2019年9月22日日曜日

【紅蓮の灯、隻腕の盾使い】001.盾と斬〈1〉【モンハン二次小説】

■あらすじ
隻腕の盾使いリスタは、狩人都市アルテミスにて、或る情報を求めにやってきた。週刊少年誌テイストのモンハン二次小説です。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【Pixiv】で多重投稿されております。

Twitter■https://twitter.com/hisakakousuke
Pixiv■https://www.pixiv.net/novel/series/1182363




【001.盾と斬〈1〉】は追記からどうぞ。

001.盾と斬〈1〉


果てしなく続く空の下。緑がどこまでも広がる山林の直中。鳥類の鳴き声が遠く木霊する木陰。辺りに青臭い緑葉の臭気が漂う、天井に木の葉を頂く湖畔に、一頭の巨大なモンスターが、のしりのしりと、筋骨逞しい両足で腐葉土を均しながら現れた。
健脚な後ろ足だけで屹立する姿を見て、一目で獣竜種だと判別できるのは、この世界で彼らを“狩る”者……ハンターぐらいだろう。
モンスターの尻尾に当たる部分はまるでカミソリ……否、東洋に伝わる“刀”に近しく、鋭利な刃物を連想させる程に研ぎ澄まされている。
咬み合わせが悪そうな口元は時折火の粉が漏れ、彼の体内に炎熱機関……モンスターであれば珍しくない、炎を捻出する機関が備わっている事を窺わせる。
全体的に緑地帯にそぐわない体色である綺麗な青色の鱗と甲殻に覆われたそのモンスターの名は…………
「――いたいた、あれかァー……“斬竜”――――“ディノバルド”って奴ァ」
「……凄い、本当に見つかった……」
少年と少女の声は、湖畔に届かない程に小さかった。
水辺に頭から突っ込んで水浴び、そして飲水している獣竜種――ディノバルドを眺められる場所にいる二人の幼い姿は、紛れも無くハンターだった。
少年は燃えるような紅い髪に同色の瞳。顔の左半分が黒い“染み”に覆われ、左目は眼帯を、左腕は肩から指の先まで包帯で覆われている。有している武器も、ハンターなら首を傾げてしまいそうな、小さな盾、一つだけ。
少女は黒髪黒瞳。髪は綺麗に切り揃えられ、傷一つない相貌、艶やかな髪、そして感情を晒さない冷ややかな表情が合わさり、まるで人形のようだ、と言う形容詞がぴたりと当て嵌まる。有している武器は大振りの刀――太刀。
互いの防具は、新米ハンターであれば誰もがまず袖を通すであろう、ハンターシリーズと呼ばれる装備。故に、二人が新米も新米、あのディノバルドと言うモンスターに挑めるような熟達でも先達でもない事は明らかである。
少年はギラギラと輝く赤目をディノバルドに向けたまま、少女の肩を軽快に叩いて注意を向けた。
「シア。アレを斃せば、俺達の任務完遂で合ってるよな?」
シアと呼ばれた少女は、コクリと首肯を返す。
「よっしゃ、だったらやるかァ! 付いてこれるか?」
煮え滾る瞳を向けてくる少年に、シアは真正面から見つめ返して、ことりと小首を傾げた。
「マスターは、見つけて報告、って言ってた」
「見つけて報告する前に斃せば、万々歳じゃねーか??」
「狩猟、及び討伐の命は、受けてない」
「じゃあ俺一人でやるから、お前は報告な?」
シアの確認を待たずして、少年は草叢から飛び出し、水底が浅い水辺を飛沫を上げながら駆け抜けて行った。
暴走気味の少年を眺めながら、シアは感情の薄い顔に僅かながらに暗澹たる想いを載せ、「……確かに、大変だ……」と溜め息を零すと、太刀を抜いて草叢を飛び出した。
ディノバルドは接近する二人分の人影を視認するや否や、号砲とも取れる咆哮を奏で、――狩猟と言う名の闘争の合図をここに示した。

