2020年7月14日火曜日

【牙ガイ】俺のガイトが男の子の訳が無い!その6※完結【バディファイト二次小説】

■タイトル
俺のガイトが男の子の訳が無い!その6※完結

■あらすじ
ドキドキする話、ここに完結!

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】の二ヶ所で多重投稿されております。

■キーワード
バディファイト 未門牙王 黒渦ガイト 牙ガイ コメディ ギャグ 人格崩壊 腐向け

Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8390580
■俺のガイトが男の子の訳が無い!その6

 ――――あのさ、ガイト。俺、ガイトが男の子でも女の子でも、どっちでもドキドキするからな!

 牙王がどういう理由であんな寝言をほざいたのか分からない。分からないけれど、ガイトはお陰様で訳も分からずドキドキする事になり、寝不足になりつつあった。
 己自身にドキドキする、と言うのはつまり、ライヴァルとして、バディファイターとして、良い緊張感を持って相対している、と言う風に捉える事も、まぁ出来ない事も無い。
 が、“ガイトが男の子でも女の子でも、どっちでもドキドキする”と言うのは、そういう緊張感とは別種の鼓動の高鳴りなのではないかと、ガイトを混乱の極致に叩き落とした。
 牙王にどんな顔で会えば良いのか分からない。今後はどんな態度で接するべきかも、どんな会話で切り出せば良いのかも、何もかもが赤熱した思考の先の先だ。
 河川敷で茹蛸のようになった顔を冷ますべく、ぼんやりと雲の流れを追う事に意識を傾けていたガイトだが、傍で何も言わず寄り添っていたアビゲールが、不意に口を開いた。
「ガイトは、牙王の事をどう思っているんだ?」
「牙王の事を……?」
 アビゲールの問いかけに、やっと意識が思考の海から浮上し、目の前に広がる夕陽に視線を向ける。
 青空はいつの間にか黄昏に暮れ、遠くでカラスの鳴き声が木霊していた。
 川面は橙色に染まり、学徒であろう少年少女が自転車でガイトの背後を通り過ぎて行く。
 風景が再びぼんやりと思考の波に浚われていく。
 牙王は友達……なのだろうか。共に競い合う、高め合う、バディファイターだ。互いに勝利を目指し、誰よりも強いバディファイターになるためには、彼に勝たねばならなくて……
 ……どう思っているか。好敵手、ライヴァル、最終的に打倒せねばならない強者……
 それ以上に、きっと己は。彼の、太陽のような心に惹かれているのではと。不意に、心臓が締め上げられるような感覚に囚われた。
 あぁそうだ。これはきっと、己が今まで見てこなかった感情。知ろうとさえしなかった、かなぐり捨てさえした、感情の一滴。
 それを零さないように、自分の胸を掴んだガイトは、紅潮した頬を夕暮れで隠し、ゆっくりと顔を上げた。
「……アビゲール。俺は牙王の事を――――」

◇◆◇◆◇>>><<<◇◆◇◆◇

「……スッキリ、って顔してるな、牙王」
「分かるか?」
 昼休みの時間。屋上でデッキビルドを始めた爆の隣に座る牙王は、最強のデッキビルダーが言うように、憑き物が落ちたような表情で空を仰いでいた。
「伝えたのか?」端的に尋ねる爆も、どこか晴れやかだった。
「あぁ。ガイトにどう思われても良い、俺は俺の想いを伝えた。これで嫌われたら、ちょっと寂しいけどな」
 へへっと笑う牙王に、爆は「嫌われる覚悟まで出来てるなら上等だ。後はガイトの返事待ちだな」とすまし顔でデッキビルドに戻った。
「……良い返事が貰えると良いわね、牙王ちゃん」
 まるで母親のような慈しみに満ちた微笑で見つめるくぐるに、牙王は「あぁ、だと嬉しいな」と無邪気に笑い返した。
 そんな他愛の無い話をしていたところに、足音と共に話題の少年が姿を現した。
 牙王が空から視線を下界に落とすと、眼前に立つ、どこか熱っぽさを感じさせるガイトと、目が合った。
「よう、ガイト!」
 いつもの気軽さで、軽薄に挨拶をする牙王に、ガイトは言い難そうに口ごもるも、抉じ開けるようにその小さな口を動かした。
「……貴様は、俺が男の子でも、女の子でも、どちらでもドキドキすると、……そう言ったな」
「おう、言ったぜ!」
「それに対する、……返答を行う」
 爆とくぐるが息を呑む気配が漂ってくる。
 牙王も空気に呑まれてか、緊張した様子で生唾を呑み込むと、真剣な表情を繕い、頷いた。
「あぁ、ガイトの想いを、聞かせてくれ」
 牙王の真剣な表情を目の当たりにして、己が今から口にしようとしている単語に想いを馳せ、羞恥で思い止まろうとしてしまう己を心の中で叱咤し、ガイトは牙王を真正面から睨み据えた。
「貴様は、――――俺の、“運命”だ」
 言って、言った傍から吐く息が全部赤色に染まりそうな想いで、言の葉を連ねる。
「貴様に因って、俺の運命は変わった。俺が有るべき運命は、……貴様に重ねてしまう程に、貴様は……牙王は、大きくなり過ぎた。だから――ッ」
 牙王の胸倉を掴み上げ、ガイトは吠えた。
「俺も、ドキドキするに決まっているだろう……ッ!!」
 限界まで充血した顔で、ガイトは牙王を睨み据える。
 牙王はそんなガイトを見つめて、一瞬虚を衝かれた表情を返した後、会心の笑みを見せた。
「良かった! 俺もそんなガイトにドキドキが止まらないぜ!」
「~~~~~ッッ」
 その後、恥ずかしさに耐えられなくなったガイトがのぼせて倒れてしまったり、周囲のギャラリーが浮足立った様子で声援を上げまくったり、牙王が照れまくっている割にはガイトを離さなかったりしたが、それはまた、別の話。
 太陽が漆黒を離さないように、漆黒もまた、太陽から離れる事は出来ない。……とか何とか。
 そうして二人は、付かず離れず、ドキドキしながら過ごすのだった。

【俺のガイトが男の子の訳が無い!】――――完

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