2020年12月4日金曜日

【紅蓮の灯、隻腕の盾使い】005.依頼競売 【モンハン二次小説】

■あらすじ
隻腕の盾使いリスタは、狩人都市アルテミスにて、或る情報を求めにやってきた。週刊少年誌テイストのモンハン二次小説です。

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005.依頼競売


「――――猟団が結成できないだァ?」
 リスタとフレアが狩人都市・アルテミスに訪れた日の翌日。シアと待ち合わせ場所にしていた猟団受付を訪れたリスタは、受付嬢の朗らかな笑みを見つめながらメンチを切っていた。
 朝陽に照らされ、清涼な空気が漂うアルテミスの一角。角竜・ディアブロスの巨大な角を冠した看板を掲げる猟団受付では、猟団の新規結成や、既存の猟団への加入申請、猟団に対しての依頼の確認など、猟団に必要な情報はここで粗方入手する事が出来る。
 アルテミスの広場の端に設けられた石造りの建造物の中で、受付嬢は営業スマイルのまま、「はい、猟団を新規結成される場合、最低でも四名の団員の確保が必要でして~」おっとりとした仕草で、申請書類の一文を提示する。
 リスタとシア、そしてフレアが跳び上がりながら覗き込むその書面には、確かに四人分の実名サインの空欄が見受けられ、それが確認されない場合、新規結成は出来ないと続いていた。
「……フレア、お前分身とか出来ないか?」「フレアにも出来る事と出来にゃい事が有るにゃ……」「つまり出来るのか?」「にゃんで今の流れで出来ると思ったにゃ~!? 分身にゃんて出来にゃいにゃ~!」
 泣き喚くフレアにこれ見よがしに肩を竦めてみせるリスタだったが、困った事に今すぐ解決する術が無いと判明してしまった。
 シアに目配せした後、リスタは「そんじゃま、我らが【紅蓮の灯】に入ってくれる奇特なハンターでも探しに行くか」と猟団申請書を引っ手繰って勝手に歩き出してしまった。
 シアは目の前に差し出されていた書面が無くなった事に気づくと、慌てた風でも無く、トテトテとリスタの背中を追い駆ける。その後ろをフレアが慌てた様子で追い駆けて行く。
「リスタ、にゃにかアテは有るにゃ……?」ぴょんぴょんと軽快な動きでリスタの隣まで駆け込んで来たフレアは、彼を見上げて小首を傾げた。
「ねェーよ」バッサリ切り捨てたリスタは、剽げた表情でフレアを一瞥する。「だがあの場で、こんなハンターが来てくれないかな、あんなハンターだったら良いな、なんてくだを巻いても仕方ねェだろ。まずは行動だ、向こうから来るのを待ってる暇が有るなら自分の足で探すべきだ。そうだろ?」
「リスタはもっと慎重に物事を考えた方が良いと思うにゃ……」困った風に溜め息を漏らすフレア。「シア様も言ってやってくださいにゃ。こう、ガツンと言わにゃいと、リスタは止まらにゃいですにゃよ!」
「……様、付けなくて良いよ」雑踏に溶けてしまいそうな声量で呟くシア。「リスタ、ランゴスタみたい。動いてないと、死んじゃう、みたいな」
「ランゴスタは流石に止まっても死なねェだろ」鼻で笑うリスタ。「止まったら殺されるってのは有るかもだがな」
 リスタが先頭切ってアルテミスの広場を散策していると、一際大きな喧騒が舗装された道の先から聞こえてきた。
 音源を辿った先では、扇形の座席群と、客達の視線の的になっている壇上には、進行役と思しき木槌を握り締めた礼服姿の女と、不遜な態度を纏う身形の整った男、そして彼らの背景に当たるバックヤードに屈強な肉体の男達が待機している様子が見える。
「七万!」「六万八千!」「六万七千!」「六万六千五百!」「六万五千!」「六万!!」「ろ、六万出ました! 六万! 他にいませんか!?」
 市で行われる競りを思わせる怒号と喚声に、リスタは剽げた表情を覗かせると「ありゃ何を競ってんだ?」と肩越しにシアを振り返った。「競りにしちゃ、値段がどんどん下回ってるのが解せねェんだが」
「依頼」ぽそりと呟くシア。「ハンターへの依頼。アルテミスでは、競りで奪い合う」
「変わった風習ですにゃ~」フレアがクリクリの瞳が何度も瞬きする。「つまり、依頼主は上限額を提示して、それを如何に高値で受けるかを決める……にゃにゃ、これだと報酬がたくさん欲しいハンターさんは迂闊に競られにゃく、困窮してるハンターさんは底値でも競りたい感じににゃるにゃ……」
「底値で受けて、マトモに依頼を達成しようって心境になるもんかね。慈善事業じゃあるめェし」鼻で笑うリスタ。「デフレが加速するだけのように見えるが、活気を観るに違うみてェだな」
「依頼競売には、参加費が必要。だから、予め最低保証の価格、設定されてる」リスタの隣に立ち、シアは競売が行われている一角を指差す。「それに、依頼競売に出られるの、実績が有るハンター、ハンターズギルドから保証されてるハンター、だけ。ボクらみたいな、下っ端ハンターは、参加できない」
「ほーん。やっぱそれなりのルールは敷かれてる訳ね」
 やる気無さそうに応じるリスタに、シアは「でも、例外も、有る」と続けた。
「誰も競りに参加しない依頼は、お零れ、貰える」
「……誰も参加しない依頼って時点でお察しなんだが」呆れた様子で肩を竦めるリスタ。「例えば、――――アレか?」
 リスタが顎で示す先には、年端も行かない少年がビクビクした様子で小さな麻の袋を握り締めたまま、視線を右往左往しながら佇んでいた。
「こちらの依頼は、高地エリアにてイワヒメ草の採取を願いたいもので御座います! 依頼額は千二百zから! 千二百zからスタートです!」
 木槌を片手に大声を張り上げる礼服姿の女の意気揚々とした号令に反応を返す客は一人もおらず、互いに顔を見合わせて鼻で笑っている姿しか見受けられない。
