てかあんたのモノでも無いでしょ!?」顔を真っ赤にするベル。
「ふふっ、君のシャルマンな彼女は取らないさ」モス顔が微笑んだように見えるバンギ。「君の防具のスキルに〈自動マーキング〉が有る筈だろう? 君なら一匹の飛竜がどこにいるのか把捉しているのではないかな?」
 バンギの発言に、ベルとザレアの視線がフォアンに向き、注意が自分に向けられた事を悟ったフォアンは徐に首肯を返す。
「あぁ、確かに反応は有るが……もしかしてこいつを狩猟するのか?」
「当たらずとも遠からずだよ」フォアンの反応に満足そうに頷くバンギ。「その飛竜に囚われた少女を救い出すのが、私が出した依頼のメインターゲットさ」
 間。
「――ぇええ!? ひっ、飛竜に女の子が捕まってるの!? ちょッ、何を悠長にしてるのよッ、早く助けに行かないと……ッ!!」
 バンギの爆弾発言にどうしようもない焦燥感に駆られるベル。
「どうか落ち着いてくれ、マドモアゼル・ベルフィーユ」そう言って差し出したのはアオキノコだった。「これを食べると少しは落ち着くだろう」
「いや……せめて薬草か不死虫と調合して欲しいかな……」アオキノコをそのまま食べる人なんているかとツッコミを入れそうになったが、眼前の男こそがそうだったのでツッコミを入れようにも入れられなかった。
「少女は飛竜に囚われているが、今すぐどうにかなる訳ではない。現に、少女が飛竜に囚われてから何年も経過しているからね」
「はぁい!?」またも頓狂な声が飛び出るベル。「え……つまり、非常食的な扱い……なの?」
「逢ってみれば分かる筈だよ」そう言って再び四つん這いになるバンギ。「さぁ、ムッシュー・フォアン。飛竜がいるエリアまで案内してくれるかい?」
「その……二足歩行でお願いします」頑張ってツッコミを入れるベルなのだった。

◇◆◇◆◇

 頭上の枝葉の密度が少なく、曇天の空が窺えるエリア5の一角に四人のハンターは辿り着いた。樹木は頭上に枝葉を伸ばしているだけで、人間にとっては大きく開けたエリアだ。視界も利くし、障害物もエリア中央に鎮座する幹の太い大樹だけ。背の低い草も、小型のモンスターを隠すほどではなく、仮に戦闘するにしても都合の良い場所と言えた。
「ここに飛竜がいるの……?」
 そう疑問を呈したのはベルだ。見渡す限り、エリアのどこにも大型モンスターの姿は見受けられない。ザレアもキョロキョロと周囲を見回し「どこかにゃ~? 匂いはするんだけどにゃ~」と不思議そうにしている。
「あぁ、ここにいる筈なんだが……」フォアンも自分のスキルに疑問を感じているのか、周囲を見回しながら小首を傾げている。
「――ふむ」モス頭の顎を指で摩るバンギ。「マドモアゼル・ベルフィーユ。左に五歩進みたまえ」
「へ?」思わずバンギを見てから、言われた通りに五歩左へ進むベル。「これで良いの?」とモス男に視線を向けようとして――先刻ベルが立っていた場所に漆黒の影が落ちてきた。
 ズダンッ、と地鳴りを響かせて眼前に現れたのは、見た事も無い黒い体毛を有する化け物。ベルは驚愕すると同時に――動いてなかったら確実に下敷きになっていた――と気づき、全身の産毛が逆立った。
「ガァァァァウゥゥゥゥ……!!」長くしなやかな尻尾をバシンッバシンッ、と大地に叩きつけて唸りを上げる漆黒の飛竜に、ベルは思わず背に負っていたハートショットボウⅠに手を掛ける。
「こいつ、どこから……!?」戸惑いながらも漆黒の飛竜との間合いを測るベル。
「――枝の上にいたのか……?」同様に驚きながらも大剣を引き抜くフォアン。「身軽なんだな……」
「にゃー! 何かニャルガクルガの上に人が乗ってるにゃ!」
 ザレアの喚声に、思わず漆黒の飛竜――ナルガクルガの背に視線が向くベルとフォアン。――確かに、そこにはあられもない姿をした、一人の幼い女の子の姿が。
「グルルル……ッ!!」その女の子が犬歯を剥き出しにしてベルを睨む。
「……な、何か、助けて欲しそうって言うより、敵意剥き出しなんだけど……」恐怖を覚えてたじろぐベル。
「あの娘を助ける手伝いをして欲しいのだっ! モグモグ……私だけでは……まぁ出来ない事も無いかも知れないが、どうか手伝って欲しいっ! フゴフゴ」
 言いながらも四つん這いのままアオキノコを食んでいるバンギに、もうこいつはどうしたらいいんだと途方に暮れそうになるベル。
「――! 来るぞッ!」
 フォアンの檄が飛び、ベルは咄嗟にナルガクルガへ視線を投げ――本能の赴くままに横合いへと飛び込んだ。その刹那、背後に烈風を巻き起こしながら漆黒の棍棒――ではなく、太い幹のような刺々しい尻尾が叩きつけられた。
 振り返ると、腐葉土の柔らかい地面とは言え、深く抉られている事に気づいて怖気が走るベル。あんな攻撃をマトモに喰らえば、人間などペチャンコだろう。慌てて立ち上がり、戦線に復帰――しようと思っている間にナルガクルガは尻尾を引き抜き、自身の頭上へ持ち上げると、先端をクルクル回す仕草を始めた。
「こ、今度は何……?」空気に呑まれそうになりながらも、必死に観察するベル。
「――ふむ。もぐもぐ……様子を見るに、君達はナルガクルガと矛を交えた事が無いのかな?」相変わらずアオキノコを食みながらバンギ。
「ナルガクルガって名前を聞いたのも初めてよバカァァァァ―――――ッッ!!」
 絶叫を上げるが、視線は漆黒の飛竜へ注がれたままのベル。今、視線を逸らせば即、命が持って行かれそうな気がして仕方なかったのだ。
「――よし、ならば一旦撤退しようではないか」と告げたバンギの姿は既に見えなかった。
「わ、分かったわ……って、ぇえ!? どこに行ったのバンギさーん!? あなたを一番頼りにしてるんですけどォォォォ!?」
 ツッコミを入れた、その瞬間だ。ナルガクルガが尻尾に纏っていた黒い棘を飛ばしてきたのは。
「うぇええええ!?」悲鳴を上げるベル。咄嗟にその場にしゃがみ込むと、頭上スレスレを棘の弾丸が飛翔――背後に飛び出ていた樹木の根っ子に深く突き刺さる。グッサリ刺さっている棘の弾丸を見て、「あ、あんなの喰らったら即死じゃない……ッ!?」と思わず体が震えだしそうになる。
「み、みんな撤退ィィィィ!! バンギと合流するわよォォォォ!!」
 怒号を張り上げて、今にも崩れそうになる足を全力で回し、エリア5を脱しようと駆け出すベル。背後では「了解です、隊長」「分かったにゃーっ」と言う頼もしい仲間の声が聞こえたが――最早その姿を確認する余裕も無かった。
 ――そして、時は冒頭に戻る――――

