2022年10月14日金曜日

【スマブラ二次小説】マルス、キレた!

■タイトル
マルス、キレた!

■あらすじ
ふしゅるるる……

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【pixiv】で多重投稿されております。
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(この物語は収録されておりませぬ、悪しからずご了承ください。)

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【マルス、キレた!】は追記からどうぞ。
【マルス、キレた!】


「聞いてくれ、ウルフ、メタナイト! マルスが遂に……キレた」

 アイクが真っ青な顔をしてウルフとメタナイトに泣きついてきた。それはもう大変なレヴェルで顔がぐっしょりしているアイクに、ウルフとメタナイトは顔を見合わせて、合唱した。
「そりゃまぁ、キレるだろうよ。寧ろ今までキレなかった事が世界七不思議まで有ったからな……成仏しろよ、アイク」南無南無するウルフ。
「私達では如何様にもならん……来世でまた会おう、アイク……!」南無南無するメタナイト。
「待ってくれ、俺がもし狩り殺された時、その牙はお前らにも剥くぞ。そりゃもうヤバいくらい剥くぞ。だから助けてくれ」「そんなだからキレられんだよ」「そういう所だぞアイク」「ぐぬぬ」
 ウルフとメタナイトに冷静に突っ込まれてぐうの音も出ないアイクである。
 そこにずしん……ずしん……と大地が鳴動して何かが近寄って来る気配がした。
「不味い! もうマルスが来る! 頼む助けてくれ! いや無理ならお前らを犠牲にして俺は逃げる」「どこまでプライドを投げ捨てたらそうなるんだよ……」アイクが全力で逃げようとするのを、ウルフは首根っこを捕まえて呆れ返っていた。
「は、離せ! 俺は死にたくない! マルスに怒られて死にたくない!」
 じたばたするアイクに掴んだまま呆れ果てた溜め息を吐き出すウルフ。
「流石のマルスもキレたぐらいで殺しゃしねーだろ。単にボッコボコに怒られるだけだろ? 普段散々怒られる事してたんだから、偶にはお灸を据えて貰いな」
「ウ、ウルフ。私達も逃げた方が良いかも知れん……」メタナイトの珍しく震えた声が聞こえてきた。
「あ? メタナイト、お前もブルっちまったのか? いつもマルスを怒らせてた罰だよ罰。偶にはじっくり怒られ……」
 ウルフが振り返った先には、目を爛々と赤く輝かせたマルスが、血塗られた斧を担ぎ、口から白く濁った呼気を吐き散らしながら、「ふしゅるるる……ふしゅるるる……」と声を漏らしている姿が飛び込んで来た。
 ウルフは一瞬で思考を纏め、何も言わずにその場から離脱した。
「おいおいおいおいガチでやべーじゃねーか完全に決めてる奴だぞアレは!?」ウルフが走りながら悲鳴を漏らす。「どうしてあんなになるまで放っておいたんだテメエは!?」
「そんなの決まってるだろ! どれだけ怒らせたらマルスってキレるんだろう……って考えたら実行に移さずにいられるか!? 否! 実行しない奴はいない!」キリリッとアイクは全力で足を回転させながら決め顔を決めた。
「流石アイクだ……マルスにストレステストを敢行した訳だな? そしてマルスは限界を超越……! アレが激昂マルスモードと言う訳か……!」キリリッと決めているのに冷や汗が尋常ではないメタナイト。「済まないが私は空に逃げさせて貰う。あまりにも死の匂いが強過ぎるのでな!」
 ふぁさーっとあっと言う間に天高く飛翔していくメタナイトに、「テメエ汚ぇぞ!」「メタナイト! 俺も一緒に連れてってくれ!」ウルフとアイクが同時に大声を張り上げたが、次の瞬間、ドンッ、と言う大地が爆発したかのような震動が駆け抜け、眼前に隕石と思しき何かが落ちてきた。
 濛々と砂埃が舞い、辺り一帯視界が失われたのも束の間、晴れた視野に映ったのは、メタナイトを銜えて瞳を血走らせて且つ輝かせているマルスの姿だった。
「ふしゅるるる……ころす……」
「ア、アイク……た、たすけ……」カタカタしているメタナイトである。
「済まんメタナイト! お前の犠牲は忘れない!」メタナイトの台詞も聞かずに全力で反対方向に走り去るアイク。
「アイクーッ! どんだけ人道を踏み躙り続けるつもりだテメエーッ!!」ウルフの絶叫が大気を走る。「くっ、マルス! どうしちまったんだ!? 俺が分かるか!? 取り敢えずメタナイトを解放しろ! さもなくば撃つ!」
 ブラスターを構え、牽制するようにトリガーに指を掛けるも、マルスは「ふしゅるるる……ころす」とだけ返し、次の瞬間、ブラスターは粉々になった。
「…………は?」
 マルスの斧が刹那に二百四十回振り回され、その圧だけでブラスターが粉々になったのだが、ウルフもメタナイトも目で追えていなかった。
「ふしゅるるる……」
 ウルフは悟った。あ、これもうダメな奴だ、と。

 ◇◆◇◆◇

「ど、どうにか逃げ果せたか」
 森林地帯に逃げ込み、ぜぃぜぃと肩で息をするアイク。視界にはマルスの姿は無く、大地も鳴動していない。
「ふしゅるるる……」
 と思ったが、すぐ背後で呼吸の音が聞こえ、アイクの口から心臓が飛び出る。
 振り返りながら距離を取ると、マルスが全身真っ赤になってアイクを睨み据えていた。
「ま……待てマルス! 頼む、話を聞いてくれ……!」
「ふしゅるるる……」
「まずは話し合おう……良いか……?」
 マルスは血走った眼を輝かせたまま、動かない。
 それを見たアイクは、そっと空の容器を差し出す。
「こ……これが望みの品だ、そうだな……? 返すから……返すぞ……?」
 そっと空の容器を地面に置いた瞬間、アイクは粉々になった。
 マルスの斧が刹那に二億三千万回振り回され、その圧でアイクは塵も残さず大気に散ったのだった。
「アアアーッ! 僕のプリンが……今日の乱闘が終わったら楽しみにしてた、僕のプリンがーッ!」
 アアーッ、と泣き喚くマルスの元に、ボロボロになったウルフとメタナイトが、買って来たばかりのプリンを差し出し、「食べ物の恨みは、ヤバいよな……」「うむ……今回ばかりはアイクが悪いな……」と足が小鹿のように震えながら呟いた。
 その後アイクは大乱闘の度に「俺がマルスのプリンを食べた大罪人です」の看板をぶら下げながら出場する事になるのは、また別の話……

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