2018年4月24日火曜日

【神否荘の困った悪党たち】第6話 神否荘の面接【オリジナル小説】

■あらすじ
非現実系ほのぼのニートフルコメディ物語。宇宙人、悪魔、殺し屋、マッドサイエンティスト、異能力者、式神、オートマタと暮らす、ニートの日常。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】、【Fantia】で多重投稿されております。



【第6話 神否荘の面接】は追記からどうぞ。
第6話 神否荘の面接


「亞贄さーん、皆さんが呼んでますよ~?」

いつの間にか部屋の扉が開いてて、式子さんが俺の目の前に降り立ち、小首を傾げて手を俺の鼻に当ててる姿を視認した。俺は寝転がったままぼんやりその姿を見てた。
「あっ、ごめん、寝てたみたいだ」のそのそと起き上がる。
「お疲れなのですか?」ふわりと舞い上がって俺の眼前を漂う式子さん。「体調が優れないのでしたら、ベッドで横になった方が良いのではないでしょうか……?」心配そうに俺の額に手を当ててるけど、紙の体で熱って測れるんだろうか。
「俺普段からこんな感じなんだよ」ふわわ、と欠伸をする。「ニートだから年中家でゴロゴロしてるの」
「王者の風格って奴ですね!」
「違うと思うよ」
「流石日色さんのお孫さんです……! 日頃の態度から既に風格を放ってるんですね!」
「おっ、ここにも話を聞かない奴がいるな」
「あっ、そうでした。皆さんが、そうめん出来たから中庭に来いよー、と仰っていましたよ!」
「あー、そう言えばそんな話してたよ。有り難う」のそのそと部屋を出て中庭に出る。
中庭の中央にはカフェテラスのように、ちょっと大きめの丸いテーブルが設置され、真ん中にはカラフルなパラソルが刺さっていた。そこでシンさんと砂月ちゃん、更にマナさんとニャッツさんがテーブルを囲うように座り、俺の到着を待っているようだった。
マナさんは相変わらずの白衣姿で、ニャッツさんはテーブルの下に置かれた皿の中身をぺろぺろと舐めている。
「済みません、寝てました」てへへ、と頭を掻きながら空いている席に着く。
「おはよう、にー君」眠そうな表情で呟くシンさん。「それじゃあにー君も来た事だし、面接始めるか」
「面接?」何の話?
「これからにー君に面接するって話だったろ?」不思議そうに見つめるシンさん。
「初耳ですね」
「じゃあまずは自分から!」はい! と元気よく挙手する砂月ちゃん。「先輩はどこの高校を受験するつもりなんですか!?」
「高校に受験するつもりは無いね」
「じゃあ病二高とかどうですか!」
「聞いてないね?」
「もし先輩が病二高に受かってたら、一緒に通学できてたんですよ自分達! ときめきません!?」興奮した様子で身を乗り出す砂月ちゃん。
「俺の留年か浪人は確定してるんだな?」
「先輩なら余裕で中退できますよ!」グッと親指を立てる砂月ちゃん。
「卒業できないのかー」
「じゃあ次はあたしだな」シンさんが瞳を覗いてくる。「にー君はSか? Mか?」
「どちらでもないですけど」
「どちらかと言えば?」
「ぇえ……Mですかね」
「あたしはSもMもイケるぞ」
「俺に訊く必要有ったのかなぁ」
「そうか、じゃあにー君にはキツく当たる事にするか」腕を組んで頷き始めるシンさん。
「えっ、じゃあ俺がSって言ってたらどうなってたんですか?」
「あたしの事を豚呼ばわりさせてたな」
「あぶねー、危うく大惨事になる所だった」
「じゃあこれからにー君の事は豚って呼ぶから」
「あっ、どっちにしても大惨事の流れだった」
「おい豚。ゆっくり手を挙げて膝を突け。妙な真似をしたら殺すぞ」険しい表情で睨み据えられた。
「泣きそう」椅子から立ち上がり、ゆっくり手を挙げて膝を突くよ。
「そうだ、いいぞ。そのまま手を頭に付けて、ゆっくりうつ伏せになれ」
「泣きそう」手を頭に付けてうつ伏せになるよ。
「ハハッ、気持ち良いか?」
「泣きそうです」
「泣くほど気持ち良いのか? 豚の分際で」
「どうしよう、心折れそう」