【後書】
 やっと本題が始まる感じなのですけれど、既にエピソード7も後半戦です!w 狩猟とは一体…!(笑)
 バンギさんもヴァーゼさん側の人間と言いますか、この物語に於けるアウトサイダーの一人ですね。わたくしはね~、こういうバランスブレイカー的なキャラクターが大好き過ぎましてね、ついつい登場させちゃうんですよね…!w 後はアレです、「うーん、デリシャス!」を言わせたかっただけ感は有りますよね!ww(笑)
 さてさて、いよいよ依頼内容も見えてきましたが、果たしてこの幼女をどうしたいのか!? 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    なんか「これぞベル日!」って感じのお話ですね。
    ワイゼン翁の愛弟子、バンギさんの一番弟子の一番弟子、そして【王剣】の息子…
    世代を超えて受け継がれるハンター道w
    バンギさんじゃないけど、誰かが意図したもでは?と思われますよねぇw

    それにしても先生のナルガ愛炸裂だよねぇw
    しっぽびた~んの描写とか「うんうん、そうそうw」
    しっぽクルクルに至っては「うーん、デリシャス!」

    はたして幼女の正体はっ!?

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      「これぞベル日!」って感じのお話と言って頂けるのがこうね、何と言うんでしょう、馴染みの客の「いつもの!」って言う、あの安心感と言いますか、実家のような深さが有りますよね…!w(語彙力~!)
      脈々と受け継がれていくハンター道と言うのがね、綴ってみたさ有りましたからね…!w こう、親から子へ、子から孫へ、みたいな、一途な技術の継続って、しゅごい好きなんです…( ˘ω˘ )
      そうなんですよねw ここまで重なると、誰かが意図したもののように感じちゃいますよねぇw

      ナルガ愛、感じて頂けましたでしょうか!ww
      そうなんですよそうなんですよ!ww しっぽびた~んとか! しっぽクルクルとか! 仕草の一つ一つが愛嬌たっぷりで且つ即死級とかね!w ヤバいよね!ww うーん、デリシャス!www(笑)

      幼女の正体も続々明らかになって参りますよう!┗(^ω^)┛

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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