2022年3月19日土曜日

【スマブラ二次小説】指名手配犯ウルフ

■タイトル
指名手配犯ウルフ

■あらすじ
メタナイトを蹴り飛ばしただけなのに…

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】で多重投稿されております。
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(この物語は収録されておりませぬ、悪しからずご了承ください。)

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【指名手配犯ウルフ】は追記からどうぞ。
【指名手配犯ウルフ】


「ウルフーっ! 大人しく投降しろーっ!」
「うるせェーッ!」

 場所はどこかの星にある市街地の一角。雑居ビルの中に立てこもっているウルフは、息遣いも荒々しく、ポリスメンに扮したマルスに激昂を飛ばす。
 何がどうしてこうなってしまったのか。遡る事十五分前。たまたま浮いていたメタナイトを誤って蹴り飛ばした結果、ウルフは指名手配され、訳も分からずしこたま追い駆け回されてここに逃げ込んで来たのだった。
「何だってんだクソッ! 確かに俺ァヴィランだがよ……メタナイトをちょぉーっと蹴り飛ばしただけで何だってここまで執拗に追い駆け回されなきゃならねえ……奴ら頭がイカレてんのか……?」
 不思議そうにウルフは困惑しているが、そもそもメタナイトを蹴り飛ばす事に何の罪悪感も懐いていない時点で清々しいまでの案件なのだった。
「ウルフーっ! 今ならまだ間に合うぞーっ!」
「何が間に合うんだ何が!」
 マルスの拡声器を使った声が喧しい事この上なく、ウルフの理性を悉くちぎっては投げ、ちぎっては投げしていく。
 冷静になろう……と思う間も無く投降を求めてこられては、冷静になりたくても咄嗟に沸点が超えてしまうのである。
「クソッ、このままじゃじり貧だ……奴ら何れ突っ込んでくるだろ……そうなりゃ幾ら俺でもかすり傷ぐらいは……いや擦り傷ぐらい……いやいや、ちょっとつまずくぐらいの傷を負っちまうかも知れねえ……!」
 とんでもなく自分が強いと言う理想は頑なに譲らないウルフだった。
 そもそもそんなに強ければ逃げ回る必要が無いのだが、そこには気づかないウルフでもある。
「ウルフーっ! 今お前の旦那を連れてきたから話を聞いてくれーっ!」
「旦那??」
 そんなもんいねぇーぞ? と思いながら耳をそばだてると、拡声器が再びノイズを走らせた。
「ウルフーっ! 俺だーっ! アイクだーっ! 早くお家に帰って夕飯にしよう!」
 ウルフが弾け飛んだ。
「ウルフーっ! 聞こえるかーっ! アイクだーっ! 今日の晩御飯はお前の好きな狼肉のステーキだぞーっ!」
「ウオオオオオオオオオオッッ!」雄叫びを上げるウルフ。「俺をォォォォッッ、コケにするなよクソボケがァァァァッッ!」
 最早感情がマトモに働かず、ウルフは悶え苦しむだけのマシーンと化してしまった。
 そんなウルフに気づかずアイクはなおもウルフの神経をゴリゴリに逆撫でしまくる。
「ウルフーっ! お前がメタナイトを蹴り飛ばした罪は俺も一緒に償うからーっ! あ、やっぱり半分だけ償うからーっ! いややっぱり三割だけ償うからーっ!」
「やめろォォォォッッ! そそそそそれ以上俺をコケにしたらァァァァッッ! 理性をッッ、理性を保てんッッ!」
 むず痒い、神経が爆発する、思考が惨たらしく殺されてる、全身が破裂寸前、いっそ殺してくれ、人間を理解できない、俺イズ何? と、ウルフはもう人智を超える怒りを浴びて完全に正気が蒸発していた。
 ウルフは最早我を忘れて飛び出していき、拡声器を持つアイクに悪質なタックルを決めて雄叫びを上げた。
「アイクゥゥゥゥッッ! テメエを殺す! 今! ここで!」
「はい、逮捕ね」
 マルスに手錠を掛けられ、ウルフは目を点にして彼を見上げた。
「…………殺すぞ?」
「スターフォックスの皆さーん、連行お願いしまーす」無視してマルスが手を挙げる。
「ったくウルフ、お前って奴はいつもこんな役回りだな」フォックスが笑いを堪え切れない様子で腹を抱えてやってきた。「マルス有り難う、こいつこれでもヴィランだから、ここからは俺達に任せてくれ」
「うん、メタナイトが蹴鞠のように吹っ飛んで行ったから僕はこれから捜索に出るから、ウルフはしっかり叱っておいてね」やれやれと言った風情のマルス。「あとアイク。あんまりふざけた事を言い過ぎるとウルフ壊れちゃうから程々にね」
「ん? ウルフはこんな事じゃ壊れないさ」
 フッと笑って応じるアイクだったが、既にウルフの目は点のままで、思考が出来ていない様子がありありと見て取れた。
「……いや、壊れてる気がする既に」
「ああ、壊れてるなこれは」
「ウルフ~、帰っておいで~」
 同情の表情のマルス、納得の表情のアイク、幼子をあやす態度のフォックスなのだった。
 その後、我に返ったウルフがそこらじゅうを血の海に変えるのは、また別の話。

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