2020年8月30日日曜日

【ポケットモンスター東雲/浅葱】第3話 アイテツジムのコンゴウ兄弟【ポケモン二次小説】

 ■タイトル
ポケットモンスター東雲/浅葱(シノノメ/アサギ)

■あらすじ
ポケットモンスター(ポケモン)のオリジナル地方であるホクロク地方を舞台に、少年少女がポケモンチャンピオンを目指す、壮大な冒険譚です。

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【第3話 アイテツジムのコンゴウ兄弟】は追記からどうぞ。
第3話 アイテツジムのコンゴウ兄弟


「アイテツシティって、都会だよねぇ~」「ワフン」

 アイテツシティ。埋没林の町。ホクロク湾に面する港町で、埋没林を見に観光で訪れるトレーナーもいる、比較的大きな町。
 町並みは古色蒼然とした屋敷が立ち並ぶ。昔ながらの家々が殆どで、真新しい建物は少ない。石畳は補修を重ねた跡が随所に見られ、町の中を走る川に架かった橋も古めかしい石造りが殆どだ。
 そんな蒼古とした町中を、シノノメとディ子は並んで散策していた。
 古風な町並みだが、往来の数はウノハナタウンの比ではない。多くの人間が行き交う通りは、それだけでシノノメに都会としての意味を持たせるには充分な風景だった。
 ディ子と散歩しているような足取りで、のんびりと町を見て回るシノノメ。まずはポケモンジム――ではなく、いつもお世話になっているポケモンセンターに向かう。
 ポケモントレーナーとして旅立つ事にはなったが、それ以前からシノノメとアサギはこのアイテツシティとウノハナタウンでポケモンバトルをよくしていて、ウノハナタウンにはポケモンセンターが無いため、わざわざアイテツシティまで来て、ポケモンの怪我を癒していた。
 にも拘らずジムリーダーの話を知らず、ジムの場所も同様に知らないのは、ポケモントレーナーとして本格的に活動するのは、コハク博士からポケモン図鑑を貰ってから! と二人で決めていたからだった。
 ポケモンチャンピオンになるには、ホクロク地方に在る八つのポケモンジムを制覇して、その証拠の八つのジムバッジが必要になる。そのジムバッジを収めるケースも兼用しているのが、コハク博士が作成したポケモン図鑑なのだ。
「こんにちはー!」「ワオン!」
 外見は大きな武家屋敷のような建物だが、中は最新の医療器具が設備されているポケモンセンターに入ると、受付のお姉さんが「ようこそ! ディ子ちゃんの休憩かしら?」と朗らかな笑みで尋ねた。
「うん、今日もたくさんポケモンバトルしてきたんだよ!」と言ってディ子を抱きかかえるシノノメ。「あ、あとお姉さん! あたしね、ポケモン図鑑貰ったの!」と言ってポーチからポケモン図鑑を取り出して見せる。
「あら! じゃあもうポケモントレーナーとして一人前ね!」嬉しそうに微笑むお姉さん。「今まで話さないで~! って言ってた、アイテツジムの話もして良いのかしら?」
「うん、してして!」ディ子を手渡しながらコクコク頷くシノノメ。「アイテツジムのジムリーダーって、兄弟でやってるって事しか知らないの!」
 ディ子がモンスターボールに納まり、専用の装置の中に送り込まれて行く。その様子を見届けたお姉さんは、シノノメに振り返って、
「アイテツジムのコンゴウ兄弟はとっても仲良しなのよ~。お兄さんはちょっと煩いけどね……」思わずと言った様子で苦笑を浮かべるお姉さん。「きっと、シノちゃんには難しい相手だと思うわよ?」
「えっ、どうして?」
「それは、ジムに行ってみれば分かると思うわ♪ さっ、これでディ子ちゃんも元気一杯よ!」と言って装置から出てきたモンスターボールから、ディ子を解放するお姉さん。「ジムは町の中央に在るんだけど、すぐ見つかると思うわ!」
「有り難う、お姉さん!」ディ子を抱きかかえて、そっと地面に下ろすシノノメ。「町の中央って、相撲場しかないと思うんだけど……」
 不思議そうに小首を傾げるシノノメに、お姉さんは笑顔を浮かべて「つまり、そういう事よ♪」と可愛くウインクを返すのだった。

