2019年10月28日月曜日

【ネトゲ百合】第2話 嗅覚が空想する彼香【オリジナル小説】

■あらすじ
ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。

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【第2話 嗅覚が空想する彼香】は追記からどうぞ。

第2話 嗅覚が空想する彼香


◇◆◇◆◇>>ジン<<◇◆◇◆◇

座長「ちょつと一服してくる」

 クエストが終わって、ちょっと休憩するかーと言うタイミングで、座長がそう発言すると動かなくなってしまった。
 私はそれを眺めながら、ふと思った事をポチポチとチャット欄に打ち込んだ。

ジン「おっさん、タバコ美味しい?」

 座長は暫く動かないだろうと思って、のんびりと所持品の整理をし始めたのだけれど、意外と早く返答が来た。

座長「んーまああまかな」
ジン「俺も吸ってみようかな」
座長「だめ」

 即答だった。私は思わずその返信にムッときたけれど、一旦深呼吸してから、チャットを返そうとして、その前に座長が更に発言した。

座長「たばこは、だめだね」
ジン「なんでーおっさん吸ってるじゃん」
座長「今辞めました」
ジン「嘘つけよww」
座長「だからジン君もすっちやだめだぞ星」
ジン「星www」
座長「ぬぬぬ」

 結局座長は本当にタバコを吸わなかったのか、そのまま一緒にクエストに行ったけれど……何で止めたんだろうか、と言うのが頭に残って、次の日の授業中まで悶々としてしまった。
 タバコは、今まで吸った事は無いけれど、実は買っては有るのだ。こっそりと。
 以前、何かの話の流れで、座長が吸ってるタバコの銘柄を知って、それでどんな奴なんだろうとネットで検索を掛けて、それで……うっかり、買ってしまったのだ。
 学校に持っていけば先生に怒られるだろうと、部屋の机の中に安置されているのだけれど、……時折、吸いはせずとも、パッケージを開けて、匂いだけスンスンと嗅いでしまう。
 特別な匂いはしない。けれど、タバコ独特の匂いと言うか、直感的に“臭い”と感じる臭気が、鼻腔をくすぐる。
 それが、リアルの座長をイメージさせて、恋しくなる。
 座長と会った時に、このパッケージを見せて、驚かせたり、ちょっと心配させたいなと言う淡い希望が、胸にうずくまっている。
 今日もインしたら、その香りを感じさせる彼と一緒に、何でもない話に華を咲かせよう。

◇◆◇◆◇>>座長<<◇◆◇◆◇

「……」
 喫煙所に向かおうとした足が一瞬止まり、後頭部を何度か人差し指で叩いた後、踵を返して自販機に向かった。
 無糖の缶コーヒーを買って、ぐびぐび呷る。……ううむ、まだ満ち足りないけれど……ううむ。
「あれ、伊崎さん、タバコ辞めたんですか?」
 空になった缶コーヒーを握り潰して、不服感で一杯だったあたしに同僚が意外そうな声を掛けてきた。
「伊崎さん、重度のヘビースモーカーじゃありませんでした? どういう心境の変化です?」同僚が不思議そうに声を重ねながら、炭酸のグレープジュースを手に取り、振り返りながら指差してきた。「分かった、振られたんでしょ?」
「そう言うのじゃないよ……」ゴシップ好きの子だったな、と思い出しながら、あたしは疲労を感じさせる溜め息を漏らした。
「伊崎さん、最近活き活きしてるじゃないですかー。恋してると思ってたんだー。お相手は? 人間ですか??」
「はいはい、業務に戻った戻った」しっしっと追い払うような仕草をしてから、あたしは握り潰した缶をゴミ箱にポストした。「……推しにね、タバコ吸わせたくないからさ」
「何だぁー、伊崎さんもヲタクでしたもんねー、何だぁー」
 同僚の不貞腐れた声をBGMに、あたしは現場に戻っていく。
 ……嘘は言ってないよね。
 タバコは付き合いで始めたけれど、特別好きって訳ではないし、それに……
 ……それに、ジン君みたいな好青年を不良の道に導きたくないしね。
 内申が悪くなって、進級やら内定やらに響いて欲しくないってのも、勿論有る。
 もっと言えば、自分の影響でニコチン中毒になるって言うのが、何と言うか、嫌なんだと思う。
 だから、あたしもタバコはなるべく遠ざける。推しに健康でいて貰うためにも、あたしも健康でいなくちゃ、だよね。
 それと……これは結局のところあたしの性癖ではあるのだけれど、ジン君と会う事が有れば、タバコの匂いじゃなくて、ジン君の匂いを感じたいってのが、大きかったりする。
 ……うん。こんな事を言えば、ドン引き待ったなし、だけれどさ。
 そのためなら、タバコだって辞めてみせるさ。何せ、推しのためだものね。
 さてと、お仕事頑張って、推しと会うためのお金でも稼ぎますか!

【後書】
 と言う訳でうっかり二話目が出来ちゃいましたので! 続いちゃいました!w
 有り得そうで、有り得なさそうで、有り得そうなラインを攻めたい奴です。互いに相手を想っているからこそ、ちょっと変態的…こほん、直情的に、こっそりと相手を感じたい…と言う、何かこう、恋してるな~! ってそんなアレです…!(語彙力~!)
 互いに姿が見えないからこそ、思いやれる部分も有ったりってのが今後も物語に活かせたらなぁと思います…!
 相変わらずふわっと浮かんだらと言う前提ではありますけれど、次回もお楽しみに!w

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れ様ですvv

    前回に引き続き今回も切ないです。
    お互いに姿が見えないから余計に想いが募っちゃう、恋してるな~!w
    伊崎さんが最近活き活きしてるっていうのもよく分かる、うんうん!(^-^)
    なんていうかとってもいい感じなんですが(語彙力)、どうしてこんなに切ないんだろう。

    こんな素敵なお話がふわっと浮かんでしまうなんて先生、相当なエキスパートですなw(何の?w)

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想有り難う御座います~!

      切なさ感じて頂けましたか…!
      ですです! お互いに相手がどんな人なのか、想像する事しか出来ないがゆえに、想いが募っちゃう…! 恋してますよね!ww
      こういう環境下に置かれると、活き活きしてしまいますよね…!w
      何でしょうね、感情移入してしまっているからなのでしょうか…!

      相当なエキスパートww いやぁ、何かふわっと浮かんでしまうものなのです!(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようでとっても嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~♪

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