◇◆◇◆◇

――二人の新米ハンターが分不相応に斬竜・ディノバルドに挑む、ほんの三時間前まで遡る。
狩人都市・アルテミス。そう呼ばれる巨大な都市には、日々数多のハンターが訪れては、モンスターの情報を求めて駆け回っている。
ドンドルマやメゼポルタとは異なり、ここには明確なハンターズギルドの威光は届いていない。無論、ハンターである限り、ハンターズギルドからの命令には逆らえないのが道理だが、こと狩人都市・アルテミスでは強きハンターこそが正義と言う、無法地帯と言われてもおかしくないルールで支配されている。
ルールを定めるのは強きハンターであり、ハンターズギルドは強きハンターではないと認識されて以来、依頼を受けるか否かの決定権はハンターに有りと、無法者染みたハンターがのさばっている、ギルドナイツが聞いたら卒倒しそうな都市と化している。
……のだが、ハンターズギルドとしてはこの都市に集うハンターが強者である事を認めているし、且つ依頼を全く受けてくれないどころか、成り上がって美味い汁を啜りたいと言う燻り続けていたハンター達が率先して受けてくれるため、見て見ぬふり……特段ハンターズギルドやギルドナイツに対して困る行為を行っていないがため、看過している、と言う実情が有る。
それ故この都市には多くのハンターが、己の欲を満たすべく、日々押し寄せては、荒波に揉まれて埋もれていくのだが……
今日もそんな荒くれ者が集う都市に、新参者が訪れたのだ。
「へェー、ここが狩人都市・アルテミスかァ。確かにハンターは多いな、うん」
燃えるような紅い髪を有した、ちょっと身長が低めの少年は、髭も生えてないのに顎をすりすりと撫でて、満足そうに声を漏らした。
隣に立つアイルー……猫のような獣人族は、メイド服の姿で少年を見上げてハラハラと冷や汗を流している。
「リスタ~、頼むから意味深にゃ発言をしてヘイトを稼ぐのはやめるにゃ~。カッコいいと思ってるのかもしれにゃいけど、それ下手したら喧嘩をして無駄な血を流すだけににゃるにゃ~」
「……おい、俺を残念な中二病患者と一緒にするんじゃねェーよ、フレア」
隻眼の少年、リスタは苛立ちを隠し切れない様子でメイド服のアイルー、フレアに詰め寄る。
「ぷっ、アイルーに小言言われてるぞあのガキ」「ここは子供が来るとこじゃねーよ、帰ってママンのおっぱいでもしゃぶってろ」「帰り道が分からねえなら墓でも立てといてやるから安心しろよ~」
街中で一分と立たずに罵声の嵐を受け、フレアの表情は見る見る青褪めていったのだが、リスタは構わずに「ほら、ああいうのが中二病患った残念な大人達だ。分かるだろ? 俺は全然マトモだって」とニッコリ笑顔で、大声で、返した。
「「「あ?」」」
通行人が一斉に立ち止まり、リスタに殺意と言う名の視線を刺し込む。
フレアは既に泡を噴いて卒倒寸前だったが、リスタは構わず群がる群衆に視線を向け、包帯に覆われていない綺麗な右手で、軽く挑発するように手招きした。
「野郎――ッ!」
男が一人、怒りに駆られて、有ろう事か大剣を抜き放って少年に叩きつけてきた。
モンスターを叩き潰す程の威力を有する大剣を、片腕が包帯で覆われた少年の頭蓋に。
誰もが想像する、少年の頭蓋が弾けて、嫌なものを見てしまったぜ……と後にする映像は、果たして訪れなかった。
リスタは一挙動で背中に吊るしていた小さな盾を右手で引き抜き、半歩前に出ると、盾を引き抜いた挙動で大剣の腹を殴り、軌道を逸らしながら更に自転――跳び上がって右足を男の首に引っ掛けると、体重移動だけで男の体勢を崩し、側頭部を地面に叩きつけて――男の視界で火花が散った瞬間、その頭に、リスタの靴底が叩きつけられた。
観衆が皆、呆然と見つめるだけの景色で、リスタはニヤ、と口の端を歪めた。
「油断すると足下を掬われるって身を以て教えてくれた先達のおっさん、ありがとな。俺もこうならねえように、精々口には気を付ける事にするわ」
リスタが大声で宣言した瞬間、笑いの渦が巻き起こった。
地面に叩きつけられた男は羞恥で顔を真っ赤にして逃げ去り、観衆は笑いながらリスタに小銭を投げつける。
フレアは泡を噴いて気絶していた。
「……キミ、強いんだ」
観衆から頂いた小銭を集めて笑っていたリスタに、そう声を掛けてきた少女がいた。
リスタと同じく、ハンターシリーズと呼ばれる防具を身に纏う、リスタよりちょっとだけ背丈の有る少女。人形のように整った相貌で、人形のように感情の点らない表情。
リスタは「あァそうさ、俺は強いぜ。強くなくちゃならねェからな」と自慢げに鼻の下を擦ると、少女はそれを見て一つ頷くと、「ボク、シア。キミに、依頼したい」と、依頼書を差し出した。
「俺に?」依頼書を受け取ると、リスタの瞳に驚きが点った。「ディノバルドか……!」
「ディノバルドを、探してくれるだけで、良い。キミなら、遭遇しても、逃げ切れる筈だから」
「……は? 逃げ切れる??」シアの顔を覗き込むリスタの瞳に、険がこもる。「俺が? 誰から?」
「マスターが斃すから、キミは見つけるだけで、良い。そう言った」シアは無表情のまま告げる。「それとも、無理?」ことりと小首を傾げてさえ見せた。
「……」「……」
威圧的な視線を向けてもまるで動じないシアに、リスタは怒りを露わに拳を固めると、「――――よし、分かった。見つけてやるさ、そのディノバルド。だが、――斃してしまっても、文句を言うなよ?」
ひたすら挑発するリスタだったが、シアはやはり動じる気配が無く、どこか安心した様子で「良かった。助かる」と、頭を下げる始末だった。
そうして三時間後、易々とリスタの手でディノバルドが見つかってしまうのだが……
「……リ、リスタァ……」
因みにフレアはこの間、ずぅっと意識を失っていた。