◇◆◇◆◇

 アイテツシティの中央には、近隣住民から“相撲場”と呼ばれる大きな公園が在り、普段は様々な人間が憩いの場として利用している空間になっている。
 相撲場と呼ばれるのは、公園の中央に在る大きなリングが起因している。直径十メートルの円形の空間は、盛り土で形成されていて、見た目が相撲を執る時の土俵に似ている事から、相撲場、と呼ばれるようになった。
 普段はそこでトレーナー同士がポケモンバトルをしているのだが、アイテツジムなどどこにも見当たらない。
 公園に在るのは、後は大きな湖だけだ。川から流れ込んだ淡水と、ホクロク湾の塩水が交わる境目に在る湖は大きく、中央には噴水が滾々と湧き出ている。待ち合わせする者が多く、中には釣り人の姿も見受けられた。
 シノノメ自身、今までここで何度もポケモンバトルをしているのだが、ここがアイテツジムと言われても、ピンと来なかった。
「お姉さん、勘違いしてるのかなぁ……」「ワフン」
 ディ子と一緒に土俵の近くをうろうろしていると、それに気づいたトレーナーと思しき青年が近づいて来た。
 筋骨隆々の、逞しい肉体を小麦色に染めた、上半身裸の男。綺麗な歯並びの笑顔を浮かべて、「ヘーイ! どうしたんだいお嬢さん? 何かお困りのようだけど?」と胸板をビクンビクン震わせた。
「えっと、アイテツジムを探してるんです」ディ子と一緒に振り向き、上背の有るお兄さんを見上げるシノノメ。「あたし、ジムリーダーにポケモンバトルを挑みたくて……」
「ほほう、アイテツジムに挑みたい……と」難しい表情で顎を摩る筋肉お兄さん。「君のポケモンは、そのガーディ一匹だけかい?」とディ子を指差す。
「うん! ディ子はあたしの相棒なの!」とディ子を抱きかかえて微笑むシノノメ。
「ワオン!」嬉しそうに吠えるディ子。
「そうか……だったら、アイテツジムのジムリーダーには挑めないネー」肩を竦めて小さく頭を振る筋肉お兄さん。
「えー? どうして?」不服そうに唇を尖らせるシノノメ。
「アイテツジムのポケモンバトルは、タッグ相撲!」グッとサムズアップする筋肉お兄さん。「二対二のポケモンによる相撲バトルが、アイテツジムの習わしなのサ!」
「二対二の、相撲バトル……?」きょとんと目を点にするシノノメ。「じゃあ、ディ子だけだと……」
「そう、挑めないネ、残念ながら」オーウ、と悲しみの表情で肩を落とす筋肉お兄さん。
「ガーン……」擬音を口に出して肩を落とすシノノメ。「そんなぁ……」
「HAHAHA! なぁに、落ち込む事は無いサ! 素敵な相棒をもう一匹捕まえたら、また来ると良い! それか或いは……」
 筋肉お兄さんが更に言い募ろうとした時、シノノメの背後で「おれはナックラーだけで勝つ自信が有る!」と言う聞き覚えの有る大声が弾けた。
 振り返ると、気弱そうな男に、アサギが食って掛かっている場面に遭遇した。
「あれ? アサギ、何してるの?」ディ子と一緒に駆け寄るシノノメ。「喧嘩はダメだよ!」
「シノノメか」優男から手を離すと、シノノメに視線を向けるアサギ。「お前もアイテツジムに挑みに来たのか?」
「そうなの! でも、二対二じゃないと挑めないって……」しょんぼりと溜め息を零すシノノメ。
「おれなら、一対二でも勝てると言っても、挑ませてくれない」苛立ちを隠し切れない様子のアサギ。「ナックラーさえいれば、おれは誰にも負けない」
「と言う訳なんだけど、兄さん」先刻までアサギに絡まれていた、眼鏡を掛けた優男が、筋肉お兄さんに声を掛ける。「挑戦者が二人いて、ポケモンが一頭ずつ。これは……」