 誰一人として挙手すらしない光景を目の当たりにしながら、リスタは「……それで、この依頼競売の参加費ってお幾らな訳?」とシアを振り返った。
「参加費は、三千z」「つまりあの坊主は底値も底値、受けても赤字にしかならねェ額で依頼をしてる訳だな?」「そう」「誰も受けねェって分かっても依頼するのは何故だ?」「依頼できる、かかりつけのハンターがいない」「あぁつまり、寄る辺がねェのか」「そう」
 シアの淡々とした反応に納得したのか、リスタはフレアに向かって手を差し出した。
「……それはにゃんの手ですかにゃ、リスタ?」「ちょっと喉が渇いたから金を貸してくれよ、そうだな、三千zで良い」「……ハンターは、慈善事業じゃにゃいって言ってにゃかったかにゃ?」「ッたりめェだろ、俺はただ喉が渇いたから飲み物を手に入れに行くだけだ。だからほら、早く金」「やれやれですにゃ……」
 フレアはお財布から三千zを手渡すと、リスタは受け取った瞬間、ズカズカと依頼競売の場に土足で踏み入り、進行役と思しき礼服の女に三千zを叩きつけた。
「参加費はこれで良いか? そこの坊主の依頼は俺が千二百で……いいや、千zで買うぜ。問題有るか?」
「あ、えと、そのぉ……」進行役の女性はチラチラと背後にいる屈強な男と目配せした後、「も、問題無いでぇす……えぇと、では……」木槌をコンコンと鳴らし、「千で即決です! 有り難う御座いました! それでは後は依頼人とごゆっくり!」ニパッと笑いかけると、女はもう関心が無くなったように咳払いし、改めて次の競売に意識を向ける。「次の依頼は――――」
 リスタは年端の行かない少年――薄汚れたボロを纏った少年の元に向かうと、ビクついた彼に向かって、右手でその頭をクシャッと撫でた。
「つー訳で、その依頼はもう俺のもんだ。撃龍船に乗ったつもりでドンと構えろや、坊主」
 年相応の、やんちゃな少年の笑みを浮かべるリスタに、依頼人の少年は涙さえ浮かべてコクコクッと頷き返した。
「あにゃ~? 飲み物を買いに行くんじゃにゃかったのかにゃ?」フレアがトテトテと近づいて来た。「話が違わにゃいかにゃ~?」
「リスタ」フレアの反対側から、シアがコツンとリスタの肩を叩いた。「ボクも、飲み物欲しい」
「仕方ねェな、高地の湧き水を独り占めにしようと思ったんだが、シア、テメェも連れてってやるよ」フッと頬を綻ばせるリスタ。「フレアは依頼人と留守番頼めるか?」
「そうにゃると思ったにゃ……」ハァーッと重たい溜め息を落とすフレア。「まぁ、採取だけにゃし、にゃんとかにゃると思いますにゃが……また変にゃ事に首を突っ込まにゃいように! 絶対にゃよ!?」
「へェへェ、肝に銘じとくよ」耳を穿りながら聞き流すリスタ。「んじゃま、詳しい話を聞かせて貰おうか?」
 依頼人の少年は「う、うん! よ、宜しく、ハンターの兄ちゃん!」と緊張した様子で応じると、「えと、ここじゃ何だから、あっち行こ!」リスタの手を引っ張って歩き出した。
 リスタはされるがままに引き摺られ、シアとフレアは互いに視線を交わして微笑み合うと、その背中を追って歩き出した。
 そんな一団を遠巻きに見つめる、二人分の人影が有った。
「……ねぇねぇ~、ゼラフ君~、あの人達ってさ~、何だか良さげじゃな~い~?」
「寄る辺無き幼子に手を差し伸べる慈愛……そのためなら身銭を切る度量の深さ……私達にこそ相応しい狩人、まさにマイラヴを送らざるを得ない……クーリエ、彼らとコンタクトを取るべきだ。あぁそうさ、こんな好機を逃すなんて有り得ない! オアシスが有るのに喉を潤さない愚か者ではないのだから!」
「うんうん~、そうだねぇ~、じゃ~あ~、れっつごぉ~」
 謎の二人組は隠れようともせずに、堂々とリスタ一行を追跡していく。  そんな二人組がリスタ達にあっと言う間に発見されるのは、もう間も無くの事である。

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    リスタくん、シアちゃんおかえりなさい!

    そうでした…4人いないと猟団結成はできないんですよね。
    すっかり忘れて「おギルたりないのか?」なんて脳天気なコメントかましてたのはわたしですw
    ほらあれだよ、「ボッチーム」とかもあることだしw(無責任

    まさに王道の展開wこうでなくちゃって思う方向に進んでいきますねぇw
    そして最後に現れる2人組…敵か味方か??わたしのイメージではスツルムさんとドランクさんww(いいのか?w

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv





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    1. 感想コメント有り難う御座います~!

      本当にお待たせ致しました…!

      ですですw その辺はMHFとかを意識と言いますか、「団」と言うぐらいですから、一人二人では結成できない設定にw
      おギル足りないのかww「ボッチーム」ww色んな世界を渡り歩いてきた弊害ですね…!www

      やはり週刊少年誌と言えば王道! と言う展開を推して参りたいと思います!w
      スツルムさんとドランクさんww言われてみれば(性格は違えど)そんな趣が有る二人組ですね…!ww
      次回はそんな二人組がどんな感じで活躍するのか、ぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

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