2021年4月24日土曜日

【ワシのヒカセン冒険記】第10話【FF14二次小説】

■あらすじ
初仕事はジメッとしたところ。


【第10話】は追記からどうぞ。

第10話


「――目下、我がフリーカンパニーの活動の中心は、冒険者ギルドから斡旋される依頼や、グランドカンパニー経由で提供される依頼を熟す事になる筈じゃ」

 場所はグリダニアのカーラインカフェ。今日も様々な用事で繰り出している冒険者やグリダニアの住人を傍目に、ワシら一行――フリーカンパニー【オールドフロンティア】のメンバー全員が顔を合わせて会合を開いていた。
 ワシこと、マスターのヤヅル、サブマスターのツトミちゃん、そしてメンバーであるエレット殿、サクノ殿、ユキミ殿、クロス殿の、計六名が顔合わせを兼ねて、シュラウド・ラウンドテーブルを囲んで座している。
「無論、これらの活動はメンバーの行動を制限しない事が前提ゆえ、普段は皆、自由に振る舞ってくれればそれで構わぬ。ワシの方から手伝いを願いたい時に声を掛けはすれど、それとて無理であれば断ってくれれば良いのでな」
 活動指針自体は「慈善事業」として、各地で難儀している諸事に手を貸す、と言う事から変わりは無いが、元々活動が無い事を主軸に募集したと言う体裁は活かしたいので、普段は自由に活動をして貰うものの、お上から活動せよと言われたらそれに従う、と言う姿勢でどうか、と言う話だ。
 皆、特に異議が無いのか銘々に頷いて肯定の意を示してくれている。有り難い事この上なし。
「そして真の活動内容はっ!」スッと挙手して立ち上がるツトミちゃん。「今みたいな会合になります! 皆で話術を鍛えよう!」
 ニパーッと笑いかけるツトミちゃんに、サクノ殿が「良いですね! 話術を鍛えれば、グランドカンパニーですら言い包められるかも知れませんね……!」と顔を華やがせ始めた。
「いやいや、確かに会合は活動の一環じゃが、お上を騙くらかす訳にはいかんじゃろ」思わずサクノ殿にツッコミの手を入れる。「元々は会合が主目的だった訳じゃから、勿論会合自体は今後も継続していくつもりじゃから、それだけは安心して欲しい」
「了解しました」スッと頭を下げるエレット殿。「中々活動に参加できない身ですが、お手伝いできる事が有れば遠慮なく仰ってください」
「うんうん、エレちゃんも頼りにしてるよ~」グッとサムズアップを返すツトミちゃん。
「その時は宜しく頼む」ワシも小さく目礼を返すと、改めて用意した書面に視線を落とす。「早速なんじゃが、フリーカンパニー【オールドフロンティア】に対して仕事の依頼が来ておってな。話だけでも聞いて欲しい」
「おお~! もう初仕事が!」ユキミ殿が豚の被り物を揺らして嬉々とした声を上げている。「楽しみだなぁ~」
「腕が鳴りますね」グッと力こぶを見せるクロス。「あっ、腕から音が出るって意味ではないですよ?」
「ぶふっ」ツトミちゃんが噴き出した。「いきなりそれはズルいよクロちゃん……」腹を抱えて震え始めた。
「緊張を解す良いノリツッコミでしたね」穏やかな微笑を見せるエレット殿。「ふふ……」お淑やかに笑みを落としている。
「クロスさん流石だ……! もうツトミさんの、」「ツトミちゃんで良いよぅ♪」「……ツトミちゃんの笑いのツボを押さえている……!」サクノ殿が慌てて言い直して感動している。
「……コホン、話を進めて良いかの?」突然差し込まれた笑いに、ワシも頬筋を何とか正して空咳を一つ。「フリーカンパニー【オールドフロンティア】はグランドカンパニー双蛇党の傘下に有る事は伝えたと思うのじゃが、その経由で、タムタラの墓所なる地下墓所の警邏を依頼されての」
「何かジメっとしてそうだね」不快そうな表情で呟くツトミちゃん。
「う、ん? まぁそうじゃの」どう反応したら良いのか分からずどもってしまう。「現状、鬼哭隊弐番槍が警備に当たってるそうなのじゃが、どうにも最近、最後の群民と言う名のカルト集団の生き残りが出入りしてると言う噂が有るそうで、可能ならその掃滅を頼まれた訳じゃ」
「フリーカンパニーの初仕事とは思えない緊要な依頼ですね」エレット殿が不思議そうに小首を傾げる。「流石に私個人では荷が重いと言わざるを得ない内容としか……」
「恐らくじゃが、サクノ殿、ユキミ殿、そしてクロス殿の冒険者としての実績を買われたのだと思う。お三方に関しては、冒険者としての実力は折り紙付きじゃし、よほどの事が無い限りヘマを踏むまいとの見込みなんじゃろう」
「そんなそんな! 私なんてまだまだ雛チョコボみたいなものですよ!」ブンブンと手を振るサクノ殿。「ちょっと刀と細剣を振るう腕が有るぐらいで……!」
「ちょっと……か?」違和感しかない強さをお持ちのサクノ殿に疑念に視線を注いでしまう。「ともあれじゃ。このカルト集団を掃滅する依頼、受けられそうな者はおるかの?」
 六人が互いに視線を交わし合い、牽制し合い、譲り合いを始めた気配を察する。
「わたしはおるすばーん」潔く挙手するツトミちゃん。「何かジメっとしてそうだし」理由が雑なのも、らしいと言えばらしい。
「私は掃滅そのものではなく、それに伴う手続きや書類申請などの方に従事したいと思います」スッと素早く挙手するエレット殿。「そういう形でなら、皆さんに貢献できると思いますので」
「では僭越ながら……」恐る恐ると言った態で挙手するサクノ殿。「掃滅作戦、参加致します……!」
「私も参加に一票!」はーいっと着ぐるみの蹄を挙げるユキミ殿。「きっとお役に立ってみせますよ!」
「それじゃあ私が三人目ですね」小さく挙手を見せるクロス殿。「見たところ、敵視を受け持つ方がいらっしゃらないようなので、私がカルト集団の視線を奪ってみせます」
「カッコいい~! 爺ちゃん! みんなカッコいいね!」
 興奮した様子で鼻息を荒くするツトミちゃんに、ワシも満足そうに首肯を返す。
「これほど頼りになる仲間もそうおらんじゃろう。では三人に任せ――――」
「「「「「え?」」」」」「ぬ?」
 五人分の視線を受け、ワシは思わずたじろいだ。
「爺ちゃんも行くでしょ?」「てっきりヤヅルさんも赴かれるのかと……」「ヤヅルさん、一緒に行かないんですか……?」「絶対に行く流れだと思ってました……」「ヤヅルさん、嘘ですよね……?」
 ツトミちゃん、エレット殿、サクノ殿、ユキミ殿、クロス殿に、一斉に非難を浴びせかけられ、ワシは一瞬言葉を失うも、即思考を切り替えた。
「――ワシを含む四人で、タムタラの墓所、掃滅作戦を行う事にするぞ」
 フリーカンパニー【オールドフロンティア】の初仕事は、そうして始まりを迎える事になる。
 ジメッとした場所――ゲルモラ時代の英雄・絶対王ガルヴァンスの眠る地下墓所が、ワシらの初陣となるのだった。

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