2019年10月18日金曜日

【ネトゲ百合】第1話 仮想世界の幻彼【オリジナル小説】

■あらすじ
ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。

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【第1話 仮想世界の幻彼】は追記からどうぞ。

第1話 仮想世界の幻彼


◇◆◇◆◇>>ジン<<◇◆◇◆◇

ジン「なぁ~おっさぁ~ん。一緒に遊ぼうぜ~」

 スマフォで出来るネトゲ「ファンタジーポケット(通称FP)」と呼ばれる世界で、私のキャラがおっさんのキャラに向かってチャットを飛ばしている。
“ジン”と言うのが私のキャラで、見た目はちょっとやんちゃしてる女子高生と言うか……年齢設定では十六歳の、クールな衣服に身を包んだキャラクターだ。
 そのジンを相手にしているのが、同じギルドのプレイヤーで、“座長”と言う名前の、くたびれたおっさんだ。

座長「おじさん仕事帰りのいつばいしてるからちょつと待つて」

 誤字は多いし、何かこう、イメージしやすいぐらいにリアルおっさんなんだけれど……何でか私はこの人が……好きなんだなぁ……
 前にピンチだった時に助けてくれたから。……確かにそれも有るかも。
 困った時に親身に相談に乗ってくれたから。……これもそうかも。
 話したい時にいつもインしてるから。……理由を挙げてくと何かこう、後付けみたいで、逆に説得力が無くなっていくような……
 そういう、小さな積み重ねが、このくたびれたおっさんキャラに、愛着と言うか、愛情と言うか、好意みたいなのを、感じてしまったのかも知れない。

座長「ぱはーゆっぱ仕事終わりのいっぱいは格別だねえ」
ジン「ゆっぱって何ゆっぱってww」
座長「しまった五字! やっぱだわそれ」
ジン「重ねるように誤字っていくしww」
座長「ぬぬぬ」

 他愛無い会話だ。でもそれが、私には心地良い。
 別に、リアルが大変とか、不幸を感じてるって訳じゃない。親にも、友達にも、学校にも困ってない。ただ、着飾らずに話し合える、顔の見えない人、と言うのが、何とも居心地の良さを感じさせるのだ。
 このおっさんキャラ“座長”とは、長い付き合いになる。二年ほど前にこのFPを始めて、初めてフレンドになったのが、この座長で、初めて入ったギルドにいたのが座長で、一番付き合いが長いのも、この座長だ。
 のらりくらりとした人で、けれどダメな事はダメってしっかり言える、何と言うか、大人~って感じる事も有りつつも、茶目っ気の有る、不思議な人。
 いつか実際に会って、話してみたいな~と思いながらも、そんな勇気も無く。会って幻滅するのも、何となく嫌だし……逆に愛想を尽かされたりするのも、怖いし……
 そんな訳で、今日も益体の無い話に華を咲かせつつ、座長の誤字だらけのチャットを楽しむのだ。

ジン「おっさん最近帰り遅いけど、仕事忙しいの?」
座長「んー帰り襲いけど何でジンちゃん起きてるの?」
ジン「おっさんの侘しい生活に彩り添えてあげてんだろー察しろよー」
座長「かー!おじさん売れしいけどジンちゃんは早く根なさい!」
ジン「ほらー、アレじゃん? おっさん、インしても誰もいなかったら、寂しかろ?」

 もう深夜の一時を回っているけれど、スマフォは手放せなかった。
 おっさん、最近はインする時間が遅いから、私もついつい夜更かししてしまう。次の日学校で居眠りしちゃうけど、それより何より、おっさんが無事にインしたのを見届けなければ、安心して眠れないのだ。
 いつだったか、おっさんが暫くインしない日が有って、その時は「どうしたんだろう?」と思いながらも、たぶんリアルが忙しいんだろうな、って思ってた。けど、後日インした時に聞いてしまったのだ。

座長「心配せんでも、おじさんそんな簡単にくばらたらないよ」
ジン「くばらたらない……?」
座長「くたばらない!」

 事故、だったかな。スマフォも持てないぐらいの重傷だったそうで、インして笑い話にしてたけど、それを聞いてしまった私は、この人は、もしかしたら何の前触れも無く、私の前からいなくなってしまうかも……そんな想いに囚われてしまった。
 勿論、そんな大事故と言うか、大変な事に遭う事なんて、そうそう無い。けれど、この災害国家日本では、いつどこで大惨事に見舞われるか分からない。
 今見たおっさんが、最後の姿かも知れないと思うと、きゅぅ、と、胸が締め付けられる。その自覚こそが、あぁ、私、このおっさんが好きなんだなって、思う最大のきっかけだった。
 おっさんには、好意は明かしていない。きっと迷惑だろうし、たぶん、叶わない恋だ。だからせめて、おっさんがインした時ぐらい、一緒に楽しく笑い合いたいのだ。

