2021年8月21日土曜日

【浮世の聖杯組の話】アイドルデビューする編【FGO二次小説】

■あらすじ
マスター・浮世のカルデアの聖杯組のお話。
聖杯を捧げられた男性サーヴァントがアイドルデビューするお話。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【Pixiv】で多重投稿されております。


【浮世の聖杯組の話~アイドルデビューする編~】は追記からどうぞ。

浮世の聖杯組の話~アイドルデビューする編~


・超人オリオン■ツッコミ役の筋肉ゴリラ系アイドル
・蘆屋道満■怪しい陰陽師系プロデューサー
・マーリン■甘い汁を啜りたい外道系アイドル
・オジマンディアス■光輝なるセンター譲らない系アイドル
・ニコラ・テスラ■直流絶対認めない系アイドル
・李書文■アイドルとは武芸者と見たり

◇◆◇◆◇

「アイドルデビュー?」

 ノウム・カルデアの一角。世界最後のマスターである浮世から聖杯を賜った六騎のサーヴァントが一堂に会していた。
 居合わせる錚々たる英雄英傑は、ニコラ・テスラ、オジマンディアス、マーリン、超人オリオン、李書文、そして蘆屋道満の六騎。
 蘆屋道満の発言を反芻した超人オリオンが怪訝な面持ちでその丸太の如き筋肉の塊である両腕を組んで鼻息を落とす。
「……誰が?」
「ええ、それは勿論、この場に居合わせたる皆々様でありますれば」蘆屋道満が人を喰いそうな笑顔でコックリ頷く。「此度はマイマスターの意向で、聖杯を捧げられし男性サーヴァントの皆々様に、アイドルユニットを組んで頂きたくお呼び立てした次第にて……」
「浮世がマトモじゃない事は分かってたが、まさかそこまで狂っていたとは……」超人オリオンが呆れ果てた様子で溜め息を落とした。「あいつバーサーカーか何かなんじゃねえか?」
「まぁまぁオリオン君、ここは浮世ちゃんの意図を組もうじゃないか」マーリンがすかした表情で手を広げた。「彼女の事だ、私により甘い汁を啜らせてくれるに違いないよ」
「どこからその自信が来るんだよお前さん……」げんなりしてる超人オリオン。「普段あんだけボロカスに扱われてもその言い草……よっぽどドエムなんだな……」
「ハハハッ、オリオン殿よ、そう嘲弄するものでもなかろう」ニコラ・テスラが指を軽やかに慣らして座っていたチェアを軋ませて姿勢を整えた。「我ら五人揃えばアイドル活動など軽く熟せるとも! それだけの資質が有る……私はそう確信しているとも!」
「カカッ、老境の身ゆえ、見守り教え導くだけが務めだと思っておったが、まさか老兵にまで活躍の場を設けるとは……」李書文が不敵に笑っている。「我が主にはほとほと頭が下がる想いよ」
「フン、余はそもそもが光輝たる存在。偶像としての資質など固より完璧に違いなかろう。貴様らは存分に余を引き立て、十全に道化として振る舞うが良い」オジマンディアスが威圧感のこもった視線を飛ばす。「それが前提、それが絶対だ。罷り通らぬのであれば余は疾く帰るぞ!」
「何だかんだお前らこういう時に不思議なほどノリが良いんだよなぁ……」やれやれと言った態で苦笑を滲ませる超人オリオン。「わぁーった、わぁーったよ、それで俺達ゃ何したら良いんだよ道満? もう始まる前から破綻してるようなもんだぜこのアイドルユニット」
「ンン……然り」「然りって言うなよ」「されど! されど、ここで諦めるのは二流……いえ、三流。拙僧、一流のプロデューサーを志しておりますれば……」「いつ陰陽師やめたの??」蘆屋道満がブツブツ言ってるのに逐一ツッコミの声を挟む超人オリオンである。「てか何? 道満、お前がプロデューサーなの? 嘘だろ? もう始まる前から破綻決定してるも同然じゃん」「ンン……拙僧、多才なれば」「陰陽師ってアイドルのプロデュースもするもんなの??」「オリオン殿、合いの手が早過ぎて拙僧の発言が追従できませぬゆえ、どうかお手柔らかに……」「えぇ……普通ツッコミ入れるだろ今の……」
 超人オリオンが不服そうに道満を観ていると、オジマンディアスが「そこなる法師よ、余をプロデュースするのだ、失敗は許されないと知れ。取るなら頂点……アイドル王を目指してみせよ!」と、透かさず訳の分からない事をぶっこんできた。
「アイドル王って何??」超人オリオンが目を白黒させている。「俺の知らない間に現代ではそんなトンチキな王が生まれたの??」
「何だってちょっと待っておくれよ偉大なるファラオよ」オジマンディアスの前にマーリンがしゃしゃり出てきた。「この世界有数のキングメイカーである私を差し置いて、そこの道満にアイドル王を目指せだって? 冗談はよしこさんさ! 私がアイドル王を作成するよ! そう、アイドル作成EXスキルでね!」
「おいおい、アイドルユニットの中にもう一人プロデューサーが混ざってんぞ」思わずツッコミの声を挟む超人オリオン。「てか勝手にトンチキスキルを作成するんじゃねえ!」
「オジマンディアス王の光輝さを際立たせるためにはやはり! 交流照明!! これしかあるまい! 更に畳みかけるように交流音響からの、交流配信!! これで我らがアイドルユニットは世界最高の交流により世界を席巻する……」ニコラ・テスラが目元を手で覆って涙を流し始めた。「なんと……なんと素晴らしき交流世界なのか……っ!!」
「こっちはアイドルユニットの一人なのに裏方みてぇな事をし始めやがるし。大丈夫?? もうユニットが組める段階すら破綻してない??」超人オリオンが逃げたそうにしている。「なぁ李先生よ、俺達だけ帰っちゃダメかね?」
「あいどるとやらは、詩を諳んじながらも舞踏を並列で行うのだろう? 武芸に通ずると思わんか?」李書文が不敵に超人オリオンを見上げる。「掛け声と共に技を打つ。であればあいどるとやらは武芸者も同然。儂の与り知らぬ分野の技量と知識を得るまたと無い好機ではないか。皆の血が滾るのも致し方ない事よ」
「絶ッッ対違うんだよなぁ……思いっきり明後日の方向に勘違いしてるぜ李先生よ……」
 超人オリオンが逃げ場を無くしてどうしたものかと小首を傾げていると、道満が「では皆々様、お話しが纏まったようですし、まずはデビュー曲のお披露目と参りましょうか……」と悪辣な笑みを覗かせて式神風の書類を手渡していく。
「いや何ッッにも纏まってねえんだけどな??」取り敢えずツッコミを入れていく超人オリオン。「んでこの何も纏まってねえ状態で何を歌うんだよ……正気どこに捨ててきちまったんだよ……」
 式神風の書類には楽曲のタイトルと歌詞が綴られていた。
 タイトル「おのれ晴明!」
「おのれおのれおのれ晴明!
 晴明、おのれ許さぬ絶対に許さぬぞ晴明!
 晴明! 聞いておるのか晴明、晴明!
 聞こえてないのか晴明! 晴明?
 もしかして本当に聞こえてない? え?
 本当に? 晴明、晴明、聞こえてないの?
 晴明。あ、晴明! 今返事をしたな晴明!
 晴明!               
 晴明!                 」

「……何これ?」
 超人オリオンが色の抜けた顔で尋ねると、道満はにこりと微笑み、答えた。
「皆々様のデビュー曲でありますれば」

 ……その後、道満がひしゃげた姿で発見されたとか何とか。

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