2022年9月22日木曜日

【FGO百合SS】13話「エレモーに現代デートさせたい奴#3」【エレモー】

■あらすじ
エレシュキガルとモードレッドの学パロその三(その二のつづき)。

■キーワード
FGO Fate/Grand Order 学パロ エレシュキガル モードレッド 百合

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】の二ヶ所で多重投稿されております。

Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/series/1018872
■第13話

13話「貴女と友達になりたくて※学パロ番外編#2」


「――モードレッドって、野蛮よね」

 放課後の校舎。夕闇が廊下に影を落とし、陰気な声が揺らめいていた。
 屋上に上がる階段の踊り場で、授業をサボタージュしたまま寝こけていたモードレッドは、微睡みの世界でその声を転がす。
 声の主は知らない。否、思い出せないだけで、恐らくは同級生ないしクラスメイトだろう。関心の向かない相手は記憶野に残さないモードレッドは、ただ気に喰わない話題だな、と思いながら欠伸を浮かべる。
「分かる~! いっつも暴力振るってるよねあいつ。この間もさ、風紀委員に食って掛かっててさ~」
 追従する女生徒の声に、(そりゃ何もしてねーのに因縁掛けられたら誰だってキレるだろ)と心の中で合いの手を入れながら、面倒臭さに委ねて寝返りを打った。
 モードレッドの評価は、今の話からも窺い知れるように、頗る悪い。何かにつけて暴力沙汰にしてしまうために、担任教諭、風紀委員、ひいては生徒指導の教諭にも目を光らせられている始末だ。
 モードレッド自身、悪い事をしている自覚は有るのだが、悪事自体は働きたくて働いている訳ではなく、本人曰く不可抗力であって、率先して悪事に手を染めているつもりは無かったりする。
 とは言え、それは主観での主張でしかなく、周囲から危険人物であると言う認識を拭うには至らなかった。
 なので、こういう風にモードレッドの与り知らぬ場所で陰口が叩かれている事も、日常茶飯事と言えばその通りなのである。
 一々突っかかるのも面倒だし、何より野蛮だ危険だと近づいてこないのであればそれに越した事は無い。暴力沙汰とて好きで起こしている訳ではないのだ、無駄なエネルギーを浪費するぐらいなら看過して寝直した方がよほど有意義と言うもの。
 そう思って無視を決め込もうとした、その時だった。
「あら、それは今朝の件かしら? あれは風紀委員の勘違いで、モードレッドは何も悪くなかったと聞いているけれど?」
 凛とした声。モードレッドはその声の主を知っていたし、憶えてもいた。けれど、普段耳にするようなオドオドとした自信の無さも、何かを伝えようとしているにも拘らず焦って言葉にならないような辿々しさも無かったため、一瞬別人ではないかと勘繰ってしまう声質だった。
 ゆっくりと身を起こし、階下に視線を落とすと、――間違えていなかった事に、更に驚きが募る。
 気の弱そうな普段の様子とは異なる、エレシュキガルが女生徒二人を相手に仁王立ちしていた。
「な、何よあんた」「モードレッドの肩を持つとかヤバい奴?」
「謂れの無い中傷を吐いているのを見過ごせなかっただけなのだわ。それとも、貴女達の間ではそれが日常なのかしら? 人の陰口で笑いを取るなんて、風紀委員は何て思うかしらね?」
「キモ。行こっ」「何なのアイツ……」
 女生徒が気味悪がって走り去って行くのを見送り、エレシュキガルは「やれやれなのだわ。これからモードレッドの良い所を教えてあげようと思ったのに」と肩で溜め息を吐き出すと、何事も無かったかのように歩き去ってしまった。
「…………」
 モードレッドは階上で固まっていたが、やがてゆっくりと座り直す。
 口元を手で隠さないといけないぐらい、口唇が笑みの形に歪んでいる事を自覚していた。
「……くそっ、何つーとこ見ちまったんだよ……」
 恥ずかしいとも違うし、嬉しいとも違う気がする、ムズムズする感情が全身を駆け巡り、モードレッドは暫くそこを動けなかった。
 自己評価が低い事は無く、寧ろ自尊心で一杯のモードレッドだったが、それがこうも己の与り知らぬところで誉めそやされていたと知ると……言語化できない想いが胸の底から沸騰するように湧き上がってくるのを止められなかった。
 今度エレシュキガルと会う時にどんな顔をして会えば良いのか分からないぐらいに、モードレッドは悶える事になるのだった。

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