「YES! 君達二人が一緒に挑むのなら、アイテツジムはその挑戦を受けよう!」
 そう言って筋肉お兄さんは腰のポーチからポケモンボールを引き抜き、隣に立つ優男も、同様にポケモンボールを構えた。
「私こそが! アイテツジムが誇るコンゴウ兄弟が兄、ダイヤ!」突然ポーズを決め始める筋肉お兄さん――ダイヤ。
「えーと、僕がその弟のモンドです」恥ずかしそうにポーズを決める優男――モンド。
「「二人合わせて――」」「コンゴウ!」「石」「デース!」「です……」
 ダイヤがノリノリのテンションでポーズを決める隣で、恥ずかしそうにポーズを決めるモンド。
 そんな二人を見つめて、ポカーンと口を開けて呆然としているシノノメとアサギ。
「こらモンド! もっとカッコよく決めないとダメデショ~? 挑戦者が固まってるじゃないカ!」プンスコと頭から蒸気を発するダイヤ。
「いい加減この恥ずかしい口上やめない? 兄さん……僕恥ずかしくて慙死(ざんし)しそうだよ……」手で覆っていても顔が真っ赤だと分かるモンド。
「お兄さん達が、ジムリーダーだったの!?」やっと驚きに目を瞠るシノノメ。「確かにお兄さん、ちょっと煩い!」
「HAHAHA! 私は煩いのではない、いつだって元気溌剌なのデース!」腰に手を当てて大笑するダイヤ。「それで、どうするネ? 君達が二人一緒に我々アイテツジムに挑戦すると言うのなら、受けて立つが!?」
「アサギ!」「……お前と一緒に挑戦するのは気が進まないが、やるか」
 シノノメが拳を突き上げると、アサギは難しそうな表情を浮かべながらも、拳を合わせて頷いた。
「ダイヤさん、お願いします!」ペコっと頭を下げてから、「勝負だ!」とダイヤを指差すシノノメ。
「HAHAHA! 威勢の良いお嬢さんだ! OK! 受けて立つゼ!」応じるようにシノノメを指差すと、ダイヤはモンスターボールを宙に放った。「出て来いパルシェン!」
 モンスターボールから飛び出たのは、2まいがいポケモンのパルシェン。ズシン、と地鳴りを響かせて着地したのは、一・五メートルの大きさに加え、重さが百キロを超える超重量系のポケモンだからだ。
「パルシェン! いつもの頼むぜ!」
 ダイヤがパキンッ、と指を鳴らすと、パルシェンの頭上に生える角から、青白い光線が迸った。
 いきなりポケモンバトルが始まったのかと思って身構えるシノノメとアサギだったが、その光線――冷凍ビームが放たれた先に在るのは、公園の中に在る湖の中央から噴き出る噴水。そこに冷凍ビームが照射され続けると、徐々にその意味が分かってくる。
 噴水から噴き出た水が凍り付き、湖の空中にフィールドが短時間で形成されていく。
 噴水の水は分厚い氷の層を作り出し、三分と掛からずに“土俵”は完成した。
 湖の宙に浮かぶ、氷の土俵。半径五メートルあるそれは、公園に用意された土俵と同じ大きさ、厚みを誇る、盛り土ではなく噴水の水で作られた専用のフィールド。
「トウッ!」
 ダイヤは軽やかなステップで跳び上がると、パルシェンも後に続いて軽やかに跳躍し、氷の土俵に降り立つ。
 あの超重量のパルシェンが降り立ってもびくともしない分厚さの氷に、シノノメとアサギは更に驚いた。
「これがアイテツジム名物! アイススモウフィールドデース!」腕を広げて迎え撃つように声を高らかに上げるダイヤ。「さぁ、上がってくるデース!」
「済みませーん、ちょっと高くて上がれないですー!」両手を口元に当てて大声を上げるシノノメ。
