2019年7月14日日曜日

【神否荘の困った悪党たち】第70話 俺の日本語力が限界だった。【オリジナル小説】

■あらすじ
………………なにて?

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
日常 コメディ ギャグ ほのぼの ライトノベル 現代 男主人公


カクヨム■https://kakuyomu.jp/works/1177354054881797954
■第70話

第70話 俺の日本語力が限界だった。


「あれ、お客さんかな?」

 肌色の戦隊モノのコスチュームを脱ぐために神否荘に帰ってくると、見慣れない靴が玄関に並んでた。靴って言うか、これアレだ、草履って奴じゃないかな。
 こんな格好をお客さんに目撃されたら大変だ、と思って慌てて自室に戻ろうとしたけど、その前にマナさんの部屋の扉が開いて、セーラー服の女の子が出てきた! 不味い奴!!
 何とか目撃されないように部屋に入り――――「おや? お初にお目にかかります」セーラー服の女の子にバッチリ挨拶された。オワタ。
 観念して振り返ると、すんごい血色の悪い女の子……ってこの制服見た事有る奴だ。砂月ちゃんの通ってる高校、病二高の制服だ。
 目が覚める程の美人なんだけれど、全身から血の気が引き過ぎて、何かこう、不気味な色合いになってる肌を見て、俺はドキドキだ。怖さ的な意味で。
「お、お初にお目にかかります……」ぺこりと会釈するよ!「えぇと、貴女は……」
「あいや申し遅れた。某、節見存兵衛(フシミ ゾンベエ)と申す。以後、平に宜しくお頼み申す」しゅんごい儀礼を見せつけられた……「御仁は、見た所……見た所……」ごめんね、例えが思い浮かばないような格好してて……
「えーと、俺は亞贄。二糸亞贄って言います。宜しく」ぺこぺこと頭を下げるよ!
「御仁、二糸と申すとあれか、日色親分の……御曹司で御座るか?」目が回りそうな単語が出てきた。
「えーと、アレです、孫です孫」御曹司だなんて単語日常で初めて聞いたぞい。「そんな偉くない奴です」テレテレしちゃう。
「日色親分の御令孫で御座ったか。あいや失礼仕った。某の識見も未だ雛と言う裏打ちで御座ろう」何を言ってるのか半分も判らない……「して、亞贄殿は何故、その……奇天烈な風采であらせられるので……?」
「………………なにて?」
 俺の日本語力が限界だった。

