2022年3月30日水曜日

【ネトゲ百合】第21話 ほろあまの日〈3〉【オリジナル小説】

■あらすじ
ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。

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【第21話 ほろあまの日〈3〉】は追記からどうぞ。

ほろあまの日〈3〉


◇◆◇◆◇>>ジン<<◇◆◇◆◇

 体がポカポカと温かい。思考がふわふわしていて、何だかとても幸せな気分だった。
 座長さんと対面に座って話し合っていた。互いに笑い合っていて、私は嬉しくて頬が綻んで、ひくくっ、と頬が痙攣する感覚で突如として覚醒した。
 深……と静まり返っている。自分がベッドの中にいる事を自覚するまでに幾許かの時間を要した。
「あれ……私……」
 自分が、自分の部屋にいると言う認識が追い着くまでに、これまた長い時間を要した。
 自室で眠っていて、今起きた。それ自体はいつもの出来事で、何の変哲も無い日常のワンシーンでしかない。
 けれど、その事実が無意識におかしいと言う事に気づいているのだ。
 意識を失う前……ベッドに入って眠った、と言う記憶が蘇らない。幸せな夢を観ていた事は憶えているが、その前は、一体何をしていたんだっけ……
 何も思い出せなくて、ひとまずスマフォーンを探す。手がかりを求めていつもスマフォーンを置いている場所に手を伸ばすが、空を切るだけでスマフォーンの感触は帰って来なかった。
 そこでベッドから下りて、更に違和感に襲われる。パジャマじゃない。外着のまま寝ていたようだ。何で……?
 ――――唐突に欠けていたパズルのピースが噛み合う感覚に襲われ、全身が火達磨になったかのような恥ずかしさに満たされた。
 そうだ。喫茶店に行ったんだ。そこで……もぺ子さんと……
 記憶がするりするりと回想を始める。呼び出されるがままに向かった先で、私はもぺ子さんと再会して、そして…………座長さんの話で盛り上がって、座長さんの好きなチョコレートだと紹介されたチョコレートを食べて、それで…………
「うわ、うわぁ……待って……あの後……座長さん、来てた……よね……? それで……待って……一緒にクルマに乗った気がする……待って、待って待って! じゃあ!? え!? お、お持ち帰り……され……??」
 全身がカイロを超える速度で温まり、そこかしこから火が噴き出そうな羞恥心で思考が壊れていく。
 何か絶対に良からぬ事を言った気がする。ヤバい。それで、あの後どうなったんだ? ここ、もしかして私の部屋じゃ……ない? いや、私の部屋だ。え? 何で座長さん、私の家……?
 訳が分からなくて頭の中はグチャグチャだった。何がどうして、私はここにいるんだ? 困り果てた私は結局スマフォーンを探す事になり、ポーチの中にしまわれたままになっていたそれを探し当てると、まずはFPにログインした。
 いつもの画面を観て、座長さんがいるか確認する。
 ――――――いた。

ジン「おっさん!! ごめん、俺!」
座長「おー、大丈夫?」

 いつもの座長さんだった。そして更に気づく。今の時間、深夜三時を回ってる事に。
 普段なら座長さんでも眠っているその時間に、何故か彼は……いや、彼女は定位置に突っ立ったまま佇んでいた。

ジン「大丈夫って言うか、俺あの、何かやらかさなかった?」
座長「あー、それなんだけでね」
座長「ほんとごめん」

 さァーッ、と。血の気が引く音が聞こえた気がした。
 訳も分からず涙が込み上げてくる。ダメだ。絶対に何かやらかしたんだ……そう思って指が動かなくなってしまった。
 座長さんに嫌われた。その事実だけが全身を蝕んでいく。
 もうFPを続けていける自信が無くなってしまった。このままログアウトして、アンインストールして、何も考えずにベッドの中でうずくまりたい……
 勝手に泣き顔になっている自分を自覚して、せめて謝罪の言葉だけでも打ち込もうと、震える指でチャットを打とうとしたら、座長さんの台詞が続いた。

座長「ジン君のお母さんに連絡したぬ、ほんとごめんね」

「……………………ん?」
 泣き顔が変な感じに崩れる。なにて?
 咄嗟に打ち込もうとした謝罪のワードを慌てて削除して、改めて疑問を打ち込む。

ジン「お母さん? え? なに? どういう事??」
座長「あれ? お母さんに効いてない?」
座長「向かえにきてもらったんだ、昆布にまで」
ジン「昆布に???」
座長「コンビニ!」

 ……何と無く、状況が見えてきた。

ジン「もしかして、俺のスマホから…?」
座長「ほんとごめん!」
座長「電話地用からお母さんぽい人に連絡して💢えにきてもらいました!」
ジン「あ、ああー…」

 事態が呑み込めると同時に、とんでもない恥ずかしさが全身を包み込んだ。
 チョコにアルコールが入っていたのは分かっていた。座長さんが好きなチョコだと言ってたから、どんなものかと食べたのがまずかった。
 チョコにちょぉーっと入っているだけのアルコールであれだけべろべろに酔っ払って、挙句座長さんにお母さんを呼ばれてしまい……どれだけの痴態を晒せば気が済むんだって感じ……

ジン「えと、ほんとごめん」
座長「いあいあ、こつちこそごめんだゆ」
ジン「他に何か変な事しなかった俺?」
座長「大乗日だつたよ」
ジン「なにて??」
座長「だいじょぶ!」

 座長さんはそれ以上何も答えてはくれず、早く寝ろ早く寝ろと連呼し始めてしまい、私はそれでログアウトする事になった。
 はぁー……ほんとやらかしてしまった。座長さんに呆れさせてしまったのではないかとモヤモヤが高まる一方だった。
 汚名返上するには……やっぱり、うん。決戦の日に、全てを賭けるしかない……!
 そう思って慌てて冷たくなったお風呂に入り、さささっとお布団に潜り込んで仮眠を取る事にした。
 全然寝付けなかったし、最悪の想定ばかりが頭をちらついて気分はどんどん下降していったけれど、仕方ない。
 結果的に、もうこれで会ってくれなくなったとしても、ちゃんと自分の想いは伝えてから別れたい。
 そう強く念じていたら、私は朝陽が昇るまでの短い時間、不思議な夢に遭遇した。
 座長さんの形をしたチョコに殴られる夢だった。

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    やらかしてしまったあとの気まずさ…プライスレス!!
    何をやらかしたかはおそらく、いや絶対教えてもらえないだろうけどw
    そんなジンくんを心配しておそらく、いや絶対眠れぬ夜を過ごしたはずの座長さん…「役得、役得ゥ~」(MHRのキャラボイスにあったなぁw)だけではすまされぬ状況かなぁw
    座長さんもきっとジンくんの形をしたチョコに殴られてるはず!

    ほぼ一月ぶり、今夜はいい夢が見られそうです!ありがとうございました!!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想コメント有り難う御座いまする~!!

      それwwwwぷらいすれすです!wwwwww(笑)
      何をやらかしたのか、それは明かされるのか明かされないのか…!www座長さん的には言いたくないでしょうね…!www
      「役得、役得ゥ~」なんて言える状況なの…か!?!?!?wwww
      うんうん!www座長さんも殴られてたらいいな…!www

      一ヶ月ちょこっと過ぎちゃいました! 大変お待たせ致しました~!! いい夢が見られそうで良かったでする…! こちらこそ有り難う御座いました~!!(´▽`*)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいでする~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

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