【後書】
初めての方は初めまして、お馴染みの方はどうも! 日逆孝介です。
めちゃんこ…めちゃんこ昔に、「ベルの狩猟日記の続編を綴るよ!」と明言してから、随分と…随分な年月が経ちました。
なのですっかりお忘れかも知れませぬが、先日ようやっと構想が纏まったので、遂に! 日の目を見る段階まで来たのです!
と言う訳でこの物語は、「ベルの狩猟日記」の続編に当たる作品になります。
仮題は実は「リスタの猟団日誌」だったのですが、より週刊少年誌テイストにしたかったので、こんなカコイイ感じのタイトルに!
そう! 今回のテーマと言いますか、綴ろうと思っているのは「週刊少年誌チックなモンハン二次小説」です! なのでまぁ、主人公が割とイキってる感じなのがね、そう、「よきよきw」と感じて頂ける人向けの作品かなーと!w
開幕から後書の文字数が爆発するのも何なのでこの辺で!w 暫くは月刊誌ペースで投稿して参りたいと思いますが、そのうち加速したり減速したりすると思いまする! そんな感じなので、どうかいつも通り、ふんわりとお付き合い頂けますよう、宜しくお願い申し上げます~!
それでは次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

    足がしびれてしまいましたw(謎

    なにか曰く付きっぽいリスタくんと表情のないシアちゃん。
    そして少年誌のようなタイトル…ほんとにベル日の続編?ってかんじですが、良いですぞ~vvこれは+(0゚・∀・) + ワクテカ +だぜ!
    そして表紙も( ´∀`)bグッ!です。断さんGJ!!

    てか、ディノバルドってどんなん?w

    二人の活躍を期待してますよ~vv

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

    返信削除
    返信
    1. 感想有り難う御座います~!

      正座待機、大変お待たせ致しましたーッ!w

      ほんとにベル日の続編? って感じが、確かにそんな感じでして、他に言いようが無い奴です…!w
      最高な断さんにお頼みして大正解でした!┗(^ω^)┛ 断さん本当に有り難う…!

      ディノバルドってのは…ギオアルグとかアビオルグとかあの辺の骨格の奴です…! てかまんまアレの火とか爆撃使う系と思って頂けたら…!w

      有り難う御座います~!! 今後とも応援のほど、宜しくお願い申し上げます~!(*- -)(*_ _)ペコリ

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!