◇◆◇◆◇

「――亞贄殿が赤恥に慙死するも宜なるかな。某であってもそれは、含羞に堪えますまい」
 普段着に着替えて廊下に戻ってくると、何故か謎の血色の悪過ぎる女子高生と並んでお茶をする展開になっていた。
 うーん、併しアレだ、俺には何を言っているのかさっぱり分からない。
 と言う訳で隣には通訳としてメイちゃんに来て貰っていた。
「メイちゃん、今の何て言ってるの?」ひそひそとメイちゃんに耳打ちするよ!
「どのような形式でのアウトプットをご所望ですか?」ことり、と可愛く小首を傾げるメイちゃん。
「ふんわりした奴でお願いします」ひそひそとメイちゃんに耳打ちし続けるよ!
「了承。ふんわり形式で通訳します。――“亞贄君がヤバい奴でヤバくなるのも分かり味~。私でもそれ、まじヤバ味~”――以上です」日本語力が試され過ぎてる……!
「え、えぇーと……えへへ、そ、そうなんですよ……えへへ……」俺は日本人じゃないかも疑惑まで出てきてつらあじだ……「とととところで、節見さんは砂月ちゃんの友達だったりしますか?」
「砂月殿は確かに某の朋輩であるが……であるなら亞贄殿。某も“存兵衛ちゃん”と異称すべきでは御座らんか?」突然不機嫌そうになったぞ……
「あの、メイちゃん、今、節見さんはなにて?」
「了承。ふんわり形式で通訳します。――“砂月ちゃんはまじ私のフレだけど~じゃあ亞贄君。私も存兵衛ちゃんって呼んで呼んで~”――以上」ほんとかよ……
「えっと、じゃあ存兵衛……ちゃん。砂月ちゃんの友達って事は、こう……インドア系だったりする?」頑張って大人しめのワードで応酬してみるぜ……!
「――然り。某も砂月殿の造本した当世風の絵巻物を贔屓して御座る。無類の情味が御座る」しゅんごい満足顔だ……何を言ってるか分からないけど……
「あの、メイちゃん。今、存兵衛ちゃんはなにて?」
「了承。ふんわり形式で通訳します。――“せやで。ワイも砂月っちの作ったナウい本まじラヴやで。まじヤバ味やで”――以上」何で突然関西弁になった挙句古語と思しき日本語混ぜ込んだのメイちゃん???
「そ、そうなんだぁ~」と言う事はこの人もアレか、もしかしてびーえる的なモノを嗜んでるんだろうか?「どんなの読むんです?」
「そうさな……輓近では“アイアニ本”なる絵巻物を拝読したが……実に芳しい。性倒錯の情味を心得てるあの書き味がな、こう、前衛の極致で且つ、絶世の業を禁じ得ぬでな……」分かる単語が“アイアニ本”だけなのがメンタルに来るなぁ……
「助けてメイちゃーん」最早耳打ちじゃなくて普通に問いかけるよ!
「了承。ふんわり形式で通訳します。――“そうだな……最近だと、アイアニ本、つまり愛火×亞贄本……要するに愛火が攻めで亞贄が受けのボーイズラブブック……とどのつまり愛火と亞贄がイチャラブぬちゃぬちゃするいやーんえっちな本……なる漫画を読んだのだが、実に素晴らしい。性的な倒錯……性的に特異な状態の表現を知り尽くしたあの表現方法がな、こう、時代の最先端を駆け抜けていて、且つ、この世界のどこを探しても見つからない程の罪深さを感じずにいられなくてな……”――以上」アイアニ本の説明、そんなに必要だったかな??? あともう俺これ以上話を聞いたら溶けないこれ?????
「えぇと、えぇと……」言い難い事だけれど、一応言っておこう。「あのね、その作品に出てくるアニエって、たぶん俺の事だよ」
 存兵衛ちゃんの目が見開かれて、ぽろっと眼球が落ちた。
「わぁーっ!」ビックリして仰け反るよ俺は!!「めめめ目ぇーっ!!」
「あいや失礼」と言って存兵衛ちゃん、何事も無く落ちた眼球を手に取って眼窩に嵌め直した。脱着可能なのか……「いや、某の方が肝を潰したぞ。まさかあの奇譚の男色絵巻物の主役が実在したなどと……で、ではそうさな。直筆の記名を、その、賜れぬだろうか……?」
「メイちゃーん」「了承。ふんわり形式で通訳します。――“おっと失礼。いや、私の方が驚いたよ。まさかあの不思議なボーイズラヴ漫画の主人公がほんとにいたなんて……で、ではそうだな。直筆のサインを、その、貰えないだろうか……?”――以上」うせやろ……
「えぇと……どこにサインすればいいかな……」何で俺が主人公のBL話が好きな人に俺のサインを書かねばならんのだ……
「あいや、それじゃあこの眼球に」ポコッと自ら眼球取りよったぞこの娘ーっ!!
「ひえぇ……眼球にサインなんてサイコパスな事要求されたの初めてだよう……」まさかの初サインが眼球だなんて……「てか、存兵衛ちゃん、もしかして普通の人間じゃなかったりします……?」恐る恐る尋ねるよ!
「然り。某、不死人でありますれば」
 メイちゃんに聞かなくても、分かってしまった。
 そっかぁ……俺まさかの、女子高生のゾンビの眼球にサインする事になったのかぁ……

【後書】
 これ自分で読み返しても「この子、何を言ってるんだ??」ってぐらいには難読ワードのオンパレードなので、どうかふんわりお楽しみくださいふんわりw
 と言う訳で新キャラの存兵衛ちゃん! 武士っぽい語り口のゾンビの女子高生と言う盛りキャラです(笑)。この子、登場する度に辞書をめくる指が止まらなくなる奴です!ww
 さてさて、次回は引き続きこの存兵衛ちゃんのお話です。ついてこれるかな? この難読ワードに! お楽しみに!ww

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    遅くなりあいや申し訳ないたてまつりまする(えーっと、なんか違うよねw

    かなりヤバい新キャラwもう色々超えて来たなって感じですw
    理解不能ワード連発!諦めそうになりながらもメイちゃんに助けられつつなんとか読み進めましたともvv
    そして読み進めた先には…ぽろっと落ちる眼球がっっっ!!

    ふーん、メイちゃんアウトプットの形式選べるんだ…他のもみてみたいよねぇw

    次回も存兵衛ちゃん!ヤバさまったなし!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      お待ちしていたで候!ww(やはり何か違う…!w)

      色々超えて来たなwwこういうキャラをギャグに使うのは初めてでした…!w
      これメイちゃんがいなかったら読者様置いてけぼりだったろうなって…!w 急遽呼んで良かったです…!(笑)
      まさかのリアル眼球ポロリでしたね!www(笑)

      これは…!w やはり他の形式も綴らねばですよねっ!w

      ヤバさをどんどん重ねて参りますよう!┗(^ω^)┛

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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