2019年10月20日日曜日

【紅蓮の灯、隻腕の盾使い】002.盾と斬〈2〉【モンハン二次小説】

■あらすじ
隻腕の盾使いリスタは、狩人都市アルテミスにて、或る情報を求めにやってきた。週刊少年誌テイストのモンハン二次小説です。

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002.盾と斬〈2〉


 狩人都市・アルテミスの南東に位置する原生林。緑生い茂る植物の宝庫であるそこには、当然ハンターが相手をしなくてはならないモンスターが息づいている。
 餌となる栄養豊かな植物を食む草食竜は無論の事、その草食竜を狙って訪れる肉食竜も、ここには無数に蔓延っている。
 自然界の調和を乱さないように、ハンターはその調和を乱しかねないモンスターを率先して狩猟する。無益にモンスターを狩猟する事は、自然界に対する冒涜に違いなく、それはハンターズギルドの法に縛られていない狩人都市でも、例外ではなかった。
「――マスターって言うから、どんなおっさんかと思いきや」
 シアに連れられてディノバルドの捜索依頼を受けたリスタは、気絶してしまったフレアを置き去りにして、狩人都市・アルテミスの一角、小ぢんまりとした拠点に足を運んだ。
 中には紅い防具――火竜・リオレウスの素材であしらわれた、レウスシリーズを身に纏う若い女が一人、ヘルムを脇に置いて待っていた。
 紺色の長い髪をポニーテールにした女は、同色の瞳で眼光鋭くリスタを捉え、口に銜えていた葉巻をゆっくりと上下させて声を発した。
「……シア、誰だそいつは」
「ディノバルド捜索の依頼を受けてくれた、人」
「人以外の情報、お前何も感じなかったのか??」
 シアの端的な返答に、思わずツッコミを差し挟んだのはリスタだった。
「俺はリスタ。今し方、狩人都市・アルテミスに到着したハンターだ」
「ほう。道理で青臭さが鼻に衝くと思ったが、なるほどな」
「若さを妬むなよおばさん」
「あっ……」
 ビキリ、と。まるで空気が断裂したかのような音が弾け、リスタの総身に殺意が浴びせられた。
 ただでさえ眼光が鋭かった女の瞳が、まるでモンスター……それも轟竜・ティガレックスでも憑依したかと見紛う程の凶暴性を帯び、然しものリスタも生唾を呑み込まざるを得なかった。
「……若造。あんまり、先達を嘗めるもんじゃァ、ないな」ゆっくりとした所作でリスタに詰め寄る女。「うっかり、事故死するやも知れんぞ……?」
「口には気を付けるって、言ったばかりなのに」ぽそりとシアが付け加える。
「俺は人間と争うために腕を鍛えてんじゃねェんだがな」真正面から女を睨み据えるリスタ。「俺の戦う技術は、モンスターを屠るために磨いたもんだ。テメエみたいな喧嘩っ早いアマに振るうためじゃァねえ」
「……ほう?」「でもさっき、おっさん倒した」「…………ほう?」
 どや顔で女を見つめていたリスタだったが、シアの進言で途端に居心地悪そうに瞑目し、首の後ろを掻き始めた。
「……おい、これじゃカッコつけた俺がアホみてェじゃねェか」
「……ふん、まァ良い。だが仮に、貴様が私を女だからと言う理由で喧嘩を避けたと言うのであれば、……馬鹿に尽きると明言しておくぞ、若造」
「ほォー? まっ、レウスシリーズを纏っているからこその大言だって受け取っといてやるよ」
「そう言えば――」次の瞬間、リスタの視界は空に向かい、更に次の瞬間には胸に女の右足が振り下ろされ、息が詰まりかけ、気づいた時には仰向けに床に倒され、胸を足で圧迫されて呼吸が困難になっていた。「――油断すると、こういう目に遭うんじゃァー無かったかな?“若造”」
 ――こいつ、あの場面を敢えて再現しやがったな……!
 即反撃に繰り出したかったが、肺を圧迫されて顔色が悪くなる一方だったリスタは、観念して右手を放り投げた。
 白旗を上げたリスタに、やっと留飲を下げたのか、女はリスタから離れて、古い木製の椅子に戻って行った。
「さて、遅くなったが自己紹介だ。私はセンリ」葉巻を銜え直し、レウス装備の女――センリは頬杖を突く。「リスタ、と言ったか。貴様がディノバルドの捜索を手伝ってくれる、そういう話だったな?」
「寝惚けてるなら顔洗ってきたらどうだ?」咳き込みながら立ち上がるリスタ。「俺が斃してやるって言ったぜ」
「貴様が?」「おう」「ディノバルドを?」「そうだ」「斃す?」「イエス」
 センリは頬杖を突いたまま呆れ果てた表情を見せた。
「リスタ。貴様は無謀な馬鹿なのか、鈍感な鉄砲玉か知らんが、流石にその装備でディノバルドは無理だろう。だろうじゃない、無理だ。絶対無理」
「そこまで断定しやがるかねテメエ!?」思わず怒号を張り上げるリスタ。
「そもそも……貴様、武器はどうした? その小さな盾を見るに、片手剣使いだろう。肝心の片手剣はどうした?」
 センリの視線の先にも、シアの視線の先にも、リスタの扱うであろう武器の姿が見当たらなかった。
 リスタは剽げた様子で肩を竦めると、彼にとって当たり前の事であり、自明の理である事を、丁寧に説明した。

