ネトゲで好きになってしまった相手は、きっと異性だと思っていた。
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◇◆◇◆◇>>ジン<<◇◆◇◆◇
座長「細菌、ソシャゲの査収が重なるね~」
日常と化している、夜更かししながらの座長とのチャットで、不意にそんな話題が出た。
一瞬何の事か分からずに問い返そうとして、字面を別読みして……査収……サ終……サービス終了と言う意味だと読み取れた。
ソシャゲのサ終。ソーシャルゲームのサービス終了。集客が上手く行かなかったのか、経営難に陥ったのか、時代に合わなかったのか……その理由は余人には定かではないけれど、何事にも流行り廃りが有って、ソシャゲにも当然始まりが有れば終わりが有る、と言う事だ。
つまり私達が今楽しんでいるこの「ファンタジーポケット(通称FP)」と言うソシャゲだって、その時が来ればログインする事すら不可能になるのだ。
ジン「おっさんは、FP終わったらどうすんの?」
何気無く問いかけて、私は不意に心臓が喧しくなりつつある自分に気づいた。
もし、座長がFPを最後にソシャゲをやらなくなったら。座長と唯一繋がっているこのソシャゲと言う接点を失ってしまえば、二度と彼とはチャットが……いや、交流が図れなくなる、と言う事になる。
それは……凄い、嫌だ。普段、大体同じ時間にログインする彼との、何気無いチャットで癒されている身としては、この大切な時間が永遠に失われてしまうのは、本当に、嫌だ。
考えた事も無かったと気づく。このソシャゲは永遠に続いて、私は座長と何気無いチャットを永遠に続けられる……そんな有り得ない未来を、いつの間にか夢想していた。
……心の中で、どれだけ彼を想っても、きっと……仮にこのソシャゲが明日にはサービスを終了してしまい、明日から座長のいない生活が始まったとしても、私はいつの間にか彼の事を忘れて、彼のいない当たり前の生活を、当たり前だと感じるようになるんだろう。
それが無性に悲しくて、座長の返答も待たずに、スマフォをタップしてしまう。
ジン「もしおっさんが別ゲー行くなら、俺もついてくから」
先回りして発言してから、顔が発火するような恥ずかしさに見舞われた。
何だこれ、まるで私ストーカーじゃないか……いやいや、単に仲が良い友達だから、他のゲームでも一緒に誘ってくれよなって意味で捉えてくれるよ……な……?
中々返答が無いのがもどかし過ぎて、思わず握り拳を作ってぷるぷる震わせてしまう。
やがて、座長のキャラクターが身動ぎし、発言が流れた。
座長「んーFP終わったらどうしようねえ。ジン君はどうするの?」
……ワンテンポ遅れたチャットの表示に、思わず噴き出してしまう。
私の想いは、既に一歩手前に置き去りにされている。
だから私は、気長に彼の続く返答を待つ事にした。
……あぁ、この気だるげなもどかしい時間こそが、きっと彼と一緒の時間を過ごせている証明なのだろうと、仄かに微笑を浮かべながら。
願わくは、FPが永遠に終わらない事を祈り、私は座長が頑張ってタップしているであろう姿を想像して、寝返りを打つのだった。
◇◆◇◆◇>>座長<<◇◆◇◆◇
ジン君のあまりに忠犬染みた発言に、あたしは悶絶しながら、喜びを噛み締めるように発泡酒を呷った。
本当に可愛い子だと思い知らされる。あたしに気が有る訳でもないのに、まるで寂しがり屋な仔犬のような仕草で駆け寄って来る感溢れるチャットに、あらゆる感情が爆発しそうだった。
別ゲーに行っても、付いてきてくれる。それは何とも、心強い台詞だ。
つまり彼にとってあたしは、FPの座長として以上に、中の人であるあたしに、関心を持ち、慕ってくれていると言う事だ。……流石に烏滸がましいか。
何にせよ、嬉しい事には違いない。現状、FPが終わったら移住先にしようと決めているゲーム自体は無いけれど、もしFPがサ終してしまう可能性が高くなってきたら、その時は予め決めておいた方が良さそうだ。
その時は……彼と相談して決めようと、今決めた。あたし自身、別にゲームには拘りが無いから、ジン君にそういうところを決めて貰った方が、後々彼も楽しんでくれるだろうし。
……なーんて。まるでジン君があたしがどこに行ってもついてきてくれるなんて信じてるみたいな考え方だけれど、きっと彼なりに気遣ってくれているのだと思う。
最近仕事が上手く行ってないし、愚痴っては無いけれど、雰囲気で察せられたのかも知れない。幼いなりに、人の機微を読むのが上手い、世渡り上手な子なんだろう。
座長「まーあれよ。別ゲーに行く時はジン君に聞いてからにしるよ」
ジン「しるよwww」
座長「するよ!!」
ジン「その時はちゃんと言えよー? 勝手にいなくなったら承知しねえからな!」
座長「ほいほい」
何でまぁ、こんな三十路近いおばさんにここまで好意を向けてくれるか分からないけれど、……年甲斐も無くはしゃいでしまうくらいには、嬉しいよ。
いや勿論、単にチャット上のおふざけなんだろうとも、分かってはいるけれど。それでも……夢見てしまうよね。
こんな素敵な男子に、慕われている事自体が奇蹟みたいなものなのに、それにいつまでも縋っていたくなってしまう。
FPが今日明日で終わってしまうソシャゲではないのは分かっているけれど、せめて、彼が自発的にいなくなるまでぐらいは、元気に稼働していて貰いたいものだ。
願わくは、彼がいなくならず、あたしが何もかも諦めるか物理的にプレイできなくなるまで、ずっとサービスが継続されますように。
……ちょっと深酒が過ぎたかな。歳を考えろって感じのポエマーになりつつあるなこりゃ。
スマフォの液晶に映る、この世界のどこかにいる誰かが作ったアバターに恋をしてる自分に呆れつつ、今夜も夢見が良さそうだと感じずにはいられなかった。
更新お疲れさまですvv
返信削除あーなんだかあれだ、切ねぇw
こんなにも素敵な二人の恋ぜひぜひ実らせてあげたいけど……
ぁああああーどうしたらいいんじゃぁ~!
査収の話とかちょっとリアルっぽくってよきよきw
避けては通れない話題だけど、本音は続いてほしいよねぇ(現在流浪の民談w
わたしも今夜は夢見よさそうだわw
今回も楽しませて頂きましたー
次回も楽しみにしてますよーvv
感想コメント有り難う御座います~!
削除ですですww切ねぇんですな…!w
そのモダモダこそが最上の感想ですぞ~!w 有り難う有り難う…!w
ですよね!w 最近もちらほらそういうお話を伺いますし!w
長年そういうコンテンツに触れているからこそ、どうしても話題に上りますよね…! 本音も分かり味しかない…!w
良かった~!w 素敵な夢見でお過ごしくだされ…!w
今回も楽しんで頂けたようで嬉しいです~!
次回もぜひぜひお楽しみに~!