座長「ほれほれ、早く念写委。もう二次だゆ二次」
ジン「おっさんの方が呂律回ってないじゃん、早く寝なよ」
座長「なに~~~おじさんはこれからフロなのだ」
ジン「まじで。溺れるなよ絶対だぞ!」
座長「おう」
ジン「絶対だからな! 絶対溺れるなよ!」
座長「ふらぐにするんじゃね~~~」
ジン「wwwww」
座長「じゃあフロいくから落ちるわー乙乙」
ジン「乙~」

>>座長がログアウトしました<<

 ログアウトのメッセージを確認してから、私もスマフォの電源を切る。もうバッテリーが20%も無い。時刻は深夜二時半。明日も授業中に仮眠でも取るか……
 ……溺れてないか心配だけれど、それはもう、私の手の届かない範囲の話だ。
 …………明日もまた、インしてくれるかな。

◇◆◇◆◇>>座長<<◇◆◇◆◇

「ったく、何時まで起きてんだかねぇ。まぁあたしも学生の時分はそんなもんだったか」
 スマフォの電源を切ると、あたしはうーんと伸びをして、残り僅かになった缶ビールの最後の一口を呷り、シャワーを浴びに浴室に向かった。
 ジンって言う子が学生である事は知っている。彼がネットリテラシーに明るくない頃に、うっかり漏らしてしまった情報だ。今年で高校二年生だったかな。
 味気ない会社勤めから帰ってきて、スマフォのネトゲで彼とチャットをして過ごすのは、中々感慨深いものがある。
 四捨五入で三十路のおばさんが、高校生の男の子と楽しく世間話に華を咲かせるのだ。現代のネット社会だからこそ許される世界だろう。
 FPの世界で女キャラを、それもあんな可愛いキャラで、且つ男言葉を用いているなど、男の子以外有り得ないと思っているあたしである。いやまぁ女の子でも有り得そうだけれど、偏見って奴だな、うん。
 過去に職場の機材に潰されて大怪我した時、暫くゲームにログインできなくなって、これはフレンドでも切られてるかなーと思ってたら、まるで忠犬ハチ公ヨロシク、あたしの帰りをずっと待っててくれたんだよね、彼。
 それが何かこう、実家に帰って来た~って感慨をもたらしてくれて、目が離せなくなったんだよね……年の差考えろってのに。
 それから、こんなおばはんの与太話に付き合ってくれる希少な友達として、長い間付き合って貰っているけれど……いつか、彼が成人になる頃には、一度会って話してみたいものだ。
 とは言うものの、何かもうアレなんだよね、異性として愛情を懐いてると言うより、実家にいるわんこでも相手にしているような安心感と言うか……
 まぁ、こういう事を直接言えば彼の事だ、憤慨してしまうだろう。流石にそんな事を公言するつもりは無いし。
 けれど、もし、万が一にでも、彼が、あたしなんかに好意を懐いてたら……
 有り得ないとは思うけれど、おばさん、きっと堕ちるんだろうな……
 さてさて、明日も仕事だ布団が美味い! 明日こそジン君を夜更かしさせないように、仕事を早く切り上げてインしないとね。
 ……あんまり心配させたくないしね、まさかここまで懐かれると思ってなかったし……
 …………愛想尽かされないように、早めにイン……しよ……

 ――――ああ、どうか彼が自分の前からいなくなりませんように

【後書】
初めての方は初めまして! お馴染みの方はどうも~日逆孝介です!
いつぞやどこかで綴っていた、ネトゲの百合の話、更新ですっ! ずぅーっと、かれこれ一年? 二年?? くらい寝かせてたので、いい加減ね、形にしたかったのも有ります…!
一話、と有りますので、一応続きます。ふんわりとではありますが、一応今後の展開も妄想しております。たぶんそのうち続きが来るヨたぶん!w
んではでは! 次回もお楽しみに~♪

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    どうも~

    なんかこう、あるある過ぎてとっても切ないお話ですね。
    続きがとっても気になるのですwふんわりで全然かまわないので、ぜひとも!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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  2. 感想有り難う御座います~!

    どうもどうも!w

    そうなんです…! 何かこう、ネトゲとかでこういう展開有るよね…! みたいな感じなのをね、表現したくてね…!(語彙力~!)
    「続きが気になる」だなんて!w なんて嬉しいお言葉を…!w ふんわり楽しみながら、続きを更新して参りたいと思いまする…!

    今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです!
    次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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