逆断の牢: 【神否荘の困った悪党たち】第８３話　よろ～じゃないよナモ【オリジナル小説】

■あらすじ
オレオレ詐欺対策会議が始まったぞう。

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【第８３話　よろ～じゃないよナモ】は追記からどうぞ。

第８３話　よろ～じゃないよナモ

「――――まずは特殊詐欺の一番の代表例である、オレオレ詐欺の訓練を行うぞ」

　何故か俺の部屋に集まった犬野さんとナモと俺の三人は、座布団の上に座り込んで、メイちゃんが入れてくれたお茶をずべずべ啜っていた。

「あっ、俺気づいちゃいました」はーい、と挙手してみるよ！

「何だ？　もう詐欺に気づいたのか、聡いなお前」犬野さん、予想を遥かに上回るピュアピュア感がしゅごい。「で、何に気づいたんだ？」

「神否荘って、そもそも電話無くないですか？」

　俺はスマフォーンを持ってるからアレだけど、神否荘に電話を掛けるってやった事が無いんだよね。

　そう思って犬野さんの様子を窺っていると、不思議そうに小首を傾げた後、懐からメモ帳を取り出して俺に見せた。

「ん？」覗き見ると、神否荘と言う表記と、その隣に市外局番が綴られている。「あれ、電話番号が有るんですね」

「電話が無いのに掛かるのかよぉ」ナモがお茶をずべずべ啜ってる。「これはアレだな、特殊詐欺をしようとした詐欺師が、あれぇ、電話番号が有るのに掛からねぇ～くそう……自首しよ……ってなるパターンやんな？」そんなパターン初めて知ったぜ。

「いやいや待て待て、そもそも俺はここに電話した事が有るしちゃんと住人が出たぞ」思わずしかめっ面をする犬野さんだ。「待ってろ、今掛けてやる」と言って自分のスマフォーンを取り出して通話を始めた。

　その時、コンコンッ、と控えめなノックの音と共に「亜贄様、お菓子をお持ちしました」とメイちゃんが入ってきた。

「あ、ありが――」有り難う、と言い切る前に、メイちゃんが「ぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる」と呟き始めた！

「……」犬野さんがスマフォーンを耳に当てながら真顔でメイちゃんを見つめている……

「おっ、着信してんじゃん」ナモがズバリ言った。「取らなくて良いの？」何をだよ。

「えぇ……まさかのメイちゃんが電話なのこれ……」目の前でぷるぷるぷると言い続けているメイちゃんを眺めながら手を拱くよ俺は。「えぇと、どうしたら良いんだこれ……」途方に暮れ放題だ。

「おっ、ここは俺に任せろい」ナモがすっくと立ち上がり、メイちゃんの肩をとんとんと叩いて、メイちゃんの耳に口を近づけた。「もしもし？」こいつは何をしてるんだ？？

「えッ」犬野さんが驚いた顔でスマフォーンに意識を向けた。「も、もしもし……？」

「えッ」メイちゃんの口から犬野さんの声が！「も、もしもし……？」犬野さんヴォイスでもしもし言ってる！

「フッ……勝ったな、風呂行ってくる」ナモが満足気に座布団に座り直した。こいつやべーな。

「……」真顔でスマフォーンの通話を切る犬野さん。「まぁ……何だ。一応、この環境下で……オレオレ詐欺の訓練するわ……」もうやる気が微塵も無さそうに見えるぞう。

「通話が終了しました」スンッ、と表情が戻ってくるメイちゃん。「通話を記録しますか？」ナモを見つめながら小首を傾げてるぞ。

「おっ、じゃあ記録してー」お茶をずべずべ飲みながら頷くナモ。

「承服致しました。――犬野様との通話、記録致しました。次に、逆探知は行いますか？」なにて？？

「おっ、じゃあそれもよろ～」よろ～じゃないよナモ。

「承服致しました。――犬野様は亜贄様のお部屋から入電された模様です。最後に、今の通話に満足致しましたか？　五段階評価でお答えください」そんなのまでするのメイちゃん？？

「ん～、すぐ切れたから★１かな」併もダメ出しがエグい……

　俺は犬野さんを見つめた。

　犬野さんは瞑目したままどこか遠くに意識を飛ばしたまま、静かにこう告げた。

「素人は黙っとれ――――――――――」

　俺は同じ顔でうんうん頷く事にしたのだった。ナモはずべずべお茶を啜ってた。

逆断の牢