◇◆◇◆◇

「――まずは頼むぜペイントボール、あの尻尾刀をかっちりマーキングしてくれよっ」
 ディノバルドに向かって水飛沫を上げて駆け込んで行くリスタは、右手でポーチを開き、取り出した小さな球体に軽く口づけすると、走りながら全力投球――狙い違わず斬竜の鈍く輝く刀身染みた尻尾に着弾し、ピンク色の粘着質の液体をこびりつかせた。
 ディノバルドが唸りながら、尻尾から漂う鬱陶しい臭気に顔を顰めると、その隙を狙ったかのようにリスタは更に加速――まだ十メートルは離れていよう場所から跳躍し、右手に備わった小さな銀色の盾でその頭角を思いっきり殴りつけた。
 ゴキンッ、と言う硬質な破砕音が弾けると共に、ディノバルドの驚きを意味した短い悲鳴が重なり、両者を置き去りにするようにリスタはディノバルドの顔の逆側に着地する。
「ゴァア……!」
 突然弾けた頭部での火花に、驚きと困惑を伴った唸りを落とすディノバルドに、リスタは「どこ見てんだ、こっちだよっと!」と獰猛に笑いながら、製鉄のような甲殻に守られた健脚に思いっきり裏拳を叩き込む。
 バゴンッ、と言う鉄骨が歪んだと聞き間違えたような悍ましい爆音が轟き、ディノバルドが再び短い悲鳴を上げて跳び上がった。
 二歩三歩と距離を取り、ディノバルドは初めて己を襲う小さき襲撃者を目視する。
 この小さな物体のどこに、己の剛健なる鉄脚を軋ませる程の力が有るのか――その困惑が本能として理解できる前に、既にリスタは動き始めていた。
 トーン、トーンと、まるでリズムを刻むかのように軽やかなステップを踏んでディノバルドに肉薄する小さき者に、ディノバルドは脅威としてではなく、鬱陶しい羽虫を捻り潰すが如く、その凶悪なる刃尾で叩き潰しに掛かる――
 シアの視線の先――ディノバルドがその巨大な図体を旋回させて、尖端である刀身が如き尻尾でリスタが斬壊されるのは次の瞬間だろうと、最悪のイメージが脳裏を駆け抜けた。
 ――が、盾の少年は狙い澄ましたかのようなタイミングで小さな盾で、己を斬り潰そうとする巨大な刃尾を擦り合わせると、ほんの少し――人間一人辛うじて逸れる程度の隙間を作り出し、刃尾が地面に着弾した時に隆起した土塊を利用して跳躍――再びディノバルドの眼前に己の肢体を晒した彼は、獰猛な笑みを覗かせて、「どうした? ストリートダンスは初めてか?」と嘯くと同時に、再び小さな盾による強烈な一撃を頭角に見舞う。
「……本当に、盾だけで戦ってる」
 ディノバルドとリスタの戦闘に見惚れて、棒立ちになってしまったシアだったが、勝手に漏れた感じ入った独り言で我に返った。
 彼は言っていた。己の武器はこれ一つ――右手に備え付けた片手剣用の盾のみだと。
 そんな事は有り得ない、狩猟を嘗めているのか――などとセンリは罵声を浴びせたが、彼は怯みもせずに嘲るだけだった。
「俺はあんたの小言を聞くために来たんじゃねェ。ディノバルドだろ? 見つけてやるし、つーか斃しておいてやるから、あんたは黙って俺の凱旋を待ちゃ良いんだよ」
 自惚れた若造の壮語だと、シアも思っていた。センリとて、マトモに受け取ったとは思えない。
 けれど、眼前で、まざまざと、その戦闘技術の高さを窺い知ると、その反感は霧散する。
