2019年5月7日火曜日

【ベルの狩猟日記】098.樹海を疾駆するモノ達【モンハン二次小説】

■あらすじ
守銭奴のベル、天然のフォアン、爆弾使いのザレアの三人が送る、テンヤワンヤの狩猟生活。コメディタッチなモンハン二次小説です。再々掲版です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【風雅の戯賊領】、【Pixiv】の四ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
モンハン モンスターハンター コメディ ギャグ 二次小説 二次創作 P2G


【ハーメルン】https://syosetu.org/novel/135726/
【Pixiv】https://www.pixiv.net/novel/series/339079
■第98話

098.樹海を疾駆するモノ達


 晴れ渡る蒼穹を隠すように縦横無尽に天蓋を作る無数の枝葉が、噎せ返るような青臭さを周囲に放っている。大地を走り回る大樹の根っ子、落葉樹が散らした葉、そして数多の昆虫の命の源となる肥えた大地。無数の動植物が存在する緑豊かな森林の海……樹海。
 鳥類の囀り、木々のさざめき、虫類の鳴き声が混ざり合って調律し、緑に沈む世界は耳を澄ませばいつでも彼らの合唱を堪能する事が出来た。
「ギィィィィ――――――――ヤァァァァ―――――――ッッ」
 ――そんな演奏会を台無しにするような少女の断末魔の叫びが、周囲を剣呑とした空気に変容する。
 木々の間を縫うように、飛び出る根っ子に足を取られつつも、頭上のクモの巣に引っ掛かりながら、少女――ハンターの少女は仲間を連れ立って樹海を駆け抜けていた。
「ちょッ、聞いてないわよこんな展開ッ!?」全力疾走しながらも声を荒らげる少女。
 少女の装備はフルフルUシリーズと呼ばれる、飛竜種に属する“フルフル”と呼ばれるモンスターの素材を扱った防具だ。背に負った武器は弓――これまた飛竜種の中でも、“陸の女王”と呼ばれるモンスター、“リオレイア”、その中でも亜種と呼ばれる桜色のリオレイアの素材があしらわれた弓――“ハートショットボウⅠ”。そこから矢を放つ事も無く、少女は何者かから全力で逃走している。
「まぁ落ち着けベル。俺も聞いてなかったけど、今は落ち着いてるぞ」
 隣を走る少年も、弓使いの少女と同じくハンター。こちらは“レックスシリーズ”と呼ばれる、飛竜種の中でも特に凶暴で、“轟竜”とも称されるモンスター“ティガレックス”から剥ぎ取った素材で作られた防具に、背には“フルミナントブレイド”と呼ばれる、フルフルと呼ばれるモンスターから作られた大剣を背負っている。彼もまた全力で何者かから逃げていた。と、彼は周囲を見回して何かに気づいたようだ。
「ベル」走りながら少女――ベルの肩をポンと叩く。「ザレアがいない」
「ぇえええ!? どうしてこう、ここぞとばかりに消えるのよあの娘はッ!! フォアン!! あんたなら何とかしてくれるって信じてるわ!!」
 少年――フォアンに根拠も無い自信と共に親指を立てて合図を送るベル。そんなベルにフォアンは、「任せとけ、そう言うと思って何の策も立ててない」と逆に親指を立てて返してきた。
「よしッ!! ってバカァァァァッッ!! 何、自信満々に無策って言ってんのよ!?」ぬか喜びして即座にツッコミを入れるベル。「てか、バンギはどこまで行っちゃったのよ!?」もう一人いた筈のハンターの姿を探して喚き散らす。
「ぁあ、バンギならさっき――、――っ! ベルっ、来るぞ!!」
 気配を察したのか、ベルに声を掛けて即座に彼女と距離を取るフォアン。ベルもその瞬間、咄嗟に背後を振り返ると――眼前に黒い刃が肉薄しているのを視認し――「てぇぇえええいッッ!!」――次の瞬間には横合いに抜けるように体を投げ出していた。
 腐葉土の大地に全身を投げ出して胸から着地したベルは、頭上でヒュンッ、と言う空気を切る音が間近で響いた事に、生きた心地がしなかった。少しだけ顔を持ち上げて擦過したモノの飛来先を見つめると、ギラリと光る黒い棘状の物質が腐葉土に突き刺さっていた。
