2019年6月28日金曜日

【浮世のカルデア事情】第18話「記憶に御座いません」【FGO二次小説】

■あらすじ
エミヤオルタとエレシュキガルの小話。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【ハーメルン】、【Pixiv】の三ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
FGO Fate/Grand Order コメディ ギャグ エミヤオルタ エレシュキガル

Pixiv■https://www.pixiv.net/series.php?id=923944
ハーメルン■https://syosetu.org/novel/146108/
■第18話

第18話「記憶に御座いません」


「エミヤ……さん? と言えば良いのかしら。約束の物を貰いに来たのだけれど」

 ……マイルームで武器の手入れをしている英霊とは俺ことエミヤだが、エレシュキガルに約束の物を渡す、と言う要件がまるで思い出せない。
 困惑したままエレシュキガルを見つめていると、「もしかして……憶えてないのかしら?」と不満そうに唇を尖らせた。
「生憎だが、そんな記憶は無い。残念だったな」
「何、その言い草。とっても困るのだわ。早く約束の物を貰わないと、その……困るのだわ!」
「俺と約束なんざするからそうなる。一つ賢くなったな」
「何で忘れた方がこんなにも偉そうなのかしら……忘れたのなら! ちゃんと謝り……じゃなかった。代わりの要求を呑むべきだわ!」
「俺には何の事か分からない約束の代償を払え、と? ――阿呆らしい。俺にそんな義理は無い」
 しょぼーん、と言う文字に出来そうな悲しそうな表情をするエレシュキガルを見て、何だこの感情は……俺は胸中に得体の知れない、反吐の出る想いを募らせている気がする。
「……で、俺は一体、君と何を約束したと言うんだ」はぁーっと面倒臭さで一杯の溜め息を吐き出す。「俺は君に何を渡す約束をしていた?」
「えっと……」エレシュキガルの表情が途端に怪しくなった。「えぇーっと、ほらアレよ、聖杯……だったかしら?」
「聖杯……? 俺が……君に??」過去の俺は何を考えていたんだ???
「でも、どうせエミヤく……エミヤの事だから、憶えてない上に忘れたんでしょう? 良いのだわ、代わりに別の物を貰う事にするから!」
 エレシュキガルが嗜虐的な笑みを覗かせてる。良からぬ事だけは確かのようだ。
「……俺に何をさせるつもりだ?」
「今日一日! 私のメイドになりなさーい!」
 間
「……間違えたのだわ。執事執事! そう! 執事になりなさーい!!」
「訳の分からん事を……ママゴトならよそを当たってくれ。俺はそんなに暇じゃない」
「あら? 私は代価を求めているのよ? あなたに逆らう権利が有ると思って?」
「……」
 ……そもそも、俺がそんな約束をするとは思えないし、どう考えてもエレシュキガルの妄言・虚言だと理解しているが……何故だろうか。俺はその願いに応えねばならないと、俺の中から欠けてしまった部位が、そう囁きかける。
 あまりにも無駄な行為であり、無為に尽きる所業だと予め知っていたが、それでも俺は、エレシュキガルの浮足立つ顔を前に、首を横に振れなかった。

◇◆◇◆◇

「ありがとう、エミヤ君。……じゃなかった、ご苦労だったわね、エミヤ。これで約束は違える事無く履行された、って事にしておいてあげるわ」
「はいはい。ご希望に沿えて何よりだ」
 全くのくたびれもうけの骨折り損だったが、俺自身、得難い感覚を身に宿していた。
 二度と訪れる事の無い感情の断片、と言う奴だろうか。それが、一瞬でも垣間見えたような。そんな、遥か遠き感覚だ。
「じゃあね、エミヤ君。……じゃなかった、今度は約束を忘れないでよね、エミヤ」
「それは確約できんね」と答えてから、エレシュキガルの肩を掴んだ。「それで、誰の差し金だ? これは君自身の策ではあるまい。もっと悪辣で、下劣な思考を有するサーヴァントと見受けるが」
「え、えっとぉ……」エレシュキガルの目が泳ぎ始めた。「な、何の事かしら? 策も何も、あなたが約束を――」
「……」醒めた目で貫いておこう。
「……うぅ、そうです、私の策ではないのだわ……」あっさりゲロりやがった。「マスターがね、その……エミヤは記憶をすぐ失うから、それを利用すればどんな願いも叶えてくれるって教えてくれて……それで……」
 人差し指を突き合わせてぼそぼそ呟くエレシュキガルに、俺は呆れ果て、疲れ果て、阿呆臭さで一杯の溜め息をこれ見よがしに吐き散らした。
「……それで?」
「え?」
「……満足できたかね?」
 醒めきった目でエレシュキガルを捉えると、彼女は一瞬呆けた表情を返した後、極上の――――

 その後マスターは始末した。

【後書】
 偶にはマスターの出てこない話など(なおマスターは始末されました)。
 よそのカルデアのエレシュキガルさんとかエミヤさんとか眺めてるとね、あぁ~確かに若干記憶が混濁して~とか有り得そうだふわぁ~って妄想してたらこんな物語が生まれました(^ω^) 互いに深い所では繋がっていて、けれど表層的には分からない、モダモダ感を味わってほしい…マスターは始末されて欲しい…(えっ)
 鯖としてこの二人っても~めちゃんこ大好きマスィーンなので、筆を折る前に綴れて良かったです…!

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