 これ程までに超然と小盾を扱うハンターがいるのか。
 これ程までに嘲弄とモンスターを屠る者がいるのか。
 相手の攻撃を見切り尽くしているからこそ出来る、最善最短の攻守一体の殴撃。それは一朝一夕の技術ではない。ハンターとして、モンスターの微に入り細を穿つ性質を、一挙手一投足に至るまでの挙動を、あらゆる可能性を思索し排したからこそ可能な動きだ。
 それを、彼は、――嗤いながら、敢行しているのだ。
「どーしたどーした? 足がお留守だぜ斬竜!」
 ディノバルドの頭角に殴打が集中したかと思えば、間隙を縫うように健脚を過たず穿ち、頭部への意識が疎かになったかと思いきや、狂い違わず脳震盪を狙ってくる。
 こんな恐ろしいハンター、見た事が無かった。一人で完結したハンターだと、思わずにいられなかった。
「……負けて、られない」
 背に負った太刀が唸る。斬らせよ、血を浴びせよと。
 人形染みた顔に、感情の波が押し寄せる。冷淡――凍えるような殺意と、敵意が。
 チキリ、と鍔が浮く。それがシアの開戦の鬨の声だった。

【後書】
 週刊誌テイストの物語を月刊誌ペースで更新する…難しいネ!ww
 と言う訳で2話目です! タイトル回収と言う事で、原作Gameには存在しないクラス、“盾使い”です!
 とは言うものの、これやろうと思えば実機でも再現できるんですよね…! 片手剣でPlayして、ひたすら盾のみの攻撃しか行わないと言う、そんなアレです。地雷って言われて叩き出されてもわたくし責任負えませんので悪しからずご了承くださいませ!w
 さてさて、次話では今作のヒロイン枠であるシアちゃんが活躍する…かも? そんなこったで! 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    まさか盾だけで戦うなんて誰も思いませんよねぇ…
    あの方を思い出さずにはいられないようなリスタくんの戦いっぷりがなんともいい感じですw

    そして…シアちゃん…抜くのか?

    こんな狩猟シーン見せられるとまたプレイしたくなっちゃうなぁw

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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  2. 感想有り難う御座います~!

    ですです! 盾をメインに使う事は有っても、盾だけとなると、中々無いかも知れませぬ…!
    確かにww体術に関してはあの方を連想するのも止む無し感しゅごいです!ww

    シアちゃん…抜く、のか…!?

    またやりたくなってきたのなら大勝利です!w ほんと新生MHF出て…!w

    今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
    次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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