「ちィッ、もう追いつかれたのッ!?」
 舌打ちしながらベルは最早逃げても仕方ないと観念したのか、背に負った弓を手に取る。シャキンッ、と独特の音を奏でて一挙動で組み上げられた弓を構え、矢筒から一本矢を抜き取る。
「――ベル!」
 フォアンの怒声に、ベルは咄嗟に走り出した。背筋にチリチリと悪寒が駆け抜ける。嫌な予感が風の音として具現化したのは次の瞬間で、更にベルが予感に衝き動かされるままに再び腐葉土へ向けてダイビングした瞬間には、先刻までベルがいた地点に漆黒の獣が降り立っていた。
 地響きを起こす程の重量を大地に叩きつけ、腐葉土が鳴動する。ビリビリした空気の震動が駆け抜け、ベルは逸る気持ちを抑えながら、確りとした動きで素早く立ち上がった。
 立ち上がり、振り返った先には――漆黒の獣が尻尾を大地に叩きつけながらこちらを睨み据える姿が有った。
 真紅の瞳は輝き、動く度に残像を残す。――そう、残像を残す程の迅速さで挙動する、漆黒の化け物。その素早さは恐らく、飛竜種の中でもトップクラスだろう。強靭な筋肉の塊であろう前脚は、外側に向けて刃のような皮状の翼が突き出ている。一見するとネコのように見えなくも無いが、あくまでネコ科の印象が若干有るというだけで、飛竜種には違いない。
「ガァァァアァァァァ!!」
 細長いと言っても、あくまで“そいつ”の外見からそう言えるだけであって、尻尾の太さは人間の胴体を優に超えるだろう。その丸太のような尻尾をバシンバシン大地に叩きつけ、眼前に佇む二人のハンターを威嚇する。
 そして何故かその背中には、一人の幼い女の子の姿が。
「ガウゥ……ガァアウゥゥ……!!」
 幼い女の子の殺意さえ窺わせる、獣のような唸り声。
 獣のような――と形容したが、それは強ち間違ってはいない。幼い女の子の格好は草で編まれた、胸と腰を隠せる程度の衣服……とも言えないモノを纏っているだけなのだから。体は日に焼け、伸び放題になっている髪に、汚れきった顔。そして口を開けば「ウガゥアアア!!」と果たして人語を解しているのか疑ってしまう鳴き声が出てくる。
「……フォアン、取り敢えず二人が戻ってくるまで凌ぎ切るわよ……っ?」
 間合いを計りつつ、ベルはハートショットボウⅠに矢を番える。フォアンはそんなベルの動きを視認した訳でもないのに、ゆっくりとした動きで彼女の動きを阻害しない位置へと歩を進める。
「了解です、隊長」
 フォアンが律儀に返事を発した――その瞬間、漆黒の凶風は樹海を劈く咆哮を放つ――――

【後書】
 今回から最終章一歩手前のエピソード開幕です! 突然狩猟シーンから始まりましたが、モンスターは皆様ご存知、わたくしの大大大好きなあの子です!(笑)
 これは珍しく狩猟シーン過多になる…!? と思った? 残念! 次回からいつもの日常パートです!w そんな次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    いきなり狩猟シーン!!!!これはやる気だなw
    と思ったのもつかの間次回からは通常進行です( ´∀`)bグッ!

    これはどう見てもあの子w先生の大好きなwだから気合はいってるんだなぁwでもなんで女の子??

    どんな展開が待ってるんだろ楽しみ!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      未だかつてない始まり方ですからね!w まさかやる気が…!?w
      からのこれだよ!ww(笑) やっぱり【ベルの狩猟日記】はそうじゃないとね!ww

      ですです!w どう見てもあの子なのです!w わたくしの大大大好きな!w

      謎の女の子もね、話の進行と共に謎がほどけていきますゆえ、どうかお楽しみに!

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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