2022年6月7日火曜日

【レジスタンス軍が本気を出してしまった】第2話「派手に暴れようぜ!」【ソニックフォース二次小説】

■あらすじ
ソニックフォースの二次小説。約5年前に綴ったボツ案を供養する奴。

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【第2話「派手に暴れようぜ!」】は追記からどうぞ。

第2話「派手に暴れようぜ!」

「あのピラミッドの中に兵器工場が在るそうだ」

 シルバーはサイコキネシスで自身を浮かして、アバターはウィスポンのワイヤーとバーストのウィスポンを駆使して、遥か彼方に聳え立つピラミッドを見やる。
≪新入り。ウィスポンの扱いはどうだ?≫
 通信機から大隊長――ナックルズの声が這い出る。
 宙を飛翔していたシルバーは、バーストの爆発力で跳躍しているアバターを見下ろすと、「問題無さそうだ。炎を司るウィスプ、レッドウィスプも力を余す事無く貸してくれてる」と、アバターの代わりに返答した。
 シルバーが応答した直後、平原に無数のデスエッグロボが飛び出して来て、着地しようとしたアバターに一斉に襲い掛かるも、彼は落ち着いた様子でバーストのウィスポンを使用――火炎放射を放つと、デスエッグロボを薙ぎ払うように焼却した。
 一瞬でデスエッグロボを十体以上焼き払ったアバターを見下ろして、シルバーは口唇に笑みを刻むと、改めて通信機に声を投げた。
「戦力としても申し分無い。エッグマンのロボがまるで玩具だ」
≪そいつは重畳だ≫ナックルズの嬉しそうな声が弾む。≪改めて作戦を伝える。目的は兵器工場の襲撃だが、破壊じゃない。“制圧してくれ”≫
「暴れるのが主眼じゃないのか?」シルバーの表情が曇った。「新入りの門出に派手さが物足りないんじゃないか?」
≪警備に当たっているエッグマンのロボ軍団は当然皆殺しだ。それは変わらない≫ナックルズの悪い笑みが、通信機越しにすら薄っすらと透けて見えるようだった。≪だが、その兵器工場は使い道が有る。工場自体は可能な限り原形を留める形で、警護のロボット共だけを殲滅してくれ≫
「そんな繊細な作戦をオレに頼むなよ……」やれやれと肩を竦めるシルバーだったが、アバターを見下ろして苦笑を刷いた。「新入りに華を持たせとくよ」
≪ロボット達とダンスを決めてこいよ。――作戦開始までカウント開始。スリー、ツー、ワン、――自動操縦モードのトルネードからのレッドウィスプの絨毯爆撃開始≫
 遥か上空を旋回していた自動操縦モードになっている、テイルスの愛機であるトルネードの底部からバラバラと、炎とイカが合体したような生命体――レッドウィスプが詰まった弾頭が自由落下を始める。
「行くぞ新入り!」シルバーがサイコキネシスのベクトルを定め、急加速でピラミッドへ突撃する。「派手に暴れようぜ!」
 アバターは了承の意としてコックンと首肯すると、バーストのウィスポンで飛翔――ワイヤーを駆使して加速に加速を重ね、グリーンヒルに建設されたピラミッドへ肉薄する。
 ――視界が、眩いオレンジ色に包まれた。大空を旋回するトルネードによる絨毯爆撃がピラミッドに牙を剥いたのだ。
 轟音と、破砕音と、金属の悲鳴が重奏となって蒼穹を灼いていく。
 灼熱と黒煙を背景に、シルバーとアバターは地上すれすれを滑空し、アリの巣から湧き出る兵隊アリのように止め処なく飛び出てくるデスエッグロボを薙ぎ倒しながら進んで行く。
 アバターは火炎放射で焼き払い、シルバーはサイコキネシスで纏めて薙ぎ払う。
 二人を止められる高性能ロボットは存在せず、ただ無抵抗にガラクタへと変えられていく。
 アバターの心中は複雑だった。こんなに――こんなに容易くエッグマン軍のロボットを仕留められるのなら、何で今までやられるがままにエッグマン軍にのさばらせておいたのだ、――と。
 だが、その理由をアバターは理解していた。やっと、アバターが新入りとしてレジスタンス軍に加入したあの時点でやっとエッグマン軍に対抗できる兵装が完成したのだ。
 それこそが、テイルスが独自の理論で組み上げた特殊兵装……ソニックのスピードや、シルバーのサイコキネシスのような、強大な力・特殊な技能が無い一般の兵士でも、最強の兵士に仕立て上げる、宇宙生物“ウィスプ”の力を借りた兵器――ウィスポン。
 完成はしたが、今以てまだ試作品が完成したレヴェルなのだ、その実験と実績を兼ねた作戦こそが今アバターが実地で行っている武力制圧なのだ。
 アバター自身、己の肩にどれだけの期待が掛けられているか理解していた。この作戦に、アバターの双肩に、レジスタンス軍の未来が懸かっていると言っても過言ではないのだ。
 ソニックと言う、絶対的ヒーローが存在しない、唯一神とも言えるヒーローを失った世界に、己はいる。そんな世界でも、住民は生きて、抗って、戦っているのだ。
 ソニックの代わりになるなどと烏滸がましい事を言うつもりは無い。けれど、彼がいなくても、エッグマン軍を退けなければ、住民の未来は永遠に訪れない。
 ピラミッドまで目前に迫っていた。アバターは、意志強く奥歯を噛み締める。ナックルズの言う通りだ。彼は、恐らく至って平常心で告げたであろう、けれど狂気に満ちた台詞を思い出す。
 ――皆殺しだ。
 シルバーを見上げると、彼も同じタイミングでアバターに視線を配っていた。互いに頷き、エッグマンが設立した巨大なピラミッド型兵器工場へと侵入を果たす。
≪ロボットは、一体も逃すな。殲滅だ、見敵必殺しろ≫
 ナックルズの檄が通信機越しに走る。
 そうだ、ここからだ。ここから――レジスタンス軍の意地を見せるのだ。