「オウ、シッツ!」パシーンッ、と大仰に額を叩くダイヤ。「モンド! 頼んだデース!」
「おいで、マリル」モンドが軽くモンスターボールを放ると、中からみずねずみポケモンのマリルが飛び出した。
「ピュゥ」モンドを見上げるマリル。
「マリル、あの二人を土俵に上げてあげて」微笑みながら、ポンポン、とマリルの頭を撫でるモンド。
「ピュウ!」コクンと頷くと、マリルはてこてこと小さな足を動かしてシノノメの元まで走り、「ピュゥ! ピュゥ!」と頭に乗ってくれとでも言ってるような仕草を始めた。
「可愛い~!」マリルを撫で始めるシノノメ。「えーと、ポケモン図鑑ポケモン図鑑」ゴソゴソとポーチからポケモン図鑑を取り出し、マリルに向けて起動する。
『マリル。みずねずみポケモン。全身の体毛は、水を弾く性質を持ち、水浴びしても、乾いている。尻尾の先には、水より軽い脂が詰まっているので、浮袋の代わりになる』
「みずねずみポケモン……タイプは、みず、フェアリー……タイプ、みず!?」
 思わずモンドを見上げると、彼はシノノメを見つめて苦笑していた。
「ガーディはほのおタイプ、ナックラーはじめんタイプ。どちらも、みずタイプが弱点だね」そう言ってモンドは、氷の土俵に立つ兄を指差す。「兄さんのパルシェンのタイプも、みず、こおり。つまり君達は、弱点タイプのポケモンで、僕達に挑まなければならないという事になるよ」
「弱点タイプで、挑む……!」
 ゴクリ、と生唾を呑み込むシノノメに、アサギは澄ました表情で呟く。
「弱点なんて、関係無い。おれは、ナックラーが最強である事を証明するだけだ」
 そう言って、ナックラーと一緒に跳び上がり、噴水が凍って出来た土俵に飛び乗るアサギ。その視線の先には、余裕の笑みを浮かべているダイヤ。
「YES! 少年の言う通りサ! 弱点なんて関係無い! 勝者のみが強者! 君のそのストロングウィルに賞賛を送ろう! ――私達に勝てたらネ!」
 マリルの頭に乗って、ディ子とシノノメも氷の土俵に立つ。
 二対二のジムリーダー戦。
 氷の土俵の上での、アイススモウバトル。
 ガーディ&ナックラーvsパルシェン&マリル。
 そのポケモンバトルの火蓋が今、切って落とされる――!

2 件のコメント:

  1. 更新お疲れさまですvv

    ついに始まりますね。
    なんだかんだ言いつつやっぱり二人は一緒になってしまうようです。
    朝葱くんが登場するだけでご飯おかわりできそうです!ありがとう先生!!

    若干煩いお兄さんとその弟さんが作り出したアイススモウフィールド、
    どんなバトルが展開されるのか楽しみです!

    今回も楽しませて頂きましたー
    次回も楽しみにしてますよーvv

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    1. 感想コメント有り難う御座います~!

      遂に始まります…!
      ですですw 何だかんだ言いながらも仲良しと言いますか、一緒になってしまうのは運命と言いますか…!w
      にゃんとww登場だけでご飯おかわりまで!wwこちらこそありがとう!www

      ちょこっと変わったポケモンバトル、ぜひぜひ楽しみにお待ち頂けたらと思います!

      今回も楽しんで頂けたようで嬉しいです~!!
      次回もぜひぜひお楽しみに~!!

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