「おい殺し屋! 師匠にニャんて事させてるニャ! やめて差し上げろニャ!」ニャッツさんが俺の頭をタシタシ叩いてくる。
「泣くほど喜んでるんじゃないのか?」不思議そうなシンさんの声。
「ニャ? そうニャのか、それは済まニャかったニャ」タシーンッ、と俺の頭を前脚で踏みつけるニャッツさん。
「Sって言っておけば良かったって、今死ぬほど後悔してます」うつ伏せになったまま声を漏らす。
「あらあら、亞贄君、どうかお立ちになって?」スッと手を差し伸べてくるマナさん。「臣さん、おふざけが過ぎますよ?」
「あー、ごめん。にー君ノリが良いからつい」てへへ、と頭を掻くシンさん。「ごめんね、にー君?」
「元とは言え殺し屋に豚って言われると迫力有りますよね」起き上がって椅子に座り直す。「心折れる寸前でした」
「そっかー、もう少しでブレイクしてたのかー、そっかー」ニコニコと笑いかけるシンさん。
「この人こそマトモな人だと思ってたのに」心底から裏切られた気持ちで一杯だ。
「臣さんは一番マトモじゃないですよねぇ?」砂月ちゃんが頬杖を突いてシンさんを見やる。「一番危険って言うか」
「殺し屋は発想が尋常じゃニャいからニャ! 神否荘で一番の危険人物ニャ!」声を上げながらも、皿の中身をぺろぺろする仕草をやめないニャッツさん。
「そんな褒めるなよ~」てへへ、と微笑むシンさん。
「今の褒められてるって認識なんだ」こえー。
「まー、アレだよ。あたしは殺し屋やってる時、如何に相手を絶望の淵に叩き落としてから殺すかって考えて依頼受けてたからさ、辞めた今でもそれが名残みたいに残っててさー」朗らかな笑顔を浮かべるシンさん。「ほら、信じていた味方に裏切られた時の、あの絶望と失意と困惑に染まったあの顔がさ、堪らなくそそるんだよ……想像だけで濡れてくるほどだね」
「確かにこの人、未だかつてない危険人物だ」ガタガタっと椅子を動かして距離を取るよ。
「殺し屋辞めてからそんな事してないから安心しなよ」ヘロヘロと手を振るシンさん。「日色さんと約束したからね、もう二度と殺人はするなって」
「えっ、じゃあ裏切りは?」
「裏切りはするでしょ?」
「あっ、もう信用できない」
「大丈夫大丈夫、ゆっくり信用させてくつもりだから」ねっとりとした笑顔を浮かべるシンさん。「信用は積み重ねるモノだよ、にー君。裏切りとは、その積み木を崩す事。全てを台無しにする、最高のエンターテインメントだよ、うへへ」
「信用されない前提なのに信用を得るために頑張るって事は、言い方変えればしゅごい努力家ですよね」
俺の素直な感想に皆、ぽかーんとしてた。
「……その発想は無かったですね……」式子さんが口元に手を添えて俯いている。
「臣さんが努力家……確かにそう言われれば、確かに……?」納得いかないのか、難しい表情の砂月ちゃん。
「師匠の着眼点は変わってるニャー」顔も上げずに皿の中身をぺろぺろし続けるニャッツさん。
「うふふ、臣さん、言われちゃったわね?」おかしそうに、口元を隠して上品に笑うマナさん。
「……気に入った」俺を指差してくるシンさん。「にー君は良い暇潰しの玩具になってくれると、今確信した」
「相手じゃないんだ」こえー。
「お待たせ致しました、そうめんになります」
そこにメイちゃんがキッチンの方から出てきて、テーブルの上に、大量のそうめんが載せられた大皿と、人数分のツユの入った小皿を置いていく。
面接は終わり、昼ご飯の時間になった。

【後書】
裏切りって最高だよな定期。
と言う訳で臣さんの回でした。裏切る前提で信用させようとするのって骨が折れますよね。その分裏切った瞬間の(以下略)。
一番悪党らしい悪党だと思います、臣さん。日色の手によって更生した訳ではないと言う辺りが色濃く出てる気もしますが!
次回でやっとお昼ご飯に有りつけます。お楽しみに!

0 件のコメント:

コメントを投稿

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!