◇◆◇◆◇

 きっかり一時間後。ピラミッドの頂点から、まるで山が噴火するように黒煙を棚引かせている光景が遥か遠方からでも視野に納める事が出来た。
 堂々と搬入口から二人の兵士が歩いて出てくる。他に動体は無く、在るのはひたすら残骸の山。
「――作戦終了。これより帰投する」シルバーが通信機に声を落とした。
≪聞かせて貰おうか、戦果報告を≫ナックルズの淡々とした声が即座に返って来た。
「――制圧完了。ロボットの残機はゼロだ。全て破壊、破壊、破壊した。オーヴァー」
≪最高にホットな知らせだな≫ナックルズの喜悦に歪んだ声が漏れた。≪即時テイルスを向かわせる。兵器工場は改装し、前線基地にする。そして二人には次の作戦に就いて貰う。これからだ、これから――エッグマンの目に物言わせてやろうぜ≫
「ああ、了解した――」ガッと、シルバーはアバターと拳を合わせ、互いに笑みを見せ合った。「次だ、次に行こうぜ新入り。俺達を怒らせた罪を贖わせるには、まだまだ贄が足りないよな」
 ……やっぱり、この人達は何かが壊れてしまっている。そう、アバターは感じずにいられなかったが、もしかしたら彼らの方が正常なのかも知れないとも、感じていた。
 戦端は疾っくに開かれている。これから始まるのは反撃だ。虫の息にまで嬲られたネズミは、ネコを噛み殺すほどの底力を見せるのだ。
 ひっそりと点っていた戦火の灯火は、徐々に焼け野原を築いていく。野火は容赦無く、呵責無く、平原を焼き尽くしていく――――

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