2020年12月9日水曜日

【神否荘の困った悪党たち】第84話 あるのかよ……【オリジナル小説】

■あらすじ
まずはラヴファイヤー君に掛けてみよう。

▼この作品はBlog【逆断の牢】、【カクヨム】の二ヶ所で多重投稿されております。



【第84話 あるのかよ……】は追記からどうぞ。

第84話 あるのかよ……


「電話がメイちゃんってのはもうどうにもならないとして、」それは置いといて、とジェスチャーする俺です。「ワンチャン住人皆スマフォーンとか持ってないですかね?」

 犬野さんが瞑目して腕を組んだまま「むむぅ……」と難しい唸り声を漏らし始めた。
「ん? 神否荘の住人にワン切りすれば良いの?」ナモがまた明後日の方向で絡んできた。「俺電話番号知ってるけど掛けてみる?」何で知ってるの???
「……物凄く癪だがそれしかねえな……」めちゃんこ悔しがってる犬野さんだ。「つか、全員分の番号は流石にねえだろ?」
「え? いやあるけど」「「あるのかよ……」」俺と犬野さんの力ないツッコミが漏れた。
 ナモにスマフォーンの電話帳を見せて貰うと、確かに住人全員分の電話番号が記載されてる……
「ナモさ、偶に訳の分からない人脈築いてる事有るよね……」俺ですら知らないのに。
「んー、まぁ、俺一応主人公だし? 主要キャラとはまず挨拶がてらにライン交換したりするし?」相変わらずやべー思考回路だぜナモ。
「……」犬野さんが真顔でナモを見つめてる。「なぁ、二糸君。もしやこのナモとか言う御仁、神否荘の住人じゃない? 違うのか?」俺もその嫌疑掛けたさMAXではあるよね。「違うのか……」やるせなさで一杯の犬野さんである。
 ともあれ、順番に住人に電話を掛けて、オレオレ詐欺に引っ掛かって貰おうと言う事になった。防犯訓練ってこんなんなんだー。
「じゃあまずは九窓からな」九窓って誰だ……って思ったけど、そう言えばラヴファイヤー君のフルネームって九窓愛火だったっけ。すっかりご無沙汰な名称だ。
 一応俺とナモにも様子を見て貰う係として、電話もメイちゃんにお願いして掛けて貰っている。メイちゃんに「ラヴファイヤー君に電話して貰える?」と聞いたら、「承服致しました。――ぷるぷるぷる」あっと言う間に電話化してしまって、俺はドキドキと彼女の口から漏れ出るであろうラヴファイヤー君ヴォイスを待つ事に。
「もっしもーし!」メイちゃんの口から元気溌剌なラヴファイヤー君の声が!「知らない番号っすけど、どなたっすか?」
 そうなのである。メイちゃんに「メイちゃんから電話を掛けてるって事を秘匿できる?」と尋ねてみたところ、「非通知の設定を行いました」あっさりと出来る事が分かり、現在ラヴファイヤー君には非通知からの着信が来た感じになっている。
 そして更に、俺達の声はヴォイスチェンジャー的なもので、謎の声帯になっていたりする。俺やナモ、犬野さんってバレたら訓練じゃなくなっちゃうしね。
「もしもし? オレオレ!」犬野さんがノリノリでメイちゃんに話しかけた!「オレだよオレ!」
「オレオレ! オレオレ君かぁ!」ラヴファイヤー君の知人に実在してしまった!「どうしたんすかオレオレ? もしかしてお金を貸して欲しいんすか?」併も流れ良くお金を出してくれそうな雰囲気だ!
「そうそう! オレオレ! ちょっと百万ぐらい貸してほしくてさぁ」犬野さんが悪い顔をしてる……「今から言う銀行口座に振り込んでくれないか?」
「分かったっす! 今から用意するから待ってるっすよ!」完全に騙されてる! 魔王なのに!「あ、でもその前に言っておかなきゃならない事が有るっすよ……」ん? 流れ変わった?
「どうした? オレ急いでるんだけど」犬野さんもどこか不穏味を感じたのか、俺とナモに視線を向けた。
「僕ね、オレオレ君を自称する何者かが電話を掛けてきたら、漏れなく全身の筋肉が引きちぎれて、頭が粉々になるレヴェルの頭痛が起こって、生きているのが今の二兆倍辛くなる呪いを掛ける義務を負ってるんすけど、君、本当にオレオレ君っすか?」
 真剣味のラヴファイヤー君の声を聞いて、犬野さんは真顔で俺とナモを見つめていた。
 俺ももうどうしたら良いのか分からなくてナモを見つめると、ナモはサムズアップして、告げた。
「防犯訓練で死ぬには惜しい命だぜ、ポリ公」
 犬野さんは爽やかな表情で涙を流し、メイちゃんに向かって、「ごめんなさい、オレオレ君じゃないのでそれだけは勘弁してください」と土下座をするのだった。
 ラヴファイヤー君、防犯意識ガバガバかと思ったら、これ犯人が見つからないまま死んでるパターンだなこれ。
 と言う訳で、ラヴファイヤー君の防犯訓練は二重丸と言う事で、犬野さんが全身から冷や汗を滝のように流しながら部屋を飛び出し、ラヴファイヤー君の部屋に駆け込んでめちゃんこ謝り倒す事になるのでした。
 やっぱり、悪い事は出来ないようになってるんだなぁ、としみじみ。

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    あるのかよ…全く凄いよねナモさん、さすが主人公の器だぜww
    それにしても素晴らしいのはラヴファイヤー君の防犯意識の高さです。
    このシステムがあれば全世界からオレオレ詐欺的なものは駆逐されるのではないでしょうか。
    犬野さんあなたのせいではないのよ、ちょっと間が悪かっただけ次頑張ってください。

    ナモさんにあてられてちょっと壊れかけてるのかもしれない…

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv


    返信削除
    返信
    1. 感想コメント有り難う御座います~!

      ほんそれwww主人公の器とまで言われたら、ナモさん大感激だろうなwww(笑)
      ガバガバかと思いきやのラヴファイヤー君でしたね…!w
      ただ、「オレオレ君」を自称する事ってあるんでしょうか…???wwww
      犬野さんも完全にとばっちりで大変でしたねこれは…ww

      ナモさんパワー恐るべし…!ww ミーム汚染的なアレなのかも知れない!www(笑)

      今回もお楽しみ頂けたようで嬉しいです~!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

      削除

好意的なコメント以外は返信しない事が有ります、悪しからずご了承くださいませ~!